市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 3 月 5 日(木)発行 No.052
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
【高金利通貨】
18 日の米 FOMC に向けて利上げ観測が高まるか
RBA 追加利下げの可能性を示唆、そのタイミングはいつなのか
【アウトルック】 18 日の米 FOMC に向けて利上げ観測が高まるか
来週の注目通貨ペア:
ドル円↑
米利上げ観測が強まるか、18 日の FOMC で「忍耐強く」が消えるか。
<材料>2 月の小売売上高(12 日)、消費者信頼感(13 日)
ユーロドル↓ ギリシャとユーロ圏の交渉は紛糾するか。それとも進展するか。
<材料>ユーロ圏財務相会合(9 日)
NZ ドル円↑
RBNZ が利下げ観測を打ち消すか。NZ ドル高に懸念が表明されるか。
<材料>RBNZ 会合(12 日)
豪ドル円→
4 月の会合に向けて、追加利下げ観測が高まるか。
<材料>2 月の雇用統計(12 日)
※12 日はオセアニア時間から米国時間まで、材料が多く相場変動に要注意!
◆↑↓は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、方向性を保証するものではありません)
今週のレビュー:為替相場は雇用統計を控えて小動き
今週の為替相場は全般に小動き。6 日の米雇用統計を前に動意の乏しい展開でした。
ドル円は、1 月の個人消費がやや堅調だったことで一時 120 円台に乗せましたが、それは長続きしません
でした。ユーロは、5 日の ECB 理事会で詳細が発表される見通しの QE(量的緩和)への期待から下落し、対
ドルでは 2003 年以来の安値をつけました。ポンドは PMI サービス業などの経済指標が軟調なこともあって、
ユーロに連れて下落しました。
豪ドルは、RBA の政策金利の「据え置き」を受けて小反発しました。市場が、利下げと据え置きは五分五
分とみていたためです。NZ ドルは、乳製品価格の上昇などから堅調に推移しました。カナダドルは、4 日の会
合で BOC(カナダ中銀)が政策金利の「据え置き」を決定したことで上昇しました。一方、トルコリラは、対ドル
で最安値を更新しました。エルドアン政権からの利下げ圧力が強まり、TCMB(トルコ中銀)のバシュチュ総裁
の辞任説まで流れたことが背景でした。計画停電の経済への悪影響が懸念される南アランドも軟調でした。
6 日発表の 2 月の米雇用統計は、市場予想の通りであれば(非農業部門雇用者数が前月比+23.5 万人、
失業率が 5.6%)、雇用の堅調が示されそうです。
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来週のプレビュー:18 日の米 FOMC に向けて利上げ観測が高まるか
来週はあまり大きなイベントは予定されていないので、再来週 18 日の米 FOMC を控えて、様子見が続くか
もしれません。ただ、FOMC 声明文から「(利上げまで)忍耐強く(待てる)」との文言が消えて、夏場頃の利上
げ(少なくとも利上げの検討)が視野に入るかを判断する材料はありそうです。6 日の 2 月雇用統計に続いて、
2 月の小売売上高や 3 月のミシガン大学消費者信頼感(速報)によって景気の堅調が示されるようであれ
ば、「忍耐強く」が消えるとの思惑が強まりそうです。
小売売上高は、12 月、1 月ともにガソリン価格の大幅な下落の影響を受けて前月から減少しました。ガソ
リン価格は 1 月半ばに底打ちして、緩やかな上昇に転じているので、2 月の小売売上高にはプラスに作用し
そうです。また、消費者信頼感は 2 月に低下しましたが、広域を襲った寒波の影響がはく落し、かつ雇用の
増勢や株高を好感すれば、反発しそうです。
9 日のユーログループ(ユーロ圏財務相会合)では、引き続きギリシャ支援が主要議題になりそうです。ギ
リシャはユーロ圏に承認された提案の詳細を決め、実行に移す必要があります。4 月末まで 2 か月間の猶
予はありますが、ギリシャ前政権との合意事項の履行を求めるドイツなどとの隔たりの大きさが改めて認識さ
れるかもしれません。その場合は、ユーロ売りの反応が想定されます。交渉が進捗したり、新しい材料が出
ないようなら、ユーロ相場はあまり動かないかもしれません。
オセアニア通貨は、NZ ドルと豪ドルが対照的な動きとなる可能性があります。RBNZ の会合は政策金利の
