2W 数学演習 V・VI 標準 H006-1 担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected] ジョルダン標準形序論 作成日 : November 22, 2011 Updated : November 24, 2011 実施日 : November 25, 2011 目覚まし線形代数 問題 1. R2 から R2 への線形変換 (行列表示を A とする) について以下の問いに答えよ. ( ) ( ) ( ) ( ) 2 0 1 1 (1) 2 つのベクトル , をそれぞれ, , に写すとき, 行列 A を求めよ. 1 1 2 5 (方針は 3 秒で頭の中で答えよ.) ( ) ( ) ( ) ( ) 1 0 0 8 (2) 2 つの単位ベクトル , をそれぞれ, , に写すとき, 行列 A を 1 秒 0 1 4 5 で答えよ. ベキ零行列 定義 1. n 次正方行列 A がベキ零行列であるとは, ある自然数 k に対して Ak = O (O は n × n の零行列を表す) となるときを言う. 定義により, 零行列はベキ零行列 である. 0 1 0 0 0 0 1 0 問題 2. 行列 A = がべき零行列であることを示し, 固有多項式を求めよ. 0 0 0 1 0 0 0 0 また縦ベクトル ⃗ek (第 k 成分が 1, その他の成分が 0 であるような n 項縦ベクトル) に対 して, A⃗ek , (k = 1, 2, 3, 4) を求めよ. 問題 3. n 次正方行列 A に対し, 次の 4 つの条件が互いに同値であることを示せ. (1) A がベキ零行列である. (3) A の固有多項式が X n である. (2) An = O である. (4) A の固有値がすべて 0 である. (たとえば,(4) ⇒ (3) ⇒ (2) ⇒ (1) ⇒ (4) を示す.) 問題 4. ベキ零行列 A に相似な行列はベキ零行列であることを示せ. 問題 5. ベキ零行列 A が対角化可能ならば A = O であることを示せ. 問題 5 の結果の対偶を取ると,以下の事実が分かる: 零行列でないベキ零行列は対角化可能ではない. 標準 H0-2W11-06 難易度 : C 名古屋大学・理学部・数理学科 2W 数学演習 V・VI 標準 H006-2 担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected] 問題 6. A を n 次のベキ零行列, ⃗v を n 項縦ベクトル (= n 項列ベクトル) とする. n 個の n 項縦ベクトル An−1⃗v , · · · , A⃗v , ⃗v を横に並べた行列 (An−1⃗v , . . . , A⃗v , ⃗v ) を P と置くと, 0 1 .. . 0 AP = P ... 1 0 O O が成り立つことを示せ. 特別なベキ零行列のジョルダン標準形 以下では最小多項式が X n であるような n 次正方行列 A を扱う. 「最小多項式が X n で ある」という条件は「An−1 ̸= O かつ An = O」という条件と同値であることに注意せよ. (最小多項式が X k (1 < k < n) であるような n 次正方行列のジョルダン標準形は今回は 扱わない. なお f (x) が A の最小多項式であるとは, 最高次係数が 1 であり, f (A) = O を 満たす多項式の中で次数が最小のものであるときをいう.) 問題 7. 最小多項式が X n であるような n 次正方行列 A に対して, 命題 「n 項縦ベクトル ⃗v をうまく取ってくると, n 個のベクトル ⃗v , A⃗v , · · · , An−1⃗v が一次独立になるようにできる.」 を次の手順で証明せよ. (1) An−1⃗v が零ベクトルにならないような縦ベクトル ⃗v が存在することを示せ. (2) An−1⃗v ̸= ⃗0 であるような縦ベクトル ⃗v に対して, n 個の縦ベクトル ⃗v , A⃗v ,· · · , An−1⃗v が一次独立であることを示せ. 問題 6, 問題 7 から次のことがわかる. 定理 1. n 次正方行列 A の最小多項式が X n ならば, 0 1 .. . 0 −1 P AP = ... O O 1 0 となるような n 次の正則行列 P が存在する. (右辺の行列を A のジョルダン標準形 と呼ぶ.) 標準 H0-2W11-06 難易度 : C 名古屋大学・理学部・数理学科 2W 数学演習 V・VI 標準 H006-3 担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected] 今週の宿題 (提出期限は 12 月 2 日の演習開始時です) 問題 8. n を 2 以上の自然数とし, n 次正方行列 A の最小多項式が (X − a)n であるとす る. また, E を n 次の単位行列とする. このとき (1) A は対角化可能でないことを示せ. (2) 次式を満たすような n 次の正則行列 P が存在することを示せ. a 1 O .. . a P −1 AP = ... 1 O a 右辺の行列を A のジョルダン標準形と呼ぶ. (ヒント:B = A − aE とおき, 問題 7 の結果を利用.) ( 問題 9. 行列 A = ) 3 1 −1 1 について, 以下の問いに答えよ. ( (1) すべての自然数 n に対して, a 1 0 a )n ( = n a 0 n−1 na an ) となることを示せ. (2) An (n は自然数) を求めよ. (3) exp(A) := ∞ 1 ∑ Ak を求めよ. k=0 k! 標準 H0-2W11-06 難易度 : C 名古屋大学・理学部・数理学科 2W 数学演習 V・VI 標準 H006-4 担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected] 今週のボーナス問題 (提出期限は 12 月 2 日の演習開始時です) 問題 10. (ベキ零行列とベキ単行列) E を n 次の単位行列とする. B − E がベキ零行列であるような n 次正方行列 B をベ キ単行列という. ベキ単行列の固有値はすべて 1 (特に正則) であり, 対角化可能なベキ単 行列は単位行列 E のみである. ベキ零行列 A にベキ単行列 A + E を対応させることに より, 次の 1 対 1 対応ができる (逆写像は B 7→ B − E である). 1:1 n 次のベキ零行列全体の集合 ↔ n 次のベキ単行列全体の集合 A 7→ A+E この問題ではこれとは別の 1 対 1 対応を考えてみよう. (なお n 次のベキ零行列 A は Ak = O (k ≥ n) を満たすことに注意.) (1) A がベキ零行列ならば exp(A) がベキ単行列であることを示せ. (ヒント:A, A′ が 交換可能なベキ零行列なら A + A′ もまたベキ零行列であることに注意.) (2) 次の集合の間の写像が全単射であることを示せ. n 次のベキ零行列全体の集合 → n 次のベキ単行列全体の集合 ∞ 1 ∑ A 7→ exp(A) = Ak k=0 k! ヒント:次の写像が exp の逆写像であることを示せば良い. B (ベキ単行列) 7→ log(B) = ∞ ∑ (−1)k−1 k=1 k (B − E)k 無限和はどちらも実際は有限和であることに注意. 標準 H0-2W11-06 難易度 : C 名古屋大学・理学部・数理学科
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