喉頭蓋嚢胞について

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喉頭蓋嚢胞(140611)
上部消化管内視鏡中に偶然指摘した喉頭蓋の腫瘤。数ヵ月前から食事中に軽くむせることがあ
ったが、それ以外は無症状であった。喉頭蓋嚢胞を疑ったので資料を調べてみた。
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喉頭蓋嚢胞は、通常無症状で経過することが多く、急激な増大傾向はないとされているが、
大きさによっては、異物感、嚥下障害、中には呼吸困難を来たすこともあるため、その際、摘
出が必要となる。1)
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喉頭蓋嚢胞は、その大半は無症状に経過し偶然発見されることも少なくない疾患で、耳鼻咽
喉科の臨床医が日常診療においてしばしば遭遇する疾患である。2)
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喉頭蓋嚢胞は日常よく遭遇する疾患であるが、自覚症状に乏しく、また機能障害もきたしにく
く、さらに視診上良性所見を呈することがほとんどである。そのため臨床的に注目されること
はあまり多くないが、嚢胞が大きくなると、呼吸困難をきたして死に至る可能性もあり、決して
侮ることのできない疾患である。3)
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一般に中年以降の男性に多いとされ、自覚症状に乏しく、咽喉頭異常感のみを主訴とするこ
とが多いが、嗄声や呼吸困難を訴えることもある。3)
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本症はどの年齢層にも起こりうる。4)
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鼾患者の受診は増加傾向をみるが、突然発症したような症例に対しては、進行性の上気道
占拠性疾患を強く疑い精査する必要がある(元来軒をかかなかった成人男性がある日から
毎日軒をかくようになったことが起因し発見された喉頭蓋嚢胞の 1 例の報告あり)。2)
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病理組織学的には、1) 貯留嚢胞、2) 類上皮あるいは皮様嚢胞、3) 特殊な嚢胞(鯉性器官
の残遺や甲状舌管の残遺、喉頭室が嚢胞状に拡張したもの)の 3 種類に分類され、類上皮
嚢胞が半数以上と最も多く、次いで貯留嚢胞が多い。また、発生部位としては喉頭蓋舌面に
生じることが大半である。2)
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内容物は貯留嚢胞では非粘稠で透明度が高く、類上皮嚢胞ではクリーム状やペースト状を
した粘稠性の貯留液が一般的である。2)
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治療としては、無症状のものは明らかな上気道の閉塞がなければ経過観察される。しかし嚥
下困難や咽喉頭違和感などの自覚症状を認める場合や上気道を閉塞するような巨大な嚢
胞の場合は手術の適応となり、呼吸困難をきたす場合などでは術前に気管切開を必要とす
ることもある。2)
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喉頭蓋嚢胞の手術適応は呼吸困難をきたしている例以外は難しいが、嚢胞が舌根部で動い
て異常感を出現させる場合、嚢胞により喉頭蓋が倒れこみ異常感の原因であると推測され
る場合、吸気や体位の変換で喉頭内に入り込み症状を発現する場合は積極的に手術が行
われることが多い。3)
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手術法は開放術と摘出術に大別される。具体的には、1)局所麻酔下に間接喉頭鏡を用いて
開放する方法、2)全身麻酔下に直達喉頭鏡を挿入し開放する方法、3)全身麻酔下に直達喉
頭鏡を挿入し摘出する方法、4)全身麻酔下に頸部に外切開を加えて咽頭に達し、剥離摘出
する方法が挙げられる. 1)では開放できる範囲が限られることや出血の可能性があることに
より適応となる症例は少なく、4)も博多らの報告があるものの、適応となる症例は少なく、 2)
もしくは 3)が行われることが多い。嚢胞の手術では壁を残すと理論的には再発の可能性があ
り、したがって嚢胞壁の完全な摘出が望ましいが、広基性のものでは難しく、嚢胞の開放が
行われることも多い。3)
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麻酔上の問題点として嚢胞からの出血、術後の気道閉塞、挿管困難なとかある。5)
(今回指摘した症例の腫瘤)
上記は今回の症例の写真。文献 4 の写真とはかなり似ている。
(参考文献 4 より引用)
後日、患者は手術で摘出する運びとなった。術後、数か月間は違和感や軽度のむせを感じてい
たが、徐々に症状は漸減し、1 年ほど経過したら完全に症状が消失した。
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参考文献
1.
早水 佳子, 相良 ゆかり, 宮之原 郁代, 牛飼 雅人, 黒野 祐一.巨大喉頭蓋嚢胞の 2 症例.
喉頭.Vol. 15 (2003) No. 2
2.
高島 雅之, 竹村 博一, 村田 英之, 小田 真琴, 山田 奏子, 友田 幸一.突然発症した鼾に
より発見された喉頭蓋嚢胞の 1 例.耳鼻咽喉科展望.Vol. 47 (2004) No. 6
3.
室野 重之, 大村 隆代, 杉盛 恵, 長山 郁生, 古川 仭.喉頭蓋嚢胞の臨床統計的検討.耳
鼻咽喉科臨床.Vol. 89 (1996) No. 3
4.
坂倉 康夫, 竹内 万彦.巨大な喉頭蓋嚢胞の 2 例 .耳鼻咽喉科臨床.Vol. 82 (1989) No. 9
5.
荒川一男, 井上大輔, 三宅淳一, 堺勝弘, 田村佐知子, 皆川孝子, 山内賢二, 菊池豊, 内
山正教.最近経験した喉頭蓋嚢胞の 2 症夜.Pharmacoanesthesiology 11(2): 53-55, 1998.
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