シンナー中毒性視神経症(140714)

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シンナー中毒性視神経症(140714)
明るいところから暗いところに行くと、目の前をシュッと光が走るとの訴えあり。視力は低下して
おらず、特に日常生活に困ることは無いが、気になったので相談してみたとのこと。日中明るいと
ころでは特に気にならない。全身状態に異常は認めない。変わったことと言えば、数日間、半閉鎖
的な空間でペンキを塗る作業を行っていたとのこと・・・。シンナー・・・って視覚障害を起こすんだろ
うか・・・。と思って調べていたらシンナー中毒性視神経症という疾患概念があることを発見。
自信は無いけれどシンナー中毒性視神経症について勉強してみる。
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シンナーは塗料や接着剤の溶剤として広く使用されている数種類の有機溶剤の混合物であ
る。1)
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シンナー(thinner)は単一の成分からなるのではなく、トルエン、ノルマルヘキサン、メチルア
ルコール、キシレンなど数種類の有機溶媒の混合された溶剤であり、塗料や接着剤の薄め
液として使用されるためこの名で総称される。2)
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眼科領域では視覚系、眼球運動系への影響が問題となり、石川はその病態を optico-
encephalo-neuropathy とまとめたが、なかでも視神経症は失明の危険性のある合併症とし
てきわめて重要である。1)
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シンナー中毒性視神経症の原因物質はおもにトルエンと考えられているが、少数ながらメチ
ルアルコールの関与が疑われる症例の報告がある。1)
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メチルアルコールに対する感受性はかなり個人差があることが指摘されているため、個々の
症例で発現している症状がどの物質に起因しているかについては確かめようがない。実際に
は複数の物質の毒性が同時に現れたり、いくつかの物質の相乗効果で症状が発現している
可能性も十分にある。1)
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シンナー吸引開始から視力障害の発生までの期間:記載の明らかな既報 30 例中、シンナー
吸引開始から視力障害の発生までの期間を調べると図 2 のように、症例によりさまざまであ
ることがわかる。これは吸引するシンナーの種類や 1 回吸引量と吸引時間によると思われる
が、短いものでは 3 カ月、長いものでは 10 年以上の経過を経て視神経障害が発症している。
メチルアルコール障害が疑われる症例では、早いものでは 1 週間や 3 カ月と発症が早いよう
である。1)
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(参考文献 1 より引用)
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シンナーの常習吸引を続けている経過中、徐々に視力低下が進行し眼科を受診したという
症例が最も多いが、なかには霧視に引き続き、一両日中に急激に光覚以下の高度な視力低
下が生じて眼科を受診する症例、あるいは起床時に光覚以下の高度な視力低下に気づい
て受診する症例など、いくつかのケースがみられる。1)
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シンナー中毒性視神経症:急性メチルアルコール中毒と違い、初期には無症状に経過すると
考えられる。ただ、ときに過量に摂取して急激かつ重篤な視力障害を自覚して受診すること
があり、その場合には視神経乳頭の軽度の発赤・腫脹を認めることがある。大部分の症例で
は視覚障害を訴えないまま小脳性運動失調や歩行障害、構音障害が発症し、さらには幻覚
や幻聴、全身倦怠感、意識障害などが先行する。2)
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メチルアルコール中毒性視神経症:初期には酩酊のため無自覚、酩酊から覚醒後あるいは
急性アシドーシスの治療後全身状態の回復とともに両眼の視力障害に気づくことが多い。中
心視力の喪失のため、視力障害は高度で、視野は周辺視野の残存のみ、色覚も高度に障
害される。ほとんどの例で視力障害は進行し、実用的な視力の消失に至る。2)
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急性中毒では、有機溶剤による特有の呼気臭から推定できるが、慢性中毒では、有機溶剤
常習吸引についての問診が最も重要である。1)
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慢性中毒では、たとえばトルエンを含む有機溶剤の場合、その代謝産物である尿中の馬尿
酸の測定が有用な場合がある。ただし、馬尿酸の半減期は短いため、早期に尿検査を行わ
ないと診断できない。正常人における尿中馬尿酸の濃度は、吸引量と吸引時間によって異な
るが、正常域に戻るのは約 4~22 時間といわれる。1)
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トルエンやメチルアルコールにキレート作用を有する薬剤はないため、実質的に有効な治療
法はない。これまでに循環改善剤、代謝改善剤、ビタミン B 群の内服に加え、ステロイド剤や
星状神経節ブロックが報告されているが、自験例も含め、その効果は一定していない。特に
ステロイド剤は有効とする報告もあるが、無効とする報告が圧倒的に多い。1)
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シンナーは非合法的な手段で得られていることが多く、また患者本人も薬物使用を強く否定
することが多いため、シンナー中毒の存在を常に念頭に置いておかなければ青少年の急性
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の視力障害を誤診する可能性がある。青少年の原因不明の視力障害をみたときには、尿中
馬尿酸の測定を行うとともにもう一度丁寧な問診をシンナー使用に関して行うべきである。ま
た、シンナー中毒性視神経症と確定された場合には、シンナーにはきわめて強い習慣性・常
習性があるため、シンナー吸引の中止など、シンナーとそれを扱う友人からの完全な隔離が
必要である。2)
数日間の暴露で視神経障害が起こるのかはわからないが、今回のように軽度の異常があって
も矛盾は無いと思う。他に明らかな原因が無いことに加え、明らかに視神経に影響のある薬剤の
暴露を受けたわけで、今回のエピソードが暴露と全く関係が無いというのも無理がありそうだ・・・。
いずれにしても、作業の工夫を指導するのがよさそうだ。
参考文献
1.
山縣祥隆.シンナー中毒性視神経症.あたらしい眼科 17(1): 33-38, 2000.
2.
三村治シンナー中毒性視神経症, メチルアルコール中毒性視神経症.あたらしい眼科 25(4):
471-477, 2008.
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