2016年6月13日号(PDF/879KB)

お客様用
2016 年 6 月 13 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
住宅ローン件数(前月比)
今週の注目点
直近
前回
1.7%
-0.7%
日付
経済指標・イベント
6 月 16 日 豪州 5 月 雇用者数変化
前回
市場予測
10,600
15,000
金融市場・原油・為替
指数等
2016年6月10日
2016年6月3日
前週比
2015年6月10日
前年比
S&P/ASX200 指数
5,312.60
5,318.89
-0.1%
5,478.63
-3.0%
S&P/ASX200 不動産投信
1,454.90
1,434.90
+1.4%
1,256.30
+15.8%
豪州 90 日バンクビル利回り
2.01
2.00
+1bps
2.15
-14bps
豪州債券 10 年物利回り
2.10
2.23
-13bps
3.05
-95bps
78.89
78.49
+0.40
95.21
-16.32
0.74
0.74
+0.00
0.78
-0.04
62.30
61.50
+0.8
64.00
-1.7
豪ドル円
豪ドル米ドル(セント)
豪ドル TWI
先週の主な話題
先週の米国株式市場はプラスで始まり最高値に迫りましたが、その後は 6 月 23 日に迫った Brexit(英国の EU 離脱)の国民投票に対
して市場が神経質な展開になり欧州株式市場が下落したことを受けて、米国株式市場も下落して週を終えました。最終的に、欧州株
式市場は 2.7%の下落、中国株式市場は 0.8%の下落、日本株式市場は 0.3%の下落、米国株式市場は 0.2%の下落、豪州株式市場は
0.1%の下落となりました。米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の引き上げを先延ばしにするとの期待感と、Brexit を巡る投資家の
“安全への逃避”行動が債券利回りを低下させ、米ドルの上昇要因となりました。金属価格は下落し、原油価格は上昇したものの、
その上昇分のほとんどを週の後半に失いました。豪ドルは豪州準備銀行(RBA)が政策金利を据え置いたことを受けて急上昇しまし
たが、結局、ほぼ横ばいで週を終えました。
イベントリスクに対する警戒感が高まっており、市場参加者は、今週の連邦公開市場委員会(FOMC)や、何よりも 6 月 23 日に予定さ
れている Brexit の国民投票の結果に注目をしています。Brexit に関する世論が、現在、“離脱”の方に振れていることで、金融市場
では、Brexit を巡るリスクや、英国経済に与える脅威(英ポンドは金曜日に 1.4%下落)に対して、以前にも増して注視する姿勢を強
めており、また、ユーロ圏の安定性についても再び懸念が高まっています。これらすべてのことが、“安全への逃避”を促す要因と
なっており、債券利回りの低下や米ドルの上昇につながっています。私の見方では、昨年のスコットランド独立を巡る住民投票と同
様に、判断を保留している有権者は現状維持を選択すると考えていますが、いずれにしても接戦となるでしょう。
インデックス・プロバイダーの MSCI は、中国本土の株式(A 株)を新興国株式指数と世界株式指数に含めるかどうかを 6 月 14 日に
決定する予定ですが、これは中国株式市場に大きな影響を与えるでしょうか?確かに短期的には大きな関心を呼ぶかもしれませんが、
どのような場合においても構成銘柄への組み入れは時間をかけて行われることから、指数に対する影響はそれほど大きなものではな
く、限定的なものとなる可能性もあります。香港・上海株式市場の相互取引が開始された時も市場は短期的に熱狂を見せました。中
国 A 株を世界株式指数に含めることは、長い目で見れば外国人投資家の中国株に対する関心を高めることになり、中国株式市場の追
い風となりますが、短期的にはその他の要因が大きく影響を与えるでしょう。
1/3
FRB は利上げを先延ばしにすると見込まれ、それは正しい判断でしょう。しばらくの間、もう一段の利上げに対する期待が高まって
いましたが、FRB 議長のジャネット・イエレンは、5 月の雇用者数変化について「失望した」、「懸念している」としており、利上
げのタイミングについては「数ヵ月内」との表現を取り下げました。したがって、(市場では可能性がゼロとまでは想定していない
ものの)、今週の FOMC において、政策金利引き上げの可能性は低いと思われます。7 月下旬の利上げについても、政策金利決定会
合前までに確認できる雇用統計は 1 回分のデータのみとなることから、決定を下すには早すぎると見られます。恐らく、次の動きが
あるとすれば、9 月の線が濃厚だと思われますが、これまでの長い期間、FRB の姿勢が常に市場予想よりもタカ派寄りであったこと
を考えると、利上げに踏み切るのかどうかは不透明です。
豪州では、予想通り RBA は政策金利を 1.75%に据え置く決断を行いました。一方で、会合後の声明において、「インフレ見通しの低下に対し
