産業 電子部品・デバイス アウトルック 2015年3月13日 担当: 山鹿 亜紀子 ≫Summary 日系電子部品メーカーの出荷金額(対世界)は、2014年半ば以降、 北米スマートフォンメーカーの新型端末向けの出荷が立ち上がり、 増勢が強まる展開となっている。また、中国スマートフォンメーカ Regional banks Industrial research Center ー向けや車載向けの出荷も引き続き好調で、日系電子部品メーカー の業績は総じて拡大傾向にある。 国内生産に関しても、輸出向けを中心に回復傾向にある。地域別に は、スマートフォン向け部品を生産している地域の好調が目立ち、 中部や近畿の生産指数が引き続き上昇トレンドを描いている。ま た、九州の生産指数についても、スマートフォン用カメラ部品が伸 びており、2014年半ばより回復基調にある。 当センターでは、2014年度の電子部品・デバイスの国内生産金額(経 済産業省「生産動態統計」ベース)を前年度比7%増と予想し、前 回(9月)の予想から上方修正する。上方修正の要因はスマートフ ォン向け部品の生産金額を増額修正したことによる。また、2015年 度の国内生産金額を同3%増と予想する。引き続きスマートフォン 向けと車載向けの部品が生産回復をけん引しよう。上・下期別では、 上期を前年同期比3%増、下期は同2%増と予想する。 ≫Overview ◆日系電子部品メーカーの世界出荷金額は拡大基調 日系電子部品メーカ ーの対世界出荷金額(季 日系メーカーの電子部品出荷金額(対世界) 季調済、十億円 370 調済)は、2014年初頭か 350 ら半ばまでは増勢が鈍 330 化していたが、それ以 310 290 降、直近12月まで再び増 270 勢が強まる展開となっ 250 ている。これは、北米ス 230 が14年7~9月期に本 3か月後方 移動平均 2011年 マートフォンメーカー の新型端末向けの出荷 出荷金額 注1: 注2: 出所: 12 13 14 本統計はJEITAの電子部品部会に参加している日系企業70数社から提出された 資料に基づく。出荷金額には海外生産拠点からの出荷が含まれる。 季節調整は当センターが実施。 JEITA「電子部品グローバル出荷統計」より作成 本レポートに記載されている情 報は、地銀連携産業調査センタ ーが信頼できると考える情報源 に基づいたものですが、その正 確性、完全性を保証するもので はありません。本レポートに記 載した内容は、レポート執筆時 の情報に基づくものであり、レ ポート発行後に予告なく変更さ れることがあります。ご利用の 際は、最新の情報をご確認くだ さいますようお願い致します。 本件に関するお問い合わせ 地銀連携産業調査センター (浜銀総合研究所内) Tel 045-225-2375 9 格的に立ち上がった影響大きい。また、中国スマー トフォンメーカー向けや車載向け部品も引き続き 好調で、日系電子部品メーカーの出荷金額の押し 電子部品・デバイス工業 生産金額の推移 (全国) 季調済、十億円 750 700 3か月後方 移動平均 上げに寄与している。 650 ◆大手電子部品メーカーの業績も総じて好調 生産金額 600 スマートフォンや車載向け部品の出荷伸長を背 550 景として、電子部品メーカーの業績も総じて拡大 500 12 2011年 ー8社の2015年3月期第3四半期(10~12月期)の 業績は、売上高が前年同期比11.5%増、営業利益が 13 14 15 注: 季節調整は当センターが実施。 出所: 経済産業省 「生産動態統計」より作成 同39.4%増となった。ただし、スマートフォン向け ◆デバイスは集積回路と液晶素子が全体をけん引 部品を手掛ける企業であっても、主要顧客の違い まず、デバイス製品の生産金額(季調済)をみる によって業績に差が生じている。業績が好調なの と、直近1月まで6か月連続で増加した。また、そ は北米や中国スマートフォンメーカー向けの部品 の水準は2011年初頭と同程度まで回復しており、 を主力とする企業であり、韓国メーカー向けを主 デバイス製品の国内生産は回復から拡大トレンド 力とする企業の業績は低迷している。 に入りつつあると考える。 通期業績予想は、第2四半期決算発表時点で通 デバイス製品 生産金額の推移(全国) 季調済、十億円 期予想を開示した7社中4社が売上高と営業利益 550 を上方修正した。上方修正の要因は、前述した部品 500 の拡販のほか、円安影響や原価低減効果が会社想 定以上に出たことによる。一方、韓国メーカー向け を主力とする企業は業績を下方修正した。 