百鬼夜行の行く、人理 修復 浜菊稀有 ︻注意事項︼ このＰＤＦファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にＰＤＦ化したもので す。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でＰＤＦファイル及び作品を引用の範囲を 超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。 ︻あらすじ︼ ぽっくりいったぬらりひょん︵ぬら孫︶がサーヴァントになってカルデアに参戦する だけの話。 目 次 魑魅魍魎の主、顕現 ││││││ 1 様々な要因が彼を生きさせた。 ││││しかし、代償として心の臓を失った。 躯へと成り果て、体力の大部分を失った。 ・ ・ ・ ・ その後遺症は大きかった。寿命は大幅に縮み、たかが千年でその姿は老人のごとく矮 ・ だがしかし、ぬらりひょんはその幸運を見事に勝ち取った。勝ち取ってみせた。また 一歩選択を誤れば即、死へと繋がるような死 の 遊 戯の戦いだった。 デンジャラス・ゲーム だった。それこそまるで行く筋もの紐束の中から目的の一本を引き当てるかのごとく、 実力、戦力、地理と、様々な観点からみてもその勝機は極わずかなことは明白な戦い た。 妖の総大将、ぬらりひょんははるか五百年前、大阪城にてとある一匹の妖怪と相決し 年を軽く生きる妖にとってその時間はまさに刹那の如しだ。 後数百年、否数十年の生命。言葉に表し、人の寿命と比べれば雲泥の差であろうが千 ぬらりひょんは妖怪である。が、それでも寿命は存在した。 魑魅魍魎の主、顕現 1 魑魅魍魎の主、顕現 2 また、呪いにより妖との交配で子孫を作ることが不可能となり必然的にぬらりひょん の子供は、また孫は混ざりものとなった。 鵺 一概に、それが悪いことであったというわけではない。だが妖の世界において確かに それは、デメリット足りえた。 ││││まあ尤も、その呪いも孫の世代にて解呪されたのだが。 とある妖怪、羽衣狐のかけた呪縛はすでに解かれた。ぬらりひょんの孫によって晴明 は倒され、全国各地の妖怪の大一掃││││清浄は防がれた。 その後は正に怒涛の日々だった。 しかしぬらりひょんは隠居した身だったが、それを見ているのは楽しくて愉しくて、 流石我が孫だと宣いながら││││やはり妖として暴れられないというのは悔しかっ 鵺 た。 晴明討伐の際、ぬらりひょんは己が出力を上げ、相対的に若返った。本来は孫のため 妻 の鵺への助力にするつもりだった切り札も使った。それにより奴良組は救われ、死の淵 まで消耗したがなんの奇跡か珱姫とも一時的に、夢現の刹那であったが、逢え、生き延 び孫を見届けることができるようになったのだ。 3 大円団。正に理想的だ。ぬらりひょんの孫は妖物にとっての救世主となり、ぬらり ひょんの創設した奴良組はさらなる繁栄と拡大を得た。 が、やはり老いたとしても、ぬらりひょんはどこまで行ってもやはり〝妖〟だった。 そして妖としての本能が、かつての生き様を、興奮を忘れられるはずもなかった。 だからこそぬらりひょんは死ぬ瞬間、泣きついてくる孫や己が百鬼夜行らをかすれた 視界におさめながらも、思ってしまった。 〝やっと死ねる〟││││と。 それは泣きついてくる孫らからしてみれば、侮蔑のようなものだろう。 だがそれでも、やはり妖怪して、かつて魑魅魍魎の主として京を馳せたぬらりひょん からしてみれば、決して口には言えないことだが、この世界はやはり生き心地が悪かっ た。 そんな気持ちがあったからか、ぬらりひょんは孫、奴良リクオの子供、つまりは曾孫 を見ることはついぞ叶わなかった。それが心残りといえば心残りであるが、やはり死ね るということはぬらりひょんにとって、救いだったのだった。 ▼▼▼▼ 少年と少女がいた。 白い、まるで拘束具のような印象をうける服を纏う少年の名は藤丸六花。