薬理PBL 慢性気管支喘息 五余り 岩橋、岡田(真)、川田、澤田、高野、中園、野村 板東、細川(友)、南、村山、山下(詩)、吉田(絢) 目次 • 喘息(総論) • 軽症間欠型 • 重症持続型 1 喘息とは 喘息とは、「慢性の気道炎症」「気道過敏症の亢進」「可逆性の気道閉塞」を 特徴とする疾患であり、閉塞性換気障害をきたす。 2 喘息のメカニズム (ⅰ)危険因子 (ⅱ)炎症 (ⅳ)気道過敏症の亢進 (ⅴ)気流制限(気道閉塞) (ⅵ)症状 (ⅲ)リモデリング (ⅰ)危険因子 個体因子 環境因子 ・アトピー素因 ・アレルゲン ・遺伝子素因 ・大気汚染 ・性差 ・薬剤 ・喫煙 (ⅱ)炎症 炎症細胞がメディエーターやサイトカインを産生・放出し、炎症が起こる 急性病態 ①平滑筋の収縮 ②粘膜、粘膜下の浮腫 ③気道粘液の分泌亢進 ④気道上皮細胞の破壊・剥離 (ⅱ)炎症 慢性病態 ⑤粘膜下腺の過形成 ⑥上皮下繊維産生 ⑦平滑筋肥大 ⑧血管増生 (ⅲ)リモデリング 慢性炎症によって傷害された気道は、不完全・不可逆な修復を行う。これを、 リモデリングという。 粘膜下腺過形成 上皮下繊維産生 平滑筋肥大 気道リモデリング (ⅳ)気道過敏性の亢進 気道炎症による。気道上皮細胞の破壊・剥離と気道リモデリングは、気道過 敏性を亢進させる。過敏性亢進によって、外因・内因性の刺激に対し、気道 が収縮しやすくなる。 炎症 リモデリング 不可逆的 可逆的 気道過敏性の亢進 (ⅴ)気流制限(気道閉塞) 炎症、リモデリングおよび気道過敏性の亢進によって、気道は閉塞 する。これを、気流制限という。この結果、様々な症状が生じる。 (ⅵ)症状 ・呼気時の呼吸困難(閉塞性障害) ・咳の反復 ・喘鳴 3 喘息の病因による分類 アトピー型 非アトピー型 発症年齢 主に小児期 主に40歳以上 発生因子 吸入抗原に対する Ⅰ型アレルギー 気道感染の後に 発症 遺伝的素因 あり なし 症状の程度 多くは軽症 多くは重症 4 喘息の治療法 ①危険因子の除去(生活指導・禁煙など) ②減感作療法 ③薬物療法 (ⅰ)長期管理 (ⅱ)発作治療 ③薬物療法 (ⅰ)長期管理 発作頻度、ピークフロー値によって「軽症間欠型」「軽症持続型」「中等症持続型」「重症 持続型」の四つの重症度にわけられ、それによって治療薬が選択される。 (ⅱ)発作治療 発作時には、「小発作」「中発作」「大発作」「重篤発作」の四つの重症度があり、それに 応じた対処が行われる。 5、治療薬の概要 • レリーバー:発作治療薬、対症救急薬。 発作時の気管拡張。 • コントローラー:長期管理薬、予防薬。 主に抗炎症作用 この2つをうまく組み合わせることにより、 治療を行う。 • リリーバー • ステロイド薬(吸入、経口) • 短時間作用性β2刺激薬 • 短時間作用性テオフィリン製剤(経口) • 抗コリン薬 • コントローラー • ステロイド薬(吸入、経口) • 長時間作用性 β2刺激薬 • テオフィリン徐放製剤 • 抗アレルギー薬 軽症間欠型 軽症間欠型とは 慢性気管支喘息は、発作の頻度とピークフロー値に応じて 4段階の重症度に分類される。 Step.1 軽症間欠型 喘鳴・咳・呼吸困難が間欠的で短く、週1~2回起こる。夜間症 状は月に1~2回。ピークフロー値は予測値または自己最良 値の80%未満、日内変動率は20%未満。 Step.2 軽症持続型 Step.3 中等症持続型 Step.4 重症持続型 慢性気管支喘息治療薬 軽症間欠型の気管支喘息の治療薬として、以下の薬剤のう ち1種類を用いる。 1. 2. 3. 4. キュバール(50μg) 1本 アイロミール(100μg) 2吸入 シングレア錠(10mg) 1錠 ユニフィル錠(200mg) 1~2錠 プロピオン酸ベクロメタゾン 商品名:キュバール 合成副腎皮質ステロイドの口腔内噴霧吸入剤 抗炎症作用を持ち、気道の炎症を抑制して喘息発作の頻 度・程度を軽減する すでに起こってしまった喘息発作を鎮めることはできない (コントローラー) プロピオン酸ベクロメタゾン 作用機序 気管支粘膜に局所的に作用 抗炎症作用:アラキドン酸代謝抑制、サイトカイン産生 抑制、炎症細胞の遊走・活性化抑制 血管透過性の抑制、粘液分泌抑制など多彩な作用 副作用 口内炎、喉の痛み、声の嗄れ 口腔カンジダ症 ステロイド内服により見られる重篤な副作用はまれ 長期大量使用時の注意 プロピオン酸ベクロメタゾン 禁忌 有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌症の 