糖尿病② 4.食事療法 5.運動療法 6.薬物療法 1 4.食事療法 2 食事療法指導のポイント 1.腹八分目にする 2.食品の種類はできるだけ多くする 3.脂肪は控え目に 4.食物繊維を多く含む食品(野菜・海藻・きのこ など)をとる 5.朝食・昼食・夕食を規則正しく 6.ゆっくりよく噛んで食べる 3 適正エネルギー摂取量 性別・年齢・肥満度・身体活動量・血糖値・合併 症の有無などを考慮し決定する。 通常、男性は1400~2000kcal、女性では1200 ~1800kcalの範囲にある。 以下の式から算出する エネルギー摂取量=標準体重×身体活動量 軽労働(デスクワークが多い職業等) 普通の労作(立ち仕事が多い職業等) 重労働(力仕事が多い職業等) 25~30 kcal/kg標準体重 30~35 kcal/kg標準体重 35~ kcal/kg標準体重 4 バランスのとれた食事 残ったエネルギー 25%以下にする ことが望ましい 全体の50~60% 食物繊維が豊富 な食材を選択 脂質 炭水化物 タンパク質 標準体重1kgあたり 10~1.2g (一日約50~60g) 5 食品交換表について • 様々な食品を栄養 素ごとに分類して表 にしてあり、1単位 =80kcal という単位 に相当する食品の 分量などをグラム数 や目安にして掲載し ている 6 5.運動療法 7 運動療法で期待される効果 • 急性効果として、ブドウ糖、脂肪酸の利用促進 による血糖値の低下 • 慢性効果として、インスリン抵抗性の改善 • 減量効果 • 加齢や運動不足による筋委縮・骨粗鬆症の予防 • 高血圧・脂質異常症改善 • 心肺機能をよくする • 運動能力の向上 • 爽快感・活動気分など日常生活のQOLを高める 8 運動の種類・強度・負荷・頻度 有酸素運動 歩行 ジョギング 水泳 など 運動強度 中等度の運動 心拍数が一分間に100~120拍 (五十歳以上は一分間に100拍以内) 「楽である」「ややきつい」程度のもの レジスタンス運動 水 中 歩 行 腹筋 ダンベル 腕立て伏せ スクワット など 膝に負担が少 なく、安全で糖 尿病患者に適 した運動 運動負荷・頻度 歩行運動では一回15~30分、一日2回 一日約1万歩が目安 消費エネルギーとしては160~240kcal 毎日行うことが基本 (少なくとも週3回以上) 9 注意事項 • 網膜症による眼底出血、腎不全、心肺機能に 障害がある等の場合は、運動療法を制限・禁 止した方がよい。 • 運動療法の実施は食後一時間ごろがよい • 特に、インスリン治療中の患者では運動誘発 性の低血糖が起こりやすいので、注意が必 要である。 • 運動は継続することが大切である 10 6.薬物療法 11 経口薬療法 肝臓 筋肉 ビグアナイド剤 グリコーゲン ↑ ↓ ブドウ糖 ブドウ糖 膵臓 インスリン 小腸 ブドウ糖 スルホニル尿素薬 速効型インスリン 分泌促進剤 αグルコシダーゼ阻害薬 チアゾリジン薬 ブドウ糖 脂肪細胞 12 スルホニル尿素(SU)薬 • 作用機序 膵β細胞膜状のSU受容体に結合し、インスリン分泌を促進する。 服用後短時間で血糖降下作用をしめす。 13 スルホニル尿素(SU)薬 • 適応 インスリン非依存性患者 (ただし、インスリン抵抗性の強い患者は除く) • 注意 SU薬による低血糖は慢性化しやすい 服用により体重増加をきたしやすい 14 速効型インスリン分泌促進薬 • 作用機序 膵β細胞膜状のSU受容体に結合し、インスリン分泌を促進する。 SU薬に比べ吸収と消失が早い • 適応 インスリン非依存性患者、食後高血糖患者 • 注意 食直前に投与する。30分前では低血糖の可能性が高くなる SU薬と併用禁忌 ナテグリニド (スターシス、ファスティック) ミチグリニド (グルファスト) レパグリニド (シュアポスト) 15 α-グルコシターゼ阻害薬 • 作用機序 αグルコシド結合を加水分解する酵素である、αグルコシダーゼの 作用を阻害 16 α-グルコシターゼ阻害薬 • 適応 単独投与では、空腹時血糖はさほど高くなく、食後高血糖になるようなインスリン非依 存患者に適応 併用投与では食後に著しい高血糖がある場合に適応 • 注意 食直前に投与する。食後投与では効果が大きく減弱する。 副作用として、腹部膨満感、放屁の増加、下痢などがある。 アカルボースでは重篤な肝障害が報告されている。 低血糖時はブドウ糖を速やかに服用する。 ボグリボース (ベイスン) アカルボース (グルコバイ) ミグリトール (セイブル) 17 ビグアナイド薬 • 作用機序 肝臓での糖新生抑制が主。 消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン感受性の改善など の膵外作用も示す。 