No.2016-003 2016年1月14日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp ドイツ首相支持率持ち直し ~ 難民流入鈍化 ~ (1)ドイツの与党CDU・CSU、ならびにメルケル首相の支持率が持ち直し(図表1、2)。 政党別には、移民反対を訴えるAfDの支持率が昨年9月半ば以降、上昇したものの、11月央 から低下。年末、昨秋来の支持率上昇分がほぼ剥落。政治家別にみると、とりわけメルケル 首相の支持率が昨年9月から急低下し、11月49%と過半割れ。しかし12月から持ち直し。本年 1月は58%と6割弱まで回復。シュタインマイヤー外務大臣やショイブレ蔵相など、主要閣僚 の支持率は総じて高水準維持。それに対して、首相の積極的な移民受け入れ政策に反対した ゼーホーファー・バイエルン州首相の支持率は昨年11月の45%をピークに低下。与党や首相 の支持率回復は難民の流入鈍化が主因(図表3)。国境通過時に計上される難民登録人数は、 昨年11月20.6万人から12月12.7万人へ4割減。国境管理の厳格化など政府の難民対策が奏効。 (2)もっとも、今後の行方は依然予断を許さず。難民登録人数は昨年12月、前月比大幅に減少。 しかし昨年12月でも、難民申請人数は4.8万人に過ぎず、難民登録人数が難民申請人数を7.9 万人凌駕。難民登録人数のうち何人が第三国に出国したかは不明ながら、昨年7月まで総じて 難民登録人数と難民申請人数はほぼ同規模。そうした傾向を前提に置いてみれば昨年8月から 12月までの申請人数と登録人数の差の合計は61.8万人。相当規模の難民がペンディング状態。 加えて本年1月の世論調査によるとテロや犯罪に対する危機意識の強まりから、難民にドイツ の値観を受け入れる義務を負わせる法律制定が必要とする意見が反対20%に対し賛成75%と 大半(図表4)。そうした法律が制定された場合、宗教や風俗の違いから難民との摩擦増大 は不可避。さらに難民の流入を直接に抑制する方策である難民受け入れ数の上限設定やEU 各国間での国境再導入についても幅広い支持。本年、来年の総選挙に向け前哨戦となる地方 選挙がヘッセン州を皮切りに春以降、実施。AfDが躍進すれば現体制に打撃。難民問題が 折に触れてドイツ、さらにEUの火種となる展開が続く公算大。 (図表1)ドイツの主要政治家の支持率(2015年2月~) (図表2)主要政党別支持率(2015年6月~) 34 シュタインマイアー(SPD、外務大臣) ショイブレ(CDU、財務大臣) メルケル(CDU、首相) ガブリエル(SPD、副首相) ゼーホーファー(CSU、バイエルン州首相) ライエン(CDU、国防大臣) デメジエール(CDU、内務大臣) ナーレス(SPD、労働大臣) 44 (%) (%) 30 40 26 36 75 22 32 65 18 55 14 45 10 20 35 6 16 (%) SPD FDP AfD 24 2 25 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 (出所) ARD 01 12 06 (月) (図表3)難民登録人数と難民申請人数(2015年) 07 (出所) RTL 08 09 10 11 (注) CDU/CSUのみ右目盛。 12 01 (年/月/週) (図表4)難民問題に関する世論調査(2016年1月) 21 75 反対(②) 賛成(①) 乖離幅(①-②) (%) (万人) 18 28 緑の党 左翼党 CDU/CSU 難民登録人数 難民申請人数 50 15 25 12 0 9 6 ▲25 3 ▲50 A 0 1~7 08 09 (出所) Bundesministeriums des Innern 10 11 (注) 1~7月は平均。 12 (月) B C D (出所) ARD (注) A:難民にドイツ固有の価値受入を義務 付ける法律、B:難民受入数の上限導入、C:EU各国間の 国境再導入、D:書類不備難民の受入拒否。 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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