このカルデ アにおいての最後のマスターであり、人理防衛の要である少年だ。 その隣に立つ、眼鏡をかけ白のジャケットを羽織った少女の名はマシュ・キリエライ ﹂ ト。デミ・サーヴァントと呼ばれる、体内に英霊の力を宿した少女である。 ? ﹁む、武者震い、さ⋮⋮ ﹂ ﹁声が震えているのですが⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮お、おっけー﹂ ﹁先輩。準備はいいですか 魑魅魍魎の主、顕現 4 ! ぐっとサムズアップする六花。それをマシュは﹁先輩はいつも通りみたいですね﹂と、 マシュ お楽しみ中のところ悪いけどそろそろ始めるけど 呆 れ 声 を だ し な が ら 嘆 息 し て い る。そ ん な マ シ ュ の 様 子 に 言 葉 を 返 そ う と し た 六 花 だったが。 ﹄ ﹃あー、あー。藤丸君 いいかな ? ﹃そうかい ﹂ じゃあ始めてしまってくれ ﹁あ、ああ⋮⋮ ﹄ ! という背景がある。 にサーヴァントも数騎いるのだが、現在は戦力補充中であり、そして今に繋がっている ちなみに彼らは現在第一特異点であるフランスを修復したばっかだったりする。既 は無かった。 不敵になる性格であるのことはこの場にいる全員が知っているので誰も突っ込むこと 少し引き腰気味な六花。まあ彼が無駄に用心深く、かといって不思議なところで大胆 ! ? ﹁あ、ドクター。先輩は準備完了だそうです﹂ されている部屋上部にある管制室におり、通信を交えて六花たちに話しかけていた。 アーキマンの声がどこからとも無く聴こえてくる。現在、ロマニは召喚サークルの設置 今 や こ の カ ル デ ア の ト ッ プ へ と 大 出 世 を 果 た し た 医 療 ス タ ッ フ リ ー ダ ー、ロ マ ニ・ ? ? 5 ⋮⋮閑話休題。ぽいと六花が数個の虹色のトゲトゲを放る。これはロマニ曰く高度 な魔術触媒だそうで、その名も聖晶石という。綺麗な放物線を描いたそれは召喚サーク ルの中で二回バウンドしてから、まるで砂のように中に溶けていった。 そして始まる、英霊召喚。かつてアインツベルン、マキリ、遠坂ら通称御三家によっ て冬木で執り行われていた聖杯戦争の召喚プログラムをルーツとし、改造を加えたこれ は元々簡略化されていた召喚儀式を更に簡略化させていた。もはや呪文など必要ない 代物であったりする。元一般人である六花からしてみれば﹁せめて一言くらいあっても ﹂だとか﹁我が呼び声に応じいでよ、サーヴァント ﹂と言いたくなるような事案だったが、マシュやロマニ、そして生き残ったカルデア スタッフたちの目の前で﹁サモン ! ﹃おっ ﹄ ! ﹂ サークルからは三重の金の輪が展開され、回転し、猛烈な光を放っていたからだ。 すごいの、確かに来るかもしれない。そう六花は確かに思った。何せ目の前の召喚 凄い魔力値だ これはもしかしたらすごいのが来るかもしれないよ藤丸君 ﹂だとか叫ぶわけにもいかず、今現在に至っていたりする。 ! ! ! ! ﹁ま、眩しいです先輩⋮⋮ 魑魅魍魎の主、顕現 6 ! ﹁ごめんそれは僕も一緒⋮⋮ しかし││││ きたっ ﹂ ⋮⋮⋮⋮え ﹂ ﹂ り、そして煙った召喚サークルにゆらりと人影が一つ、現れた。 二人仲良く手を翳し、目を細める。やがて光は臨界点を迎えたのか天高く巻き起こ ! ⋮⋮⋮⋮え ? ﹁⋮⋮ ﹁やりましたね、先輩 ? ! ﹁そ、そんな ﹂ 確かに先程は影が⋮⋮ ﹁ろ、ロマンっ、ヒルへ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ﹂ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ﹄ 二人 確かにサーヴァントは召喚されている。それ ・ まだサーヴァントはその部屋の中にいる ・ はこちらで観測した霊力値で明らかだし、なによりこちらも既に補足している !! その言葉に、二人の肩がが跳ね上がる。