レポート課題 (11 月 20 日出題) の解答例とコメント

レポート課題 (11 月 20 日出題) の解答例とコメント
課題 1 次のような n 次正方行列 A(対角成分がすべて 0 の上三角行列) について An = O であることを示せ.

0 ∗
0 0

 .. ..
 . .
0 0
···
···
..
.
···

∗

∗

.. 
. 
0
課題 2 n 次正方行列 A j は,上三角行列で ( j, j) 成分が 0 だとする.A1 A2 . . . An = O であることを示せ.
まず,課題 2 の解答例を示そう.A j を行について第 j − 1 行と第 j 行の間で,列について第 j 列と第 j + 1
列の間で分割すると,
(
)
Cj
,
Dj
B
Aj = j
O
 
 Bn 
(
となる.なお,An =   , A1 = O
O
 
 x
た y =   , x ∈ C j について
0
B j は ( j − 1) × j 型, O は (n − j + 1) × j 型


 Bn x
 , Bn x ∈ Cn−1 である.ま
D1 である.まず x ∈ Cn について An x = 
0 
)
(
B
A jy = j
O
Cj
Dj
)( ) (
)
x
Bjx
=
,
0
0
B j x ∈ C j−1
となる.よって B2 B3 · · · Bn x ∈ C1 (要するにただの複素数)を z とおけば
( )
z
A2 A3 · · · An x =
0
でありさらに A1 をかければ 0 になる.よって A1 A2 · · · An = O が成り立つ.
課題 1 については,A はすべての j について A j に課せられた条件を満たしているので A = A1 = A2 = · · · = An
として課題 2 を適用すればよい.
【コメント】
• 解答例では分割乗法(1 年次のテキスト p.13–14)を使った.Ak の左下のブロック((n − k + 1) × k 型)
が 0 行列になっていることしか使っていない.実際,三角行列でなくても左下のブロックが O なら成
立している.
• 解答例の分割で,Ak−1 の列の分割の仕方と Ak の行の分割の仕方がともに k − 1 番目と k 番目の間であ
ることに注意せよ.AB を分割乗法で計算する際には,A の列の分け方と B の行の分け方が同じでなく
てはならない.(1 年次テキスト p.14 のの 9 行目)
• 課題 1 は冪零行列の典型例を与えている.A を 1 回かけるたびに,斜めに並んだ 0 の範囲が 1 段ずつ
上にずれていき,n 回目で 0 行列になる.このことは Ck = {t (x1 , . . . , xk , 0, . . . , 0) ∈ Cn } ⊂ Cn の了解の
もとに
x ∈ Ck =⇒ Ax ∈ Ck−1
であることを示せばよい.A をかけるたびに各列の 0 の個数が一つずつ増えていく.