11月1日号 経済 日本 やはり動かなかった日銀 (PDF

2016/
マーケット・フォーカス
11/1
投資情報部
シニアエコノミスト
宮川 憲央
経済:日本
やはり動かなかった日銀
 日本銀行は10/31~11/1に開催された金融政策決定会合において現状維持を決定した。一
方、消費者物価の見通しは下方修正され、目標である2%に達する時期は従来の17年度中か
ら、18年度頃に後ずれとなった。
 今回の結果は市場の予想通りであり、これまでのように円高が進む動きもみられなかった。
 物価目標の早期達成が難しいため、現在の金融緩和や低金利は長期化する可能性が高
い。一方、過度な金利低下や長短金利差の縮小には副作用があるため、急速な円高への対
応といった状況でなければ、当面、追加緩和は見送られる可能性が高い。
予想通り物価見通し
を下方修正する一
方、政策は現状維持
日本銀行は10/31~11/1に開催された金融政策決定会合において現状維持を決
定した。具体的には短期金利を▲0.1%、長期金利(10年国債金利)をゼロ%程度で
推移するように長短金利の操作(イールドカーブ・コントロール)を行い、ETF等の資
産買い入れも継続する。また、長期国債の買い入れについても、引き続き年間80兆
円程度の増加をめどとして、金利操作方針を実現するように運営することとされた。
今回の会合では、先行きの経済・物価見通しや上振れ・下振れ要因、そのもとで
の金融政策運営の考え方を整理した「経済・物価情勢の展望(以下、展望レポー
ト)」が発表された。注目される消費者物価の見通しについては、2017年度、18年度
ともに前回7月の見通しから下方修正され、目標である2%程度に達する時期につい
ても、従来の17年度中から、18年度頃に後ずれとなった。
政策委員の大勢見通し(2016年10月)
対前年度比、%、なお< >内は政策委員見通しの中央値
2016年度
7月時点の見通し
2017年度
7月時点の見通し
2018年度
7月時点の見通し
実質GDP
消費者物価指数
(除く生鮮食品)
+0.8~+1.0
<+1.0>
+0.8~+1.0
<+1.0>
+1.0~+1.5
<+1.3>
+1.0~+1.5
<+1.3>
+0.8~+1.0
<+0.9>
+0.8~+1.0
<+0.9>
▲0.3~▲0.1
<▲0.1>
0.0~+0.3
<+0.1>
+0.6~+1.6
<+1.5>
+0.8~+1.8
<+1.7>
+0.9~+1.9
<+1.7>
+1.0~+2.0
<+1.9>
(注) ・「大勢見通し」は各政策委員が最も蓋(がい)然性の高いと考える見通しの数値について、最大値と最小値を1個ずつ除いて、幅で示したもの
・各政策委員は、すでに決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込みを参考にして、上記の見通しを作成
・原油価格(ドバイ)については、1バレル50ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて50ドル台後半に緩やかに上昇していくと想定
・消費税率については、2019年10月に10%に引き上げられることを前提としている
出所:日本銀行の資料よりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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マーケット・フォーカス
消費者物価見通しの方向性としては、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期
的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には2%に向けて上昇率
を高めていくとされている。ただし、前述のように目標達成に向かう勢いは前回見通
しに比べて弱まっており、先行きについても下振れリスクの方が大きいという評価が
なされている。今後、物価上昇率が上向く見通しとなっているため、急いで追加緩
和を行う必要はない一方で、下振れリスクが大きいことから現在の金融緩和を継続
し、必要であれば追加緩和の余地も残しているとみられる。
金融緩和は 長期化
する一方、追加緩和
は温存へ
このように、日銀は物価見通しを下方修正する一方で、政策は現状維持を決定し
た。日銀は9月の枠組み変更において、大胆な緩和で早期の目標達成を目指す短
期決戦から、物価目標の達成まで時間を要することを念頭に、粘り強く緩和を続け
る長期戦にシフトしたとみられていたが、今回の結果によってそうした見方が確認さ
れたといえよう。市場の予想通りの結果となったため、金融市場の反応も限られたも
のとなっており、従来のように会合後に円高が進む動きはみられていない。政策の
見通しを立てやすくし、市場の過剰反応を抑えるという点では前進したといえる。
今後について考えると、物価目標の早期達成が難しい状況には変わりがない。こ
れまでの原油価格下落の影響は和らいでいくものの、消費低迷や賃金の伸び悩
み、これまでの円高の影響、企業や家計が予想する物価上昇率の低下等から、物
価上昇圧力は限定的といえる。
このため、現在の金融緩和やそのもとでの低金利は長期化する公算が大きく、少
なくとも黒田総裁の任期である2018年4月までは現在の枠組みでの金融緩和が継
続すると考えている。一方で、過度な金利低下や長短金利差の縮小には副作用が
あることをふまえると、安易に追加緩和を打ち出すことも難しいだろう。内外経済の
下振れや金融市場の不安定化、とくに急速な円高が生じた場合の対応といった状
況でなければ、当面、マイナス金利の深掘りをはじめする追加緩和は見送られると
予想している。
先行きの成長期待が低下するなかでは、低金利が消費や投資を刺激する効果は
乏しく、円安等による賃金上昇をともなわない物価上昇はかえって消費者の購買力
を損なうことになる等、金融政策のみで物価目標を達成することには限界がある。物
価目標の達成のためには、財政政策による需要の下支えや成長戦略による潜在成
長率や成長期待の引き上げ等、政府との連携が重要といえよう。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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金融商品取引法に係る重要事項
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