6 演算子の固有値、固有関数

演算子の固有値、固有関数
6
6—1
固有値・固有関数とは
シュレーディンガー方程式
ˆ
Hϕ(x)
= Eϕ(x)
1
°→
解くと状態が決まる(物理的意味)
2
°→
これは ”固有値問題 ”(数学的)
ˆ に対して、定数 a と関数 ϕa (x) が
一般に演算子 A
ˆ a (x) = aϕa (x)
Aϕ
を満たす時
a : Aˆの固有値
ϕa (x) : a に対する固有関数
(例)
h
¯ ∂
hk 、固有関数
i ∂x に対して固有値¯
h
¯ ∂ ikx
ikx
pˆe
= i ∂x e
= h¯i (ik)eikx = h
¯ keikx
0
0
0
ik x
pˆ =
注
°
hk (k 6= k ) に対して e
¯
ik0 x
pˆe
eikx
を考える。
0 ik 0 x
=h
¯k e
0
0
hk も固有値、eik x はその固有関数
¯
一つの演算子に対して、固有値、固有関数はいくつも存在する。
「シュレーディンガー方程式を解く」
Hϕ(x) = Eϕ(x)
⇔「H の 固有値 、固有関数 を求める。
| {z }
| {z }
k
エネルギー
k
波動関数
☆固有関数ではない例
∂
pˆ = h¯i ∂x
にたいし、ϕ = cos kx を考える
pˆ cos kx = h¯i (−k) sin kx = i¯
hk sin kx 6= (定数) × cos kx
6—2
不確定性原理と固有関数
0 ≤ x ≤ L の円周上
ϕk (x) = √1L eikx (規格化 OK)
P
→ φ(x) = k Ck ϕk (x) とする。
(重ね合わせ)
pˆを測定 ⇒ p = h
¯ k の値が観測される確率は |Ck |2
1
☆(例)
φ(x) =
√1 ϕk + √1 ϕ−k (x)
2
(2
p=h
¯k
pˆφ(x)
=
=
=
=
確率
p = −¯
hk
q
2
L
cos kx
1
2
1
2
√1 p
ˆϕk (x) + √12 pˆϕ−k (x)
2
√1 (¯
hk)ϕk (x) + √12 (−¯
hk)ϕ−k (x)
2
h
¯k
√
(ϕk (x) − ϕ−k (x))
2
φ(x) はpˆの固有関数ではない。
q
= i L2 sin kx
☆ φ(x) = ϕk (x) なら
pˆφ(x) = h
¯ kφ(x) 固有関数
このとき、pˆ を観測 → 100% の確率で p = h
¯k
φ=
√1 (ϕk
2
+ ϕ−k )
< p >= 0
∆p ∼ ¯
hk
ゆらぎ
φ = ϕk
< p >= h
¯k
∆p = 0 ゆらぎなし
☆一般化
ˆの固有値
演算子A
a1 , a2 , a3 . . .
ˆ
Aϕi (x) = ai ϕi (x)
ϕi (x) : ai にたいする固有関数
P
φ(x) = i Ci ϕi (x) 重ね合わせ
|Ci |2 : Aˆを測った時、ai という値が得られる確率
(
1 (i = i0 )
=
○もし、Ci
0 (i 6= i0 )
(φ = ϕi0 (x))
2
⇒ Aˆの測定で不確定性なく ai0 という値が得られる。
φ(x) がAˆの固有関数ならAˆを測定した時、不確定性がない。
シュレーディンガー方程式の解
Hϕi = Ei ϕi (i = 1, 2, 3, . . .)
P
−iωi t
Ψ(x, t) = (
ωi = Eh¯i
i Ci ϕi (x)e
1 (i = i0 )
Ci =
0 (i 6= i0 )
ならば
HΨ = Ei0 Ψ
Ψも固有関数
E
h
¯ に不確定性がない
iωt
→ ω=
→ Ψは e
で単純に振動するだけ
→ |Ψ(x, t)|2 は時間的に変化しない。(定常)
6—3
不確定性原理
ˆ B
ˆ にたいして
演算子A,
(
ˆ = aϕ
Aϕ
ˆ = bϕ
Bϕ
を同時に満たすϕ が存在するならば、
ˆ の同時固有関数。
ϕ(x) はAˆとB
ˆとB
ˆ
このときA
( を測定
Aˆ → a
ˆ→b
B
共に不確定性なく値が得られる。
2
pˆ
(例) H = 2m
とpˆ
ϕ (x) = eikx は同時固有関数。
(k
2 2
k
ϕk
Hϕk = h¯2m
pˆϕk = h
¯ kϕk
この時、エネルギーと運動量を測定
2 2



