x(t + h) − x(t) h x (t) = lim x(t + h) − x(t) h ((cos t) , (sin t) ) = (cos(t + π/2

数学の世界 C 講義メモ(6 月 25 日)
先週 (6 月 18 日) から第 3 部の微分の話に入った.しかし,先週は第 2 回試験を行ったので実質的な授業時
間は 30 分弱だった.今回の講義メモではその部分も含めてまとめておく.なお,提出課題については別にメ
モを作成する.
1. 時刻とともに変化する量と微分
x を時刻とともに変化する量とし,x(t) で時刻 t における量を表すものとする.例えば人口や GDP
(国民総生産),ある地点での気温などが時刻とともに変化する量である.時間が h だけ経過したとき
の変化量は x(t + h) − x(t) それを経過時間で割れば,単位時間当たりの変化量
られる.ここで h −→ 0 とした時の極限を考えれば,それはまさに微分
x′ (t) = lim
x→0
x(t + h) − x(t)
が得
h
x(t + h) − x(t)
h
になる.微分とはある時刻における瞬間的な「単位時間当たりの変化量」を表すといえる.
2. 基本的な微分公式
この講義は微分の考え方や,それが実際の現象の理解にどう使われるかを解説する.微分計算の仕方
は目的としていない.しかし,微分を使って考える以上,微分計算を無視するというわけにもいかな
い.高校で数学 III を学習した人には周知のことであるが要点だけ整理しておく.
• 三角関数の微分
(cos t, sin t) が単位円周上の速度 1 の運動であれば,その速度ベクトルは大きさが 1 で方向が接
線方向のベクトルである.向きを考慮すれば
((cos t)′ , (sin t)′ ) = (cos(t + π/2), sin(t + π/2)) = (− sin t, cos t)
• 指数関数の微分
x(t) = at とすれば
at+h − at
ah − 1 t
= lim
a = αat ,
h→0
h→0
h
h
x′ (t) = lim
ah − 1
h→0
h
α = lim
となるので,指数関数の微分は元の関数の定数倍である.これはこの講義で最も基本的な事項なの
で理解するようにしてほしい.なお,α = 1 となる時の a の値をネピアの数と呼び e で表す.す
なわち (et )′ = et である.
• 対数関数の微分,合成関数の微分
これらについてはプリントに簡単に記述したが講義では省略した.必要になった時点で説明
する.
3. 変化量一定の現象
時刻とともに変化する量を考える時,まず素朴に考えるのは単位時間当たりの変化量が一定である場
合だ.これは微分を使って x′ (t) = c と記述できる.このように導関数 x′ (t) を含んだ関数の等式を微
分方程式と呼ぶ.この条件を満たす関数を微分方程式の解と呼ぶ.与えられた微分方程式についてその
解を見つけることは数学の主要な問題の一つである.
ただし,この条件を満たす解が 1 次関数 x(t) = ct + D であることは分かるだろう.微分はグラフで
書けば接線の傾きなので,微分が一定ならグラフは直線だ.
4. 変化率一定の現象
変化量を考える時,それと全体量の比を考えるのは当然のことだ.同じ人口が 10 人増えるという現
象にしても,人口が 1000 人の町と 100 万人の町では意味が異なる.単位時間当たりの変化量が全体量
に占める割合を単位時間当たり変化率と呼ぼう.それは
x′ (t)
x(t + h) − x(t) 1
=
h→0
h
x(t)
x(t)
lim
と微分を使って表せる.
さて,変化率一定の現象とは x′ (t)/x(t) = c を満たす現象であるといえる.これは x′ (t) = cx(t) と
いう微分方程式になる.この解は今日述べた指数関数に他ならない.具体的には x(t) = Dect と記述
される.何故こうなるかは理系学生は知っていなくてはならない.しかし,数学 III を学習していない
人は分からないだろう.変数を t から ct に変えることはグラフを水平方向に 1/c 倍することなので,
接線の傾き(微分)は c 倍になるということなのだがやはり分かりづらいかもしれない.分からない人
は事実として受け入れてほしい.
変化量一定の現象と変化率一定の現象の比較をプリントでは表としてまとめている.一次関数と指数
関数,等差数列と等比数列,単利と複利といった既知の言葉が対比的に現れていることに注意してほ
しい.
5. 放射性元素の崩壊(黒板に放射性原子と書いてしまったかもしれません.間違いです.)
ある種の元素は不安定で時間とともに自然に崩壊していく.例えば炭素には原子量(陽子の数と中性
子の数の和)が 12 のものと 14 のものが存在する.炭素 14 は時間とともに一定の割合で崩壊していく
ので,それを利用して年代測定が行われている.
これはまさに変化率一定の現象なので,時刻 t におけるある放射性元素の個数を x(t) とおけば
x′ (t) = −αx(t) が成り立つ.この式は「放射性元素の単位時間当たりの崩壊数は,その時の元素の数
に比例する」という物理法則を数式として記述したものである.すると x(t) は
x(t) = De−αt
と表されることが分かる(前項の話の c が −α になっただけだ).
このことから放射性元素の半減期を理解する.半減期とは放射性元素が崩壊によって半分になるのに
かかる時間である.すなわち x(t2 ) = x(t1 )/2 のときの t2 − t1 である.さて指数関数による表示を利
用して書き直そう.
2De−αt2 = De−αt1 ,
2 = eαt2 e−αt1 = eα(t2 −t1 ) ,
loge 2 = α(t2 − t1 )
なので t2 − t1 = (loge 2)/α であり,t1 によらない一定の間隔になる.これを半減期と呼ぶ.
例えば炭素 14 の半減期は 5730 年である.樹木は生きているうちは呼吸によって大気中の炭素を取
り込むので,そこに含まれる炭素 14 の割合は大気中での割合(0.00000000012%)と等しい.しかし伐
採して木材にしてしまうと呼吸はなくなるので,木材中の炭素 14 の割合は低下していく.もし炭素 14
の割合が 0.00000000006% であれば,その木材はおよそ 5730 年前に伐採されたと推定できる.これが
炭素 14 による年代測定の基本である.なお,炭素 14 がなぜなくならないのか疑問に持つ人もいるだろ
う.理由は宇宙線の影響で炭素 14 がたえず生成されていることによる.崩壊と生成のバランスがとれ
ているため,炭素 14 の割合は一定に保たれている.
原発の原子炉で行われているのは,ウランに中性子を衝突させ,原子核を複数に分裂させる過程であ
る.これを核分裂という.核分裂は外部からの刺激がないと行われず,放射性元素の崩壊とは全く異な
る現象である.ただし,核分裂によって作られる元素はほとんどが放射性元素である.これは,一定の
割合で崩壊を続けそのたびに放射線を出す.原子炉は核分裂から多くのエネルギーを取り出すが,一方
で大量の放射性元素の製造工場とも言える.一度作られた放射性元素の崩壊を止める手立てはない.放
射性元素の処理といっても人間が近づかないところに閉じ込めるしかない.