2015 年のセンター試験 IIB の感想

2015 年のセンター試験 IIB の感想
■ 2015 年のセンター試験が 1 月 18 日に終わった.新課程
ではあるが,IIB はそれほど内容が変わるとは思われない.
問題順に見ていきたい.
■ 第 1 問〔1〕は久々の(?)三角関数.とは言え,直線の方程
式もからんだ複合的な問題.座標平面上の 2 点の座標が
P (2 cosθ , 2 sin θ ) ,Q (2 cos θ + cos 7θ , 2 sin θ + sin 7θ ) で与えら
れる.ただし, π / 8 ≦θ ≦ π / 4 .この
7θ にギョッとした受験生も少なく
ないだろう.
問題解決には直接関係ないが,2 点
P,Q の軌跡は右図の太線である.
ポイントは,加法定理の逆利用で,
随所にそれが出てくる.このような計
算をする問題はときどき見かけるの
で, 7θ を「7 倍角」などと変なことを考えない限り,普通の
問題である.
■ 第 1 問〔2〕は累乗根の問題.分数指数で表示していけば
易しいが, 3
の記号に戸惑った受験生もいたようだ.最小
値を求めるにあたって,道具の相加平均と相乗平均の関係も
示されていて,親切である.
■ 第 2 問は微積の問題.全く難しくはないのだが,(1)で「平
均変化率」+「lim」が登場して,(特に文系の)受験生の度
肝を抜いたらしい.微分係数を求めるとき,微分して値を代
入するという便法に慣れきっている(当たり前である)受験
生には平均変化率は盲点で,文系の受験生はほとんど使う場
面がない.
誠に手前味噌だが,昨年,私家版の冊子『新課程センター
試験 こうやって得点 up しよう』(一部の生徒に配布)で,
「教科書には登場するものの,余り問題演習などに登場しな
い用語などにも注意を払っておきましょう」として「平均変
化率」を例示しておいた.ズバリである.
理系の受験生であれば,微分可能性の判断や,lim を微分係
数を利用して計算するなど,微分係数の定義式になじみが深
いだけに,文系受験生に不利な問題であった.
面積計算で,いわゆる「1/6 公式」はストレートには使えな
いが,分割すれば利用できて, T は一気である.
また,最後に S − T の値を考察させている. S = T となる場
合の a の値を求めさせることが多いが,S − T の a の 3 次関数
の最小値の設問で,微分法の利用の問題になっている.
以下は,選択問題で 3 題から 2 題を選択解答する.
■ 第 3 問は数列.一般項が 4 による剰余系で分かれるとい
う難しい設定.時間を掛けて丁寧に { an } や { bn } の項を書き出
してみたりすれば何とかなるが,限られた時間の中では辛い
問題であろう.
(2)ができなければ,それ以降の(3),(4)も全滅なだけに泣い
た受験生も多かろう.
■ 第 4 問は平面ベクトル.誘導もそれなりにきちんとして
いるので,手が止まることはない.(2)で途中の OT の係数表
示がやや煩雑だが,この程度はベクトルの計算としては仕方
ない.それよりも S 1 : S 2 で,△OTQ と△TRP の面積比を上手
の白球の個数 W 」を確率変数とする超幾何分布(この言葉は
教科書には登場しない)である.平均は真面目に計
4
3
算しなくても,右のように塗り分けた 7 個の球から
7
7
3 個を取り出すことを考えれば,E (W ) = 3 × 4 = 12
7
7
である.
しかし,分散はこうはいかない.2 項分布ならば平易な公
式があって教科書に載っているが,超幾何分布の分散の公式
は平易ではない.
白球 k 個,赤球 n − k 個から同時に r 個を取り出すときの白
rk (n − k)(n − r )
球の個数 W の平均 E ( W ) = rk ,分散 V( W ) =
n
n2 (n − 1)
という公式があるらしいが,教えないだろうなぁ.真面目に
V( W ) = E ( W 2 ) − ( E ( W )) 2 の計算をするのだろう.
W
0
1
2
3
計
P
1
35
12
35
18
35
4
35
1
WP
0
12
35
36
35
12
35
60
12
=
= E0 W 1
35
7
W 2P
0
12
35
72
35
36
35
120
24
=
= E 0 W 21
35
7
2
( )
から, V(W ) = 24 − 12 = 24 である.
7
7
49
(2)は知識として知っていれば,正規分布表を使うまでもな
い(大昔は 2.58 でなく 3 を用いたような….
1.96 も 2 だった?).
これが(3)の 99%の信頼区間につながっていく.公式を正しく
覚えていれば困ることはない.
第 5 問で大変なのは,(1)の分散を計算する部分であろう.
新課程のセンター試験について,2 年ほど前に某出版社の
編集者と話をしたことがある.そのとき,
「この分野について
は確率分布に関する問題程度しか出題されないのではない
か」という編集者の見解に対して,私は異を唱えた.
「教科書
の終わりの方まで出る可能性があると思いますよ」
「正規分布
表もですか?」
「はい,表を 1 枚載せるだけですから」と会話
したことを思い出す.
実際,その後の試作問題でも「推定」に関する問題例が示
され,今回は(私の予想どおり)正規分布表まで出題された.
今回は正規分布表の利用はわずかであったが,今後はもっと
本格的に利用する出題も考えられる.
いずれにしても,
「数列」「ベクトル」の対抗馬である.そ
うそう簡単にはいかないと覚悟し,もしこの分野を選択解答
するなら,しっかりとした学習が必要であろう.
■ ネット上では「1 月 18 日に行われたセンター試験 2 日目
の数学(2)の難易度が予想以上に高かったという受験生の声
が集まっている.特に数 2B に苦戦した受験生が多いようで,
『難しすぎる』
などのコメントが Twitter で話題となっている」
とあったが,全体としてみると,それほど難しいという印象
はない.計算量もそれほど多くはない.
しかし,受験生にしてみれば目先のちょっとした相違や目
新しさが難しく思えて,手が止まってしまったのかも知れな
い.
■ なお,
「解説」は http://www10.plala.or.jp/mondai/report.html
に載せた.
く使えたかどうかがカギかも知れない.
■ 第 5 問は確率分布と統計的推測.
(1)は「白球 4 個,赤球 3 個から同時に 3 個を取り出すとき
2015 年 1 月 20 日