12月利上げは確定的 (PDF/301KB)

マーケット・フォーカス
経済:米国
2016/
12/5
投資情報部
シニアエコノミスト
宮川 憲央
労働需給はさらに引き締まり、12月利上げは確定的
 11月の非農業部門雇用者数は前月比+17.8万人となった。雇用は引き続き堅調なペースで
増加している。
 11月の失業率は4.6%と2007年8月以来の水準まで低下した。11月の平均時給は前年同月比
+2.5%と7年4ヵ月ぶりの高水準となった10月に比べれば上昇率は低下したものの、労働需給
の引き締まりを受けて、今後も賃金上昇率は徐々に高まっていくとみられる。
 今回の雇用統計が堅調な結果となったことで、12月の米連邦公開市場員会(FOMC)での利
上げは確定的といえる。2017年は労働需給の引き締まりやトランプ次期大統領の財政出動
によって賃金や物価の上昇率が加速するかが、利上げペースを左右することになろう。
堅調なペースでの雇
用増加が続く
11月の非農業部門雇用者数は前月比+17.8万人となり、市場予想(ブルームバー
グの集計では+18.0万人)をやや下回る結果となった。また、過去2ヵ月分の雇用者
数は合計0.2万人の下方修正となった(9月分は前月比+19.1万人から同+20.8万人
の上方修正となる一方、10月分は同+16.1万人から同+14.2万人へ下方修正となっ
た)。この結果、9月~11月までの3ヵ月間平均の雇用者の増加数は+17.6万人とな
り、基調としては堅調なペースで雇用は増加している。
内訳では、雇用者数のうち、財生産部門は前月比+1.7万人、民間サービス部門は
同+13.9万人、政府部門は同+2.2万人となった。業種別では製造業で減少が続い
たほか、小売や情報通信では2ヵ月連続の減少となった。一方、専門・企業向け
サービス、教育・ヘルスケア、レジャー・接客、建設、運輸・倉庫等を中心に雇用者
数は増加した。なお、民間部門262業種における前月比ベースでのディフュージョ
ン・インデックス([雇用が増加した業種の割合+前月比横ばいの業種の割合]/2)は
55.5%と10月の59.2%から低下した。
11月の失業率は4.6%と10月の4.9%から低下し、2007年8月以来の低水準となっ
た。失業率の変化の内訳をみると、労働参加率(16歳以上人口に占める労働力人
口の割合)が62.7%と10月の62.8%から低下し、就業者数(家計調査ベース)は前月
比+16.0万人となっている。高齢化にともなう退職者の増加や何らかの理由で職探し
を断念した動きによって労働参加率は低下したものの、就業者の増加が続いたた
め、労働需給は一段と引き締まっている。また、広義の失業率(失業者に加え、経
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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済的理由によるパートタイマーや職探しを断念した人等を加味)は9.3%と10月の
9.5%から低下し、08年4月以来の低水準となった。経済的理由によるパートタイマー
が前月比▲22万人となる等、雇用の質の面での改善も続いている。
米雇用関連指標
( 月次:2005/1~2016/11)
(1,000人)
600
(%)
11
400
10
200
9
0
8
▲ 200
7
▲ 400
6
▲ 600
5
非農業部門雇用者数・前月差(左目盛)
▲ 800
4
失業率(右目盛)
▲ 1,000
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
3
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
米産業別雇用者数の推移
(万人)
雇用者数
16/09
16/10
16/11
前月差
非農業部門
民間
財生産
鉱業
建設業
製造業
民間サービス
卸売
小売
運輸・倉庫
公益
情報通信
金融・不動産・リース
専門・企業向けサービス
教育・ヘルスケア
レジャー・接客
その他サービス
政府部門
14,481
12,259
1,962
68
667
1,227
10,297
594
1,599
491
56
278
832
2,038
2,281
1,556
572
2,222
14,495
12,273
1,963
68
669
1,226
10,310
595
1,599
492
57
278
833
2,043
2,285
1,557
572
2,222
14,513
12,288
1,965
68
670
1,226
10,324
595
1,598
493
57
277
834
2,049
2,290
1,560
572
2,225
17.8
15.6
1.7
0.2
1.9
▲ 0.4
13.9
0.3
▲ 0.8
0.9
▲ 0.0
▲ 1.0
0.6
6.3
4.4
2.9
0.4
2.2