ては、必要に応じてさらなる金融緩和で対処する」といったコメントを再度市場に発信しなかったことから、FRB の利上げ観測が後退する中、豪
ドルは若干上昇し、1 豪ドル 0.75 米ドルとなりました。これにより、RBA の利下げ後に 1 豪ドル 0.78 米ドルから 0.7145 米ドルまで下落した部
分の約半分を帳消しにした形になりました。緩和バイアスについての議論は今に始まった話ではありませんが、RBA が過去 4 年間において情
報発信で失敗してきた結果、豪ドルの調整が先送りになってきました。それでは、RBA 内での議論は終わったのでしょうか?おそらく終わったの
かもしれませんが、足元のインフレ下振れリスクを考慮すると、はなはだ疑問です。
RBA と歩調を合わせる形で、ニュージーランド準備銀行とインド準備銀行は先週、政策金利を据え置きましたが、韓国中央銀行は、
大方の予想に反して政策金利の 1.25%への引下げを行い、緩和バイアスを維持しました。ロシア中央銀行も政策金利を 0.5%引き下げ
10.50%としました。これらの動きは、グローバルの金融情勢が依然として緩和状態にあることを示唆しています。
債券の利回りについて考えてみると、いったいどの程度まで低下するのでしょうか?先週の豪州 10 年債の利回りは、史上最低となる
2.09%まで低下しました。 これには 2 つのことが影響しています。1 点目としては、世界的に債券利回りが史上最低を更新している
ことで、豪州債券のように依然として相対的に高い利回りを提供している債券市場への資金流入が続いており、これが順次起こって
いると見られます。
豪州国内では、政策金利であるキャッシュレートの下落も影響を与えています。10 年債利回りは、一般に投資家が期待する今後 10
年間の政策金利の平均を反映したもの(それと短期債でなく長期債を保有することに対しての対価であるタームプレミアム)であり、
現在の市場環境は将来の政策金利に対する期待を表していることから、政策金利が低位にある期間、もしくはさらなる引き下げが見
込まれる期間が長ければ長いほど、米国債の利回り低下や、ドイツ国債、日本国債のさらに低い利回りにつられる形で、豪州債券は
最低利回りを更新するリスクが大きくなります。下図は、豪州 10 年債の利回りとキャッシュレートの 24 ヵ月移動平均の推移を示し
たものですが、足元の 10 年債利回りはキャッシュレートが来年も 1.75%に維持されると想定しています。このことは、豪州 10 年債
利回りがまもなく 2%を下回る水準に低下することを示唆しています。実際、もしグローバル債券の利回りが低下し続けるのであれば、
豪州 10 年債利回りが次の数週間の間に 2%割れとなることは十分にあり得るでしょう。我々は、基本的に債券利回りは年末までに若
干上昇するのではないかと見ていますが、下落するリスクも意識しています。
世界経済指標
2/3
5 月の非農業部門雇用者数変化は失望させる結果となりましたが、求人率は最高を更新し、新規失業保険申請件数は極めて低く、労働
需要は依然として強く、解雇も引き続き低い水準にとどまりました。
ユーロ圏の 1-3 月期 GDP 成長率の改定値は前期比で 0.6%に上方修正され、欧州での景気の回復が穏やかなペースで続いていること
が明らかになりました。
日本の 1-3 月期 GDP 成長率も、前期比で 0.4%から 0.5%に上方修正されました。改定値が上方修正されたことは確かに良いニュース
ではありますが、日本では GDP 成長率がマイナスとプラスの間で変動しており、安定しているとは言い難い状況です。4 月の機械受
注と 5 月の景況感は、共に弱い結果となりました。
中国の 5 月の輸出はほぼ予想通り前年比で 4.1%減となりましたが、輸出は前年比 0.4%減と減少幅が僅かに縮小しました。これはコ
モディティ価格の上昇と、国内需要改善の可能性を示唆しているといえます。一方で、消費者物価指数は前月よりも低下し前年比 2%
の上昇となりましたが、生産者物価指数の下落幅は引き続き縮小しており、これは中国経済にとって良い兆候といえます。
豪州経済指標
豪州の 4 月の住宅ローン件数は減少しました。豪州健全性規制庁による規制強化が引き続き効果を上げており、投資家向けの融資が
落ち込みました。もちろん、これは 5 月の利下げ前の状況です。一方、 メルボルン・インスティチュートの 5 月のインフレーショ
ン・ゲージは下落しました。これは、4-6 月期において、ディスインフレの圧力が高まっている可能性を示唆していると言えます。
今週の注目点
米国では、今週行われる FOMC が焦点となり、政策金利は据え置かれると予想されています。FOMC の一週間後に行われる Brexit の
国民投票が混乱を招く結果となる可能性を想定すると、6 月の政策金利引き上げについては、これまでも可能性が低いと思われていま
したが、5 月の雇用者数の増加幅が失望させる結果となったことや、FRB 議長のジャネット・イエレンのコメントからは切迫感も感
じられないことから、利上げの可能性はかなり低くなっていると言えます。むしろ市場の関心は、FOMC 後に出されるジャネット・
