60 Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定― 原子核物理グループ 白鳥 昂太郎 平成17年3月18日 ―目的― 60 Co線源から放出される2つのγ線の角相関①と 偏光②を測定し、レベルスキームの構成に欠かせ ないγ遷移のスピンとパリティを決定する 今実験のために構成した偏光測定装置の性能 を評価する ② ① ―原理― 原子核の遷移 角相関 多重極度λの遷移 →電気型Eλ遷移 磁気型Mλ遷移 パリティ変化 λ λ+1 E型:πiπf =(-1) M型:πiπf =(-1) 直線偏光 偏光γ線:向きが一様でない電気、磁 気双極子から放射される電磁波 放射の際の電場の振動方向を偏光の 向きとする 偏光の大きさはθに依存 (90°最大) 電気双極子放射E1 量子化軸に平行 磁気双極子放射M1 量子化軸に垂直 線源:始状態のスピンに偏りが なく角度分布や偏光を示さない 光子がz軸方向に運ぶ角運動 量が±1のみなので、カスケー ド遷移の1つのγ線を捉えると中 間状態のスピンが偏る →同時計測すると、放出される2つ のγ線に角相関が生じる J1→J2→0が分かる 偏光測定 偏光を生じさせるために、 放出される2つのγ線を90 度の角度で同時計測 偏光の測定にコンプトン散乱 を用いる 電場の向きで散乱断面積が 変わる(Klein-Nishinaの式) d r02 E 2 E E0 2 2 2 sin cos 2 d 2 E0 E0 E 同時計測したγ線の一方をコ ンプトン散乱させ、垂直方向と 水平方向に置いたDetectorで 検出された数の違いから偏光 を測定 z 測定の概要図 偏光と非対称度 測定に用いる式 偏光度 N∥np A 1 aE N N∥ P , a E Q Q aE N N∥ N np 60 Coにおける理論値(1173keV) P 0.1667 , Q 0.3848 測定出来る最大の非対称度 A PQ 6.41 102 A:非対称度 Q:Polarimeter Sensitivity a:修正項 Qは入射γ線のエネルギーに 依存し、装置のジオメトリーで 決まる 大きさがあるdetectorではQが小 さくなるので、測定出来る非対称 度は理論値よりも小さくなる 1333keVの値 P 0.1667 , Q 0.3465 P>0ならE型 P<0ならM型 A PQ 5.78 10 2 ―角相関測定― 2つのNaIシンチレーションカウン ターの間に線源を置き、一方の Detectorを固定、もう一方を15度 ずつ回転させながら測定 同時計測されたγ線の個数をプ ロットしていく 測定装置 Source 回転 固定 角相関 4→2→0(―) W 1 0.102 P2 cos 0.00907 P4 cos 3→2→0(―) W 1 0.204 P2 cos 0.0816 P4 cos 3→1→0(―) W 1 0.207 P2 cos 2→1→0(―) W 1 0.05P2 cos ―結果― 測定値 理論値と測定値の関係 W const 1 A2 P2 cos A4 P4 cos -2 A2=(8.74±0.485)×10 -2 A4=(1.61±0.659)×10 χ2/f=0.874 (60%の位置) 測定値は 遷移 4→2→0 以外適合しない 60 → Coのγ線の多重極度 はλ=2 ― 測定値 ― 測定値の関数 ― 適合する理論値 ―偏光測定― 実験装置 Scatterer 中心の”Scatterer”にγ線を 入射し、コンプトン散乱させ る 垂直方向と水平方向に置い た”Absorber”で吸収し、数 の違いを測定 Absorber γ 入射γ線はコリメート 90度方向に”Scatterer”と同 時計測する”Coincidence” を置く 周囲を鉛で囲み Backgroundを減らす 測定回路 TriggerはScattererとCoincidenceで同時測定されたイベント ―実験方法― Calibration 1. 各測定の前後で行う 90度方向での偏光測定 2. 同時計測で偏光を生じさせる 180度方向、または同時計測なしの無偏光状態での測定 3. DetectorのEfficiencyとジオメトリーの違いの修正 γ線をコリメートしない場合も測定する コリメートしない場合との有効性の比較 ―解析の流れ― Coincidenceでのカット 1. 1173keVのγ線を選択 (1333keVも行う) → ScattererとAbsorberでの Kinematicカット 2. γ線のエネルギースペクトルを コンプトン散乱の式からcos(θ) の形に変換し、Detectorのジ オメトリーに対応した入射角度 の範囲を選ぶ 45°<θ<135°の範囲 cos ScattererとAbsorberのスペク トルをevent-by-eventで足し 合わせ、1173keV(1333keV) となるeventの数を計測 3. 垂直方向と水平方向のピーク面 積から非対称度を求める + Scatterer (Ge検出器) (NaI) 無偏光γ線で各Absorberの固 有差やジオメトリーによる差の 修正 4. ↓ Absorber 垂直、水平方向での偏光に起因 しない数の違いを修正 偏光がない状態でのDetector の違いの修正は重要 [keV] Sum Peak ―結果― 測定された非対称度 A aE N N∥ aE N N∥ コリメート A 3.68 2.17 102 ,1.69 91% , aE a1173 0.844 0.010 N∥np N np N⊥― N∥― コリメートなし A 4.67 1.03 102 ,4.52 99.9% a1173 0.934 0.014 1333keV(コリメートなし) A 4.10 1.07 102 ,3.82 99.9% a1333 0.959 0.015 非対称度の符号からγ線は 1173keV、1333keVともE型 [keV] ―まとめ― 角相関と偏光測定から + + + 遷移 4 →2 →0 電気型E2遷移 であることが確かめられた 今回構成した偏光測定装置では数%のオーダーまでの非対 称度が測定出来る コリメーターを使用しない方が良い結果となった コリメート:10日 線源2M[bq] コリメートなし:1.5日 線源0.1M[bq] (2,500,000event) →コリメータや線源強度の最適化のため、さらなる検討が必要 ―今後の課題― シミュレーションを行い、測定結果の妥当 性を検証 偏光の測定条件の最適化
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