日本の地震災害 第6章 山地激震! -山崩れの脅威- 30516009 神吉 拓朗 ~ はじめに ~ 山地が国土の約70%を占める日本列島で大 地震発生するたびに、地すべりや土砂崩壊、 場合により大規模な山体崩壊が発生してきた。 20世紀以前にも山地での大崩壊が、長期に わたり後遺症を残してきた事例がある。この章 では、近年の大地震による山地での土砂災害、 山体崩壊の脅威を振り返る。 1 伊豆半島の二つの地震 伊豆半島沖地震 1974(昭和49)年5月9日の午前8時33分、伊豆半島の南 端を震源とする地震が発生、地震の規模はM6.9、南伊豆 町で震度5を記録した。地震による被害は、ほとんどが山崩 れ、崖崩れによる土砂災害で、家屋の全壊134戸、焼失5 戸、死者30人となっている。 伊豆半島沖地震の 震度分布図 伊豆大島近海地震 1978(昭和53)年1月14日午後0時24分、伊豆大 島近海地震(M7.0)が発生した。被害が集中した のは、伊豆半島の東部から中部でこの地震による死 者は25人、全壊家屋96戸、崖崩れ191ヵ所を数え た。 伊豆大島近海地震の震度分布図 伊豆大島近海地震の家屋被害分布 被害を拡大した人災的側面 伊豆大島近海地震では、開発による被害の拡 大が指摘された。そもそも伊豆半島は地形が 急であるうえ、地表近くは、風化の進んだ古い 火山の噴出物で占められているところが多い。 このような地盤のうえに、近年の開発によって 新しい道路や鉄道が切り開かれてきたが、そ のような所に被害が集中したので、伊豆大島 近海地震による被害は、人災的色彩の濃いも のだったといえる。 2 長野県西部地震 山が大崩壊を起こした 1984(昭和59)年9月14日の朝8時48分、御嶽山の南にあ たる長野県王滝村の直下でM6.8の地震が発生した。(長 野西部地震)震源は深さ約2㎞と浅い地震であった。被害は 斜面崩壊によるもので、なかでも大きかったのが、御嶽山の 大崩壊であった。最大幅750m、最大の長さ1500m、深さ 150mにわたって崩れ落ち、崩壊した山の部分は、大規模な 岩屑なだれとなって伝上川の谷に流下した。 御嶽大崩壊の跡 谷がすべて破壊された 岩屑なだれは、伝上川の谷を約10㎞、猛スピード で流下して、深さ150m、幅3,4百mの谷を、いっぱ いに埋めて流下した岩屑なだれは、谷の両側の森 林を破壊した。 火山では山体崩壊が起きやすい。それは、成層火 山の場合、太古からの噴出物が斜めに積もっていて、 もし噴出物層のなかに、粘土化した軽石層など滑り やすいものがあれば、地震の衝撃などでたやすく滑 り落ちてしまう。 よって長野県西部地震による災害は、“地震に誘発 された火山災害”だったと位置づけられる。 3 新潟県中越地震 活褶曲地帯で地震発生 2004年10月23日の午後5時56分、新潟県中越地方に激震が襲った。 地震の規模は M6.8、典型的な内陸直下地震だった。 魚沼丘陵は“活褶曲地帯”として知られている。日本列島には、つねに東 西方向に圧縮する力が働いており、その力がもっとも集中する場がこの 地域にあたっている。活褶曲地帯ではたえず圧縮力がかかりつづけてい るため、地下の岩盤に歪みが蓄積され、その歪みは下のように開放され ている。 ①地震を起こさずゆっくりと滑っている部分 ②しばしば小規模な地震を発生させつつ動いている部分 ③普段は動かずストレスを貯めつづけ、とつぜん急激に動いている部分 今回の新潟中越地震は③ 新幹線が脱線した 新幹線の地震対策は最初にくる地震波(P波) を検知して、そのあと大きな揺れをもたらすS 波がくる前に、送電を止めるという仕組みが 適用されている。しかし新潟中越地震のよう に、内陸直下の浅い所を震源として発生する 地震の場合は、P波とS波の到達時間にほと んど差がないことから、S波のくる前に送電を 止め、列車のブレーキをかけることは不可能 に近い。 多発した地すべり、斜面崩壊 崩壊した大量の土砂が、村を流れる芋川を 5ヶ所でせき止め、天然ダムが形成された。 5ヶ所のうち2ヶ所の天然ダムが大きく、地震 のあと日々に水位が上昇して、川沿いに建っ ていた家屋が次々と水没していった。もし川を せき止めた土砂が決壊すれば、大規模な土 石流が下流の集落を襲い、大災害になってい ただろう。 芋川に生じた天然ダム 深刻な後遺症 農業被害・・・斜面に開発された田がほとんど 崩れてしまった。 土石流・・・台風や集中豪雨の追い打ちにあえ ば、崩壊箇所から土石流等が発生する。 よって 二次被害の発生に備えた永続的な監視と砂 防事業が欠かせない。 新潟県中越地震:崖崩れ で寸断された道路 問われる山村の孤立化対策 激震によって大規模な山地災害が発生すれ ば、交通路や通信網が途絶し、救助救援活動 にも支障をきたして、地域社会がたちまち陸 の孤島と化してしまう。 過疎化が進んできた山村では、若者が去り、 高齢者のような社会的弱者だけが取り残され ていて、緊急時に速やかな行動のできない 人々の集まりになっている。 山村を“忘れ去られた地域社会”にしてし まってはならない。 参考URL http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_k kn/kkn0510/sin_k261.html http://www.hp1039.jishin.go.jp/eqchr/6-26.htm
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