2017/ 1/4 投資情報部 シニアエコノミスト 吉川 健治 マーケット・フォーカス 経済:中国 底堅い動きが続こう。当面は金融リスクに留意が必要 ~製造業PMI評価(2016年12月)と17年経済見通し 2016年の国家統計局の製造業PMIは1月の50割れ(49.4)でスタートも3月に50台に乗せ、10 月以降勢いが高まり、12月は前月比▲0.3ポイントの51.4と小幅低下も、14年7月以来の高値 となった。17年の中国経済は、さらに積極的な財政政策の実施により安定成長の維持が図ら れよう。ただし、人民元安の加速、外貨準備高の急減、等の金融リスク防止の強化がさらに 重要となる。米利上げ観測、トランプ大統領就任後の対中政策の動きには留意が必要だ。 大企業が製造業PMI 全体のけん引役。12 月の 低下は 大気汚 染による生産制限が 影響か 2016年の国家統計局の製造業購買担当者指数(製造業PMI)は1月の50割れ (49.4)でスタートも3月に50台に乗せ(7月のみ50割れ)、10月以降勢いが高まり、12 月は前月比▲0.3ポイントの51.4と小幅低下も、14年7月以来の高値となった。 企業規模別では大企業(前月比▲0.2ポイントの53.2)が全体をけん引、中型企 業が同▲0.5ポイントの49.6と再び50割れ、小型企業が同▲0.2ポイントの47.2と2極 化の動き。財新製造業購買担当者指数(財新製造業PMI)が同+1.0ポイントの51.9 と13年1月以来の高値。国家統計局が11月と異なる注目点は大気汚染の悪化によ り一部地域のエネルギー高消費の企業が生産の制限を受けたと指摘も、生産や需 要が改善、消費財やハイテク・装置の産業が堅調、貿易指数が50台維持、等底堅 さを挙げた。原材料価格や輸送費の上昇の企業経営への影響に留意が必要だ。 中国の製造業PMIと企業規模別PMI (月次:2010/1~2016/12) 58 国家統計局製造業PMI うち、大企業PMI うち、中型企業PMI うち、小型企業PMI 財新製造業PMI 56 54 52 50 48 46 [景気拡大・後退の分岐点50] 44 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注) 国家統計局製造業PMIの企業規模別PMIは2012年2月から 出所:中国国家統計局資料、マークイット資料、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2017/1/4 マーケット・フォーカス インフラ投資の拡大 や不動産の過熱によ り生産が回復、鉱物 価格が急上昇 2016年の鉱工業生産は、1~2月累計で前年同期比+5.4%とリーマンショック後の 09年1-3月期(同+5.1%)以来の最低水準からスタートも、積極的な財政政策と緩和 に向けた金融政策の調整等の経済政策によるインフラ投資の拡大、不動産市場の 過熱、等を背景に1~11月累計で同+6.0%と持ち直した。一方で、鉄道・道路貨物輸 送量、2次産業向け電力使用量が回復し、鉄鉱石、原料炭、一般炭、銅等の鉱物 価格が急上昇、特に原料炭・一般炭の市況が過熱、11月下旬にピークアウトした。 中国の鉱工業生産、鉄道・道路貨物輸送量、電力使用量 (%) (月次:2008/1~2016/11) 35 鉱工業生産 30 鉄道貨物輸送量 25 道路貨物輸送量 20 2次産業向け電力使用量 15 10 5 0 ▲5 ▲ 10 ▲ 15 (年) (注)毎年1月からの年初来累計の前年同期比 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 2017年の中国経済 はさらに積極的な財 政政策により安定成 長が維持されよう 2017年の中国経済は、16/12/14~16開催の中央経済工作会議では17年の経済 工作・政策(以下の表を参照)において、「2017年は『安定を保ちつつ進歩を求める (穏中求進)』という活動全体の基調の貫徹に特別に重要な意味を有する」ことが強 調されたが、17年下半期に5年に1度開催の第19期党大会を控え、「さらに積極的な 財政政策」の実施により安定成長の維持が図られよう。なお、外需の回復の弱さに 人件費高や輸入原材料価格の上昇も加わり、中国の輸出を取り巻く環境は依然、 厳しい状況にあるため、「総需要を適度に拡大する」ことが指摘された。 