患者 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者 硫酸サルブタモール 商品名:アイロミール 硫酸サルブタモール吸入剤 気管支のβ2受容体を刺激し、気管支を拡張 喘息発作が起こった時に限り使用する (レリーバー) 硫酸サルブタモール 作用機序 選択的β2刺激薬、短時間作用型 アデニル酸シクラーゼ活性化→細胞内cAMP濃度上昇 →気管支拡張 副作用 重篤な血清カリウム値の低下 過剰投与による不整脈、心停止 動悸や頻脈 指や手の震え 頭痛、吐き気、眩暈 硫酸サルブタモール 禁忌 本剤に対し過敏症の既往歴のある患者 相互作用 カテコールアミン →交感神経刺激作用の増強 →不整脈、心停止がおこる場合がある キサンチン誘導体、ステロイド剤、利尿薬 →血清カリウム値の低下 モンテルカストナトリウム 商品名:シングレア錠 抗アレルギー薬。ロイコトリエンの作用抑制により、抗炎 症作用・気管支収縮抑制作用を示す 気道過敏症の進行を抑え、喘息発作を起こりにくくする すでに起こってしまった喘息発作を止めることはできない (コントローラー) モンテルカストナトリウム 作用機序 システイニルロイコトリエン(CysLT1)受容体に選択的 に結合、ロイコトリエンの作用を拮抗阻害する CysLT1:LTC4、LTD4、LTE4 – 主に肥満細胞、好酸球などの炎症細胞から産生 – 強力で持続的な気道平滑筋収縮作用を持つ – 気管支粘液の分泌亢進、血管透過性の亢進、好酸球の気道 への集積・活性化→気道の炎症 副作用 吐き気、腹痛、下痢 頭痛、眠気 肝機能異常 モンテルカストナトリウム 禁忌 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 相互作用 フェノバルビタール →CYP3A4の誘導 →モンテルカストナトリウムの代謝促進による作用減 弱 テオフィリン 商品名:ユニフィル錠 テオフィリン徐放剤 キサンチン系の気管支拡張薬 抗炎症作用、気管支平滑筋弛緩による気管支拡張作用 コントローラー、レリーバーのいずれとしても用いる 有効血中濃度域が狭い →血中濃度のモニタリング(TDM)を行う テオフィリン 作用機序 PDE阻害作用 PDEの阻害→細胞内cAMP濃度上昇→気管支 拡張 アデノシンレセプター遮断作用 アデノシンの受容体への結合により、気管支収縮および 肥満細胞からの化学伝達物質(ヒスタミンなど)の遊離 が起こる 抗炎症作用 炎症細胞におけるサイトカイン・化学伝達物質の遊離抑 制、好酸球のアポトーシス誘導 テオフィリン 副作用 重大な副作用 けいれん・意識障害、急性脳症、黄紋筋融解、消化管出 血、アナフィラキシーショックなど その他の副作用 発疹、頭痛・めまい、動悸・頻脈・不整脈など 過剰投与:テオフィリン中毒 消化器症状(特に嘔気・嘔吐) 精神神経症状(頭痛、不眠、不安、興奮、痙攣、意識 障害、昏睡など) 心・血管症状(頻脈、心房細動、血圧低下など) その他低カリウム血症、黄紋筋融解症など テオフィリン 禁忌 本剤または他のキサンチン系薬剤に対し、重篤な副 作用の既往歴のある患者 相互作用 カフェインなどのキサンチン系薬剤 →中枢神経刺激作用の増強 β刺激薬 →心刺激作用によるβ刺激薬の副作用増強 →頻脈、不整脈 重症持続型 重症持続型とは ・症状が毎日ある ・日常生活が制限される ・しばしば夜間の喘息症状あり ・治療下でもしばしば症状憎悪 慢性気管支喘息治療薬 重症持続型の気管支喘息の治療薬として、以下の薬剤の1、2 に加えてさらに2~3剤、併用する。 1. 2. 3. 4. 5. 6. フルタイドディスカス(100μg) 1個 メプチンエアー(10μg) 2吸入 テオドール錠(100mg) 4~6錠 メプチン錠(50mg) 2錠 オノンカプセル(112.5mg)4カプセル プレドニン錠(5mg)4~6錠 プロピオン酸フルチカゾン フルタイドディスカス • 慢性気管支喘息の第一段階の治療で用いられ る。 • 抗炎症薬として用いられ、すでに起こってしまっ た喘息発作を速やかに取り去る効果はない。 • 吸入で気管支粘膜に直接投与し、局所的な抗炎 症作用を発揮する。 