一保全生態学者からみた自然保護の論理と課題」

http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2004/041104o.ppt
予防原則は必要か?
松田裕之(横浜国立大学・環境情報・リス
クマネジメント)
文科省科研費基盤研究C企画調査「予防原
則の適用基準とその科学的基礎に関する
学際研究」
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2004/PP.html
謝辞 高津融男氏・蔵田伸雄氏
1
予防原則
予防的取組み,予防措置
precautionary principle
precautionary
approach,
---measures
• 環境に対して深刻な、あるいは不可
逆的な被害のおそれのある場合には、
完全な科学的確実性の欠如が、環境
悪化を防止するための費用対効果の
大きな対策を延期する理由として使
われてはならない
1992年リオデジャネイロ宣言第15原則
http://www.unep.org/
2
http://www.cites.org/eng/cttee/standing/46/46-14A4.pdf
不確実性に対処して、あらゆ
るところに予防措置が
• RECOGNIZING the importance of the
application of the precautionary principle
in cases of uncertainty; (ワシントン条約
の附属書掲載基準CITES Criteria of
Appendixes I and II, Resolution
Conf. 9.24)
Comment:
2004年CITES締約国会議
附属書掲載基準改正
リオ宣言に戻れ!
リオ宣言に戻った!
3
科学者のとるべき態度
後
• 1992年地球サミット前
– 科学的証拠なしに社会にものを
言わない;
を言うことが歓迎される
– 世論に係らず、自らの見解を変
科学論争を多数決で決める。世論
えない
を味方につける
科学者の社会的提言につ
いての学界基準が未確立.
4
Galileo’s Inquisition
謝辞
高津融男氏
予防原則PPの4つの段階
Sunstein 2003 Beyond Precautionary Principle
• Non preclusion PP
– 不確実性は対策拒否の理由とならぬ
• Margin of Safety PP
– 不確実性に備えて安全率をかける
• Best Available PP
– 確実に安全といえないときは最善の利用可
能な技術が求められる
• Prohibition PP
– 確実に安全といえないものは禁止する
5
リスクはゼロにできない
(ロドリックス「危険は予測できるか」化学同人よ
り)
行為または曝露
死亡率 行為または曝露
死亡率
モーターサイクリング
2000 ロデオ競技
3
すべての原因(全年齢)
1000 火災
2.8
喫煙による全死亡
300 塩素殺菌水(副生成物)
0.8
喫煙による発癌死
120 ピーナツバター大匙3杯/日
0.8
消火活動
80 炭焼ビーフステーキ85g/日
0.5
ハンググライダー
80 洪水
0.06
石炭採掘
63 落雷
0.05
-5
農作業
36 流星直撃
<10
自動車
24 落ち葉焚き
?
*死亡率は対象10万人あたりの年間死亡者数
鬼憂
杞憂
生涯リスクは上記の数字が(松田注:年齢,年代により)大きく変わらないとすれば約70倍したものとなる.
6
リスク回避のコスト
7
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2004/letter04.html#040425
○2004.4.25NHK BS 討論
「どう守る 海から消える魚」
• 自分にとってクジラが必要ではないから捕鯨
再開にこだわらないと言う意見があった.た
いへん残念である.伝統的に沿岸捕鯨を続け
てきた人が,絶滅の恐れもないクジラを獲り
つづけることを禁じられたことを,なぜかわ
いそうだと思わないのだろうか.魚だけでな
く,伝統的な漁業も絶滅寸前であり,そちら
も守るべきである.自分のことだけ考えてい
たら,環境を守ることはできない.相手の立
場のことを考えることは,何より重要なこと
である.
8
安全性の追求≠自然志向
• 厳しくも恵み豊かな自然(鷲谷いづみ
2003)
• なぜ、ほんのわずかなリスクを避ける
ために今まで世話になった野菜や牛肉
の農家を破産の危機に追い込むのか
• いちばん大切なのは、自然と人の関わ
り,人間同士の信頼関係である<鬼頭
「自然保護を問いなおす」
=リスクの共有
9
WWFジャパンの対話宣言
新たな一歩を踏み出すとき(2002.4会報)
クジラをめぐる問題は、今も混迷を極めています。
対立する利害関係や、心情的なもつれなども加わっ
て、事はいっそう複雑です。しかし、もうそろそろ、
解決に向かう新たな一歩が踏み出されるべきです。
WWFは、50カ国に及ぶ国際団体であり、クジラに
関しても、国によってさまざまな意見があります。
これまで、商業捕鯨をなくしていこうとする意見が
より強く反映されてきました。それは、乱獲による
クジラ類の激減をくい止める大きな力になりました。
しかし、乱獲の最大の理由であった鯨油の需要がな
くなった今、WWFもまた、次の一歩を踏み出すと
きに来ているといえます。(後略)
10
http://www.wwf.or.jp/marine/kujira/index.htm
WWFジャパンの6つの行動原則
1. 「WWFの使命」に従う
生物多様性保全・持続可能な利用・環境汚染削減/
資源とエネルギーの浪費防止
2.
