予告問題

2016 年度 応用数学 到達度試験
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予告問題[確定版] 7/27 実施予定
筆記用具・時計・タオル等・飲料 (水筒または 500 mL 以下のペットボトル 1 本) のみ
持込可
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電卓使用不可 携帯電話等、通信可能な電子機器を時計として使用してはならない
1.
希薄溶液において弱酸 HA の酸解離定数は
𝐾a ≈
[H3 O+ ][A− ]
[HA]
で近似される。
(a) Henderson–Hasselbalch の式
pH ≈ p𝐾a + log10
[A− ]
[HA]
を導け。ただし p𝐾a = − log10 𝐾a 、pH ≅ − log10[H3 O+ ] である。
(b) 酢酸と水酸化ナトリウムをモル比 3:1 で混合した水溶液の pH を求めよ。ただし両成分と
も充分に希薄なため、上式の近似が高い精度で成り立っているものとする。また酢酸の
p𝐾a = 4.76、log10 2 = 0.301、log10 3 = 0.477 とせよ。
2.
二原子分子の振動エネルギーは 𝐸𝑛 = ℎ𝜈(𝑛 + 1/2) で与えられる。ここで ℎ は Planck 定
数、𝜈 (ニュー) は分子の基準振動数であり、𝑛 = 0, 1, 2, … は振動の量子数である。また
分子が量子数 𝑛 を持つ状態にある確率は
𝑃𝑛 =
e−𝛽𝐸𝑛
𝑍
で与えられる。ここで 𝛽 = 1⁄𝑘B 𝑇、𝑘B = 𝑅⁄𝑁A は Boltzmann 定数であり、無限級数
∞
𝑍 = ∑ e−𝛽𝐸𝑛
𝑛=0
は分配関数とよばれる。
(a) 無限級数 𝑍 が収束することを示し、その値を求めよ。
(b) 分子の平均の振動エネルギーは
∞
〈𝐸〉 = ∑ 𝑃𝑛 𝐸𝑛
𝑛=0
で表される。この級数の和は分配関数 𝑍 を用いて
〈𝐸〉 = −
1 d𝑍
d ln 𝑍
=−
𝑍 d𝛽
d𝛽
と表されることを示し、その値を求めよ。
3.
原子単位系 (𝑎0 = 𝑒 = 𝑚 = ℏ = 1) を用いると、水素原子の 1s 軌道の波動関数は球座
標を用いて 𝜓1s (𝑟, 𝜃, 𝜙) = 𝐶e−𝑟 と表される。ただし規格化定数 𝐶 は正の実数とする。
(a) 規格化条件
∫ |𝜓1s (𝒓)|2 d𝑣 = 1
ℝ3
より 𝐶 を求めよ。ただし ℝ3 は 3 次元空間全体を表す。
(b) 1s 電子の核からの距離 𝑟 の平均値
〈𝑟〉 = ∫ 𝑟|𝜓1s (𝒓)|2 d𝑣
ℝ3
を求めよ。
(c) 1s 電子の存在確率が最大となる距離 𝑟max を求めよ。
4.
1 モルの単原子理想気体の体積およびモルエントロピーを
𝑝
𝐶3
それぞれ温度 𝑇 と圧力 𝑝 の関数として 𝑉(𝑇, 𝑝)、𝑆(𝑇, 𝑝) 𝑝2
と表したとき、𝑉 および 𝑆 の微小変化はそれぞれ
𝐶4
𝑅
𝑅𝑇
5𝑅
𝑅
d𝑇 − 2 d𝑝, d𝑆 =
d𝑇 − d𝑝
𝑝
𝑝
2𝑇
𝑝
d𝑉 =
𝐶2
𝐶1
𝑝1
で与えられる。
𝑇1
𝑇2
𝑇
(a) d𝑉、d𝑆 がいずれも全微分になっていることを示せ。
(b) この気体の状態をわずかに変化させたとき、気体が外部からうける仕事、外部から吸収
する熱量はそれぞれ δ𝑊 = −𝑝 d𝑉, 𝛿𝑄 = 𝑇 d𝑆 で表される。δ𝑊, δ𝑄 がいずれも全微分に
なっていないことを示せ。
(c) この気体の状態を図の経路 𝐶 = 𝐶1 + 𝐶2 + 𝐶3 + 𝐶4 に沿って準静的に変化させたとき、気
体が外部からうける仕事および熱量
𝑊 = ∫ δ𝑊 + ∫ δ𝑊 + ∫ δ𝑊 + ∫ δ𝑊 = ∮δ𝑊 , 𝑄 = ∮δ𝑄
𝐶1
𝐶2
𝐶3
𝐶4
C
C
をそれぞれ求めよ。
5.
𝑘
平衡反応 A ⇄′ B において A の初濃度を 𝑎、時刻 𝑡 における B の濃度を𝑏(𝑡) とすると、
𝑘
この時刻における A の濃度は 𝑎 − 𝑏(𝑡) で表されるから、反応速度式は
d𝑏(𝑡)
= 𝑘(𝑎 − 𝑏(𝑡)) − 𝑘′𝑏(𝑡)
d𝑡
となる。ただし 𝑏(0) = 0 とする。また 𝑘, 𝑘 ′ > 0 である。
(a) 反応物 A、生成物 B の濃度 𝑎(𝑡), 𝑏(𝑡) をそれぞれ時刻 𝑡 の関数として表せ。
(b) lim 𝑎(𝑡) 、 lim 𝑏(𝑡) を求め、結果の意味するところを簡単に説明せよ。
𝑡→∞
𝑡→∞
6.
一様な磁場 𝑩 = (0,0, 𝐵) 中におかれた磁気モーメント 𝝁(𝑡) = (𝜇𝑥 (𝑡), 𝜇𝑦 (𝑡), 𝜇𝑧 (𝑡)) の時
間変化は Bloch 方程式
d𝜇𝑦 (𝑡)
𝜇𝑦 (𝑡)
d𝜇𝑥 (𝑡)
𝜇𝑥 (𝑡)
d𝜇𝑧 (𝑡)
𝜇𝑧 (𝑡) − 𝜇0
= 𝜔𝜇𝑦 (𝑡) −
, = −𝜔𝜇𝑥 (𝑡) −
, =−
d𝑡
𝑇2
d𝑡
𝑇2
d𝑡
𝑇1
で記述される。ここで 𝜔 = 𝛾𝐵 は Larmor 周波数、𝛾 は磁気回転比、𝑇1 、𝑇2 はそれぞれ
縦緩和時間、横緩和時間とよばれる。
(a) lim 𝜇𝑥 (𝑡) = lim 𝜇𝑦 (𝑡) = 0、 lim 𝜇𝑧 (𝑡) = 𝜇0 となることを微分方程式を解かずに示せ。
𝑡→∞
𝑡→∞
𝑡→∞
(b) 𝜇𝑧 (𝑡) を初期条件 𝜇𝑧 (0) = 𝜇0 cos 𝜃 のもとで求めよ。
(c) 𝜇𝑥 (𝑡) と 𝜇𝑦 (𝑡) を初期条件 𝜇𝑥 (0) = 𝜇0 sin θ、𝜇𝑦 (0) = 0 のもとで求めよ。
7.
質量 𝑚 の自由粒子が一辺の長さが 𝐿 の立方体の箱に閉じ込められている。この粒子の
波動関数 𝜓(𝑥, 𝑦, 𝑧) は Schrödinger 方程式
̂ 𝜓(𝑥, 𝑦, 𝑧) = −
𝐻
ℏ2 𝜕 2
𝜕2
𝜕2
( 2 + 2 + 2 ) 𝜓(𝑥, 𝑦, 𝑧) + 𝑉(𝑥, 𝑦, 𝑧)𝜓(𝑥, 𝑦, 𝑧) = 𝐸𝜓(𝑥, 𝑦, 𝑧)
2𝑚 𝜕𝑥
𝜕𝑦
𝜕𝑧
0 0 ≤ 𝑥 ≤ 𝐿, 0 ≤ 𝑦 ≤ 𝐿, 0 ≤ 𝑧 ≤ 𝐿
𝑉(𝑥, 𝑦, 𝑧) = {
∞ それ以外
の解である。
(a) 𝜓(𝑥, 𝑦, 𝑧) = 𝑋(𝑥)𝑌(𝑦)𝑍(𝑧) とおくと、𝑉 = 0 の領域ではこの偏微分方程式は
d2 𝑋(𝑥)
d2 𝑌(𝑦)
d2 𝑍(𝑧)
2
2
=
−𝑘
𝑋(𝑥), =
−𝑘
𝑌(𝑦), = −𝑘𝑧2 𝑍(𝑧)
𝑥
𝑦
d𝑥 2
d𝑦 2
d𝑧 2
という 3 つの常微分方程式に分離できることを示せ。ただし 𝑘𝑥 , 𝑘𝑦 , 𝑘𝑧 は実定数である。
また 𝑋(𝑥), 𝑌(𝑦), 𝑍(𝑧) はそれぞれどのような境界条件を満たさなければならないか。
(b) 規格化された波動関数 𝜓(𝑥, 𝑦, 𝑧) は
𝑛𝑦 𝜋𝑦
2 3⁄2
𝑛𝑥 𝜋𝑥
𝑛𝑧 𝜋𝑧
𝜓(𝑥, 𝑦, 𝑧) = ( )
sin
sin
sin
, 𝑛𝑥 , 𝑛𝑦 , 𝑛𝑧 = 1, 2, 3, …
𝐿
𝐿
𝐿
𝐿
と表されることを示せ。またこの粒子の運動エネルギー 𝐸 を𝑛𝑥 , 𝑛𝑦 , 𝑛𝑧 を用いて表せ。
8.
