No.2015-026 2015年3月4日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp 米国リグ減 ~ 下押し影響が視野 ~ (1)米国リグ数が一段と減少。原油、天然ガス別にみると、原油リグは昨年10月第2週の1,609基 をピークに減少。12月初以降、減勢に拍車。最新値の本年2月第4週は986基。ピーク比39%減。 2011年6月央以来の千基割れ。一方、天然ガスのリグは昨年11月第1週の356基をピークに減少。 本年2月第4週は280基。前週来、93年5月央以来の300基割れ。リグ減は生産能力減から産油量 減に作用する筋合いで1月末から原油値上がり。しかし原油在庫は、本年に入り例年を上回る ペースで増勢加速。直近2月第3週は12~13年比18%増、10~11年比では27%増。大幅な在庫増 から推せば、米国の原油生産は本年入り後、依然減勢転換に至らず、増勢加速の可能性も。 (2)一方、実体経済ではマイナス影響が視野。まずテキサス州やペンシルベニア州などシェール ブームに沸いた7州の雇用は近年大幅増(図表1)。非シェール州の雇用は昨年4月、リーマン ・ショック前のピーク、08年初水準を回復。それに対してシェール7州では、12年4月に同ショ ック前のピーク、08年8月水準を上回り、その後、一段と増勢加速。同ショック後の底、09年 12月を基準に主要業種別雇用者数をみると、非シェール州ではウェイトレスなど娯楽業、人材 派遣、小売業など賃金水準の低い分野が雇用増の中心(図表2)。総じて雇用の質低下。それ に対してシェール7州では娯楽、人材派遣と並び賃金水準の高い鉱業が雇用増を牽引(図表3)。 シェール・ブームに伴う鉱業の盛り上がりが、サービス業や商業、エンジニアをはじめとする 専門サービスなど幅広い分野の雇用増に波及する好循環。 (3)しかしシェール州の雇用情勢に翳りの兆し(図表4)。州別の失業保険継続受給件数は原数 のみ。週次動向をみると、例年ほぼ同様の季節パターン。年初にピークを打ち、その後、週次 変動はあるものの、4月にかけて減少。それに対して本年は1月半ば以降、減勢ストップの兆し。 従来と異なる動き。新規投資の抑制を通じたリグ減のマイナス影響表面化の可能性。 (図表1)米国のシェール州・非シェール州別雇用者数 112 110 108 (図表2)非シェール州の主要業種別雇用者数(季調済) 16 (2009年12月=100) シェール7州(テキサス、ペンシルベニア、オク ラホマ、ノースダコタ、ワイオミング、コロラド、 ニューメキシコ) 非シェール州(7州以外) (10万人) 鉱業 製造 小売 情報 専門サービス 人材派遣 14 12 10 106 建設 卸売 輸送公益 金融 管理職 娯楽 8 104 6 102 4 100 2 98 0 ▲2 96 2005 06 (出所) USDL 07 08 09 10 11 12 13 14 2009 (注) 非農業部門。対2009年12月差。季調済。(年/月) 10 (出所) USDL (図表3)シェール州の主要業種別雇用者数(季調済) 11 12 13 14 (注) 非農業部門。対2009年12月差。 (年/月) (図表4)シェール7州の失業保険継続受給件数 36 10 (万人) (万件) 鉱業 製造 小売 情報 専門サービス 人材派遣 30 24 建設 卸売 輸送公益 金融 管理職 娯楽 2010年8月~ 2011年8月~ 2012年8月~ 2013年8月~ 2014年8月~ 8 6 4 18 2 12 0 6 ▲2 0 ▲4 ▲6 ▲6 2009 10 (出所) USDL 11 12 13 14 (注) 非農業部門。対2009年12月差。 (年/月) 08 09 (出所) USDL 10 11 12 01 02 03 (注) 各年とも対初年7~12月平均差。 (月/週) 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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