11月7日号 経済 米国 雇用統計は12月FOMCでの利上げ

マーケット・フォーカス
経済:米国
2016/
11/7
投資情報部
シニアエコノミスト
宮川 憲央
雇用統計は12月FOMCでの利上げに十分な内容
 10月の非農業部門雇用者数は前月比+16.1万人となった。市場予想は下回ったものの、引き
続き堅調なペースで雇用は増加している。
 10月の平均時給は前年同月比+2.8%と7年4ヵ月ぶりの水準に高まった。労働需給の引き締ま
りを受けて、今後も賃金上昇率は徐々に高まっていくとみられる。
 今回の雇用統計は12月の米連邦公開市場員会(FOMC)で利上げを決定する判断材料とし
ては十分な内容といえる。みずほ証券投資情報部では、次回11月の雇用統計が引き続き労
働市場の改善を示し、金融市場の不安定化が生じなければ、12月に利上げが決定されると
いう見方を維持している。
堅調なペースでの雇
用増加が続く
10月の非農業部門雇用者数は前月比+16.1万人となり、市場予想(ブルームバー
グの集計では+17.3万人)を下回る結果となった。一方、過去2ヵ月分の雇用者数は
合計4.4万人の上方修正となった(8月分は前月比+16.7万人から同+17.6万人、9月
分は同+15.6万人から同+19.1万人にそれぞれ上方修正)。この結果、8月~10月ま
での3ヵ月間平均の雇用者の増加数は+17.6万人となり、基調としては堅調なペース
で雇用は増加している。
内訳では、雇用者数のうち、財生産部門は前月比±0万人、民間サービス部門は
同+14.2万人、政府部門は同+1.9万人となった。業種別では鉱業や製造業のほか、
小売で雇用が減少した一方、教育・ヘルスケア、専門・企業向けサービス、金融・不
動産・リース、建設、レジャー・接客等で増加した。なお、民間部門262業種における
前月比ベースでのディフュージョン・インデックス([雇用が増加した業種の割合+前
月比横ばいの業種の割合]/2)は59.2%と9月の57.1%から上昇した。
10月の失業率は4.9%と9月の5.0%から低下し、市場予想と一致した。もっとも、失業
率の変化の内訳をみると、労働参加率(16歳以上人口に占める労働力人口の割
合)が62.8%と9月の62.9%から低下し、就業者数(家計調査ベース)は前月比▲4.3
万人となっている。10月の失業率の低下は、何らかの理由で職探しを断念した動き
によるところが大きく、内容としては労働市場の改善を示すものといえない。一方、
広義の失業率(失業者に加え、経済的理由によるパートタイマーや職探しを断念し
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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マーケット・フォーカス
た人等を加味)は9.5%と9月の9.7%から低下し、経済的理由によるパートタイマーが
前月比▲0.5万人となる等、雇用の質の面では改善もみられた。
基調としては、雇用の増加が続く一方、労働参加率が上昇してきたことで、失業率
の改善は足踏みしている。労働市場にはなお需給の緩みが残っているとみられる。
ただ、今後も現状に近いペースで雇用の増加が続いていけば、次第にこうした緩み
も解消していくとみられる。
米雇用関連指標
(月次:2005/1~2016/10)
(1,000人)
600
(%)
11
400
10
200
9
0
8
▲ 200
7
▲ 400
6
▲ 600
5
非農業部門雇用者数・前月差(左目盛)
▲ 800
4
失業率(右目盛)
▲ 1,000
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
3
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
米産業別雇用者数の推移
(万人)
雇用者数
16/08
16/09
16/10
前月差
非農業部門
民間
財生産
鉱業
建設業
製造業
民間サービス
卸売
小売
運輸・倉庫
公益
情報通信
金融・不動産・リース
専門・企業向けサービス
教育・ヘルスケア
レジャー・接客
その他サービス
政府部門
14,460
12,239
1,960
68
665
1,228
10,279
593
1,597
492
56
278
832
2,029
2,277
1,555
570
2,221
14,479
12,258
1,962
68
667
1,227
10,296
594
1,599
491
56
278
832
2,037
2,281
1,556
572
2,222
14,495
12,272
1,962
68
668
1,226
10,310
595
1,599
492
57
278
834
2,042
2,286
