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技術コラム33-AVS
innovating measurement technology TM
または
CyberOptics Semiconductor Inc. 技術コラム No.033
振動とダブルナットの締め方
枝葉型真空装置チャンバーのペデストルにはダブルナットが固定方法として採用されていることがあり、緩み止めの機能を
持つのですが、そのロッキングが十分でない場合、装置に起こる振動がダブルナットを緩めてしまうことがあります。今回は文
献(ネジ締結の原理と設計、山本晃著)を引用紹介致します。
図1.軸直角振動方式ねじ緩み試験機
図1の軸直角振動方式ねじ緩み試験機と
類似の試験機を用いて、スピンドル油を潤
滑油としてM10の六角ナットについて行っ
た実験で得られた振動変位および軸力変
化の記録例を図2に示す。軸力Fsが20kN
に達した時点における振動変位の全振幅
をS、この時点から10サイクル経過する間
に生じる1サイクルあたりの平均軸力減少
(ゆるみ)をσとすれば、この記録例では
S=1.5mm、σ=2.24/10=0.224kN/サイクル
となる。
表1に掲げた六角ナット、各種ゆるみ止
めネジ部品及び緩み止め装置について実
験的に求めたSとσの関係を図3に示す。こ
の図を視察すれば、Sがゼロから始まって
ある値に達するまではσはゼロであるが、
この値を超えると急に立ち上がって緩みが
進行しはじめる。このSの値を緩まない限
界の軸直角振動全振幅といい、Scrで表す。
図3における各曲線の立ち上がり位置とし
て求めたScrの値とその傾向を表1の一番
下の欄に示す。
図2.ねじの緩み試験の測定記録例
下ナット逆転法を採用した場合
表1.各種ゆるみ止めネジ部品及び緩み止め装置の
緩みを生じない限界の軸直角振動全振幅Scrとその
傾向
図3.各種ゆるみ止めネジ部品及び
緩み止め装置について実験的に求
めたSとσの関係
図4(a).下ナット締め
(b).上ナット締め
(c).上ナット正転法
(d).下ナット逆転法
ダブルナットはネジの緩み止め手段として広く知られ、機械設計の教科書や便覧等には必ず記載されている。しかし、軸直角
振動による緩み試験の結果によれば、上下二つのナットによるロッキングが十分でない場合には緩み止めの効果はないようで
ある。
ダブルナットによる締付け作業は、一般に次のような手順で行われる。すなわち図4(a)に示すように、まず下ナットをT1なるト
ルクで締め、F1なる軸力を発生させる。次に図4(b)に示すように、上ナットをねじ込み、T2なるトルクで締め、F2なる軸力を発
生させる。このあとロッキング作業に入るが、その方法には2通りある。その1つは図4(c)に示すように、下ナットを1つのスパナ
で回り止めし、上ナットを他のスパナで動方向に回転してロッキングする方法、他は(d)に示すように、上ナットを1つのスパナで
回りとめし、下ナットを他のスパナで逆方向に回転してロッキングする方法である。前者を「上ナット正転法」、後者を「下ナット逆
転法」と名付ける。どちらの方法でも、ロッキングの際二つのスパナの柄部に逆方向の力を加えるので、このロッキング操作の
ことを「羽交い絞め」という。
図5(a).下ナット締め
図5(b).上ナット締め
図5(c) (d).ロッキング
「上ナット正転法」
図5(b)の状態に続いて上ナットを同じ方向にさらに回転すると、ボルトねじ山の上面が下ナットねじ山の下面に接触する。その
後も、ある程度上ナットを同じ方向に回転するとロッキング力Flocが発生して(c)の状態になる。ロッキング力Flocの値が緩み止
めに必要な力に達したときに、軸力F3が所望のFsとなるように下ナットの締め付け軸力F1を選ばなければならないが、これは
試行錯誤法によるにしてもかなり厄介な仕事である。おまけに、図5(b)の手順における上ナットの締め付けトルクT2は回転とと
もに増加するが、(c)の手順におけるロッキング力の発生による締め付けトルクの上乗せを、トルクT3の増加の具合によって感
覚的に捉えることはむずかしい。
「下ナット逆転法」
図5(b)の段階の後、下ナットの逆転によりネジ山が見かけ上、下降しはじめ、下ナットねじ山の下面がボルトねじ山の上面に接
触するまではトルクも軸力も一定値に保たれる。下ナットねじ山の下面がボルトねじ山の上面に接触した後も、ある程度下ナッ
トを逆転し続けると、ロッキング力Flocが発生して(d)の状態となる。この場合は、図5(b)の手順において軸力F2が所望の軸力
FsになるようにトルクT2の値を選ぶ。その際、ボルトねじ山の上と下の面が下ナットのねじ山の下と上の面に接触しない範囲内
の位置に止まるように、(a)の手順におけるトルクT1を定める。この作業は、トルク法による締め付けの要領で行うことが出来る
のでさほど困難ではない。手順(b)に引き続き下ナットを逆転する際、上述のように逆転の初期ではナットの回転角に対してトル
クが一定値に保たれるので、(d)の段階に達したときロッキング力の発生によるトルクT3の増加の具合を感覚的に捉えることは
容易である。以上の理由で、ダブルナットのロッキング方法としては「下ナット逆転法」が推奨される。
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