量子力学1 理論演習 レポート10 参照 ( http://www2-tap.scphys.kyoto-u.ac.jp/~hotoke/2011QMex1/index.htm) 問題 3 は必須 1 (2011/07/07 実施予定) 調和多項式 Laplace 方程式 3 ∑ ∂ 2 f (r) =0 ∆f (r) ≡ 2 ∂x a a=1 ( r = (x1 , x2 , x3 ) ) (9.1.1) の解で,3 変数 x1 , x2 , x3 の l 次の同次多項式であるものを,l 次 調和多項式 (harmonic poly- nomial) あるいは l 次 体球調和関数 (solid harmonics) という.l = 0, 1, 2 の場合,たとえば 次のものが線形独立な l 次調和多項式になっている: l = 0:f (r) = 1 (9.1.2) l = 1:f (r) = x1 , x2 , x3 (9.1.3) l = 2:f (r) = x21 − x22 , x22 − x23 , x1 x2 , x1 x3 , x2 x3 . (9.1.4) (1) l 次の同次多項式 f (r) は一般に f (r) = ∑ cr1 r2 r3 xr11 xr22 xr33 r1 +r2 +r3 =l = ∑ fa1 a2 ···al xa1 xa2 · · · xal ( fa1 a2 ···al :添字について完全対称 ) (9.1.5) a1 , a2 ,··· , al の形に書ける.これがさらに Laplace 方程式を満たすためには,トレースレスであること (つ まり任意の 2 つの添字の縮約について fa1 ···al が消えること) が必要十分であることを示せ: ∆f (r) = 0 ⇐⇒ 3 ∑ fa a a1 ···al−2 = 0. (9.1.6) a=1 (2) l 次調和多項式 f (r) の集合は関数空間の中で (2l + 1) 次元の部分線形空間を作ることを 示せ. (3) 演算子 ( ∂ ) ∂ − x3 , ℓˆ1 ≡ −i x2 ∂x3 ∂x2 ( ∂ ∂ ) ℓˆ2 ≡ −i x3 − x1 , ∂x1 ∂x3 1 ( ∂ ∂ ) ℓˆ3 ≡ −i x1 − x2 ∂x2 ∂x1 (9.1.7) が Laplacian と交換することを示せ: [ ] ∆, ℓˆa = 0 (a = 1, 2, 3). (9.1.8) また,ℓˆa が調和多項式を同じ次数の調和多項式にうつすこと,つまり,f (r) が l 次調和多項 式なら ℓˆa f (r) (a = 1, 2, 3) も l 次調和多項式になること,を示せ. (4) ℓˆ± ≡ ℓˆ1 ± i ℓˆ2 (9.1.9) とおくとき,次が成り立つことを示せ: [ ] ℓˆ3 , ℓˆ± = ± ℓˆ± . (9.1.10) (5) ζ ≡ x1 + i x2 ,ζ ∗ ≡ x1 − i x2 とおけば, ∂ ∂ , ℓˆ+ = 2x3 ∗ − ζ ∂ζ ∂x3 ∂ ∂ ℓˆ− = −2x3 + ζ∗ , ∂ζ ∂x3 ∂ ∂ ℓˆ3 = ζ − ζ∗ ∗ ∂ζ ∂ζ (9.1.11) となることを示せ. (6) fl, l (r) ≡ ζ l = (x1 + i x2 )l とおくとき,次が成り立つことを示せ: ℓˆ3 fl, l (r) = l fl, l (r). (9.1.12) ( )l−m (7) l 以下の整数 m に対して fl, m (r) ≡ ℓˆ− fl, l (r) とおくとき,次が成り立つことを示せ: ℓˆ3 fl, m (r) = m fl, m (r). ( ) fl, −l (r) ∝ ζ ∗ l , ℓˆ− fl, −l (r) = 0. (9.1.13) (9.1.14) fl,m (r) は |m| ≤ l の範囲にある限り 0 とならない.