k
→ E = h¯2m
とp=h
¯ k が共に不確定性なく得られる。
注
°ϕ(x)
= cos kx の場合


ϕ0 (x) = −k sin kx, ϕ00 (x) = −k2 cos kx 
2 2
k
⇒ Hϕ = h¯2m
ϕ だがpˆϕ 6= h
¯ kϕ ×
ˆ の同時固有関数が存在すればいわゆる ”不確定性原理 ”
AˆとB
ˆとB
ˆ には当てはまらない。
はA
3
○
同時固有関数が存在する時

ˆ
ˆ Bϕ)
ˆ
AˆBϕ
= A(
= Aˆ · bϕ 



ˆ
= b(Aϕ) = abϕ 
ˆ Aϕ
ˆ
B
○
ˆ Aϕ)
ˆ
B(
=
abϕ
=
=
ˆ

aBϕ




演算子の交換積
ˆ B]
ˆ = AˆB
ˆ −B
ˆ Aˆ
[A,
ˆ =B
ˆ Aϕ
ˆ
⇒ AˆBϕ
ˆ B]
ˆ = 0 なら
もし [A,
ˆ = B
ˆ Aˆ
AˆB
ˆ =B
ˆ Aϕ
ˆ
⇒ AˆBϕ
⇒ 同時固有関数が存在
⇒
(例 1) Aˆ =
不確定性なし
ˆ = h¯
B
h
¯ 2 ∂2
− 2m
∂x2 ,
∂
i ∂x のとき
ˆ = − h¯ 2 ∂ 22 ·
• AˆB
2m ∂x
ˆ Aˆ = h¯ ∂ · −¯h2
• B
h
¯ ∂
h
¯ 3 ∂3
i ∂x = − 2mi ∂x3
2
h
¯ 2 ∂3
∂
2m ∂x2 = − 2mi ∂x3
i ∂x
(例 2) Aˆ = pˆ =
h
¯ ∂
ˆ
i ∂x , B
= x のとき
pˆx 6= xˆ
p
xˆ
pϕ =
h
¯ ∂
i ∂x ϕ(x)
h
¯
0
xϕ
(x)
i
h
¯ ∂
i ∂x (xϕ(x))
h
¯
0
0
i (xϕ + x ϕ)
x·
=
pˆxϕ
=
=
h
¯
0
i xϕ
h
¯
iϕ
pˆxϕ − xˆ
pϕ =
=
[ˆ
p, x] ϕ =
h
¯
iϕ
⇒
7
7—1
ˆ=B
ˆ Aˆ
) AˆB
↓i
h
ˆ
ˆ
A, B = 0
= h¯i xϕ0 + h¯i ϕ
+ h¯i ϕ − h¯i xϕ0
(どんなϕ に対しても)
h
¯
i
6= 0
x とpˆの間に不確定性の関係がある
[ˆ
p, x] =
調和振動子 (バネ振動)
ハミルトニアン
V (x)
=
=
4
1
2
2 kx
2
mω
2
2 x
k
:
バネ定数
m
:
質量
ω
:
固有振動数
一般に任意の型の位置エネルギー
極小点 x = a のまわりでの
微小な振動
x = a でのテーラー展開
V (x) = V (a) + V 0 (x = a) · (x − a)
+ 12 V 00 (x = a) · (x − a)2 + . . .
x = a で極小 → V 0 (x = a) = 0
⇒ V (x) ' 定数 + 12 V 00 (x − a)2 + . . .
ハミルトニアン
h
¯ 2 ∂2
H = − 2m
∂x2 + V (x)
x
˜ = x − a と変数変換
∂
∂x
∂
∂x
˜
=
V (x) を (x − a) の 2 次まで展開
k
x
˜
2
h
¯
H = − 2m
+
調和振動子の
ハミルトニアン
1
x2
2 k˜
+ (定数)
00
k = V(x=a)
エネルギーの原点の移動
↓
無視してよい。
(具体例) 分子振動