作用機序 リン脂質 ホスホリパーゼA2 阻害 アラキドン酸 リポキシゲナーゼ シクロオキシゲナーゼ HETE PG 炎症反応の抑制 LT TX 糖質ステロイド リポコルチン 核内受容体 注意すべき副作用 • β2作用薬に対する反応性を増強する • これらの薬剤は主にCYP3A4で代謝される 併用注意:CYP3A4阻害作用を有する薬剤 ブレドニゾロン ブレドニン錠 • 前薬で述べたように、第一段階の治療に糖質 コルチコイドの吸入が用いられるが、それでも 十分にコントロールできない場合、経口投与 で用いられる。 • 全身的に投与した場合には重篤な副作用を 起こす危険があり、投与量や投与期間につい て十分な配慮が必要である。 禁忌 • • • • • • • 感染症 白内障 緑内障 高血圧 血栓症 精神病 消化性潰瘍 注意すべき副作用 • • • • • • • 誘発感染症・感染症の増悪 血栓症 クッシング症候群様症状 緑内障 白内障 副腎機能不全 糖尿病 併用注意の薬 ・バルビツール酸誘導体・フェニトイン・リファンピシン ・抗凝血剤 ・利尿剤(K保持性利尿剤以外) ・シクロスポリン ・エリスロマイシン ・経口糖尿病用剤・インスリン製剤 ・サリチル酸誘導体 ・活性型ビタミンD3製剤 プロカテロ-ル塩酸塩 • 《長時間作用性》 • メプチン錠 (一般名:塩酸プロカテロール) • 《短時間作用性》 • メプチンエアー (一般名:塩酸プロカテロール) プロカテロール塩酸塩はβ2刺激薬である。 気管支を弛緩させ広げ呼吸を楽にする。 作用機序 気管支のβ2受容体と結合 ↓ アデニル酸シクラーゼ活性化 ↓ 細胞内cAMP濃度↑ ↓ 気管支平滑筋弛緩 注意すべき副作用 ・過剰投与による不整脈、心停止 ・振戦、頻脈、動悸、低カリウム血症 ・カテコールアミン製剤との併用により動悸や不 整脈の副作用が出やすくなる ・テオフィリン、ステロイド薬、利尿薬などとの併 用により、血清カリウム値が低下するおそれ がある。 慎重投与 • 高血圧、心疾患、糖尿病 、甲状腺機能亢進 症などの疾患がある者 • 妊婦又は、妊娠している可能性のある人 選択的β2作用薬の種類 • 短時間作用性β2作用薬 (アイロミール、メプチンエアーなどの大部分の吸入薬) – – 発作治療薬(リリーバー)として使用 過度に使用しすぎないように注意する • 長時間作用性β2作用薬 (メプチン錠などの経口薬、貼付薬、一部の吸入薬) – 中程度以上の患者に、長期管理薬(コントローラー)とし て使用 – ステロイド薬と併用(この薬自体には、炎症を抑える作 用がないため、単剤で用いるのは不適切) テオフィリン • • • テオドール錠 中枢神経刺激作用、気管支拡張作用、強心作用、 利尿作用などをもつ。気管支拡張作用はβ2作用薬 よりも弱い。 気管支拡張作用が強く、喘息治療によく用いられる。 規則的な糖質コルチコイドの吸入とβ2作用薬の 併用によってもコントロールできない場合に 「第3の選択」として非常に有効である。 作用機序 • 気管支拡張作用 ①adenosine拮抗作用 ②PDE阻害作用 adenosine • 抗炎症作用 theophylline A1受容体 AC ATP 5’AMP cAMP theophylline PDE 禁忌 • キサンチン系の過敏歴のある者には使用で きない 注意すべき副作用 • ほかのキサンチン系薬剤との併用により、中 枢神経が過度に興奮する。 • β刺激薬との併用でその副作用(低カリウム 血症や頻脈、不整脈)を増強する。 テオフィリンの副作用 • テオフィリンの副作用は血中濃度の上昇に起因 することが多いので、 血中濃度のモニタリングが必要 過剰投与による副作用:痙攣、意識障害など プランルカスト水和物カプセル オノンカプセル • 予防薬であり、すでに起こっている喘息発作 を緩和する薬ではない。 • ロイコトリエン受容体に結合してその作用に 拮抗し、気道収縮反応、血管透過性亢進、気 道過敏性の亢進を抑制する。 頻度の高い副作用 • • • • • 過敏症(発疹、掻痒等) 腹痛 下痢 嘔吐 肝機能異常 注意すべき副作用 • • • • • • アナフィラィシー様ショック 白血球減少 血小板減少 肝機能障害 間質性肺炎、好酸球性肺炎 横紋筋融解症 最後に • 喘息治療の目的 → 健常人と同等の生活の質(QOL)を得る ・正常に近い肺機能 ・夜間や早朝の咳、呼吸困難がなく、 睡眠が十分できる →喘息発作がなく、増悪しない →喘息で死亡しない • 治療薬による副作用を出さないことが求められる おしまい スライド作成: 21川田、37澤田、45高野、61野村
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