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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米労働参加率の推移
(月次:2005/1~2016/11)
(%)
67
66
65
64
63
62
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
16
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
11 月の 賃金上昇率
は低下も、上向きの
基調は続く
11月の時間当たり賃金(平均時給)は前月比▲0.1%と市場予想(同+0.2%)を下
回った。前年同月比では+2.5%となった。7年4ヵ月ぶりの高水準(同+2.8%)となった
10月からは低下したものの、緩やかに賃金上昇率が上向く基調は続いている。
賃金上昇率は金融危機以前に比べて低い伸びにとどまっている。主に小売やレ
ジャー・接客等、低賃金の業種や職種において雇用が増加する傾向にあることに加
えて、労働生産性上昇率の低下、グローバル化やIT化等の影響もあり、構造的に
賃金が上昇しづらくなっている面はある。
ただ、労働需給は引き締まってきているため、今後も賃金上昇率は徐々に高まっ
ていくとみている。なお、週平均労働時間は10月と同水準の34.4時間となった。
米失業率と賃金の推移
(月次:2008/1~2016/11)
(%)
4.5
(%)
3
平均時給・前年同月比(左目盛)
4.0
4
失業率(右逆目盛)
3.5
5
3.0
6
2.5
7
2.0
8
1.5
9
1.0
10
0.5
11
08
09
10
11
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13
14
15
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(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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2016/12/5
マーケット・フォーカス
個人消費の増加と労
働市場の改善を軸と
する米国経済の好循
環は続く見通し
以上のように、11月の雇用統計は、雇用者数堅調なペースで増加が続いており、
失業率がさらに低下する等、労働市場の改善が続いていることを示す結果となっ
た。米国の労働市場は完全雇用*(FOMC参加者が想定する長期的な失業率の均
衡水準は中央値で4.8%)の状態に近づいているといえよう。
*完全雇用とは、働く意欲と能力をもち,現行の賃金水準で就業を希望するすべての人が雇用され
ている状態をいう
労働市場が完全雇用の状態に近づいているということは、労働参加率の持続的な
上昇、もしくは潜在成長率を上回る成長が続かない限り、雇用の増加ペースは低下
していく。実際、今年1月~11月の雇用者の増加数は月平均+18.0万人と失業率を
安定的に保つペースとしては十分であるものの、昨年1年間の同+22.9万人からは
鈍化している。一方、労働需給のひっ迫にともなって、賃金上昇率は高まってくると
考えられる。
このため、今後、雇用の増加ペースが低下していくとしても、賃金の伸びが補う形
で所得の増加が続くとみられる。こうした所得の増加が個人消費を中心とする米国
経済の緩やかな成長を支えるとともに、それがさらなる労働市場の改善につながっ
ていくという、米国経済の好循環は今後も続くとみている。
12 月利上げ は 確定
的、2017年は財政政
策と賃金上昇がポイ
ントに
米大統領選後も金融市場でリスク回避の動きが強まる動きはみられず、今回の雇
用統計が堅調な結果であったため、次回12/13~14に開催される米連邦公開市場
委員会(FOMC)での利上げは確定的といえる。もっとも、すでに金融市場では12月
の利上げが十分に織り込まれているため、利上げ自体は驚きとはならないだろう。
焦点は、その後の利上げペースである。みずほ証券投資情報部では現時点で
2017年の利上げは2回と予想している。12月FOMCで示される参加者の政策金利
見通しも9月の2回から据え置かれ、慎重なペースで利上げを行っていく米連邦準
備理事会(FRB)の姿勢に大きな変化はないと考えている。
ただし、①労働需給のさらなる引き締まり、②トランプ次期大統領による財政出動、
等を受けて、賃金や物価の上昇率が加速していく展開となれば、FRBが利上げ
ペースを加速する可能性も出てこよう。今後は賃金や物価指標にこうした動きがあら
われるかどうかに注目していきたい。
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2016/12/5
金融商品取引法に係る重要事項
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