マーケット・フォーカス 経済:インド 2017/ 2/6 投資情報部 シニアエコノミスト 折原 豊水 市場は予算案のインフラ投資増や財政規律維持を好感 インドの2017年度予算案は財政赤字をGDP比3.2%に抑制し、財政規律を維持。歳出はインフ ラ投資を増加させる一方、補助金を抑制しメリハリをつける 公的債務残高GDP比は依然として高いが、中期的に財政赤字の抑制や国債利回りの安定に より低下が続く見込み インド株やインドルピーは予算案の内容を好感し、堅調。米政権の政策がインドの輸出セク ターに与える影響を見極めたあと、バリュエーションの改善もあり17年後半は底堅い展開か 17 年度予算は 財政 規律を維持するなか でインフラ投資を増 加 インド政府は2/1、2017年度(17年4月~18年3月)予算案を発表した(なお、インド では当該予算は18年度予算と表記されるが、日本等海外の表記に準じて17年度予 算とする)。17年度の財政収支GDP比は▲3.2%と16年度の同▲3.5%から改善する。 中期財政計画では続く18年度は同▲3.0%、19年度も同▲3.0%と財政目標(▲3.0%) を達成するとした。事前の市場予想をやや上回り、財政規律が維持された。 歳出は21.5兆ルピー、前年度比+6.6%と16年の同+12.5%から伸びを抑制した。内 訳では、利払いや軍事費、補助金、年金等からなる経常支出の伸びを同+5.9%に抑 制した一方、インフラ投資が含まれる資本支出は同+10.7%とした。インフラ投資で は、道路や鉄道、電力向けが高めの伸びとなっている。 歳入については、高額紙幣の廃止にともなう地下経済の封じ込めや所得の把握 により個人所得税が増加した模様で、16年度(修正予算)、17年度(当初予算)とも 前年度比で2割を上回る高い伸びとなっている。政府は17年度に低所得者に対す る所得税率を10%から5%に引き下げるほか、中小企業に対する法人税を30%から25% に引き下げることで16年11月の高額紙幣の廃止にともなう経済の一時的な下押しに 対する不満を和らげる。税収の想定の前提となる17年度の名目経済成長率は前年 比+11.75%と16年度の同+11.9%から鈍化を見込む。 財政赤字のファイナンスについては、5.5兆ルピーの財政赤字のうち、約64%が国 債発行等による市場からの借り入れとした。同比率は15年度に85%だったが、16年 度は68%に低下、17年度も抑制された水準となる。背景には、高額紙幣の廃止で新 紙幣への交換に一時的に上限が設けられた等により、旧紙幣を預金へ預け入れる 動きが急増したため、政府は郵便貯金(「少額貯蓄制度」)からの資金調達を全体の この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2017/2/6 マーケット・フォーカス 18%まで増加させることができたためである。こうした動きを受けて10年国債利回りは 高額紙幣の廃止発表後、6.7%~6.8%台から6.1%~6.2%台に一時低下した。 このほか、海外からの直接投資の認可を担っていた外国投資促進委員会を17年 度中に廃止し、海外直接投資の規制緩和を進めるとしている。 公的債務残高GDP比 は低下続く 政府債務残高GDP比は中央政府ベースで2016年度は46.7%、17年度は44.7%、18 年度は42.8%、19年度は40.9%まで低下する。国際通貨基金(IMF)の予想によると地 方政府を含めた公的債務残高GDP比は16年が68.5%と引き続き高いが、19年には 63.5%まで低下する見込み。財政赤字が抑制されていることに加えて、名目経済成 長率が国債利回りを大きく上回ることが中期的に公的債務残高GDP比の低下につ ながっている。 インドの財政赤字と補助金GDP比 公的債務残高/GDP比率と長期金利、名目成長率 (年度:2003~2019) (%) 2 石油製品(右目盛) 食料品(右目盛) 一般政府・財政赤字(左逆目盛) 3 (年度:1995~2019) 肥料(右目盛) 中央政府・財政赤字(左逆目盛) (%) 4.0 3.9 3.2 3.0 3.0 3.5 4 3.0 5 2.5 6 2.0 7 1.5 8 1.0 9 0.5 10 (%) 22 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0.0 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 (注1)中央政府財政赤字の17~19年度は中期財政目標 (注2)石油製品、肥料、食料品への補助金は中央政府ベース(17年度まで) (注3)一般政府(中央・地方政府)財政赤字は16年度まで 出所:インド準備銀行、財務省資料よりみずほ証券作成 一般政府債務GDP比率(右目盛) 国債利回り(左目盛) (%) 名目GDP成長率(左目盛) 85 80 75 70 65 60 55 50 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 (年度) 90 (注)一般政府債務、名目GDPはIMFデータで16年以降IMF予想(16年10月)、 国債利回りは各期間平均、16年は4-11月まで 出所:CEIC、IMF、インド中銀資料よりみずほ証券作成 (年度) インドの2017年度予算案 歳入 税収(グロス) 法人税 個人所得税 関税 中央物品税 サービス税 税収(州のシェア除く、ネット) 非税収入 資本収入 公営企業株売却等 借り入れ等 歳出 資本支出 経常支出 利払い 軍事費 補助金 プライマリーバランス 財政収支 財政収支GDP比(%) 15年度 実績 17,908 14,556 4,532 2,876 2,103 2,881 2,114 9,438 2,513 5,958 421 5,328 17,908 2,530 15,378 4,417 2,259 2,641 ▲ 911 ▲ 5,328 ▲ 3.9 16年度 当初 19,781 16,309 4,939 3,532 2,300 3,187 2,310 10,541 3,229 6,010 565 5,339 19,781 2,470 17,310 4,927 2,491 2,631 ▲ 412 ▲ 5,339 ▲ 3.5 16年度 修正 20,144 17,032 4,939 3,532 2,170 3,874 2,475 10,888 3,348 5,908 455 5,343 20,144 2,798 17,346 4,831 