したがって,この (2l + 1) 個の {fl,m (r)} (m = −l, −l + 1, · · · , l − 1, l) を,l 次調和多項式全体が作る (2l + 1) 次元線形空間の基底と して選ぶことができ,任意の l 次調和多項式は fl,m (r) で展開される: f (r) = l ∑ cm fl, m (r) (9.1.15) m=−l また,以上の議論から,ℓˆ3 の固有値 m に縮退がないことが分かる. (8) l = 0, 1, 2 の場合に具体的に fl,m (r) (m = −l, −l + 1, · · · , l − 1, l) を求めよ.ただし規 格化は問わない. (9) パリティ変換 r → −r のもとで,l 次調和多項式は (−1)l のパリティをもつことを示せ: f (r):l 次調和多項式 =⇒ f (−r) = (−1)l f (r). 2 (9.1.16) 球面調和関数 (1) 2 r = (x1 , x2 , x3 ) を極座標 (r, θ, φ) を用いて表せば, x1 = r sin θ cos φ, x2 = r sin θ sin φ, x3 = r cos θ ( ) 0 ≤ r < ∞, 0 ≤ θ ≤ π, 0 ≤ φ ≤ 2π (9.2.1) となる.このとき,l 次調和多項式 f (r) は f (r) = rl y(θ, φ) (9.2.2) の形に書き直されるが,このようにして得られる y(θ, φ) のことを l 次 球面調和関数 (spherical 1 harmonics) という. (1) Laplacian が ∂2 2 ∂ ℓˆ2 ∆= 2 + − 2, ∂r r ∂r r 3 [ 1 ∂ ( ∑ ∂) 1 ∂2 ] ℓˆ2 ≡ ℓˆa2 = − sin θ + sin θ ∂θ ∂θ sin2 θ ∂φ2 a=1 (9.2.3) (9.2.4) と書けることを用いて,y(θ, φ) が次の微分方程式を満たすことを示せ 2 : ℓˆ2 y(θ, φ) = l(l + 1) y(θ, φ). (9.2.5) (2) 方程式 (9.2.5) を変数分離して解き,l 次球面調和関数が作る線形空間の基底として (m = −l, −l + 1, · · · , l − 1, l) Pl m (cos θ) eimφ (9.2.6) が取れることを示し,これが同時に,ℓˆ3 に関する固有値 m の固有関数になっていることを 示せ: ) ( ) ( imφ imφ m m ˆ . = m Pl (cos θ) e ℓ3 Pl (cos θ) e 1 (9.2.7) これまでの議論から明らかなように,l 次球面調和関数は一般に,完全対称でトレースレスな fa1 a2 ···al を 用いて次のように表される: y(θ, φ) = ∑ fa1 a2 ···al a1 , a2 ,··· , al xa1 xa2 xa ··· l . r r r ℓ = (ℓˆ1 , ℓˆ2 , ℓˆ3 ) は極座標では次のように書かれる: [ ∂ ∂ ] ℓˆ± ≡ ℓˆ1 ± i ℓˆ2 = e±iφ ± + i cot θ , ∂θ ∂φ 2ˆ 3 ∂ ℓˆ3 = −i . ∂φ ここで,Pl m (x) は |m| ≤ l を満たす整数 m に対して定まる Legendre 陪関数で,互いに等価 な次の 2 つの式で定義される (レポート 8 参照): l+m ( ) (−1)l 2 m/2 d 2 l (1 − x ) (1 − x ) |m| ≤ l , 2l l! dxl+m l−m (−1)l+m (l + m)! 2 −m/2 d Pl m (x) = (1 − x ) (1 − x2 )l 2l l! (l − m)! dxl−m Pl m (x) = (9.2.8) ( ) |m| ≤ l . (9.2.9) なお,2 式の等価性から,公式 Pl −m (x) = (−1)m (l − m)! m P (x) (l + m)! l ( |m| ≤ l ) (9.2.10) が導かれる. 3 二次元空間でのポテンシャル問題 二次元空間 (x, y) でのハミルトニアン H=− 2 2m (∂x2 + ∂y2 ) + V (x, y) (9.3.1) (x < 0, 領域 I) (9.3.2) を考える。 