市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 7 月 24 日(金)発行 No.068
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
【高金利通貨】
米経済イベント通過で「黒田ライン」超えなるか
市場は金融政策の方向性に着目、豪ドル/円は今後どうなる?
【アウトルック】 米ドル/円は米経済イベント通過で「黒田ライン」超えなるか
来週の注目通貨ペア:
米ドル/円↑ FOMC、米 GDP で 9 月利上げの確度が高まるかどうか。
<材料>FOMC(29 日)、米 4-6 月期 GDP(30 日)
ユーロ/米ドル↓ ギリシャ懸念後退も織り込み済みか。米ドル反発ならユーロ弱含みへ。
<材料>ユーロ圏失業率、CPI(31 日)
ポンド/円↑ G7 では米国に次いで「利上げが近い国」。8/6 の英中銀会合にも注目。
<材料>英 4-6 月期 GDP(28 日)
豪ドル/円→ 8/4 の豪中銀会合を目前に、様子見姿勢が高まりそう。
<材料>豪住宅建設許可件数(30 日)、CPI(31 日)
◆↑↓→は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、方向性を保証するものではありません)
今週のレビュー:材料が乏しいなか、米ドルに買い戻しの動き
今週の為替相場は、週初は米ドル安・ユーロ高に振れましたが、材料が乏しく、週後半は小動きでした。
米ドル/円は、週初の日米株価下落から一時 123 円半ばに下落。しかし、来週の FOMC、米 GDP を控え、
週後半は 124 円前後での小動きに終始しました。ユーロ/米ドルは、ギリシャが IMF への延滞を解消したこと
などから一時 1.1 ドル台を回復。ただ依然として課題が山積しているとの見方がユーロの重石となりました。
ポンド/円は、英 6 月財政赤字が市場予想を若干上回り、一時 192.27 円に下落しましたが、BOE 議事録で
多くの委員がインフレリスクを指摘したことが分かり、利上げ観測が高まったことで、一時 193 円台を回復。
豪ドル/円は、スティーブンス RBA 総裁が講演で追加緩和を示唆したものの、市場の反応は限定的でした。
NZ ドルは、キーNZ 首相の「NZ ドルは予想以上に下落した」との発言や、23 日の利下げで材料出尽くし感が
台頭したことから、対米ドル、対円とも上昇しました。カナダドル/円は、15 日の利下げの余波に加え、WTI
原油先物が 50 ドルを割り込んだことなどから、一時 95 円を割り込みました。
トルコリラ/円は、連立交渉を巡る不透明感の高まりや、トルコ南部での自爆テロ事件などで一時 45 円ちょ
うど近辺に下落しました。トルコ中銀は政策金利を据え置きました。南アランド/円は、南ア中銀が利上げを
実施したものの、早期の追加緩和期待が後退し、一時 9.93 円に下落しました。
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来週のプレビュー:米ドル/円は米経済イベント通過で「黒田ライン」超えなるか
米ドル/円は、直近の安値(7/8、120.42 円)から 7 月 21 日の高値 124.44 円まで、9 営業日で約 4 円
上昇し、いわゆる「黒田発言」で揺れた 6 月 10 日の高値に近づきました。
市場関係者が当面の上値節目として注目していた「黒田ライン」といわれる 125 円ちょうど前後の水準を
超えるか否かに関心が集まりましたが、(1)急ピッチな米ドル上昇の反動、(2)米国株、日本株の大幅下落、
(3)ギリシャ懸念の後退によるユーロの下げ止まり、などから、米ドル/円は 124 円台半ばで上値を抑えられ
ました。
(1)については、米ドルの上値が抑えられることで、日柄または値幅での調整が進むにつれて、再び騰勢が
回復する可能性はあるでしょう。
(2)については、米国企業の決算発表が一巡する今月いっぱいで米国株の揺れは軽減するかもしれませ
ん。ただ、米国企業と入れ替わるように日本企業の決算発表が 8 月入り以降に本格化するため、日本株の
推移にも注意が必要かもしれません。
(3)については、米格付け会社 S&P がギリシャの格付けを CCC+に引き上げ、見通しも安定的とするなど、
ギリシャのデフォルト懸念は後退しましたが、依然として課題が山積しているとの見方がユーロの重石になる
とみられ、ユーロの戻り一巡から米ドルが切り返す可能性はあるでしょう。
来週は、29 日に FOMC、30 日に米 4-6 月期 GDP 速報と、週央以降に重要な米経済イベントが相次いで
到来します。
前回の FOMC では、米経済は年内利上げに十分耐えられると声明に記された一方、FRB スタッフによる
