信用力維持には収益改善が不可避

NEWS RELEASE
2015年12月22日
キリンHDが減損で最終赤字―信用力維持には収益改善が不可避
キリンホールディングス(証券コード:2503、発行体格付=A+)は 21 日、子会社ブラジルキリンの減
損損失の発生と連結業績予想の下方修正を発表した。ブラジルキリンを取り巻く事業環境が急速に悪化
し、同社の通期営業損失予想を 98 億円から 174 億円に修正。資産の再評価で 1412 億円の減損損失が発
生する見込みとなった。連結では今期までののれん等償却累計額 272 億円を差し引いた 1140 億円を特損
計上することで、当期純損益を従来予想の 580 億円の黒字から 560 億円の赤字に下方修正した。
キリンホールディングスは、(1)国内ビール類のシェア下げ止め(2)ブラジルキリンの利益回復と
収益基盤作り、を 2015 年度の重要経営課題として掲げていた。国内ビール類は販促費の増加で減益を見
込むものの「一番搾り」をはじめとするビールのシェアは 21 年ぶりにプラスになる見通しだ。ブラジル
キリン以外の業績はおおむね予想通りで、通期の経常利益予想は 1190 億円を据え置いた。減損損失はキ
ャッシュアウトを伴わないため、債務とキャッシュフローのバランスが大きく崩れる可能性は低く、今
回の事象のみをもって格付を直ちに見直す必要はないと判断している。
一方でブラジルキリンを取り巻く事業環境は、ブラジル経済の停滞や現地通貨安、市場成長の鈍化、
競争激化など同社想定を大きく超えて急速に悪化している。R&I ではブラジルキリンの収益力の立て直
しが課題と認識していたものの、1000 億円を超える減損損失は想定外だ。事業環境を勘案すると、同社
は 2016 年 12 月期以降も当面は営業赤字が続き、連結業績の足かせとなる可能性が高い。従来以上に強
くリスク認識する必要があると考えている。
キリンホールディングスは 8 月にミャンマー・ブルワリーの発行済株式の 55%の株式を約 700 億円で
取得している。格付対比で見劣りする資本負債構成の改善は、今回の減損損失の計上でさらに遅れる可
能性がある。今後、のれん等の償却の影響を除いた実質的な収益力やキャッシュフロー創出力の改善が
遅れるようだと格付に下押し圧力が強まる可能性も出てくる。ブラジルキリンの再建の進捗状況ととも
に、中核のキリンビールの収益動向から目を離せない。
主任格付アナリスト:安田
■お問合せ先
■報道関係のお問合せ先
株式
会社
: インベスターズ・サービス本部
: 経営企画室(広報担当)
TEL. 03-3276-3511
TEL. 03-3276-3438
格付投資情報センター 〒103-0027東京都中央区日本橋1-4-1
稔
E-mail. [email protected]
日本橋一丁目三井ビルディング
http://www.r-i.co.jp
信用格付は、発行体が負う金融債務についての総合的な債務履行能力や個々の債務等が約定通りに履行される確実性(信用力)に対するR&Iの意見であり、事実の表明ではありません。また、R&Iは、信
用リスク以外のリスクにつき意見を表明するものではなく、投資判断や財務に関する助言や、投資の是非等の推奨をするものではありません。R&Iは、信用格付に際し関連情報の正確性等につき独自の
検証を行っておらず、これに関し何ら表明も保証もいたしません。R&Iは、信用格付(変更・取り下げ等を含む)に関連して発生する損害等につき、何ら責任を負いません。信用格付は、原則として発
行体から対価を受領して実施したものです。なお、詳細につきhttp://www.r-i.co.jp/jpn/policy/policy.html をご覧下さい。
©Rating and Investment Information, Inc.