1,557
572
2,224
16.1
14.2
0.0
▲ 0.2
1.1
▲ 0.9
14.2
0.6
▲ 0.1
0.8
0.1
0.4
1.4
4.3
5.2
1.0
0.6
1.9
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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マーケット・フォーカス
米労働参加率の推移
(月次:2005/1~2016/10)
(%)
67
66
65
64
63
62
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
賃金上昇率は7年4ヵ
月ぶりの水準に高ま
る
10月の時間当たり賃金(平均時給)は前月比+0.4%と市場予想(同+0.3%)を上
回った。前年同月比では+2.8%と、7年4ヵ月ぶりの水準まで高まった。賃金上昇率は
徐々に高まってきている。
賃金上昇率は金融危機以前に比べて低い伸びにとどまっている。主に小売やレ
ジャー・接客等、低賃金の業種や職種において雇用が増加する傾向にあることに加
えて、労働生産性上昇率の低下、グローバル化やIT化等の影響もあり、構造的に
賃金が上昇しづらくなっている面はある。また、前述のように、現時点では労働市場
の需給の緩みに解消余地が残っているとみられるため、賃金上昇率が加速していく
には今しばらく時間を要する可能性がある。
ただ、労働参加率が上昇するなかで、雇用の増加が続いていけば、労働需給の
緩みも着実に解消に向かっていくため、今後も賃金上昇率は徐々に高まっていくと
みている。なお、週平均労働時間は9月と同水準の34.4時間となった。
米失業率と賃金の推移
(月次:2008/1~2016/10)
(%)
4.5
(%)
3
平均時給・前年同月比(左目盛)
4.0
4
失業率(右逆目盛)
3.5
5
3.0
6
2.5
7
2.0
8
1.5
9
1.0
10
0.5
11
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
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2016/11/7
マーケット・フォーカス
個人消費の増加と労
働市場の改善を軸と
する米国経済の好循
環は続く見通し
以上のように、10月の雇用統計は失業率の内容こそ良くなかったものの、雇用者
数は堅調なペースで増加が続いており、賃金上昇率が上向く等、労働市場の改善
が続いていることを示す結果となった。なお、今年1月~10月の雇用者の増加数は
月平均+18.1万人と昨年1年間の+22.9万人から鈍化しているものの、失業率を安定
的に保つペースとしては十分ともいえる。米国の労働市場は完全雇用(FOMC参加
者が想定する長期的な失業率の均衡水準は中央値で4.8%)の状態に近づいている
状況に変わりはない。
今後については、労働市場が完全雇用の状態に近づいているということは、労働
参加率の持続的な上昇、もしくは潜在成長率を上回る成長が続かない限り、雇用の
増加ペースは低下していく。一方、労働需給のひっ迫にともなって、賃金上昇率は
高まってくると考えられる。このため、雇用の増加ペースが低下していくとしても、賃
金の伸びが補う形で所得の増加が続くとみられる。こうした所得の増加が個人消費
を中心とする米国経済の緩やかな成長を支えるとともに、それがさらなる労働市場
の改善につながっていくという、米国経済の好循環は今後も続くとみている。
12月FOMCでの利上
げには十分な内容
11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り、利上げは見送られたもの
の、声明文では12月の利上げに向けて状況は前進しているという認識が示された。
今回の雇用統計は、12月利上げを決定する判断材料としては十分な内容といえ
る。すでに、フェデラルファンド(FF)金利先物からブルームバーグが算出する利上
げ確率は8割弱まで高まっているが、統計発表後も76.0%と高い水準を維持した。
みずほ証券投資情報部では、①11月の雇用統計も引き続き労働市場の改善を示
し、②米大統領選の結果等、金融市場が不安定化する動きが生じなければ、12月
に利上げが決定されるとの見方を維持している。
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2016/11/7
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マーケット・フォーカス
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