哺乳類保護管理における個体数 推定の精度とフィードバック 管理の問題点について 松田裕之(東大・海洋研) 国有林・国立公園内のシカ捕獲を! シカ食害は生態系の脅威 1 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 野生生物管理の利点と課題 自然保護、資源利用、獣害 愛護の対象(駆除か去勢か) 個体数管理だけでない(餌付け禁止) 順応的管理の最先端(IWCの捕鯨管理) 1. 2. 3. 4. • 科学的計画的管理(鳥獣保護法) 5. シカの希少植物への影響(生態系管理) 6. 国有林の狩猟(縦割り行政) 7. 生態リスク管理(鳥獣被害は0にならぬ) 2 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 順応的管理 (Adaptive Management) • 継続調査による状態変化に応じて方策 を変える(フィードバック制御) • モデルと仮説を見直しながら管理する (為すことによって学ぶ) • モニタリングが生命線 • 管理自身を仮説検証実験とみなす • これは米加+日本でも国策となった http://www.consecol.org/vol1/iss2/art1/ http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 3 説明できない 「誤差」もある • エゾシカ94年問題 • クロミンククジラ3周目問題 4 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 道東エゾシカ1994年問題 5 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt クロミンククジラ3周目問題 (IDCR/SOWER) 3周目は半減以下(誤差小) 6 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 説明できない「誤差」もある • エゾシカ94年問題 – ??雌ジカ狩猟解禁年?? – 複数の指標が「異常」に低い • クロミンククジラ3周目問題 – 調査デザイン変更(低緯度域まで調査拡 大) – 推 定 方 法 ( g(0)=1 ) 見 直 し 中 (Okamura et al. 2003) – 目視調査員の代替わり(Mori et al. 2003) 7 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 推定誤差は観測点数次第 250% 311% 200% 150% 100% 50% 0% 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 8 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 観測努力と推定精度 • 観測点数・間隔を減らしたとき,推定 誤差がどう増えるか,必ず調べておく • 点推定値には偏りがある • 推定誤差は概ね過小評価(不測の不確 実性は考慮できない) 9 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 調査デザイン変更時の心得 • • • • • なるべく変えないこと(継続は力なり!) 論文・報告書は斬新に! 絶対数より増減傾向の把握 過去も含めて再推定する 積集合の原則 • 事前の試算が重要 • 20年後を見据える 10 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 目視でわかるのは相対値 • 絶対数は獲って減らしてみ ないとわからない • 個体数推定法は、未実証の 前提に基づいている 11 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 計算機から雄ジカが消えた! 12 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 12万頭では少なすぎる • 8~16万頭×年15%=1.2~2.4万頭ずつ 増える • 雄成獣は2万~4万頭いたはず • 雄成獣を2万頭以上5年間獲った – 上記設定が正しければ雄はもういないは ず • 乱獲と保護は操作実験 13 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 道東地域エゾシカ保護管理計画 の改正について(北海道2000) • 平成5年度末の道東地域の推定生息数 を12万頭とすると、その15%にあたる 1万8千頭以上を平成6年度以降、毎 年捕獲すれば個体数は減少するはずで あった。…平成5年度末推定生息数の 過小評価が明らかとなった。 • すばらしい説明責任(accountability) • Matsuda et al. (2002: Wildl.Soc.Bull) 14 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 数字は一人歩きし、将来、思 わぬ足かせとなる 15 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt メスジカ6万頭駆除 1998道東計画 2000計画 推定生息数 120,000頭 (1993年度末) 200,000頭※ (±40,000頭) (±46,000頭) 個体数指数 (大発生水準) 50 60,000頭 100,000頭※ (目標水準) 25 30,000頭 50,000頭※ (許容下限水準) 5 6,000頭 10,000頭※ メスジカ捕獲目安 60~90時点 22,000~36,000 50~ 時点 38,000頭以上 頭数関連 40~60時点 頭 10,000~18,000 頭 ※各個体数指数に係る頭数は、基準値の見直しに伴い、変更されるものである 16 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 管理効果はすぐには現れず、 その後も副作用がある 17 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt ミナミマグロは回復するか? Mori et al. Pop.Ecol. 2001 管理強化 逆ベビーブーム現象 18 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 教訓(その1) • 捕獲数の激変を伴わない生物では、相 対的な増減は推定できても、絶対数の 不確実性が高い。(道東エゾシカ20万 頭説) • 個体数推定の偏りは将来の合意形成に 際して思わぬ副作用をもたらしかねな い(ヒグマ500頭問題) • 早めの予言が命綱 19 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt 教訓(その2) • 年に一度の精緻な推定よりも、頻繁に一貫し た方法で調査することが重要である(IWC 南半球目視調査3週目問題) • 乱獲から保護に転じた(またはその逆の)生 物では、齢構成の激変から個体数が予想外の 動態を示すことがある(ミナミマグロの逆ベ ビーブーム現象) – 管理効果の評価は世代時間と調査時間だけ遅れる 20 http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2003/030921m.ppt
© Copyright 2024 ExpyDoc