10. 1変数関数の積分 (1)

2014 年 B 科 微分積分学演習
10. 1 変数関数の積分 (1)
定積分の定義と基本性質
'
$
定積分の定義. I = [a, b] 上の有界な実数値関数 f と, I の分割 ∆ = {Ik }k=1,2,...,n , ξ = {ξk }
ξk ∈ Ik に対して,
n
∑
Σ(f ; ∆; ξ) =
f (ξk )|Ik |,
k=1
と定め, f のリーマン和といい, 極限
lim Σ(f ; ∆; ξ)
|∆|→0
が存在するとき, f は I 上で (リーマン) 積分可能または (リーマン) 可積分であるといい,
その値を
∫ b
f (x) dx
a
と表し, f の I 上の定積分といい, f を被積分関数という.
定理. I = [a, b] 上連続な関数は I 上で可積分である. また, I = [a, b] 上単調な有界関数
は I 上で可積分である.
注意 連続性や単調性をもたない関数であってもリーマン積分可能な関数は存在するが,
一般に与えられた関数がリーマン積分可能かどうか決定するのは困難である.
∫ b
例
x dx を定積分の定義に従って求める. ∆n を区間 [a, b] を n 等分する分割とし, ξk は
a
1
Ik の左端の点とする. h = (b − a) とおくと,
n
∫ b
n−1
)
(
∑
2 n(n − 1)
x dx = lim
(a + ih)h = lim ahn + h
n→∞
n→∞
2
a
i=0
(
)
2
(b − a) n(n − 1)
= lim a(b − a) +
n→∞
2
n2
2
2
2
(b − a)
b −a
= a(b − a) +
=
.
2
2
∫ b
∫ a
a ≧ b の場合の定積分の定義. a > b のとき
f (x) dx = −
f (x) dx とし, a = b の
a
b
∫ b
とき
f (x) dx = 0 とする.
a
定理 (定積分の基本性質). f (x), g(x) が [a, b] で積分可能ならば
∫ b
∫ b
∫ b
{f (x) ± g(x)} dx =
f (x) dx ±
g(x) dx.
(1)
a
a
a
∫ b
∫ b
cf (x) dx = c
f (x) dx (c は定数),
(2)
a
a
∫ b
∫ c
∫ c
f (x) dx +
f (x) dx =
f (x) dx,
(3)
a
b
a
∫ b
∫ b
(4) [a, b] 上 f (x) ≥ g(x) ならば
f (x) dx ≥
g(x) dx.
a
a
∫ b
∫ b
|f (x)| dx.
f (x) dx ≤
(5) &
a
a
%
– 18 –
問 1. 次の問いに積分の定義に基づいて答えよ.
∫
b
x2 dx を求めよ.
2
(1) f (x) = x は [a, b] 上で積分可能であることを示し,
∫
a
1
ex dx を求めよ.
(2) g(x) = ex は [0, 1] 上で積分可能であることを示し,
0
問 2. 関数 f (x) =
{
1 (x は有理数)
0 (x は無理数)
はどんな閉区間でも積分可能でないことを示せ.
問 3. f , g が [a, b] で積分可能ならば, 積 (f g)(x) = f (x)g(x) も [a, b] で積分可能であることを
示せ.
問 4. f を区間 [a, b] 上で正の値をとる連続関数とするとき, f の最大値を M とすれば次の式
が成り立つことを示せ:
(∫ b
) n1
lim
(f (x))n dx
= M.
n→∞
a
補充問題
問 5. 関数 f (x) =
{
1 (x = 0)
0 (x ̸= 0)
∫
1
は [−1, 1] 上で積分可能であることを示し,
f (x) dx を求
−1
めよ.
[ π]
上で可積分であることを定積分の定義に基づいて示せ.
問 6. f (x) = sin x は, I = 0,
2
また,
(
)
(
(
α
1
1)
1)
sin sin αk =
cos α k −
− cos α k +
(積和の公式)
2
2
2
2
∫ π/2
を利用して
sin x dx を求めよ.
0
∫
b
(tf (x) + g(x))2 dx ≥ 0 が任意の t ∈ R で成り立
問 7. [a, b] 上の可積分関数 f , g に対して,
a
つことから, 次の積分形の Schwarz の不等式を示せ:
(∫
a
b
)(∫ b
)
)2 (∫ b
2
2
(f (x)) dx
(g(x)) dx .
f (x)g(x) dx ≤
a
a
問 8. 以下の問いに答えよ.
(1) [a, b] 上の連続関数 f に対して, [a, b] を n 等分した分割 a = x0 < x1 < . . . < xn = b を用いて
n−1
]
∑
b − a[
f (a) + f (b) + 2
f (xk ) と定めたものを台形公式という.
Tn (f ) :=
2n
k=1
∫ b
f が [a, b] 上で上に凸のとき,
f (x) dx ≥ Tn (f ) となることを示せ.
a
√
3
(2) f (x) =
は [0, 1] 上で上に凸であることを示し, π > 3.1 となることを示せ.
3 + x2
– 19 –