2015 年の成長率見通しは前回から下方修正されるなど「思ったよりもタカ派的ではない」内容となったため、
米ドル安へと振れる場面がみられました。
イエレン FRB 議長は 15 日の下院金融委員会での証言で、「米経済は利上げを必要とする状況にある」と
述べ、年内利上げの可能性を示唆しました。ただ「現時点では利上げを行う適切な時期をめぐる判断はして
いない」とも述べており、今回の FOMC で利上げ時期について、具体的な言及が行われるか否かに注目が
集まりそうです。
GDP については、前回 1-3 月期は、悪天候やドル高、エネルギー関連企業の支出削減、西海岸の港湾
ストなどから前期比年率マイナス 0.2%に減速しましたが、それらのネガティブ要素が後退することで、持ち
直しの動きがみられるかもしれません。米アトランタ地区連銀の経済予測モデル「GDPナウ」によると、4-6
月期 GDP は前期比年率プラス 2.4%となる見通しで、その通りであれば米ドルの上昇要因となりそうです。
米ドル以外の通貨については、基本的に「米ドル高なら、対米ドルで下落」、ただ「米ドル高・円安が進めば
円安効果が勝り、対円では相対的に強含み」という展開が想定されます。逆に「米ドル安なら、対米ドルでは
上昇」、「米ドル安・円高が進むと、対円では相対的に弱含み」となりそうです。FOMC で 9 月利上げの可能
性が高まるか、また、米 GDP が回復感をみせるかどうかで、来週の為替市場の方向感も変わりそうです。
(シニアアナリスト 山岸永幸)
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【高金利通貨】 市場は金融政策の方向性に着目、豪ドル/円は今後どうなる?
豪ドル/円は 7 月 9 日に一時 89.18 円まで下落し、1 年 5 か月ぶりの安値をつけた後反発し、足もと 91
円を中心とした値動きとなっています。豪ドル/円が今後どうなるのかを以下に考察します。
◆市場のテーマは金融政策の方向性へ◆
中国の株安が落ち着き、ギリシャの金融支援問題が前進したことで、市場のテーマは各国の金融政策の
方向性に移っています。米ドルやポンドは FRB(米連邦準備理事会)や BOE(英中銀)の利上げ観測を背景
に強含む一方、先週の BOC(カナダ中銀)の利下げを受けてカナダドルが弱含んでいます。
日銀は当面金融政策を据え置くとみられることもあり、豪ドル/円が今後どう動くのかは、豪ドルサイドの材料、
とりわけ市場の RBA(豪準備銀行)の金融政策見通しがカギになりそうです。
RBA(豪中銀)は今年 2 月と 5 月にそれぞれ 0.25%の利下げを行った後、6 月、7 月と 2 か月連続で据
え置き、現在の政策金利は 2.00%です。
7 月 7 日の政策会合時の声明では「今後受け取る経済・金融状況に関する情報によって、理事会の見通
しに対する評価と現在の政策スタンスが、持続可能な成長と目標に沿ったインフレ率を達成するために効
果的かどうか判明するだろう」にとどめ、今後の金融政策がどうなるのかについて言及されませんでした。
ただ、RBA のスティーブンス総裁は 7 月 22 日の講演で、「追加利下げの問題は依然として議論の対象」
と述べ、追加利下げの可能性が残っていることを示しました。
この日発表された豪州の 4-6 月期 CPI(消費者物価指数)は前年比+1.5%と、1-3 月期の+1.3%から上
昇率は高まったものの、RBA の目標である+2~3%を下回りました。また、RBA が全体の CPI とともに重視す
る基調インフレ率(トリム平均値と加重中央値の平均値)も前年比+2.3%と、1-3 月期の+2.4%から鈍化し、
RBA の目標下限に近付きました。
CPI や基調インフレ率は、インフレ圧力が引き続き弱いことを表し、RBA には追加利下げの余地があること
を示したと言えそうです。
豪インフレ率
出所:Bloomberg より作成
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一方で、RBA の金融緩和を背景に、豪州ではシドニーの住宅市場が過熱しており、スティーブンス総裁は
6 月 10 日に「シドニーの住宅価格上昇のペースは異常」と指摘し、「強く懸念している」と発言。7 月 22 日に
は「過度な金融緩和はリスクテークや過剰融資を通じて長期なリスク要因になる可能性がある」とし、利下げ
の弊害にも言及しており、追加利下げのハードルは以前に比べて高くなっていると考えられます。RBA は 2
月と 5 月の利下げ効果をしばらく見極める段階にあるとみられます。
豪住宅価格指数(前年比)
出所:Bloomberg より作成
◆豪ドル/円はレンジの動きか◆
RBA は 8 月 4 日(火)に次回会合を開催しますが、市場では政策金利を据え置くとの見方が大勢です。