「据え置き」が予想されています。ただ、「次の一手」は利下げとの見方が増えており、12 日の会合でもわず
かながら利下げ期待はあるようです。3 月 4 日時点の OIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場は 12 日の
利下げ(0.25%幅)を 10%の確率で織り込んでいます。RBNZ が「据え置き」を決定し、将来の方向として前
回同様に「利上げも利下げもありうる」との見解を表明すれば、NZ ドルは上昇するかもしれません。
一方で、豪ドルの材料は 2 月の雇用統計です。月々の雇用者数変化は、従来から-2.0 万人から+4.0 万
人の幅で大きく振れており、明確なトレンドはみられません。そのため、市場予想を大きく上回ることも下回る
こともありそうです。ただし、利下げ観測が高まるという意味で、雇用者数変化が下振れした場合に豪ドルの
反応(下げ)が強くなるかもしれません。
その他、17 日の TCMB(トルコ中銀)の会合に向けて、エルドアン政権が一段と利下げ圧力を強めるか(トリ
コリラ安要因)にも注目です。
(チーフアナリスト 西田明弘)
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【高金利通貨】 RBA 追加利下げの可能性を示唆、そのタイミングはいつなのか
RBA(豪中銀)は 3 月 3 日の理事会で政策金利を過去最低の 2.25%に据え置くことを決定しました。
RBA は今年 2 月 3 日に 0.25%の利下げを行っており、市場では RBA は今後追加利下げを行うとの見方
が大勢です。
◆追加利下げの可能性を示唆◆
3 月 3 日の声明では、今後の金融政策に関する文言に変化がありました。RBA は今年 2 月 3 日に利下
げを決定した際、声明の最後を「この行動(利下げ)は需要を一段と支援し、持続的な成長や目標に沿った
インフレ率を促す見込み」と締めくくり、今後の金融政策について特に言及していませんでした。それが今回
の声明では、「持続可能な需要の伸びの促進と目標に沿ったインフレ率を達成するために、今後、政策のさ
らなる緩和が適切となる可能性がある」と指摘し追加利下げの可能性を示唆したうえで、「今後の理事会で
そうした措置について判断していく」と表明しました。
◆トレンドを下回る成長◆
RBA は 2 月 6 日の四半期金融政策報告で、豪州の 2015 年の GDP 成長率を+2.25~3.25%との見通
しを示し、前回昨年 11 月時点の+2.5~3.5%から下方修正しました。今回の声明でも、豪州経済について
「内需の伸びが総じて非常に弱く、トレンドを下回るペースでの成長が続いていることが示されており、その結
果として失業率はこの 1 年で徐々に上昇した」との見方を示すなど、慎重な見方を示しています。
下のグラフは豪州の GDP 成長率とトレンド成長率(過去 10 年間の平均値で代用)を表したものですが、
2012 年後半以降、GDP 成長率はトレンドを下回り続けていることが確認できます。
3 月 4 日に発表された豪州の 10~12 月期 GDP 成長率は、前年比+2.5%と 7~9 月期の+2.7%から
鈍化し、豪州経済の成長が減速傾向にあることが示されました。
豪州の GDP 成長率
出所:Bloomberg
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◆目標を下回る CPI◆
今回の声明では、インフレ率について「非常に低水準で推移するエネルギー価格が CPI(消費者物価指
数)を一時的に押し下げるだろう」との見方が示されました。豪州の 10~12 月期 CPI は前年比+1.7%と 7
~9 月期の+2.3%から鈍化、RBA のインフレ目標+2~3%の下限を下回りました。
◇追加利下げは 5 月の可能性が高い◇
RBA は各種経済指標や資源価格の動向などを注視しながら、今後の理事会で追加利下げに踏み切る
かどうかを判断していくでしょう。
豪州経済の成長は減速傾向にあり、CPI も RBA の目標を下回っていることをみると、RBA は今後追加利下
げに踏み切るとみられます。
ただ、豪州の 10~12 月期 GDP も早期利下げに踏み切らせるほど弱い内容ではないとみています。原油
価格が大幅に下落するような状況にならなければ、RBA は 2 月 3 日の利下げの効果を見極めるため、当面
様子見をするとみられます。利下げを行うとしても、1-3 月期 CPI(4 月 22 日発表)のデータを待ち、そこで
