2016/ 12/2 投資情報部 シニアエコノミスト 吉川 健治 マーケット・フォーカス 経済:中国 従来型の景況改善、改革先送りで持続不可な成長か ~製造業PMI評価(2016年11月)と中長期リスク 2016年11月の国家統計局の製造業PMIは前月比+0.5ポイントの51.7と改善基調も、大企業 PMIが従来型の経済政策の恩恵を受け拡大が顕著。10/27の国務院弁公庁による「地方政 府債務リスク応急処置プランに関する通知」は防止対応の手続きが主な内容であり、安定成 長の維持を優先し、レバレッジの拡大は止むなしか。2020年の国内総生産・所得倍増計画の 達成に向けて、無理な経済政策が続き、体力の消耗戦となり、中長期リスクが高まろう。 従来型の 経済政策 の恩恵で大企業の改 善が顕著、製造業 PMIを押し上げ。小企 業の悪化に変化なし 2016年11月の国家統計局の製造業購買担当者指数(製造業PMI)は前月比+0.5 ポイントの51.7と4ヵ月連続の50台で改善した。企業規模別では、大企業PMI(前月 比+0.9ポイントの53.4)は従来型の経済政策の恩恵を受け拡大が顕著、中型企業 PMI(同+0.2ポイントの50.1)が小幅上昇で50乗せ、小型企業PMIが(同▲0.9ポイン トの47.4)悪化と2極化の動き。財新製造業購買担当者指数(財新製造業PMI)が同 ▲0.3ポイントの50.9と低下した。国家統計局は、①生産や需要が改善、②業種で は消費財関連産業の拡大が続き、ハイテク・装置の産業が堅調、③貿易指数がや や改善、等を挙げる一方、④企業経営が依然いくらか困難を抱えると指摘。また、 ⑤原材料価格や輸送費等のコストが上昇した企業が3割以上、⑥人民元安がコン ピュータ通信・その他電子装置産業に比較的大きな影響を及ぼす、等も指摘した。 中国の製造業PMIと企業規模別PMI (月次:2010/1~2016/11) 58 国家統計局製造業PMI うち、大企業PMI うち、中型企業PMI うち、小型企業PMI 財新製造業PMI 56 54 52 50 48 46 [景気拡大・後退の分岐点50] 44 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注) 国家統計局製造業PMIの企業規模別PMIは2012年2月から 出所:中国国家統計局資料、マークイット資料、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2016/12/2 マーケット・フォーカス インフラ投資拡大で 鉱物価格が急上昇。 地方政府債務リスク 応急処置プランの内 容は防止と言い難い 2016年は積極的な財政政策と緩和に向けた金融政策の調整の無理な経済政策 によるインフラ投資の拡大、不動産市場の過熱に対する手ぬるい対応、等を背景 に、鉄道・道路貨物輸送量、2次産業向け電力使用量が持ち直し、鉄鉱石、原料 炭、一般炭、銅等の鉱物価格の急上昇の動きが顕著である。 銀行業監督管理委員会の尚福林主席が10月に「地方政府傘下の融資プラット ホームが違法な融資方式による銀行借り入れ等で、レバレッジが拡大し政府の隠れ 債務規模の増加」を指摘したが、10/27の国務院弁公庁による「地方政府債務リスク 応急処置プランに関する通知」をみると、債務の元利払いリスクの事前報告や防止 対応の手続きが主な内容であり、安定成長の維持を優先し、レバレッジ(地方政府 の偶発債務等)の拡大は止むなしと捉えられるような内容と言えよう。 中国の鉱工業生産、鉄道・道路貨物輸送量、電力使用量 (%) (月次:2008/1~2016/10) 35 鉱工業生産 30 鉄道貨物輸送量 25 道路貨物輸送量 20 2次産業向け電力使用量 15 10 5 0 ▲5 ▲ 10 ▲ 15 (年) (注)毎年1月からの年初来累計の前年同期比 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 大型景気対策の 反 動、潜在成長率の低 下、等に対し、安定 成長の優先で、企業 債務が増大方向 企業債務は対名目GDP比率でみると、2008年の100%弱から16年1-3月期に169% と上昇ピッチが速いと言えよう。そのきっかけは、08年9月のリーマンショックに対応し た大型景気対策と金融緩和策が挙げられる。その後も潜在成長率の低下に加え、 行き過ぎた政策の反動が顕在化するものの、「安定成長優先・改革先送り」の方針 のもと、積極的な財政政策が維持され、国有企業を中心に企業債務が拡大した。 (%) 中国の経済成長率と固定資産投資、債務残高 (月次:2008/1~2016/10) 200 50 企業債務の対名目GDP比率(左目盛) 名目GDP成長率(右目盛:前年同期比) 固定資産投資:国有企業(右目盛) 固定資産投資:民間投資(右目盛) 150 (%) 40 30 100 20 50 10 0 0 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注)固定資産投資は年初来の前年同期比で民間投資は2011年1月から、企業債務の対名目 GDP比率は四半期で2016年1-3月期まで、名目GDP成長率は四半期で2016年7-9月期まで 出所:中国国家統計局資料、国際決済銀行(BIS)資料よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 22 2016/12/2 マーケット・フォーカス 官官パートナーショッ プがインフラ投資の 主な資金源で、国有 企業債務が拡大。中 長期リスクに留意 地方政府の厳しい財政状況からみて、インフラ投資の主な資金源の1つがPPP (本来の訳:「官民パートナーシップ」)の利用であるが、実際には国有企業の参加、 請負が主体の「官官パートナーシップ」と言われており、国有企業は銀行借り入れ 等の債務が拡大する方向にある。中国は財政や外貨準備高等の経済ファンダメン タルズ面での体力があると言われるが、主力の民間投資の低迷を国有企業の投資 で支える動きが、2017年下半期の共産党大会から2020年の国内総生産・所得倍増 計画に向けて、続けば、経済体力の消耗戦となり、中長期リスクが高まろう。 今後も中国経済が改革の先送りのもと、安定成長が維持されることは、短期的に は世界経済の安定に寄与するものの、中長期的には、その陰では中国の企業(特 に国有企業)と地方政府の債務(特に偶発債務)が増大し、世界経済の大きなリスク になる可能性があることを認識しておく必要があろう。 中国の製造業PMIの構成指数 中国の製造業PMI(その他指数) (月次:2011/1~2016/11) 60 70 生産 新規受注 原材料在庫 雇用 サプライヤー納期 55 (月次:2011/1~2016/11) 購入量 新規輸出受注 原材料購買価格 輸入 製品在庫 70.1 (2011/2) 65 60 55 50 [景気拡大・後退 の分岐点50] 50 45 [景気拡大・後退の分岐点50] 45 40 11 12 13 14 15 16 11 (年) 12 13 14 15 16 (年) 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 33 2016/12/2 金融商品取引法に係る重要事項 マーケット・フォーカス ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-161202-27 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 44
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