誘電体と磁性体

誘電体と磁性体
1.誘電体
位置 x
◎ 分極ベクトルの意味
誘電体内の位置 x のところに,小さな体積 V をとる.
 pi
その中に多数の電気双極子 p i  qs i があったとする.
分極ベクトルの定義
V
 pi
P ( x )  lim
V  0
V
V を S  l の円柱と考え,その中に等しい電気双極子  p  qs が,1 層あたり n 個で m 層(合
計 nm 個)あったすると,
PSl |
  p |  nq  ms  表面の電荷  l
i
P  表面の電荷 / S
となるから,分極ベクトルは分極電荷の面密度の意味を持っている.
◎ 電束密度,電場,分極ベクトルの関係
D :電束密度,
E :電場,
P :分極ベクトル,
~
P :残留分極電荷
・一般の誘電体
D   0 E  P , P  e E
⇒
D  E
ただし,    0  e   0 r ,  r   /  0  1  e /  0
・強誘電体
~
D   0 E  P  P , P  e E
⇒
~
D  E  P
( D  E に注意)
◎ 強誘電体内の電束密度
【例1】 十分広い平板上の強誘電体の表裏面に,単位面積あたり   ,   の分極電荷が残留し
~
たとする.この場合, P   である.
電場および電束密度の大きさは,
誘電体内: E   /  0 , D   0 E  P  0
誘電体外: E  0 , D   0 E  0
S

+++++++++++++++
正
- - - - - - - - - - -- - - -

一方,   ,   を真電荷と考えてみる.
この場合,内部の物質は分極を起こさず,真空と同じであるから,
誘電体内: E   /  0 , D   0 E  
誘電体外: E  0 , D   0 E  0
となる.右図の破線で囲んだ領域にガウスの法則
S D  n dS   Q
を適用すれば, 左辺  右辺  S となり,ガウスの法則が確かに成り立っていることがわかる.
正
表面電荷を分極電荷と考える場合と真電荷と考える場合の結果を見れば,電場は同じ結果である
が,電束密度は表面電荷を考えるによって変わってくる.
【例2】 一様に  Q,  Q に帯電した半径 a の球を, x 軸方向に  だけずらした場合について考
察する.電荷密度は   3Q /(4 a 3 ) である.
(小出昭一郎「物理学」裳華房 p.239 参照)
両球が重なった部分が誘電体で,重なっていない部分に分極電荷が残留したものと考える.
~
~
~
この場合, Px  , Py  Pz  0 であり,球の内外での電場と電束密度は,次のようになる.
球内
y
Ex  

, E y  0 , Ez  0
3 0

2 
~
Dx   0 E x  P x  
  
3
3
x
Dy   0 Ey  0 , Dz   0 Ez  0

球外
Ex 
 a 3 3 x 2
 a 3 3 xy
 a 3 3zx
,
,
(

1
)
E


E


y
z
3 0 r 3 r 2
3 0 r 3 r 2
3 0 r 3 r 2
Dx   0 Ex , Dy   0 Ey , Dz   0 Ez
球外の x 軸上表面では, r  x  a であるから, Dx  2  / 3 となり,球内の D x と一致する.すな
わち,電束密度の法線成分が連続となっていることが確かめられた.
一方,重なっていない部分の電荷を真電荷と考えたとすれば,球内の物質に分極は起きないの
で,真空と同じであり次のようになる.
球内
Ex  

3 0
, E y  0 , Ez  0
Dx   0 E x  

3
, Dy   0 Ey  0 , Dz   0 Ez  0
球外
Ex 
 a 3 3 x 2
 a 3 3 xy
 a 3 3zx
,
,
(

1
)
E


E


y
z
3 0 r 3 r 2
3 0 r 3 r 2
3 0 r 3 r 2
Dx   0 Ex , Dy   0 Ey , Dz   0 Ez
x  a の地点でガウスの法則を適用すれば,  D  n dS 
確かに x  a での電荷面密度は   と等しくなる.

