ナバックレター 養豚版Vol.82

ナバックレター 養豚版 Vol.82
「酵素」コンセプトの進化による飼料経済の改善(1)
Erik Vanderbeke, Aveve Biochem, Belgium
コストの上昇や原料供給量の変動に伴い、飼料メーカーは家畜の生産成績に負の影響を及ぼさない範囲で原料を柔
軟に選択するようになり、これまであまり使用されてこなかった穀類や副産物の利用も視野に入れるようになりま
した。
地域によってはなじみのない原料を使用することに加えて、原料の配合割合を最大限に高めることで経済的な飼料
設計が可能になり、これは飼料メーカーにとって今日、重大な探求課題となっています。
飼料コストに直接的な影響を与える因子には、利用可能な原料の組合せ、仕入値、栄養価および対象動物の栄養必
要量があります。間接的な影響因子には多くのものがありますが、それぞれの飼料原料の配合量の最大限度、飼料
全体における各栄養素の最少必要量と最大許容量、配合設計の頻度、利用可能な製造技術、消化性を高める添加物、
といったものが挙げられます。
柔軟な飼料設計
今日、一般的な家畜の栄養素の消化を高める酵素が、戦略的な飼料添加物として認められるようになりました。具
体的には、
「酵素を利用して飼料配合設計を大きく変える」といったように戦略を進化させることにより、飼料経済
にプラスの効果をもたらすことができます。1995 年以前、ベルギーの港が近接している地域では、原料の大半を
世界中―特にアジア原産を主流とする―から輸入された様々な副産物が占めていました。多岐にわたる副産物を利
用しつつ、家畜用飼料設計を頻繁に変更するには、これら副産物の品質に関する確実なデータと消化性に関する詳
細な情報が必要になります。
こうした状況故に、より柔軟に飼料を設計し、また同時に当然ながらコストを最適化する目的で酵素の利用戦略が
強化され、その可能性が探られてきました。
1995 年の原料の貿易に関する GATT / McCharry 合意以降、欧州では輸入副産物に対する地元の穀草類の価格
競争力が高まり、そのため地元の穀草類が多く配合飼料に使用されるようになりました。そしてこれが、酵素がよ
り多く利用される一つの要因となりました。
今、世界中で、伝統的な穀類やタンパク質源の原料価格が非常に変動しやすくなっています。私たち同様アジア諸
国でも、それぞれの生産地の原料に切り替えて配合量を増やしていく、という可能性を探ることができるようにな
りました。さらに、液体燃料製造などの新たな産業活動から得られる大量の原料も飼料製造業に流れ込むようにな
りました。
飼料の市場では多くの酵素添加剤が市販されています。今日の飼料用酵素剤の多くは、食物繊維を分解する酵素の
単剤または複合剤です。多数の試験データがあり、数多くの製品が飼料市場に出回っています。
ここで特に重要なのは、酵素の「利用戦略」です。これは、酵素の活性レベルや種類、飼料に添加する濃度などを意
味しています。適正な臨床試験で家畜生産成績に有意な効果をもたらすことが報告されている閾値を超えたレベル
で酵素の作用を発揮させる必要があります。
繊維分解酵素は、飼料の繊維を分解するだけでなく、タンパク質など、体内の最適部位で吸収される必要のある栄
養素が飼料から放出される場所やタイミングにも間接的に影響を及ぼします。
負の影響を緩和する
繊維の種類など一つ一つの原料の組成に応じて酵素の利用戦略を適正に計画することにより、飼料設計の際に生じ
得る負の影響を緩和し、さらには従来使用していた配合と比べて家畜の成績を向上することが可能になります。
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ナバックレター 養豚版 Vol.82
原料中の特定の食物繊維に対して必要な酵素活性を決定するため非常に役立つ技術として、非澱粉性多糖類(NSP)
を分離し(表 1)、完全に加水分解した後にその糖組成を分析するという手法があります(Theander・Englist・
Hoebler・Harry 法)。飼料産業で利用される特有の副産物には、様々な種類の食物繊維が含まれています。一般的に、
グルカン/セルロースは、
(アラビノ)キシランおよびペクチンと共に主な繊維の構成成分となっています。繊維の可
溶性は原料によって大きく異なり、飼料への添加後に必要とされる酵素の処方において酵素活性の最小閾値レベルに
影響を及ぼします。可溶性繊維は不溶性繊維と比べてより低い酵素活性(閾値)で加水分解されます。
(次号に続く)
これは「International Pig Topics, Vol.27, Number8」を抄訳したものです。
表 1 NSP 繊維の分離および完全加水分解後の糖組成の分析
原料名
非澱粉性多糖類(NSP)
繊維の種類
可溶性
繊維
酵素の種類
特殊酵素
小麦
ブドウ糖、キシロース、
アラビノース
グルカン、セルロース、
アラビノキシラン
<25
グルカナーゼ、
キシラナーゼ
キシラナーゼ
トウモロコシ
ブドウ糖、キシロース、
アラビノース
グルカン、セルロース、
アラビノキシラン
<5
グルカナーゼ、
キシラナーゼ
キシラナーゼ
タピオカ副産物
ブドウ糖、ウロン酸、
ガラクトース、
キシロース、
アラビノース
セルロース、グルカン、
アラビノキシラン
<5
セルラーゼ、
グルカナーゼ、
キシラナーゼ、
ペクチナーゼ
セルラーゼ
パーム核油かす
マンノース、ブドウ糖、
ガラクトース、ウロン酸
マンナン、グルカン
<10
マンナーゼ、
グルカナーゼ、
セルラーゼ
マンナーゼ
コプラ油かす
マンノース、ブドウ糖、
ウロン酸、ガラクトース
マンナン、グルカン
<10
マンナーゼ、
グルカナーゼ、
セルラーゼ
マンナーゼ
米ぬか
ブドウ糖、キシロース、
アラビノース、ウロン酸
グルカン、
アラビノキシラン
<10
キシラナーゼ、
グルカナーゼ
キシラナーゼ
綿実油かす
ブドウ糖、キシロース、
アラビノース、ウロン酸
セルロース、グルカン、
アラビノキシラン
<20
セルラーゼ、
グルカナーゼ、
キシラナーゼ
セルラーゼ
DDGS
(トウモロコシ)
ブドウ糖、キシロース、
アラビノース、ウロン酸
セルロース、グルカン、
アラビノキシラン、
ペクチン
<30
セルラーゼ、
グルカナーゼ、
キシラナーゼ、
ペクチナーゼ
セルラーゼ
セルロース、
ブドウ糖、キシロース、
アラビノース、ウロン酸 アラビノキシラン、ペクチン
<20
セルラーゼ、
キシラナーゼ
セルラーゼ
大豆油かす
ブドウ糖、ガラクトース、
ウロン酸、アラビノース、
キシロース
グルカン、ペクチン、
キシラン
<20
グルカナーゼ、
ペクチナーゼ、
キシラナーゼ
ペクチナーゼ
菜種油かす
ブドウ糖、アラビノース、
ウロン酸、ガラクトース、
キシロース
グルカン、ペクチン、
キシラン
<15
グルカナーゼ、
ペクチナーゼ、
キシラナーゼ
ペクチナーゼ
エンドウ豆、
ルーピン
ブドウ糖、アラビノース、
グルカン、
キシロース、ウロン酸
アラビノキシラン、ペクチン
<20
グルカナーゼ、
ペクチナーゼ、
キシラナーゼ
ペクチナーゼ
ヒマワリ油かす
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