マシュはデミ・サーヴァントとしての鎧を纏 とも気をつけて ! ! ﹃こちらも状況は把握しているよ⋮⋮ ! ! ! !? 人影一つ見当たらず、誰もいなかったのだから。 れも当然だ。なにせ煙の晴れた、確かに先程まで人影が認められた召喚サークル内には その人影を望み、喜びの声を上げるも次の瞬間二人の声は呆けたものとなる。だがそ ! ! 7 い、盾を構えた。六花もまたマシュの後に控えながら、いつでもサーヴァントを呼び出 せるように令呪の起動準備に入っている。 二人は壁を背後に、あたりを見回す。召喚サークルのある召喚部屋はかなり殺風景な 様相をしている。隠れられるところなどほとんど無く、であるならば必然的に召喚され 正確な位置は補足出来ますか ﹂ 藤丸君、後ろだ ﹄ たのは︻気配遮断︼をもったアサシンであろうと六花は当たりをつけた。 今やって││││ッ !? と六花は反射的に振り向いていた。だがそこには何一つ見当たらな ! ﹁ドクター ﹃待って ││││え !? ! た。 ﹁敵影、補足出来ません⋮⋮ ﹂ ! ヒュ、と風を切る音が聞こえた。そして感じる、気配。 そして幻視する。死神の鎌を。 ような寒気を感じ取った。そして己が勘を頼りに、その場にしゃがみ、頭を下げる。 ロマニが焦った様子で言う。その刹那、六花はまるで背中に氷柱を突っ込まれたかの !? !? 確かにそこに反応が⋮⋮ ﹄ い。数メートル先には白いよくあるカルデアの壁があり、人影どころか物一つなかっ ? ! ﹃そんな馬鹿な 魑魅魍魎の主、顕現 8 ﹁ほぅ、今のを感じるか。思いの外やるのぅ、坊主﹂ 聞こえてきた声は、何処か飄々とした声だった。だけど何処か浮世離れしていて、不 思議な渋みがある声だ。 視界を上げる。そこには妖しく煌めく一振りの日本刀を片手にキセルをふかす一人 の男がいた。後頭部から金色に帯びた白髪と黒髪が双重に重なりほぼ水平に伸びて先 端が結われている特徴的な髪型をしていて、服は青を基調とした和服を纏っている。ま ﹂ た狐のような動物の毛皮を襟巻にしていて、その男のシルエットを際立たせていた。 ﹁先輩ッ ﹁うわっ、とと ﹂ 襟首を捕まれ、ぐっと無理やり立ち上がらせる六花。二人とも、先程までの死と隣り !? んかい﹂ ﹁なぁに青い顔してやがる。ほれっ、坊主。嬢ちゃんの前だ。さっさと立って男気見せ 六花は反芻する。あれは確実に殺す気だった、と。 ﹁い、悪戯⋮⋮﹂ が﹂ ﹁おうおう、そういきり立つなって嬢ちゃん。ちょっとした悪戯みたいなものじゃろう ! 9 合わせの雰囲気と今の落差に這う這うの体と言った感じである。緊張が抜けた、とも言 うのか。 ﹂ 愉快げに笑う男と疲れた様子でガックリと肩を落とす六花とマシュ。雰囲気は完全 に対極だ。 ﹄ ? 陰陽師か サーヴァント君 なんじゃあ面妖な。お主は何者じゃ ﹂ ? ﹃あのー⋮⋮そろそろいいかい ﹁⋮⋮ぬ ﹃いや、僕らは魔術師だよ﹄ ﹁ほぅ魔術師、か。⋮⋮で、なんじゃそれは ? ? のようなものだ﹄ ? 数秒、言葉を探すように目を積むる男。そして瞼を見開くと、ニヤリと口元に笑みを ﹁六花か。良い名前じゃ。さて、であるならばワシも名乗らなければのぅ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮え、ぁ、⋮⋮えっと、僕は藤丸六花、です﹂ ? ﹂ ふむ。と男が唸る。そしてややあってから﹁おお、そういえば﹂とポンと手を打って。 な話西洋版の陰陽師⋮⋮いや呪術師かな ﹃えっ、と⋮⋮い、今は時間押してるから細かいところは後にするけど⋮⋮。まあ、簡単 ? ? ﹁坊主。お前、名はなんという 魑魅魍魎の主、顕現 10 浮かべて、言った。 ﹂ ワシこそは悪名高き常夜を統べる魑魅魍魎の主、奴良組が初代総大将、ぬらり ﹁聞け ひょん ! 特別じゃ、坊主。お前をワシのマスターとやらに認めてやろう ! ! 11
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