y 軸に平行なポテンシャル V (x, y) = U (x) = 0 = V0 > 0 (x > 0, 領域 II) (9.3.3) に領域 I から運動量 (px , py ) (px > 0, py ̸= 0) の平面波 eikx x+iky y が定常的に入射する場合、 領域 I での反射波、領域 II での波動関数を求めよ。 ただし、E = (p2x + p2y )/2m = 4 2 (kx2 + ky2 )/2m < V0 とする。 球面調和関数 (2) (1) l 次球面調和関数が作る (2l + 1) 次元線形空間の基底として,(9.2.6) に定数をかけた √ ( ) 2l + 1 (l − m)! |m| ≤ l (9.4.1) Pl m (cos θ) eimφ Yl,m (θ, φ) ≡ (−1)m 4π (l + m)! 4 3 を取るとき, これが正規直交基底になっていることを示せ: ∫ π ∫ 2π ⟨ ⟩ ∗ Yl, m , Yl′ , m′ ≡ dθ dφ sin θ Yl,m (θ, φ) Yl′ ,m′ (θ, φ) = δl, l′ δm,m′ . 0 (9.4.2) 0 以下表記を簡単にするため,単位球面上の点を Ω ≡ (θ, φ) と書き,2 次元球面上の微小面 積を d2 Ω ≡ sin θ dθ dφ (9.4.3) と書く.これに伴い,上記の固有方程式 (9.2.5)–(9.2.7) と直交関係 (9.4.2) を ℓˆ2 Yl,m (Ω) = l(l + 1) Yl,m (Ω), ℓˆ3 Yl,m (Ω) = m Yl,m (Ω), ∫ ⟨ ⟩ Yl, m , Yl′ , m′ = d2 Ω Yl,∗m (Ω) Yl′ , m′ (Ω) = δl, l′ δm,m′ (9.4.4) (9.4.5) と書くことにする. (2) 次を示せ: ∗ Yl,m (Ω) = (−1)m Yl, −m (Ω). (9.4.6) (3) パリティ変換 r → −r は (r, θ, φ) → (r, π − θ, φ + π) で表される.この変換 Ω = (θ, φ) → ΩP ≡ (π − θ, φ + π) のもとで,球面調和関数が Yl,m (ΩP ) = (−1)l Yl,m (Ω) (9.4.7) と変換することを示せ. (4) l = 0, 1, 2 の場合について Yl,m (Ω) を具体的に書き下して問題 1(8) の結果と比べ, Yl, m (Ω) ∝ fl, m (r) rl を確かめよ. 3 表式 (9.2.8) あるいは (9.2.9) に応じて,Yl,m (θ, φ) は (−1)l (∓1)m Yl, m (θ, φ) = 2l l! √ [ ] )l±m ( )±m ( )2l imφ 2l + 1 (l ∓ m)! ( d e sin θ sin θ 4π (l ± m)! d(cos θ) と書かれる. 5 (9.4.8) (5) Legendre 陪関数の具体形を用いて, √ (−1)l (2l + 1)! Yl, l (Ω) = l sinl θ e ilφ 2 l!√ 4π 1 (2l + 1)! Yl, −l (Ω) = l sinl θ e−ilφ 2 l! 4π √ 2l + 1 Yl, 0 (Ω) = Pl (cos θ) 4π (9.4.9) (9.4.10) (9.4.11) を示せ.また,Yl, l (Ω),Yl, −l (Ω) について,問題 1(6)(7) の結果と比べよ. 5 球面調和関数 (3) (1) 微分演算子 ℓˆa (a = 1, 2, 3) が次の代数関係を満たすことを示せ: [ ] ℓˆ1 , ℓˆ2 = i ℓˆ3 , [ ] ℓˆ2 , ℓˆ3 = i ℓˆ1 , [ ] ℓˆ3 , ℓˆ1 = i ℓˆ2 . (9.5.1) また,ℓˆ± ≡ ℓˆ1 ± i ℓˆ2 として,次の代数関係が成立することを示せ: ] ] [ [ ℓˆ3 , ℓˆ± = ± ℓˆ± , ℓˆ+ , ℓˆ− = 2ℓˆ3 , ) ) ( ( ) ( ℓˆ2 ≡ ℓˆ12 + ℓˆ22 + ℓˆ32 = ℓˆ− ℓˆ+ + ℓˆ3 ℓˆ3 + 1 = ℓˆ+ ℓˆ− + ℓˆ3 ℓˆ3 − 1 [ 2 ] ℓˆ , ℓˆa = 0 (a = 1, 2, 3). (9.5.2) (9.5.3) (9.5.4) (2) 先に示した等式 ℓˆ3 Yl,m (Ω) = m Yl,m (Ω) (9.5.5) ( ) ( ) )( ℓˆ3 ℓˆ± Yl,m (Ω) = m ± 1 ℓˆ± Yl,m (Ω) . (9.5.6) と上の代数関係から,次を示せ: 一方,問題 1(7) で示したように,量子数 (l, m) に対応する固有空間に縮退がないから,式 (9.5.6) は ℓˆ± Yl,m (Ω) = c± l,m Yl,m±1 (Ω) ( c± l,m :定数 ) (9.5.7) を意味する.この定数 c± l,m が c± l,m = √ l(l + 1) − m(m ± 1) 6 (9.5.8) を満たさなくてはならないことを,代数関係 (9.5.2)–(9.5.4) だけ用いて示せ. ( ∂ ∂ ) ±iφ ˆ (3) ℓ± = e ± + i cot θ について,以下の等式を示せ: ∂θ ∂φ ) )±m+1 ( ( ℓˆ± eimφ f (θ) = ∓ ei(m±1)φ sin θ ] d [( sin θ)∓m f (θ) . d(cos θ) (9.5.9) [( ] dk ∓m sin θ) f (θ) . d(cos θ)k (9.5.10) この等式を逐次用いることで,次の等式を示せ: ( )k ( imφ ) ( )±m+k ℓˆ± e f (θ) = (∓1)k ei(m±k)φ sin θ (∓1)l (4) Yl, ±l (Ω) = l 2 l! √ (2l + 1)! sinl θ e±ilφ が方程式 4π ℓˆ± Yl, ±l (Ω) = 0 (複号同順) (9.5.11) を満たすことを確かめよ. (5) Yl,m (Ω) に次の 2 通りの表し方があることを示せ: √ (l + m)! ( ˆ )l−m ℓ− Yl, l (Ω), Yl,m (Ω) = (2l)! (l − m)! √ (l − m)! ( ˆ )l+m Yl,m (Ω) = ℓ+ Yl, −l (Ω). (2l)! (l + m)! (9.5.12) (9.5.13) また,このことを用いて,式 (9.5.7) の c± l,m の位相が 0 であること,つまり √ ℓˆ± Yl, m (Ω) = l(l + 1) − m(m ± 1) Yl, m±1 (Ω) ( ) √ = (l ∓ m)(l ± m + 1) Yl, m±1 (Ω) (9.5.14) となることを示せ. 6 平面波の極座標表示 [このレポート問題は採点の対象外であり,スキップしても構わない] (1) y が |y| ≤ 1 を満たすとき,eixy を y の関数とみれば e ixy = ∞ ∑ cl (x) Pl (y) ( |y| ≤ 1 ) (9.6.1) l=0 と Legendre 展開できる.これに対して Pl (y) の直交関係を使うことで,公式 eixy = ∞ ∑ (2l + 1) il jl (x) Pl (y) l=0 7 ( |y| ≤ 1 ) (9.6.2) を示せ. ˆ ≡ k/|k| と rˆ ≡ r/|r| をそれぞれ (2) 2 つのベクトル k と r の単位ベクトル k Ωkˆ = (θkˆ , φkˆ ), Ωrˆ = (θrˆ , φrˆ ) (9.6.3) と表すとき,問題 5 と組み合わせることで,次の公式を証明せよ: eik·r = 4π ∞ ∑ l ∑ ∗ il jl (kr) Yl,m (Ωkˆ ) Yl,m (Ωrˆ ). (9.6.4) l=0 m=−l (3) 公式 ∞ ∑ l ∑ l=0 m=−l ∞ 2 ∫ ∗ (Ω′ ) = Yl,m (Ω) Yl,m dk k jl (kr) jl (kr′ ) = 0 ( ) 1 δ(θ − θ′ ) δ(φ − φ′ ) ≡ δ 2 (Ω, Ω′ ) , sin θ π δ(r − r′ ) 2 2r を証明せよ. 8 (9.6.5) (9.6.6)
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