量子力学演習

量子力学演習
June 2, 2015
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角運動量
基礎事項
角運動量演算子
軌道角運動量に対応するエルミート演算子

 ∂
 

∂ 
y ∂z − z ∂y
Lx
ypz − zpy
¯
h
∂
∂ 
L = r × p =  Ly  =  zpx − xpz  =  z ∂x
− x ∂z
i
∂
∂
Lz
xpy − ypx
x ∂y − y ∂x
(1)
の 3 成分は交換関係
[Lx , Ly ] = i¯hLz ,
[Ly , Lz ] = i¯hLx ,
[Lz , Lx ] = i¯hLy
(2)
を満たす. 演算子 L2 = L2x + L2y + L2z は Lx , Ly , Lz の全てと交換する.
極座標表示
x = r sin θ cos ϕ, y = r sin θ sin ϕ, z = r cos θ
を用いて角運動量演算子を表すと
L±
L2
{
}
∂
i ∂
≡ Lx ± iLy = ¯h e
±
+
,
∂θ tan θ ∂ϕ
}
{
∂
1 ∂2
1 ∂
= −¯
h2
sin θ
+
.
sin θ ∂θ
∂θ sin2 θ ∂ϕ2
±iϕ
Lz = −i¯h
∂
,
∂ϕ
(3)
球面調和関数
L2 と Lz の同時固有関数を球面調和関数 Yℓm (θ, ϕ) と呼ぶ:
L2 Yℓm (θ, ϕ) = ¯h2 ℓ(ℓ + 1) Yℓm (θ, ϕ),
Lz Yℓm (θ, ϕ) = ¯h m Yℓm (θ, ϕ).
その具体形は上の微分方程式に対する 1 価で規格化可能な解
Yℓm (θ, ϕ) =
Pℓm (τ ) =
|m|
(cos θ) eimϕ , ℓ = 0, 1, 2, . . . , m = ℓ, ℓ − 1, · · · , −ℓ,
( )ℓ+m
1
d
2 m/2
(1 − τ )
(τ 2 − 1)ℓ : 陪 Legendre 関数
2ℓ ℓ!
dτ
Am
ℓ Pℓ
で与えられる. L2 の固有値 ¯
h2 ℓ(ℓ + 1) に属する固有状態は 2ℓ + 1 重に縮退している.
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(4)
√
規格化定数を
Am
ℓ
(m+|m|)/2
= (−1)
∫
2ℓ + 1 (ℓ − |m|)!
ととると球関数は以下の性質を満たす:
4π (ℓ + |m|)!
∫
2π
正規直交性 :
0
完全性 :
sin θ
π
∗
′
dθ sin θ (Yℓm (θ, ϕ)) Yℓm
′ (θ, ϕ) = δℓℓ′ δmm′
dϕ
0
∞ ∑
ℓ
∑
∗
(Yℓm (θ, ϕ)) Yℓm (θ′ , ϕ′ ) = δ(θ − θ′ )δ(ϕ − ϕ′ ).
ℓ=0 m=−ℓ
角運動量の固有関数である球面調和関数 (球面波)Yℓm (θ, ϕ) のこれらの性質は, 運動量の固有関
数である平面波 eikx の性質 (Fourier 変換の反転公式, §2) と平行している.
演習問題
1 以下の問いに答えよ.
i. 基礎事項 (2) 式を示せ.
ii. 基礎事項 (2) 式を用いて,昇降演算子 L± = Lx ± iLy が交換関係
[Lz , L± ] = ±¯hL± ,
[L+ , L− ] = 2¯hLz
を満たすことを示せ.
iii. Yℓm (θ, ϕ) が基礎事項 (4) 式を満たすとき,前問 ii. の交換関係を用いて,L± Yℓm (θ, ϕ) につ
いて
L2 に対する固有値が ¯h2 ℓ(ℓ + 1),
Lz に対する固有値が ¯h(m ± 1)
となること(L± Yℓm (θ, ϕ) は L2 と Lz の同時固有関数となっている)を示せ.
※ L± が昇降演算子と呼ばれるのは,L± Yℓm の Lz に対する固有値が ¯
h(m±1) となり,L± Yℓm ∝
m±1
Yℓ
となるためである.
2 Yℓℓ (θ, ϕ) が,L2 と Lz に対する固有値がそれぞれ ¯h2 ℓ(ℓ + 1) と ¯hℓ となる,L2 と Lz の同時
固有関数であるとする. 角運動量演算子の極座標表示 (基礎事項 (3) 式) を用いて,
i. 固有値方程式 Lz Yℓℓ (θ, ϕ) = ¯hℓ Yℓℓ (θ, ϕ) を微分方程式として解いて,
Yℓℓ (θ, ϕ) = Θ(θ) eiℓϕ
を示せ.
ii. Lz の固有値は ¯
hℓ 以上に上げられないことを表す式 L+ Yℓℓ (θ, ϕ) = 0 を微分方程式として解
いて,
Yℓℓ (θ, ϕ) ∝ sinℓ θ eiℓϕ
を示せ.
3 前問題の続き.
i. ℓ = 1 とおいた関数 Y11 に演算子 L− を繰り返し作用させることにより, Y10 および Y1−1 を求
めよ. ただしそれらの規格化定数を決定する必要はない.
ii. 上で構成した関数 Y1−1 に演算子 L− を作用させることにより, L− Y1−1 = 0 を示せ.
−1
1
0
0
iii. これら3つの関数
.
√
√ Y1 , Y1 , Y1 , および Y0 ∝ 1 の間の直交性を確かめよ
3
3
sin θeiϕ ,および,Y10 (θ, ϕ) =
cos θ が各々規格化されていること
iv. Y11 (θ, ϕ) = −
8π
4π
を確かめよ.
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