「ドットチャート」は2016年に4回の利上げを示唆(2015/12/17作成)

*グローバル投資環境
No.1222 *
ご参考資料
髙木証券投資情報部
7年ぶりにゼロ金利を解除。「ドットチャート」
米国FOMC速報~ は2016年に4回の利上げを示唆。
2015年12月17日作成
米国の中央銀行にあたるFRBは15日から16日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)を
開催、政策金利であるFFレートの誘導目標を0~0.25%から0.25~0.50%に引き上げた。
2008年12月16日のFOMCで実質ゼロ金利政策が導入されて以来、その解除は7年ぶり。ま
た、FRBが最後に利上げを実施した2006年6月29日からは実に9年半が経過しており、
FRBは今回の決定により、金融政策の正常化に向けた、まさに歴史的な一歩を踏み出した
といえるだろう。
《景気と物価の現状判断》
10/27~28
12/15~16
景気の現状認識は「経済活動は緩
全般
経済活動は緩やかなペースで拡大している 経済活動は緩やかなペースで拡大している
やかに拡大している」で、10月27~
雇用の伸びは減速し、失業率は安定してい 現在進行中の雇用増と失業率の低下を含む
28日に開かれた前回FOMCの声明文か
る。しかし、労働市場の指標の全てを考慮す 幅広い労働市場の指標は、さらなる改善と活
ら変化はないが、前回FOMC以降に発 労働市場
ると、活用されていない労働力が今年の初め 用されていない労働力が今年の初め以降評
表された10月及び11月の雇用統計を
以降減少したことを幅広い指標が示している 価できるほどに減少したことを示している
受けて、労働市場に関する見方が上
家計消費
家計消費は堅調なペースで増加した
家計消費は堅調なペースで増加した
方修正された。また、インフレの見
設備投資
堅調なペースで増加した
堅調なペースで増加した
通しについては、「徐々に2%に向
住宅市場
さらに改善した
さらに改善した
けて上昇するだろう」として、前回
軟調だ
軟調だ
FOMCまでの声明文にあった「短期的 輸出
早い時期のエネルギー価格の下落と非エネ
早い時期のエネルギー価格の下落と非エネ
には現在の低水準近辺が見込まれ
ルギーの輸入価格の値下がりを一部反映し ルギーの輸入価格の値下がりを一部反映し
る」という表現は削除された。
て我々の長期目標を引き続き下回って推移 て我々の長期目標を引き続き下回って推移
その上で、利上げを決定した理由 物価
した。市場ベースのインフレ指標はわずかに した。市場ベースのインフレ指標は引き続き
についての声明文は「今年の労働市
低下したが、調査に基づく長期の期待インフ 低く、調査に基づく長期の期待インフレは少
場情勢の相当な改善がみられ、イン
レはなお安定している
し低下した。
フレが中期的に2%の目標に上昇す
《景気と物価の先行き》
ることに対する確信があるため」と
10/27~28
12/15~16
述べている。
適切な緩和政策により、経済活動は緩やか
緩やかな政策調整により、経済活動は緩や
なペースで拡大するとともに、労働市場関連
FRBは10月27~28日に開催した前
かなペースで拡大するとともに、労働市場関
の指標は引き続き我々の責務に一致する方
回のFOMCにおいて利上げを見送る一
連の指標は引き続き強まるだろう。国内と世
向に向かうだろう。経済活動と労働市場の見
方、従来の「どの程度の期間、現在 景気
界の変化を考慮すれば、経済活動と労働市
通しに対するリスクはほぼバランスしていると
のFF金利のレンジを維持するかを決
場の見通しに対するリスクはほぼバランスし
思われるが、グローバル経済と金融の変化
定する際には幅広い指標に注意を払
ていると思われる。
を注視する。
う。労働市場のさらなる多少の改善
インフレは短期的には現在の低水準近辺が
とインフレが中期的に2%の目標に
労働市場のさらなる改善とエネルギー価格
見込まれるが、労働市場のさらなる改善とエ
向かうことに対する合理的な確信が
及び輸入価格下落の一時的効果の消失に
得られれば、FF金利の引き上げが適
ネルギー価格及び輸入価格下落の一時的
物価
より、インフレは徐々に2%に向けて上昇する
切になると考えている」というフォ
効果の消失により、インフレは徐々に2%に