単独投与では低血糖が起こりにくい。 18 ACC 19 ビグアナイド薬 • 適応 過体重、肥満2型糖尿病患者で第一選択。 (血糖コントロール改善に際して、体重が増加しにくいため) • 注意 重篤な副作用として、乳酸アシドーシスがある ヨード造影剤使用の際は、使用前後二日は投薬を中止する メトホルミン塩酸塩 (グリコラン、メデット、メトグルコ) ブホルミン塩酸塩 (ジベトス) 20 チアゾリジン薬 • 作用機序 インスリン抵抗性を改善する • 適応 インスリン抵抗性のある患者 細胞死 遊離脂肪酸 TNFα レジスチン 21 チアゾリジン薬 • 適応 インスリン抵抗性のある患者 • 注意 一日一回朝食前または後に30㎎を投与。45㎎が上限。 インスリン併用時は30㎎が上限 副作用として、浮腫、貧血、血清LDH、血清CPKの上昇がみられる 心不全患者や心不全既往者は使用禁忌 体重が増加しやすいので、食事療法を確実に実行する ピオグリタゾン塩酸塩 (アクトス) 22 DPP-4阻害薬 • 作用機序 DPP-4を選択的阻害により、活性型GLP-1、活性型GIP濃度を高め、血糖低下作用をしめ す。 (GLP-1,GIPは、血糖依存的にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制する) DPP4 阻害 23 DPP-4阻害薬 • 注意 食事摂取の影響を受けないため、食前・食後のどちらでも投与可能である ビルダグリプチンは重度の肝障害患者では禁忌 SU薬との併用で、重篤な低血糖による意識障害が報告されている (オングリザ) (グラクティブ、ジャヌビア) (エクア) (ネシーナ) (トラゼンタ) 24 SGLT2阻害薬 • 作用機序 近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制することで、尿糖排泄を促進し、血糖 降下作用を示す 25 • SGLT2阻害薬 注意 腎機能低下患者では、糸球体ろ過率が低下しているため、効果が減弱する。 尿路感染症、性器感染症の発現に注意する(特に女性) 浸透圧利尿作用が働き、頻尿・多尿がみられることがある 体液量低下により、軽度の脱水症状を起こすおそれがある 26 注射薬療法 インスリン注射 • 超速効型 • 速効型 • 混合型 • 中間型 • 持効型溶解 その他 • GLP-1受容体作 動薬 27 インスリン療法 インスリン療法の基本は、 健常者の血中インスリンの変動パターンをインスリン注射によって模倣すること • 絶対適応 ①インスリン依存状態 ②高血糖昏睡 ③重症の肝障害、腎障害 ④重症感染症、外傷、全身麻酔を用いるような外科手術時 ⑤糖尿病合併妊娠 ⑥静脈栄養時の血糖コントロール • 相対適応 ①インスリン非依存状態でも、顕著な高血糖を認めるとき(空腹時血糖値 /dl以上 随時血糖値350㎎/dl以上) ②経口薬治療でコントロール不良な場合 ③やせ型で栄養状態が低下しているとき ④ステロイド治療時における高血糖 ⑤糖毒性を積極的に解除するとき 250㎎ 28 インスリンの構造 29 インスリン注射 Fujimoto medical system ホームページより引用 30 インスリン療法 • 強化インスリン療法 インスリンの頻回注射に血糖測定を併用し、医師の指示 に従い、患者自身が注射量を調節しながら、良好な血糖コン トロールを目指す治療方法。 基礎分泌を中間型または持効型溶解インスリンで、追加 分泌を速効型または超速効型インスリンで補う。 • その他の療法 基礎インスリン分泌が保たれているような患者では、速効 型インスリンの食前三回注射のみなど、強化インスリン療法 に準じた方法がある。 インスリンと経口薬を併用することがある。 31 インスリン以外の注射薬 • GLP-1受容体作動薬 -作用機序膵β細胞膜上のGLP-1受容体に結合し、血糖依存的にインスリン分 泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制する。 ‐特徴‐ 胃内容物排出抑制作用があり、空腹時・食後両方の血糖値を低 下させる 単独使用では低血糖が起こりにくい -注意インスリン依存患者には禁忌 副作用として、下痢・便秘・嘔吐が投与初期に認められる 急性膵炎の報告があるため、膵炎の既往者には慎重投与 エキセナチドは重度腎機能障害患者(人工透析患者等)には禁忌 SU薬との併用で低血糖発現率が高くなる 32
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