十億円 400 国内大手電子部品メーカー8社 業績推移 前年同期比、% 400 20 300 15 200 10 100 5 0 0 ‐100 ‐5 ◆国内生産動向 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 予想 13/3期 14/3期 営業利益(左軸) 3か月後方 移動平均 450 15/3期 売上高 前年同期比(右軸) 注: 大手電子部品メーカーは、日本電産、ルネサスエレクトロニクス、 TDK、京セラ、ヒロセ電機、村田製作所、日東電工、ロームの8社。 出所: 各社決算短信 350 生産金額 Regional banks Industrial research Center 基調にある。既に発表された大手電子部品メーカ 300 2011年 12 13 14 15 注: 季節調整は当センターが実施。 出所: 経済産業省 「生産動態統計」より作成 品目別には、集積回路と液晶素子がデバイス製 品全体の生産金額を押し上げている。集積回路で は、モス型半導体の生産が伸びており、NAND型フラ ッシュメモリーやCMOSイメージセンサなどのスマ ートフォン向け部品の需要増が生産拡大につなが ったとみられる。また、液晶素子については、3.0 インチ以上7.7インチ未満の生産が大きく増加し ◆国内生産金額も回復傾向 一方、国内の電子部品・デバイス工業の生産金額 ており、集積回路と同じくスマートフォン向けの 需要拡大が増加の背景となっている。 (季調済)をみると、直近2015年1月まで6か月連 ただし、液晶素子については韓国のパネルメー 続で増加するなど、回復傾向を描いている。最先端 カーなどとの競争が激化しており、日系パネルメ スマートフォン向けや車載向け部品は、国内で生 ーカーの業績は楽観視できない状況にある。 産されている場合が多い。以下、製品別の生産動向 について詳細を述べる。 一方、太陽電池モジュールの生産は減少傾向に ある。これは、太陽電池モジュールの価格が供給過 10 10 剰によって下落していることや、国内電力会社が 一方、接続部品や電子回路基板は受動部品と比 太陽光発電の接続申し込みを保留にしたことなど 較すると生産が伸び悩んでいる。これは、スマート が影響している。 フォン向けや車載向けに伸びている部品がある反 面で、海外勢との競争激化などによって、はん用部 デバイス製品 品目別生産金額の推移(全国) 季調済、十億円 品(例えばプリント配線板用コネクタやリジッド 250 プリント配線板など)の生産が減少傾向にあるこ 200 とによる。 150 電子部品 品目別生産金額の推移(全国) 季調済、十億円 100 100 90 50 80 70 0 60 12 13 集積回路 液晶素子 半導体素子 14 15 太陽電池モジュール 50 40 30 注: 季節調整は当センターが実施。 出所: 経済産業省 「生産動態統計」より作成 20 10 0 ◆電子部品では受動部品が好調 12 2011年 次に電子部品の生産動向をみると、月ごとの上 下はあるものの、すう勢として回復基調にある。 受動部品 13 接続部品 14 15 電子回路基板 注: 季節調整は当センターが実施。電子部品の主要品目のみ掲載している。 出所: 経済産業省 「生産動態統計」より作成 ◆地域別では中部、近畿の生産指数の好調が継続、 電子部品 生産金額の推移(全国) 九州の生産指数も回復傾向 季調済、十億円 3か月後方移動平均 200 地域別の生産動向を経済産業省「鉱工業指数」か 195 らみると、スマートフォン向け部品を生産してい 190 185 180 る地域の好調が目立つ。中部ではNAND型フラッシ 175 ュメモリー(三重県)の好調が、近畿では受動部品 170 (福井県)の好調が指数の回復をけん引している。 165 生産金額 160 Regional banks Industrial research Center 2011年 また、九州の生産指数が2014年半ばから回復基調 155 にあり、これはCMOSイメージセンサ(熊本県)の生 150 2011年 12 13 14 15 注: 季節調整は当センターが実施。品目別に季節調整を行っているため、デバイス製品と 電子部品の合計値は電子部品・デバイス全体の季調済実績値と一致しない。 出所: 経済産業省 「生産動態統計」より作成 産が拡大していることが背景となっている。 電子部品・デバイス工業生産指数の推移 (2010年=100、国内地域別) 季調済、2010年=100 220 品目別では、受動部品(コンデンサやインダクタ など)が全体の回復をけん引しており、その金額は 200 180 160 ここ数年で最も高い水準にある。受動部品の生産 140 が伸びている理由は、スマートフォン向けの需要 100 が拡大していることによる。国内で生産されてい る超小型コンデンサなどは、スマートフォンが高 120 80 60 40 20 機能化すると、1台あたりの搭載点数が増える傾 向にある。