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技術コラム81-APS
innovating measurement technology TM
CyberOptics Semiconductor Inc. 技術コラム No.081
近代粒子測定の限界
今回も粒子測定技術の勉強として、パーティクルカウンタを調べてみました。(Aerosol Measurement (Paul A.Baron / Lkaus Willeke著)及びWikipeiaを参照)
近代におけるパーティクルカウンタは顕微鏡を用いて拡大されたパーティクルの密度を測定する手法が主流で
あったと言えます。Konimeter(コラム79で紹介)やPrecipitator(コラム80で紹介)にて採取されたパーティクルは、
主に0.5ミクロンから5ミクロンの間で、その数と大きさを測定しました。パーティクルの大きさは以下の図のような
Graticule(格子線の入ったガラスゲージ)が使用されました。
透明な対象物(SiO2、石英)のパーティクルを測定するには、その2つある屈折率(1.544と1.553)を利用し、適した
液体(屈折率が1.54のモノニトロベンゼンやテトララインなど)に液浸させた状態で顕微鏡観察されました。石英の粒子は顕
微鏡が焦点からわずかに引き上げられると、粒子の中央で光りだす現象があり、その光源を観察しました。
近代の粒子測定の限界
今まで紹介してきた全ての(No.78、79、80)の近代サンプリング方法では再現性に乏しいことが、その後わかって
きました。パーティクルの「はねかえり、rebound」、「再飛沫同伴化、re‐entrainment」、「集塊化、deagglomeration」
などの現象がサンプルに悪影響を与えていたのです。数秒または数時間後のサンプリングの度に違う値を示して
しまい、サンプリングと採取の効率が測定器ごとに実質的にバラついてしまったのです。現実的に比較を行うこと
がほとんど不可能であることがわかってきました。測定のバラつきが±100%もあったのです。ですから、2つの測
定器のパーティクル測定値を比較出来るように平衡近似計算や10桁もの比率を使ったりしていました。
粒子の独立気体分子運動論(isokinetic、アイソキネティック)を使ったサンプリング方法の重要性は1960年の以
前にはあまり認識されていませんでした(1954年にWaltonが独立分子運動論を使ったサンプリング方法の誤差
要因を指摘していた)。にもかかわらず、1960年の以降にやっと最初のアイソキネティックサンプル手法が発表され
ました。
熱によるPrecipitator(凝結器)は、長い期間選ばれてきた手法だったのですが、やがて殆ど使用されないものに
なってしまいました。1960年代のいくつかの調査により、このダスト採取法には採取された成膜物に重要な不規則
性と一様性に欠ける特徴があることが指摘されました。熱的伝達理論によると熱的伝達力やその速度が、通常の
気圧においてはパーティクルのサイズに依存してしまい、小さなパーティクルから先に成膜(Deposit)されてしまい
ます。ですから熱によるPrecipitatorで採取された成膜物には採取した位置の前方から後方にかけて徐々にパー
ティクルのサイズが変わるという性質があります。さらに成膜の不均一性が面積当たりのパーティクル数とサイズ
によっても存在します。熱的Precipitatorによるパーティクル採取の効率はパーティクルサイズが2ミクロン以上にな
ると減少してしまうのです。高い熱伝導性を持つパーティクルは、その低いものよりも何倍もの熱的力を持ち影響さ
れてしまいます。
近代の粒子測定の技術についての総論を述べると、1950年代には理論的、実験的な調査が行われたといって
よく、1960年代からは近代の方法を使った動作原理や装置がまだ使われていて、現代技術へ応用される測定手
法や応用を使い始めていきますが、
その時代の装置そのものには、歴史的重要性はあるにしても、
現代技術からみると、全く使い物にならないものと言えます。
しかし、1960年代に発明された重要な技術の1つにポリカーボネイトを使った多孔体によるフィルタリングがあり
ます。
ダストや気中パーティクルをフィルタリングによって適当な大きさのものにふるい分けして採取する方法は1920
年代からありました。Soxhletフィルターというものが代表的にダスト採取に使用されていたのですが、その頃のダ
スト密度は1立方メートルあたり数mgというものでした。TrostelとFrevertがその装置を1923年に開発しました。
Soxhletフィルタはワットマン紙(写真などに使われていた)から抽出された指サック形状のフィルタであり、凝結しな
いように、うぶ毛を取った綿毛を詰めたものでした。溶解可能なフィルタも使用されていました。1906年には砂糖の
顆粒に採取して水中で分離する方法があり、1951年にはHoltによりナフタレンフィルタをダスト群の密度を測定す
るために使用しました。ナフタレンは、採取後に熱処理で蒸発させていました。1956年にはテトラクロロナフタレンの結晶
が溶解フィルタとして使われていました。
次のダストサンプリング用フィルタは、紙で出来たフィルタです。1950年代には膜フィルタ(Membrane Filter、
MF)が気中パーティクルの採取に最も重要な標準的な分析及び採取用フィルタになります。これらのフィルタは多
孔膜(Porous Membrane)で出来ていて、スポンジ構造のようになっていて約100‐150ミクロンの厚みを持っていま
した。下の写真を参照ください。
これらはいくつかのセルロース エステル ゲルやその混合体で出来ています。MFは75%から80%の孔体積を
持っていました。孔の大きさによって製造工程は制御されていました。MFは集めたダストを計測したり、顕微鏡に
よってパーティクル数を測定したりする目的で使われました。顕微鏡を使う前には、パーティクルを採取したMFは
数滴の浸漬油や有機溶剤を使って透明にしていました。
本当のMFの使用とその準備期間の歴史は1950年よりも以前であり、セルロースエステルを使ったMFはドイツで
1927年から生産されていました。その生産はZsigmondyとBachmanの研究用途に主に行われました。第二次世界
大戦後にMFの生産はアメリカ、ロシア、イギリス、チェコスロバキアでも開始されました。MFの生産手法とその気
中粒子測定向けの使用方法は、詳細に記述されています。MFによるダストと気中パーティクルの測定は約1940
年代後半に開始され、ドイツではKruse(1952年)がBioaerosol(生物粒子)の測定に使用しました。ロシアでのMF
の使用は1951年のダスト密度の重量測定が記録に残っており、アメリカではAlexander GoetzがMF生産とそのア
プリケーションの父と言われています。彼はMFを気中パーティクルと生物粒子測定の両方に活用した(Goetzと
Tsuneishi、1959年)。First, Silverman(1953年)、Fraser(1953年)、Burke(1953年)、Kalmus(1954年)もアメリカでMF
を使ったダスト計測におけるアプリケーションの非常に重要な先駆け開拓を行ってます。フランスのLe Bouffand(1954年)やDavelu(1958年)もMFをダストの計測アプリケーションを紹介しています。また同時期にチェコ
スロバキアにおいてもダスト測定におけるMFが標準的な方法として採用されていました。
多孔体(ポーラス)フィルタを使ったダストや気中パーティクルの分野における重要な進歩は1960年以降にポリ
カーボネイトフィルター(Nucleporeフィルタとか、NPFとも言われる)の発明とその実用がなされていきます。
以上がフィルター技術の歴史的背景になります。
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