だろう。我々はインフレの動向を引き続き注
ワードガイダンスの前段部分(下線
向けて上昇するだろう。我々はインフレの動
視する。
部)を 「次回の会合で目標レンジ
向を引き続き注視する。
を引き上げるか否かを決定する際に
は」に変更、次の会合で利上げを行う可能性があることが初めて明記されるとともに、
前回FOMC以降に発表された10月と11月の雇用統計が良好だったことから、今回のFOMCで
の利上げについては多くの市場参加者が予想していたとみられ、その点ではサプライズ
はなく、為替市場に与えるインパクトも限られよう。そして、市場参加者にとって最大
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最終頁の「ご注意いただきたいこと」を必ずお読み下さい。
髙木証券投資情報部
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の注目点は今後の利上げのペースであったが、金融 《フォワードガイダンス》
FF金利のさらなる調整のタイミングと規模の
政策の先行きについて声明文は「経済情勢が極めて 決定においては、雇用の最大化と2%のイン
緩やかな(only gradual)FF金利の引き上げに限って フレ目標に関連する経済情勢を、現実と予想
正当化される形で改善され、FF金利はしばらくの間、 の双方について再評価する。評価に際して
長期的に有効とされる水準を下回って推移するだろ は、労働環境に関する指標やインフレ圧力と
インフレ期待、金融情勢と国際情勢の変化を
う。しかしながら、FF金利の実際の道筋は今後の
含む幅広い情報に注意を払う。現在のインフ
データによる経済見通しに依存する」と述べている。 レが2%の目標を満たしていない観点から、
一方、声明文と同時に公表されたFOMC参加者の金
利見通し(ドットチャート)は来年末のFF金利のレ
ンジの中心が1.375%(1.25~1.50%)、1回当たり
の利上げ幅を25ベーシスとすると4回の利上げがFRB
の中心的な考えであることを示しており、この点は
我々は、現実と期待のインフレ目標に向けた
進展を注意深くモニターする。経済情勢が極
めて緩やかなFF金利の引き上げに限って正
当化される形で改善され、FF金利はしばらく
の間、長期的に有効とされる水準を下回って
推移するだろう。しかしながら、FF金利の実
際の道筋は今後のデータによる経済見通し
9月FOMCから変わっていない。FOMCの前日時点でFF金利の先物が織り込んでいた来年末
のFF金利が0.785%(1回当たりの利上げ幅を25ベーシスとすると2回弱)だったのに比
べると、FRBのスタンスは市場の想定よりも「タカ派」であり、この点は為替市場にお
ける米ドルの押し上げ要因だといえるだろう。
しかし、「ドットチャート」はあくまでも現時点での「予定」に過ぎず、実際の利
上げペースは声明文にもある通り経済情勢次第である。髙木証券では、米ドルが持続
的に上昇し、対円で6月、対ユーロで3月に付けた高値を上回ってくるためには、少な
くとも来年3月のFOMCで2回目の利上げが実施されることに対する投資家の確信が高ま
ることに伴って、米国債利回りが一段と上昇する必要があると考えている。
一方、米国の株式市場に与える影響という点では、「ドットチャート」が来年に4回
の利上げを示唆したことはネガティブに捉えられてもおかしくないが、先に述べた通
り、実際の利上げのペースは経済情勢次第であり、また、1月26~27日のFOMCでの利上
げはほとんど考えられないことを考えると、3月のFOMCが近づき、そこでの利上げの有
無が意識されるまでの間は、米国の金融政策が波乱の要因になりにくいともいえるだ
FOMCメンバーの金利見通し(12/16発表)
ろう。
《2016年のFOMC開催日程》
2016年末
「中央値」
=1.375%
開催日
議長会見
1/26~27
無し
3/15~16
有り
4/26~27
無し
6/14~15
有り
7/26~27
無し
9/20~21
有り
11/1~2
無し
12/13~14
有り
(文責:勇崎
(出所:FRB、Bloombergのデータより髙木証券作成)
聡)
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