市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金利スワップ)によると、7 月 23 日時点で市場は 8 月 4 日
の会合で政策金利が据え置かれる確率を 84.1%織り込んでいます(利下げは 15.9%)。利下げの確率は、
9 月 23.4%、10 月 33.8%、11 月 43.9%、12 月 51.1%と、年末に向けて上昇しますが、それでも年内に
利下げがあるかどうかです。
RBA は当面政策金利を据え置くと市場が予想していることは、豪ドル/円の下支え要因となるでしょう。た
だ、一方で、追加利下げ観測は残っていることから、一方的に上昇する状況でもなさそうです。市場のテー
マが変わるか、RBA に対する金融政策見通しに変化がなければ、豪ドル/円に明確な方向感は生まれにく
いかもしれません。今月の 89 円~93 円のレンジで上下を繰り返す展開がしばらく続きそうです。
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
当社予想
2.0%
7月27日 21:30 【米】耐久財受注 前月比(6月)
市場予想
3.0%
前回値
-2.2%
月々の変動が大きく、前月の反動増がみられそう。ただし、ドル高やシェール産業の設備投資
の鈍化などが重石になっている可能性がある。
7月28日 21:30 【英】GDP速報値 前期比(4-6月期)
【英】GDP速報値 前年比(4-6月期)
0.5%
2.6%
0.7%
2.6%
0.4%
2.9%
英国経済は比較的好調を持続しているもよう。BOE(英中銀)では国内需給のひっ迫によるイ
ンフレ圧力を懸念しており、強めのGDPは利上げ観測を高める可能性がある。
7月30日 3:00 【米】FOMC金利誘導目標発表
0-0.25%
0-0.25%
0-0.25%
FOMCは「会合ごとに利上げの是非を判断する(イエレン議長)」段階に入っているが、7月に利
上げを予想する向きは皆無。早ければ9月か。声明文で景気や物価判断などに変化がみられ
るか。
21:30 【米】GDP速報値 前期比年率(4-6月期)
2.3%
2.5%
-0.2%
アトランタ連銀の短期予測モデル「GDPNow」によれば、7月17時点での予測値は2.4%。マイナ
ス成長だった前期から顕著に改善するものの、「高成長」と呼べるほどのペースではない。
7月31日 8:30 【日】消費者物価指数 前年比(6月)
【日】消費者物価コア指数 前年比(6月)
【日】消費者物価コアコア指数 前年比(6月)
0.6%
0.2%
0.5%
0.3%
0.0%
0.4%
0.5%
0.1%
0.4%
輸入価格の上昇やエネルギー価格の反発の影響がジワジワ出てこよう。ただし、日銀の目標
「2016年度前半中に2%」は達成が難しそう。
18:00 【EU】消費者物価指数 前年比 速報値(7月)
0.4%
0.2%
0.2%
エネルギー価格の前年比はそろそろマイナス幅が縮小に向かい、インフレ率を押し上げそう。
22:45 【米】シカゴ購買部協会景気指数(7月)
52.0
50.5
49.4
同指数は2月以降、4月を除いて50割れが続いている。自動車販売の好調からみれば、やや
下がり過ぎか。反発が予想される。
市場予想はBloomberg、7月24日10:00現在。発表日時は日本時間。
2015年12月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
57%
43%
英国
0.50
11%
72%
17%
NZ
3.00
90%
10%
0%
カナダ
0.50
29%
71%
0%
ユーロ圏
0.05
72%
28%
0%
豪州
2.00
50%
50%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。7月23日時点
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<執筆者>
山岸 永幸(やまぎし ながゆき)
市場調査部 シニアアナリスト
1986 年、ユニバーサル証券(現、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)入社後、株式ス
トラテジスト、アナリスト、チャーチスト、先物トレーダーなど株式業務全般に携わる。
1987 年に出向先の大和証券で「一目均衡表」に出会って以降、28 年間にわたり、均
衡表と実践的な活用法を探究。2012 年春マネースクウェア・ジャパンに入社。セミナ
ー講師として多数の顧客にノウハウを伝えるとともに、多数のレポートを配信。また、
様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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