3.
4.
5.
6.
科学的な根拠に基づいて議論・行動する
予防原則を尊重する(次頁)
国際的合意を尊重する IWCとCITES
多様な価値観を尊重する
日本政府に対し、海洋資源の保全に貢献す
るよう強く働きかける
11
3.予防原則を尊重する
• 影響の予想は、科学的な根拠に基づいて行わ
れるべき
• 影響が起きることが、完璧に立証できない場
合でも、必要な対策は速やかにとられるべき
• 過剰な、あるいは過小な予防措置を招
かないよう、内容と程度は、可能な限
り、科学的・技術的知見に基づいて検
討されるべき
12
WWFジャパンの捕鯨問題での意見広
告を「裏切り」と罵倒するGuardian
のインターネットニュース
Japanese branch outrages WWF
with whaling plea
Paul Brown, environment correspondent Tuesday April 2, 2002
The Japanese branch of WWF has come out in favour of
limited commercial whaling, a decision certain to
cause an upheaval in the worldwide conservation
group, which has been implacably opposed to
whaling since its foundation (後略)
13
http://www.guardian.co.uk/international/story/0,3604,677360,00.html
日本の反捕鯨団体もミンククジ
ラが絶滅危惧とは思っていない
グリーンピース主催
2002.3.20
クジラ問題を語る会
グリーンピース・ジャパン
会議室
松田裕之
はたして、ミンク鯨が本当に絶滅のおそれがある種と
思っている人は、グリーンピースやほかの自然保護団
体の中にどれだけいるだろうか?意外なことに、あま
りいないようである。(中略)クジラを捕るのに反対す
れば、ほかの生物や自然が果たして守られるだろう
か?私はそうは思わない。反捕鯨は科学の問題ではな
く、欧米では人気を得やすいのだと、BBCインター
ネットニュースでも紹介されている。反捕鯨団体も、
このことをよく知っている。(中略)反捕鯨は、むしろ
日本の環境団体が勢力を伸ばす妨げになっていると思
う。
14
Should any few risk be avoided?
(IWC/SC 2001 report, p.93)
• Constant rate of exploitation of whales
with environmental variability was still
“equivalent to an unsustainable ‘mining’”
(still positive risk)
• Under the RMP, “the time scales were
far too long (1045 years)” (>>the age of
cosmos)
• “the long time-scale was necessary to
examine the mechanisms of the interaction
between environmental variability and
exploitation.” ????
159
1999年の世界各国各地域の生態学的足跡EFPと
生物的収容力(WWF 2002より改変)
人口
世界
高収入国
中収入国
低収入国
5979
906.5
2941
2114
生態学的足跡EFP (gha/人) 生物的
合計 漁場 エネルギー 住居建設 収容力
2.28
0.14
1.12
0.10
1.90
3.55
6.48
0.41
3.86
0.25
1.99
0.13
0.94
0.09
1.89
0.83
0.03
0.25
0.06 0.95
中国
日本
米国
ドイツ
1272
126.8
280.4
82
1.54
4.77
9.70
4.71
(百万人)
0.10
0.76
0.31
0.19
0.69
3.04
5.94
3.08
0.09
0.16
0.37
0.29
1.04
0.71
5.27
1.74
生態学的足跡=農作物 牧草地 森林 漁場 エネル
ギー 住居建設などの負荷の総計をとったもの
http://www.wwf.or.jp/activity/lpr2002/
16
私の捕鯨論争解決案
• 今回の捕鯨問題での議論で,「ミンク
クジラは絶滅危惧種ではない」「日本
政府に管理がきちんとできるか疑わし
い」ということならば,「日本の環境
団体を含めて合意形成を行い,捕鯨を
管理すればよい」
• 愛知万博=討議民主主義の実験(失敗
例?)
17
順応学習とフィードバック制御
Adaptive Learning & Feedback Control
継続調査データ
管理の実施、
資源変動
動態模型
状態
管理の意思決定
勝川俊雄T.Katsukawa:博士論文(2002)より
18
絶滅危惧種掲載基準を巡る議論
Mace et al. 1992: Species 19:16.
• (The validity of criterion A:) “it can
result in the listing of some species
with very large, apparently secure
populations”. (Type-I error)
• “However, linking [the rates of decline] to population size would exclude
the listing of many populations with
limited census data.” (Type-II error)
19
予防原則と実証主義の両立
• 第1種の過誤:無用の対策をとる
• 第2種の過誤:必要な対策を採らぬ
• 一旦講じられた予防措置の多くは将来
解除されてしかるべき
= 予防原則政策の事後評価基準
• 予防措置は将来検証されるべき(順応
的管理)
20
リスクをどう考えるのか
• ゼロリスクは不自然である
• 厳しくも恵み豊かな自然
• 自然に対する畏敬の念
• 生きがい=死にがい
• 人間の絆=リスクの受け渡し
21