2,480 2,605 ▲ 512 ▲ 5,343 ▲ 3.2 (単位:10億ルピー) 17年度 当初 前年比(%) 21,467 6.6 19,116 12.2 5,387 9.1 4,413 24.9 2,450 12.9 4,069 5.0 2,750 11.1 12,270 12.7 2,888 ▲ 13.7 6,310 6.8 725 59.3 5,465 2.3 21,467 6.6 3,098 10.7 18,369 5.9 5,231 8.3 2,624 5.8 2,723 4.5 ▲ 235 --▲ 5,465 --▲ 3.2 --- (注)年度ベース(4月~3月期)、17年度政府予算ベース、プライマリーバランス(基礎的財政収支)は 財政収支から利払い等を除いたもの 出所:インド財務省資料よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2017/2/6 マーケット・フォーカス 予算案の内容を受け て、株式市場やル ピーは上昇 インドルピーは2016年の米大統領選挙においてトランプ氏が当選し、米長期金利 が上昇したことで11月下旬には1ドル=68.8ルピーと史上最安値となった。その後、 米金利の上昇が一服すると12/8には67.3ルピー前後まで反発する場面があった が、12月中旬の米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ実施をはさんで、17年1月 は68ルピー前半を中心に推移。2/1の予算案の発表を受けて、財政規律が維持さ れたことを好感し、67.3ルピー台までルピー高となっている。 一方、インド株式市場でも予算案の発表を受けて、SENSEX30指数が2/1に28141 ポイントと前日比+1.8%上昇し、週末にかけて底堅く推移。海外投資家の証券投資 の売買動向をみると、16年11月は58億ドル、12月は40億ドルの売り越しと13年5月 のバーナンキショック時以来の高水準の売り越しとなったが、17年1月は5億ドルの 売り越しにとどまった。 米政権の政策を見極 めたあと、景気回復 期待により株式市場 は徐々に底堅い展開 今後の株式市場は、予算案の内容を好感し、しばらく底堅く推移するとみている。 その後は、米トランプ政権の政策がインドに与える影響やFRBの利上げペースを見 極めることで徐々に上値が重くなる可能性もあろう。特に、ITサービスや医薬品業界 に与える影響に留意が必要とみられる。就労ビザ取得手続きの厳格化等による移 民の流入抑制がインド人を含むIT技術者にまでおよぶのか、また、米国の薬価引き 下げに向けた動きが米国やインドの製薬企業の収益の重しとなるのか等が注目点 となろう。また、今後行われる大規模地方選挙は、モディ政権の政策に対する国民 の評価をみるうえで注目される。すでにパンジャーブ州やゴア州で投票が開始さ れ、ウッタルプラデシュ州(人口が2億人近くでインド最大)を含む3州も3月にかけ投 票を控えており、3月11日には一斉開票が行われる予定。州議会選挙の結果を反 映して、連邦上院の総議席245のうち、2割弱に相当する43議席程度が入れ替わる 形だ(連邦上院は州議会の議席が反映される間接選挙)。 バリュエーション面でみると、上記に加え、高額紙幣の廃止にともなう景気への一 時的な下押し観測により業績見通しが慎重となっており、今期PERは19.1倍まで上 昇、過去のPER平均の1標準偏差を小幅上回っている。 もっとも、2017年後半になってくれば、①高額紙幣の廃止にともなう景気下押しの 一巡やインフラ投資の増加により景気が回復する、②17年4月以降の物品サービス 税(GST)導入等によりモディ政権の改革期待が続く、③来期PERは16.1倍と04年以 降のPER平均(16.2倍)程度まで低下する、等により、底堅い展開を見込んでいる。 一方、ルピーは、トランプ政権の財政政策や保護主義が米長期金利や新興国の 貿易に与える影響を見極めるため、しばらくボックス圏での推移が続こう。17年後半 にはインドの景気回復や株高期待により底堅く推移するとみている。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2017/2/6 マーケット・フォーカス 海外機関投資家の証券投資とインドルピー (月次:2009/1~2017/2) (10億ドル) 8 6 4 2 0 ▲2 ▲4 ▲6 ▲8 (1ドル=ルピー) 40 44 48 52 56 60 64 68 72 モディ政権発足 米利上げ ↓ルピー安 ↓資金流出 09 10 11 トランプショック 12 13 14 株式投資(左目盛) 15 16 17 債券投資(左目盛) (年) インドルピー相場(右逆目盛) (注)投資はネット・ベースで17年1月まで、インドルピーは2/2まで 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 インド・SENSEX30と予想PERの推移 (週次:2004/1/4~2017/2/2) (ポイント) SENSEX30(左目盛) 予想PER・平均(右目盛) 32000 予想PER(右目盛) 標準偏差(右目盛) (倍) 40 28000 35 24000 30 20000 25 16000 20 12000 15 8000 10 4000 5 04 05 06 07 08 09 10 11 12 (注)予想PERの04年以降の平均は16.3倍 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 13 14 15 16 17 (年) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4 2017/2/6 マーケット・フォーカス 金融商品取引法に係る重要事項 ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料を ご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込 み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-170206-05 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 5
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