みらい研 実験計画書 信号反応 テーマ: ○ 要旨・目的 振ることによって化学反応を起こし、色が段階的に変わったり元の色に戻ったりの反応 を繰り返し行うことができる液体です。反応は酸化還元反応であるが、液体の色が「黄→ 赤→緑」に変化し、また「緑→赤→黄」に戻り、交通信号に使われる3つの色と同じ色に 変化する反応が最も有名なことから「信号反応」と呼ばれています。みらい研の来場者の 多くを占める 10 歳前後の人たちを楽しませ、それ以上の人たちには原理を説明する。 ○ 原理 【酸化還元反応-1】 反応物から生成物が生ずる過程において、原子やイオンあるいは化合物間で電子の授受 がある反応のことである。 一般の原始の場合… 酸素原子は電気陰性度が大きい 水素原子は電気陰性度が小さい よって… 酸素原子とくっつくと電子を失う 水素原子とくっつくと電子を得る (1)ブドウ糖 ブドウ糖は鎖状になったとき、へミアセタール(アルデヒド)基を持つ。 OH C H C OH CH2OH O C H H H C OH H C H C OH H C OH H C C C OH H OH OH OH H O よって、アルデヒドがカルボン酸に酸化されるため、ブドウ糖は還元剤として働く。 (2)色素 可視光の吸収あるいは放出により物体に色を与える物質。pH によって、変化が起こる。 以下に説明する色素は全て酸化剤として働く。 ⅰ)インジゴカルミン やや紫がかった青色に着色することのできる着色料。常温では暗紫青(暗紫褐色)の粒 または粉末状の固体で、無臭である。熱や光、塩基に弱く、還元されやすい。 色の変化は pH が 11.4 以下では緑色、pH が 13.0 以上の強塩基性条件下では黄色を呈す る。また、中間体は赤色に呈する。 ⅱ)メチレンブルー チアジン骨格をもった塩基性染料で、美しい青色の染料である。日光に弱く還元により 無色のロイコメチレンブルーとなるが、酸化により可逆的にメチレンブルーに戻る。 色の変化は中性ではほとんど変化は見られず、強塩基性条件下のみ反応を示し青となる。 また、pH では表すことはできないため水酸化ナトリウムのアルカリ性を基準に考察を行う こととする。 H2N NH2 ⅲ)サフラニン 赤色の合成染料で、アミノ基を持つために塩基性を示す。高等学校の実験では、植物の 道管の染色などに用いられる。 色の変化は pH が 10 以下では赤色、pH が 10 以上では黄色を呈する。 + H2N N NH2 H3C N CH3 ⅳ)マラカイトグリーン 青緑色の塩基性有機色素である。結晶は光沢があり、水やエタノールに溶け、酸性では 黄色を呈する。劇物である。 色の変化は、pH が 2.0 以下では黄色、pH が 2.0 ~11.6 は緑色、pH が 11.6 以上では無 色を呈する。 N H3C N + S CH3 N CH3 CH3 (3)タール色素 染料あるいは合成着色料の一種。食品、医薬品、口紅などの化粧品、衣服などの工業製 品などの着色料、食品添加物として使用される。 タール色素はもともとはコールタールから得られるベンゼンやナフタレン、フェノールや アニリンといった芳香族化合物を原料としてアゾ染料(酸性染料)が合成されたためこの 名がある。現在ではこれらの芳香族化合物は主に石油精製の際に得られるナフサを原料と した化成品から生産されており、アゾ染料もコールタールを原料とすることはほとんどな くなっている。 インディゴやアリザリンなど天然に存在する色素にも芳香族化合物から合成されるように なったものがある。また当時は広く利用されたことから合成染料の代名詞としてタール色 素といいかえられたことも多かった。しかし、今日ではアゾ染料以外にも性質や機能が異 なる多種多様な色素が開発されており(記事 色素に詳しい)タール色素もそれ以外の合成 色素も合成染料ないしは合成着色料と呼ばれるのが通常である。