エコロジカルシステムにおける危機管理のありかた

http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2005/050516Zouen.ppt
エコロジカルシステムにおけ
る危機管理のありかた
松田 裕之
横浜国立大学環境情報研究院
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(広義の)生態系
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不確実
非定常
複雑
「無知の知」こそ生態管理の根本
つねに不測の事態を覚悟する
リスク(危険性)管理が必要
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順応的管理の諸原則
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(鷲谷・松田1998, 応用生態工学による
adaptive managementの訳語)
生態系に関する知見が不十分なうちに、実証
されていない前提(仮説)に基づいて管理計
画を立てる。
実行しながら継続監視(monitoring)を続け、
前提を検証し、必要ならば前提を見直す。
非定常な生態系の状態変化をあらかじめ想定
し、状態変化に応じて方策を変え、その変え
方を事前に決めておく。
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順応的管理=仮説検証実験
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定めた期間内に、前提を検証する。If
not, それ自身が設計の不備と見なされる。
「為すことによって学ぶ」
期間内に検証できる見込みが必要
「研究プロジェクト」申請と同じ
管理実施後に「論文」が書けないよう
では、「公約」を満たしていない。
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検証可能性 と 反証可能性
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検証可能=予測が的中すればその仮説
が正しい
反証可能=予測の範囲を超えた事態が
起きれば間違い
日本の環境影響評価法基本的事項の
「予測の不確実性の範囲を示す」こと
に対応
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測定誤差と
確率的状態変化(過程誤差)
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過程誤差がある限り、想定外のことが
起きる危険性はゼロにはできない。
生態系管理にはリスク管理(risk
management)の視点が欠かせない
×絶対安全あるいはゼロリスク
○リスクを合理的に減らす仕組み
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順応的管理はリスクを減らす
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×常に一定の方策を採り続ける
○継続監視し、状態変化に応じて方策
を変える
同じ費用に対して、効果的にリスクを
減らす
同じ絶滅リスクに対して、費用と労力
を減らすことができる。
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順応的管理の秘訣
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継続監視が欠かせない。
できるだけ多くの事態を想定し、その
対応策をあらかじめ考えておく
人体実験の自覚>調査研究
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管理方式(management
procedure)の重要性
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管理計画の策定は1研究者では決められない
未実証のどの前提を用いるかにより、管理計
画も異なる。
管理目的の科学的任意性
社会的な合意形成手続きの重要性
管理計画の実施方法、調査、評価、見直しに
いたる方法を定める
IWCの改定管理方式(Revised Management
Procedure)
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生態リスクマネジメント手続きの基本形(案)
社会的合意形成
科学的手続き
社会的要請・科学的問題提起
守るべき対象の科学的整理
利害関係者と管理範囲の列挙
定量的評価指標の列挙
協議会・科学委員会などの設置
影響因子の分析・モデル構築
放置した場合のリスク評価
マネジメントの必要性と目的の合意
リスクマネジメント計画の合意
数値目標の決定
ば合
再意
設で
定き
ね
数値目標の仮設定
モニタリング項目の決定
制御可能項目・手法の選定
マネジメントの実施とモニタリング
計画の見直し
い実
と現
再性
設が
定低
目標達成の実現性の評価
目的・目標の達成度の評価
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環境影響評価法,自然再生推進法,枠組み条約方式と対応
日本生態学会の動き
日本生態学会生態系管理専門委員会
松田裕之他26名「自然再生事業指針」
保全生態学研究 次号
 これ自身もpublic commentにかけた
 社会科学系の学会にも連携の動き
 事業例を評価する。
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自然再生事業の対象
1)生物種と生育・生息場所、
2)群集構造と種間関係、
3)生態系の機能、
4)生態系の繋がり、
5)人と自然との持続的なかかわりを再生
すべき対象とみなす。
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baseline
基本認識の明確化を図る
6)生物相と生態系の現状を科学的に把握して事
業の必要性を検討し、
7)放置したときの将来を予測して手を加えると
すればその理由を明らかにし、
8)時間的・空間的広がりを考慮して再生すべき
生態系の姿を明らかにし、
9)自然の遷移をどの程度止めるべきかを検討す
る。
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遵守すべき諸原則
10)その地域の生物を保全し(地域性保全の原則)、
11)その地域の生物多様性(構成要素)を再生し
(種多様性保全の原則)、
12)その種の遺伝的変異性の維持に十分に配慮し
(変異性保全の原則)、
13)自然の回復力を活かして必要最小限の人為を加え
(回復力活用の原則)、
14)事業に関わる多分野の研究者が協働し
(諸分野協働の原則)、
15)伝統的な技術や制度を尊重する(伝統尊重の原則)
16)目標の実現可能性を重視する(実現可能性の原則)
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順応的管理の指針
17) 事業の透明性、第3者による評価
18) 不可逆的な影響に備えた予防原則
19) 将来成否が評価できる具体的な目標
20) 将来予測の不確実性の程度を示す
21)
管理計画に用いた仮説をモニタリングで
検証し、状態変化に応じて方策を変える
22) 用いた仮説の誤りが判明した場合、中止
を含めて速やかに是正する
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合意形成と連携の指針
23) 科学者が適切な役割を果たす
24) 自然再生事業を担う次世代を育てる
25) 地域の多様な主体の間で相互に信頼
関係を築き、合意をはかる
26) より広範な環境を守る取り組みとの
連携をはかる
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科学者の役割
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個人的な価値観に基づく主張ではなく、
社会的に合意された目的とそれを実現
するための具体的な数値目標の整合性、
その数値目標を達成するための管理方
策の検討と目標の実現可能性を吟味し、
それを利害関係者に分かりやすく説明
し、合意形成を支援することである。
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