リピトール勉強会(3)(IDEAL)

ROCKY NOTE
IDEAL(080228)
リピトール勉強会の続き。
IDEAL
●まず PECO
P:patients with a previous myocardial infarction (MI)
E:high dose of atorvastatin (80 mg/d; n=4439)
C:usual-dose simvastatin (20 mg/d; n=4449)
O:Occurrence of a major coronary event, defined as coronary death, confirmed nonfatal acute MI,
or cardiac arrest with resuscitation.
心筋梗塞の既往のある患者に、atorvastatin 80 mg/d を投与すると、simvastatin 20 mg/d を投
与した場合と比較して冠動脈イベントを抑制できるかを調べた試験であることが分かる。
●妥当か
以下のような記載があり、最低限の 2 項目はクリアーしている。ITT 解析については Statistical
Analysis の部分に記載がある。
Randomized
All analyses in this report are based on the intention to-treat principle including all randomized
patients.
この論文はPROBE法で行われているため、アウトカムのチェックが必要。Study Outcomesの部
分を詳しく見てみると、The primary clinical outcome was time to first occurrence of a major
coronary event, defined as coronary death, hospitalization for nonfatal acute myocardial infarction,
or cardiac arrest with resuscitation.とある。入院というのはどうしても治療者や患者の意図が入り
やすい。つまり、介入群でないので入院したい、させたいという気持ちがバイアスとなりやすいわ
けである。この場合、対照群で不利になる傾向がある。それでも、今回のエンドポイントである心
筋梗塞による入院も、蘇生を伴う心停止による入院もそれほど大きなバイアスはかかりにくいの
かもしれない。心筋梗塞も心停止も、患者が生きている以上、基本的に入院が必要で、意図を入
り込ませる余裕はあまりないと思われるからである。そうはいっても、軽い心筋梗塞や心筋梗塞疑
ROCKY NOTE
ROCKY NOTE
いの患者であれば、「強力な介入群でないので、念のため入院させておくか・・・」という意図が入り
込むかもしれない。実際、結果を見ると、以下のようにMIでの入院だけに差がある。不自然な感じ
もするが・・・疑いすぎかもしれない・・・。Potential myocardial infarction cases were adjudicated
according to current guidelines of the Joint European Society of Cardiology/ American College of
Cardiology.との記載もある。このように疑われる原因を作らないように、PROBE法では意図が入り
やすいアウトカムを設定しないことが約束である。
(参考文献 1 より引用)
追跡期間は median follow-up of 4.8 years とあるように平均 4.8 年。
●結果
A major coronary event occurred in 463 simvastatin patients (10.4%) and in 411 atorvastatin
patients (9.3%) (hazard ratio [HR], 0.89; 95% CI, 0.78-1.01; P=.07).
結果はプライマリエンドポイントで有意さがつかない結果であった。信頼区間をみると 95% CI,
0.78-1.01 となっており、atorvastatin 群はエンドポイントを 22%減らすかもしれないが、1%増やす
かもしれないということになる。どうやらこの区間の間に真実の値が含まれていそうであると考え
ると、実際には差があるのではないかと思ってしまう・・・。本当は差があるのに差がないとしてしま
うエラーをβエラーというが、βエラーの可能性も高い。ということで、RRR、ARR、NNT は計算して
みることにする。
RRR:1-9.3/10.4=0.11
ARR:10.4-9.3=1.1
NNT:91(4.8 年)
treatment, mean LDL-C levels were 104 (SE, 0.3) mg/dL in the simvastatin group and 81 (SE, 0.3)
mg/dL in the atorvastatin group
到達した LDL コレステロールは simvastatin 群で 104mg/dL atorvastatin 群で 81mg/dL であった。
有意差はなかったものの、100 以下に下げたほうがよりイベントを抑制できることが予想される。
ROCKY NOTE
ROCKY NOTE
(参考文献 1 より引用)
この論文では多くの薬剤が併用されており、有意差がつきにくかったことも予想される。一般に
ハイリスクほど有意差がつきやすい傾向にあると思うが、多くの治療を併用することによりイベント
の発生が抑制される傾向にあったのかもしれない。
(参考文献 1 より引用)
simvastatin は日本での使用量の範囲内であるが、atorvastatin は日本で使用できる量を大きく
超えている。この研究をそのまま日本での臨床に外挿することは難しいが、少なくともハイリスク
患者を対象とした二次予防を目的とするのであれば LDL コレステロールを 100 以下にするほうが
よりイベントを抑制できる可能性がある。他の論文の内容とも矛盾はしない。
参考文献
ROCKY NOTE
ROCKY NOTE
1.
Pedersen TR et al for the incremental decrease in end points through aggressive lipid
lowering (IDEAL) study group: High-dose atorvastatin vs usual-dose simvastatin for
secondary prevention after myocardial infarction: the IDEAL study: a randomized controlled
trial. JAMA. 2005; 294: 2437-45.
ROCKY NOTE