一辺が 2𝑎 の立方体の中心に炭素原子、立方体の頂点のうち 4 ヶ所に水素原子をおくと
メタン分子の形を描くことができる。
(a) 立方体の辺に平行に 𝑥, 𝑦, 𝑧 軸をとったとき、4 つの ⃗⃗⃗⃗⃗
CH ベクトルをそれぞれ成分で表し、
C–H 結合の長さを求めよ。
(b) H–C–H 結合角を 𝜃 としたとき、cos 𝜃 = − 1⁄3 を示せ。
9.
エチレン分子を右図のように 𝑥𝑦 平面内に、C=C 結合の中心が原
𝑦
H
H
C C
H
H
点、C=C 結合が 𝑥 軸と一致するようにおくと、恒等操作・𝑧 軸周
りの 180° 回転・𝑥 軸周りの 180° 回転・𝑦 軸周りの 180° 回転
𝑥
のいずれによっても、その形も向きも変わらない。
(a) 上述の 4 つの対称操作を表す3 × 3 行列 𝗜, 𝗥𝑧 , 𝗥𝑥 , 𝗥𝑦 をそれぞれ
求め、これらの行列が直交行列であることを示せ。
(b) これら 4 つの行列の間の掛算表を完成せよ。例えば 𝗥𝑧 𝗥𝑥 = 𝗥𝑦
が成り立つから、この結果はすでに表に記入してある。
(c) これら 4 つの行列の対角和(トレース)・行列式をそれぞれ求めよ。
𝗜
𝗥𝑧 𝗥𝑥 𝗥𝑦
𝗜
𝗥𝑧
𝗥𝑦
𝗥𝑥
𝗥𝑦
10. 水素分子の伸縮振動は連立微分方程式
𝑥1
1 −1
d2 𝒙
2
=
−𝗞𝒙,
𝒙
=
,
𝗞
=
𝜔
(
)
(
)
0
d𝑡 2
𝑥2
−1 1
によって表される。ここで 𝑚H を水素原子の質量、𝑘 を H-H 結合のばね定数としたと
き、𝜔02 = 𝑘/𝑚H である。
(a) 行列 𝗞 の固有値を 𝜔0 を用いて表せ。また対応する固有ベクトルを求めよ(規格化する
必要はない)。
(b) 一般に行列 𝗞 の正の固有値を 𝜆2 > 0、対応する固有ベクトルを 𝒚 としたとき、
𝒙 = 𝑒 𝑖𝜆𝑡 𝒚 はこの連立微分方程式の解になっていることを示し、これを用いて行列 𝗞 の
正の固有値に対応する一般解 𝒙(𝑡) を求めよ。またこの解は水素分子のどのような運動
を表しているか、簡潔に述べよ。
(c) 行列 𝗞 が固有値 0 を持つ場合、この固有値に対応する固有ベクトルを 𝒚0 としたとき、
この連立微分方程式の固有値 0 に対応する一般解を 𝒚0 を用いて表せ。またこの解は水
素分子のどのような運動を表しているか、簡潔に述べよ。