イエレンの記者会見での声明や、FRB の経済見通し、FRB 理事の政策金利予測の分布図いわゆる“ドット・プロット”に集まっていま
す。我々は、FRB が従来通り今年中にあと 2 回の利上げを行うことを示唆すると予想していますが、全体的なメッセージは、低いイ
ンフレ率と成長に対する不確実性を考慮して金利の引き上げに対する慎重な見方を維持するものになるでしょう。米国の経済活動と
労働市場の好転についての明確な証拠が得たいとの FRB の意向を勘案すると、FRB が次に動くのは 9 月の可能性が高いと見ています。
今週発表される米国の経済指標については、5 月の小売売上高は底堅い伸びが予想される一方で、鉱工業生産は下落、コア CPI は前
年比で 2.2%の上昇、NAHB(全米住宅建設業者協会)の調査はわずかながらも改善、住宅着工件数については若干の減少を予想してい
ます。
今週は、日本銀行(BoJ)の動向に注目が集まるでしょう。前回の会合で行動を起こさず市場の失望感を招いたものの、5 月下旬に開
催された G7 サミットからある程度時間が経ったこともあって、BoJ がもう一段の金融緩和に踏み切り、市場を驚かせる可能性があり
ます。
豪州では、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)企業景況感 指数が小幅の低下になると予想されるものの、Westpac / MI 消費者
マインド指数は最近の上昇を維持するものと見込まれます。5 月の雇用統計はまずまずの上昇になることが見込まれますが、このとこ
ろフルタイムとパートタイム労働者の構成比が軟調な雇用環境を示していることや、労働参加率の上昇によって失業率が 5.8%にまで
若干押し上げられる可能性があることについては注意が必要です。
相場見通し
テクニカル面では、米国株式市場は短期的に買われ過ぎの状態にあることから、(FRB の金融政策会合、Brexit の国民投票、スペイ
ン総選挙、豪州総選挙、米国の共和党および民主党の全国大会といった)重要なイベントリスクが、6 月、7 月と続くことから、株式
市場のボラティリティは短期的に増幅される可能性があります。とはいえ、今年は年末に向けて株式市場はさらに上昇すると見てい
ます。その理由としては、株式のバリュエーションが債券と比べて割安であること、世界的に超低金利環境が継続していること、緩
やかな経済成長が続いていることなどが挙げられます。
現在、債券利回りが極めて低い水準にあることから、国債投資のリターンが中期的に低調になる可能性が考えられます。ただし、世
界的に低成長、余剰生産能力や低インフレが見込まれることから、過度に債券投資に対して弱気になることは難しいと思われます。
ここ 10 年間、ほぼずっとこのような市場環境が続いてきました!
商業用不動産やインフラ資産は、今後も投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
今後 1 年間の主要都市の住宅価格の上昇率については、融資基準の厳格化と供給増加によってシドニー、メルボルンでの過熱感が沈
静化に向かうと想定されるため、3%程度に鈍化することが見込まれます。また、パースやダーウィンでは値下がりが続く一方、ブリ
スベンでは上昇すると見られます。
現金および銀行預金からのリターンは低迷するでしょう。
1 豪ドル 0.78 米ドルからの下落の後、豪ドルは売られ過ぎの水準に達したことで、自律反発の局面に入っています。とはいえ、短期
的なリバウンドは限定的なものとなる可能性が高く、長期的には再び下落基調が始まるでしょう。というのも、RBA が政策金利の引
き下げを行っている一方で、FRB はいずれ利上げを再開すると見られており、今後、金利差の縮小が見込まれることや、コモディテ
ィ価格が依然低迷していること、豪ドルがフェアバリュー(適正価値)を下回るのも珍しいことではないためです。豪ドルは今後 1
年間で、1 豪ドル 0.60 米ドル近辺まで下落する可能性があると見ています。
3
当資料は、投資の参考となる情報の提供を目的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
AMP キャピタル・インベスターズ株式会社
ABN 59 001 777 591; AFSL 232 497)から提供された情報をもとに AMP キャピタル・インベスターズ株式会社が作成したものであり、特定の
登録番号: 関東財務局長(金商)第 85 号
有価証券への投資を勧誘する目的で作成したものではございません。当資料は、各種の信頼できると考えられる情報に基づいて作成されており
加入協会: 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
ますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。当資料中のいかなる内容も将来の投資成果及び将来の市況環境の変動等
を保証するものではありません。当資料の記述内容、数値、グラフ等は作成時点のものであり、予告なく変更される場合があります。
3/3