中国の中央経済工作会議における2017年の経済工作 会議(12/14~16開催)の主な内容 強調 指摘 経済政策 「安定を保ちつつ進歩を求める(穏中求進)」という活動全体の基調が国家統治・政 権運営の重要な原則であり、2017年はこの活動全体の基調の貫徹に特別に重要な 意味を有する 「三去(過剰設備・不動産在庫・債務の解消)一降(コストの引き下げ)一補(不足分 の補完)」の5大任務の遂行により供給側構造性改革で初歩的な成果を得た2016年 から、2017年は同改革を深化させる必要がある。また、総需要を適度に拡大する 不動産市場の平穏で健全な発展を促進する。不動産バブルを抑制し大波乱の顕在 化を防止する。また、西部開発、東北振興、中部勃興、東部率先の地域発展総体 戦略の実施を深化させ、北京・天津・河北の協同発展、長江経済ベルト、「一帯一路 (シルクロード)」建設の3大戦略の実施を継続する 財政政策はさらに積極的で有効に実施する 金融政策は「穏健(中立)」を維持し、貨幣供給方式の新たな変化に適応する 人民元政策 人民元レートの弾力性を強めると同時に、合理的な水準で安定的に維持する 金融リスク防止をさらに重要な位置づけとし、資産バブル防止、監督管理能力の向 金融リスク 上を図り、金融システムリスクが発生させないようにする 出所:人民日報資料よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 22 2017/1/4 マーケット・フォーカス 当面は 人民元安の 加速、外貨準備高の 減少等の金融リスク に留意が必要 一方で、「金融リスク防止をさらに重要な位置づけ」との文言がもり込まれたが、資 産バブルの崩壊、人民元安の加速、外貨準備高の急減、等の金融リスク防止に向 けて、当局の監督管理が強化されよう。資産バブルについては、「不動産バブルは 抑制し大波乱の顕在化を防止する」の文言のとおり、不動産市場の適度な調整にと どまり、バブルは温存されよう。 外貨準備高は2016年11月に前月比▲691億ドルの3兆516億ドルと減少幅が拡 大、5ヵ月連続で減少。今週の1/7前後には16年12月の外貨準備高が公表される予 定だが、1つの節目の3兆ドル割れになるか、注目度が高まっている。 人民元の対ドルレートは05年7月の人民元改革以降、年間ベースで上昇基調に 入ったが、14年に下落に転じ、16年には前年比▲6.50%と最も下落した。中国は景 気下押し圧力が根強いなか、米中両国の経済ファンダメンタルズや金融政策の格 差をより強く反映し中米金利差(10年物国債利回り)が縮小した。当面はトランプ次 期米大統領の就任(17/1/20)、米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測 を考慮し人民元安の加速と外貨準備高の減少リスクに留意が必要だ。 人民元実質実効為替レートと中国の輸出 (月次:2005/1~2016/11) (2010年=100) 140 人民元実質実効為替レート (左目盛) 130 (%) 60 実質実効為替レートの上昇 (価格競争力の低下) 50 輸出(季節調整後 右目盛) 40 30 120 110 100 20 人民元改革 管理変動相場制へ移行 (2005年7月) 10 0 ▲ 10 90 ▲ 20 80 ▲ 30 (年) (注)輸出は前年同月比で2009年5月から 人民元実質実効為替レートは2010年=100とした値 出所:中国海関総署資料、国際決済銀行(BIS)資料、CEICデータよりみずほ証券作成 中国の製造業PMIの構成指数 中国の製造業PMI(その他指数) (月次:2011/1~2016/12) 60 70 生産 新規受注 原材料在庫 雇用 サプライヤー納期 55 (月次:2011/1~2016/12) 購入量 新規輸出受注 原材料購買価格 輸入 製品在庫 70.1 (2011/2) 65 60 55 50 [景気拡大・後退の分岐点50] 50 45 [景気拡大・後退の分岐点50] 45 40 11 12 13 14 15 16 11 (年) 12 13 14 15 16 (年) 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 33 2017/1/4 金融商品取引法に係る重要事項 マーケット・フォーカス ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : 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