2014年半ばから年明けにかけての受動 部品の増加は、北米スマートフォンメーカーの新 12 2011年 東北 関東 13 中部 近畿 14 中国 15 九州 出所: 経済産業省 「鉱工業指数」 型端末向けが立ち上がったことに加え、中国メー カーがLTE対応型など高性能な端末の生産を活発 に行っていることによる。 ◆輸出動向 なお、国内生産の増加は、輸出の好調に支えられ 11 11 ている。全国の輸出金額(季調済)は、2014年半ば 鈍化することや部品の値下げ圧力が強まると予想 から拡大基調にあり、電子部品とデバイスがとも しており、国内生産金額は同2%増と上期よりも に伸びている。スマートフォン向け部品の需要増 小幅な伸びに留まるとみている。以下では、品目別 加が、輸出金額拡大の主要因となっている。 の今後の動向について詳細を述べる。 電子部品・デバイス 輸出金額の推移(全国) 季調済、十億円 電子部品の国内生産金額は2014年度が前年度比 750 5%増、2015年度は2%増を予想 700 電子部品の2014年度の国内生産金額については、 650 前年度比5%増の2兆1,750億円(前回予想は同 3か月後方移動平均 2%増の2兆1,100億円)へと上方修正する。前回 輸出金額 600 予想からの上ぶれは、主としてスマートフォン向 550 2011年 12 13 14 15 注: 季節調整は当センターが実施。 出所: 財務省「貿易統計」より作成 ≫Forecast 2014年度の国内生産金額は前年度比7%増、2015年 度は同3%増を予想 る。 また、15年度の生産金額については、同2%増の 2兆2,100億円を予想する。受動部品については、 中国スマートフォンメーカー向けや車載向けの部 品需要が好調に推移すると見込むものの、接続部 当センターでは、2014年度の電子部品・デバイス 品や電子回路基板については、はん用の生産減少 の国内生産金額(経済産業省「生産動態統計」ベー を見込んでいる。その結果、電子部品全体の伸びと ス)を、前年度比7%増の7兆7,750億円と予想し、 しては緩やかなものに留まると予想する。 14年9月時点の予想(同4%増の7兆5,500億円) から上方修正する。上方修正の理由は、スマートフ デバイス製品の国内生産金額は2014年度が前年度 ォン向け部品の生産金額を増額修正したことによ 比6%増、2015年度が3%増を予想 る。前回の予想では、端末の出荷台数の伸び悩みと デバイス製品の2014年度の国内生産金額につい 単価下落を背景にスマートフォン向け部品の国内 ては、前年度比6%増の5兆6,000億円(前回予想 生産の増勢が弱まると想定していたが、実際には は同3%増、5兆4,400億円)へと上方修正する。 出荷台数の伸び悩みはあったものの、中国スマー 前回予想では、14年度下期にNAND型フラッシュメ トフォンメーカーの端末の高機能化によるプラス モリーの単価下落が進むと見込んでいたが、スマ 影響は想定を上回るものとなった。 ートフォン向けの需要が堅調に推移したことから、 また、今回新たに15年度の電子部品・デバイスの 単価下落の影響は当時の見込みよりも小幅に留ま 国内生産金額を、同3%増の7兆9,700億円と予想 る見通しである。また、スマートフォンに使用され した。生産増をけん引するのは、引き続きスマート るCMOSイメージセンサなどの生産金額を前回予想 フォン向けと車載向け部品となろう。ただし、14年 より強気に見直した。 度と比較すると、北米スマートフォンメーカーの 15年度の生産金額については、同3%増の5兆 旗艦モデルの発売や、中国でのLTE商業サービス開 7,600億円を予想する。スマートフォン向け部品が 始という要因が外れる分、15年度の伸びは緩やか 好調に推移すると見込むほか、車載向けの半導体 なものに留まると予想する。 が車の電装化を背景として堅調に伸びると予想す 15年度上期については、中国スマートフォンメ る。ただし、液晶素子については、単価下落がさら ーカー向けの生産が活発に行われると見込んでお に進むと想定しており、生産金額の伸びは小幅な り、国内生産金額は前年同期比3%増を予想する。 ものに留まると予想する。また、太陽光モジュール また、下期についても、スマートフォン向けが堅調 については、国内需要の低迷が続くとみており、マ に推移すると見込むが、端末の出荷台数の伸びが イナス成長を予想している。 Regional banks Industrial research Center けの受動部品の生産金額を増額修正したことによ 500 12 12
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