距離 R だけ離れた二つの原子からなる分子
5
•
R = R0 でエネルギー最小 → 分子を作る
•
R → 0 で原子核同士が近づく → クーロン反発力
•
分子振動
R = R0 のまわりの微小振動
↓
調和振動子として近似できる。
•
CO2 ガスの温室効果
→ 分子振動による赤外線の吸収
バネ振動、固有振動数 = ω
エネルギーの吸収
6
調和振動子のハミルトニアン
h
¯ 2 ∂2
mω 2 2
H = − 2m
∂x2 + 2 x
(k = mω 2 )
定数 ¯
h, m, ω : パラメータが多い。
⇒
無次元化によって簡単化
(統一した形へ変形)
H : エネルギーの次元
h, m, ω を使ってエネルギーを作る → ¯
¯
hω
⇒H
=
=
さらに [
h ³ 2
´i
h
¯
h
¯ ω × h¯1ω − 2m
. . . → 無次元
∙
¸
∂2
1 mω
2
h
¯
h
¯ ω − 12 mω
+
x
1 ∂x2
2
h
¯
=λ
=λ
] を簡単にする。
x → ξ 変数変換する
(
√
λx2 = ξ 2
ξ = λx とおくと
1 ∂2
∂2
λ ∂x2 = ∂ξ 2
→ 新しい変数ξµを使って
¶
1 ∂2
1 2
H=h
¯ω −
+
ξ
2 ∂ξ 2
2
|
{z
}
無次元化されたハミルトニアン
利点
:
ξ も無次元化
hω に比例することが明らか。
エネルギー固有値は¯
(その他のパラメータに依らない)
Hϕ
=
⇒
Eϕ
2
1 2
∂
− 12 ∂ξ
2 ϕ(ξ) + 2 ξ ϕ(ξ) = κϕ(ξ)
↓
κ = E/¯
hω
物理数学の教科書に
”超幾何関数を解とする微分方程式 ”
として載っている。
7—2
波動関数
2
1 2
∂
− 12 ∂ξ
2 ϕ(ξ) + 2 ξ ϕ(ξ) = κϕ(ξ)
この微分方程式を解く。
ただし境界条件 |x| → ∞ でϕ(x) → 0
(|ξ| → ∞ でϕ(ξ) → 0)
1
解:ϕn (ξ) = Nn Hn (ξ)e− 2 ξ
2
(n = 0, 1, 2, . . .)
Hn (ξ) : エルミート多項式
Nn : 規格化定数
¢
¡
ˆ
¯ω
このときHϕn = En ϕn , En = n + 12 h
7
エルミート多項式
H0 (ξ) = 1, H1 (ξ) = 2ξ, H3 (ξ) = 4ξ 2 − 2
Hn (ξ)
( はξ の n 次多項式 (
nが
偶数
奇数
→ Hn (ξ) は
偶関数
奇関数
•V (ξ) < E の領域で振動
• V (ξ) > E で減衰
特に
しかし |ϕ|2 6= 0(トンネル効果)
n = 0 基底状態( = エネルギー最低の状態)
1
E = 12 h
¯ ω>0 , ϕ(ξ) = e− 2 ξ
2
(古典力学:E = 0 静止状態が最低エネルギー状態)
量子力学では調和振動子に静止状態はない
基底状態での振動 = ゼロ点振動
理由:不確定性より、静止状態は禁止。
E = 0 だとすると
0 =< H > =
=
E
D
1 2
mω 2 2
2m p + 2 x
1
mω 2
2
2m < p > + 2
2
E = 0 なら < p2 >= 0 かつ!< x >= 0
p の不確定性と
同時に 0
⇒
x の不確定性
⇒ 禁止される。
8
< x2 >