インフレ圧力の一段の低下が確認されれば、5 月 5 日の理事会で 0.25%の追加利下げに踏み切る可能性
が高いとみています。
OIS(翌日物金利スワップ)によると、3 月 4 日時点で市場は RBA が次回 4 月 7 日の理事会で利下げす
る確率を 46.6%織り込んでいます(据え置きは 53.4%)。4 月 7 日の利下げも否定はできませんが、RBA が
政策金利を据え置けば 3 月 3 日の時と同様に豪ドルはいったん上昇する展開が想定されます。
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
3月9日
当社予想
2.4%
8:50 【日】実質GDP改定値(10-12月期) 前期比年率
市場予想
2.2%
前回値
2.2%
10-12月期は3四半期ぶりのプラス成長だった。ただし、2期連続で大きく低下した後の反発
力は限定的で、インフレ率を高めるほどではない
3月9日
23:00 【EU】ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)
ギリシャとユーロ圏の合意について、実施に向けた進捗状況を確認することになりそう。ギリ
シャ前政権との合意事項を順守すべきとの声も根強い
3月12日
5:00 【NZ】RBNZ政策金利発表
3.50%
3.50%
3.50%
焦点は声明の内容になるとみられる。金融政策について前回の「利上げも利下げもありえ
る」との姿勢が維持されるかどうか。「NZドルの水準は正当化できず、持続不可能と」の評価
に変わりはないのかどうかにも注目
9:30 【豪】雇用者数変化(2月)
2.00万人
-1.22万人
【豪】失業率(2月)
6.4%
6.4%
雇用者数変化は1月の減少の反動増がありそう。ただ、月々のブレが極端に大きく、実勢を
反映しているとは言い難い。それでも、為替市場は反応するので要注意。2014年平均は1.8
万人/月
21:30 【米】小売売上高 前月比(2月)
0.4%
0.5%
-0.8%
12-1月はガソリン価格の大幅下落が売上高減少の主因。ガソリン価格は1月中旬に反発に
転じて、売上高を押し上げる方向に。その他の売上高は自動車を除き比較的堅調か
3月13日 23:00 【米】ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値(3月)
97.0
96.0
95.4
2月は1月(98.1)から低下したが、雇用の増勢、株高、寒波要因のはく落などから反発しそう
市場予想はBloomberg、3月5日10:00現在。発表日時は日本時間。
2015年8月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
71%
29%
英国
0.50
42%
40%
18%
NZ
3.50
38%
62%
0%
ユーロ圏
0.05
54%
46%
0%
豪州
2.25
89%
11%
0%
カナダ
0.75
37%
63%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。3月4日時点
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
西田 明弘(にしだ あきひろ)
市場調査部 チーフアナリスト
1984 年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを
経て、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテ
ジストとして高い評価を得る。2012 年 9 月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市
場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2J の WEB サイトで「市場調査部レポート」、
「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑
誌など様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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(加入協会) 一般社団法人金融先物取引業協会
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