しかし、日本において「○ 色○号」と呼ばれる食品添加物に利用される法定色素は「食用タール色素」と命名されて いるのでそれら 12 種類の食用色素はタール色素と呼ばれることがある。開発された合成染 料のすべてが食用として認可されているわけではないので、古くから食用・化粧品・医薬 品に認可された経緯があるため食用色素の中ではタール色素に該当するものが相対的に多 くなっている。 【酸化還元反応-2】 二種類の色素を同時に入れることにより、それまでになかった色・変化量を合成する。 この際、pH 変化を利用する。 ※ 例 あらかじめイオン交換水の入ったフラスコ内にメチレンブルー(酸化剤)とサフラニン (酸化剤)を入れる。還元剤としてブドウ糖。溶液を塩基性にするために水酸化ナトリウム も加える。 メチ 白色 白色 青色 サフ 黄色 赤色 赤色 軽く振るとサフラニンが酸化し、激しく振るとメチレンブルーが酸化する。 そして、 「色の三原色」に従った二つの合わさった色がこの溶液の色となる。 よって… この溶液の変化は『黄色→赤色→青色(紫色)』となるはず…………… 以下に簡略表を記載する。 pH 1 14 インジゴカルミン 緑 メチレンブルー 青 サフラニン マラカイトグリーン 赤 白 赤 黄 黄 黄 緑 透明 ○ 操作 【信号反応 1】 ※使用薬品 水酸化ナトリウム ブドウ糖 インジゴカルミン ※操作 ①ビーカーにイオン交換水 400ml を入れ、ブドウ糖 4.8g を加えてガラス棒等でかき混ぜて 溶かす。 ②さらに水酸化ナトリウム(粒状)8g を加えて溶かす。 ③300ml平底フラスコ(ペットボトルでもよい)に②の溶液 50mlと、インジゴカルミンを 少量加え、蓋をする。 ④振る。 振って反応を進めると、色は左から右へ変化をする。 また、振るのをやめると、色は右から左へ変化をする。 【信号反応 2】 ※使用薬品 水酸化ナトリウム ブドウ糖 メチレンブルー ※操作 ①ビーカーにイオン交換水 400ml を入れ、ブドウ糖 13.5g を加えてガラス棒等でかき混ぜ て溶かす。 ②さらに水酸化ナトリウム(粒状)8g を加えて溶かす。 ③300ml平底フラスコ(ペットボトルでもよい)に②の溶液 50mlと、メチレンブルーを少 量加え、蓋をする。 ④振る。 【信号反応 3】 ※使用薬品 水酸化ナトリウム ブドウ糖 メチレンブルー サフラニン ※操作 ①ビーカーに水 400ml を入れ、ブドウ糖 14g を加えてガラス棒等でかき混ぜて溶かす。 ②さらに水酸化ナトリウム(粒状)11g を加えて溶かす。 ③300ml平底フラスコ(ペットボトルでもよい)に②の溶液 50mlと、メチレンブルーとサ フラニンを少量加え、蓋をする。 ④振る。 ○ 注意点 この実験で行われる反応は、 「酸化還元反応」である。よって、反応回数を重ねると反応 速度が遅くなり、次第には反応しなくなる。その場合、作りなおす必要がある。 色の変化量、変化点などは色素とブドウ糖によって大きく変わる。作るときには、実際 に振りながら作ってみる。事前の実験の際に、試薬の加える量を確認しておくことが必要 である。 色素は一度付くと落としにくいために、実験を行う際は注意が必要である。また、客の 前では行わない。 ○ 必要な試薬、器具・備品と処理する廃液。 試薬 器具・備品 ブドウ糖 水 フラスコ 水酸化ナトリウム 薬さじ マラカイトグリーン 電子天秤 インジゴカルミン ビーカー メチレンブルー ロート サフラニン ペットボトル 廃液 薬包紙 その他 廃液名 廃液ボトルの色 全ての廃液 青1 備品に関するその他、特記事項は以下の枠内に書いてください。 試薬の場合、左枠は必須です。 右枠はあればあるだけ実験と種類が増えます。 マラカイトグリーンは劇物です。 水酸化ナトリウムの扱いには気をつける。
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