3
S 
2 
S  S となり,
3
2.磁性体
◎ 磁化ベクトルの意味
 mi
磁性体内の場所 x のところに,小さな体積 V をとる.
その中に多数の磁気双極子  m i , ( mi  Ii Si ) があったとする.
Si
Ii
磁化ベクトルの定義には次の 2 通りある.
M ( x )  lim
M ( x ) の定義
 m
i
V
V  0
位置 x
あるいは,磁気双極子を  j i , ( ji  0 Ii Si ) と定義すれば,
J ( x )  lim
J ( x ) の定義
 j
 mi
V
i
V
V  0
明らかに, j i  0 m i , J ( x )  0 M ( x )
V を S  l の円柱と考え,その中に等しい磁気双極子  m  IS が,1 層あたり n 個でそれが m
層(合計 nm 個)あったすると,
MSl |
  m |  nSI  m  SI  m
i
M  mI / l
となるから,磁化ベクトル M は分子電流の線密度の意味を持っている.そして J は分子電流の線
密度を 0 倍したものである.
◎ 磁束密度,磁場,磁化の関係
B :磁束密度,
H :磁場,
J  0 M :磁化ベクトル,
~
~
J  0 M :残留磁化ベクトル
・一般の磁性体
B  0 H  J , J   m H
⇒
B  H
ただし, ,   0   m , r   / 0  1   m / 0
・強磁性体
~
B  0 H  J  J , J   m H
⇒
~
B  H  J
( B  H に注意)
◎ 磁気回路
(1) 永久磁石
閉曲線 C は,一般の磁性体の部分 C1 と永久磁石の部分 C2 とからなっている.
すなわち, C  C1  C 2 .
div B  0 より,   B( x)S( x)  const.
C1
また,伝導電流はないから rot H  0 .したがって,
 H  dx   H  dx   H  dx  0
C1
C2
~
~
 B  dx  ( B  J )  dx  B  dx  J  dx



0

 


2
  ( x)   2


1
C1
C2
C
C2
C2
~
 J  dx
dx
 B  dx

,
 em




R
m


 
  ( x)
  ( x)S( x)

2
C
C
C2
とおくと次式を得る.
Rm  em
~
 J  dx
dx

ただし,磁気抵抗: Rm  
, 起磁力: em  
  ( x)S( x)
 2
C
C2
(2)電磁石
閉曲線 C  C1  C 2 は,すべて一般の磁性体で,C2 の部分にコイルがあるとする.
div B  0 より,   B( x)S( x)  const. , rot H  j であるから
 B  dx
 NI が得られ,
 ( x)
 H  dx  
C
起磁力を em  NI とすると,永久磁石と同様の次式が得られる.
Rm  em
dx

ただし,磁気抵抗: Rm  
, 起磁力: em  NI

(
x
)S( x)

C
◎ 永久磁石内の磁場
(1)の永久磁石において,C1 における磁束密度と磁場の大きさを B1 ( x), H1 ( x) ,永久磁石 C2 内で
のそれらを B2 , H 2 とすると,
~
B1  1 H 1 , B 2  2 H 2  J より,
H1 ( x) 
B1 ( x)
1


1 S1 ( x)
, H2 ( x) 
~
B2 ( x)  J
2

~
  S2 ( x)J
2 S2 ( x)
たとえば, 1  2   , S1 ( x)  S2 ( x)  S(一定)
の場合を考え,C1,C2,部分の長さを,それぞ
0
れ, l1 , l2 とし, l  l1  l2 とすれば,
~
 J  dx l2 ~
dx
l

 J

磁気抵抗 Rm  
,起磁力 em  

  ( x)S( x) S0
 2
C
磁束  
em
l
~
 2 S0 J
Rm
l
H1 ( x) 

l ~
 2 J
S0 l
H2 ( x) 
  S0J
l ~
 1 J
S0
l
C2
C1
H の場
~
C2