石西礁湖オニヒトデ順応的管理

http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2009/090405F.pdf
水産海洋シンポジウム:生態系アプローチと水産
資源の持続的利用を考える
2009年4月5日東大理学部 9:40-10:00
生態系アプローチ
Ecosystem Approach とは何か?
松田裕之
横浜国立大学・環境情報学府
環境リスクマネジメント専攻
日本生態学会全国委員
WWFジャパン自然保護委員
1
今日の話題
生物多様性とは
生態系アプローチとは
生態系サービス=自然保護の根拠
海から魚がいなくなるか?
環境に優しい漁業を目指せ
2
生物多様性
Biological diversity, Biodiversity
生態系の多様性(景観)砂漠も大切
種の多様性 危惧種も普通種も大切
レッドデータブック
生きている地球指数(living planet index)
遺伝子の多様性 地域変異、個体変異
進化の源泉
3
http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/news/2008/20081029.htm
WWF
生きている地球指数
=世界各地の陸域、川や湖などの淡水域、海洋に生息
する、1686種の野生生物について、約5000の地域個体
群を調査し、その個体数の減少率を基に試算したもの
陸域
海域
淡水域
4
生物多様性条約
Convention on Biological Diversity

1992年地球サミットで採択
気候変動枠組み条約、森林原則宣言

翌1993年発効(米国は参加せず=第3原則)
CBDの3原則
1. 生物多様性の保全
2. その構成要素の持続可能な利用
3. 遺伝資源を利用する利益の公正な配分

生物多様性国家戦略の策定
5
なぜ生物多様性を守るのか?
 私たちが子供の頃にあった自然が、今の子供
のまわりにない(急激な自然の喪失=メダカ、
キキョウ)
 人間は自然の恵みなくして生きていけない
 自然の恵みを次の世代に残す
 人間の自然への持続可能な寄生
05/8/4
66
http://www.biodiv.org/default.shtml
生物多様性条約締約国会議 2002年の採択
 2010年目標:2010年までに、地球規模、地域、国家レベルで
の生物多様性喪失の速度を著しく減速させること
 戦略計画
①生物多様性は持続可能な発展の生活基盤である。
②生物多様性の喪失の速度は現在も加速している。
③これらの脅威に対して行動を取らなければならない。
 7つの重点分野
(a) 生物多様性を構成する要素が失われる速度の低下
(b) 生物多様性の持続可能な利用を促進
(c) 主要な脅威(外来種、気候変動、汚染、生息域変化)への注意
(d) 人間の福祉を支える生態系の健全性の維持
(e) 伝統的な知識、革新、経験を守る
(f) 遺伝資源の利益を公正で公平に共有する
05/12/16
(g) 低開発国などの財政的技術的な資源流動性の確保
7
7
今日の話題
生物多様性とは
生態系アプローチとは
生態系サービス=自然保護の根拠
海から魚がいなくなるか?
環境に優しい漁業を目指せ
8
生態系アプローチ(EA)
海域と陸域で推奨される基本概念
水産資源学の文脈
×再生産関係に基づく最大持続生産量
生態系全体を見据えた管理を目指す
生息域の保全、
対象種と相互作用する他種を考慮
9
生態系アプローチ(EA)とは
単に生態系を対象とするだけでなく
順応的管理の視点
社会科学的視点を多数含む
10
生態系アプローチの12原則
CBD2000年CoP5ナイロビ文書
1. 管理目標は社会が選択
2. 管理の分権化
3. 他の生態系への波及効
果を考える
4. 経済的な文脈で管理
5. 生態系の構造と機能を保
全
6. 生態系機能の限界内で管
理
7. 望ましい時空間で行う
8. 目標は長期的視点で設
定
9. 変化が不可避と認識
10. 保全と利用のバランス
11. 科学知、伝統知、地域知を
考慮
12. 関連する社会・自然科学
分野を含む
 5つの運用指針(抄)
指針2 利益の公平配分の推進
指針3 順応的管理の実践の利用
指針5 セクター相互の共同の
確保
11
今日の話題
生物多様性とは
生態系アプローチとは
生態系サービス=自然保護の根拠
海から魚がいなくなるか?
環境に優しい漁業を目指せ
12
生物資源価値は
生態系サービスの一部
MSY→最大持続生態系サービス
水産資源利用だけでなく
漁業の多面的価値を評価する
目的と目標を二段階に分けて合意
科学者と利害関係者の合議過程を区別
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2005/TMReportA.html
13
千年紀生態系評価報告書
2005
05/12/16
14
地球環境変化Gobal change
人間の福利Human well-being
生態系サービスEcosystem services
供給サービス
生物多様性
Biodiversity
文化サービス
基盤サービス
生態系機能
Ecosystem
functions
調整サービス
(MA2005)
2008/3/2
15
なぜ自然を守るのか?
持続可能性
=次世代の人間が生態系
サービスを享受できるよう、
自然を守る
(米生態学会委報告 1996)
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2008/080223.ppt
15
(MA2004)
生態系サービスと人間の福利
05/12/16
16
自然の価値を計る
(Costanzaら1997)
供給 農林水産物約140兆円/年
調整 物質循環約1700兆円/年
資源価値<<調整サービス
漁場の自然価値>漁業補償
05/8/4
17
自然の恵みの1haあたりの経済価値
(斜体部分の単位は米ドル/ha/年,Costanzaら1997より)
2
総計(兆ドル)
面積(万km )
物質循環
食糧生産
浄化機能
大洋
33200
118
15
不明
・・・
8.38
河口
180
21110
521
不明
・・・
4.11
藻場等
200
19002
不明
不明
・・・
3.80
珊瑚礁
62
220
58
・・・
0.38
大陸棚
2660
68
不明
・・・
4.28
・・・
・・・
1431
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
熱帯林
1900
922
32
87
・・・
3.81
干潟等
165
不明
466
6696
・・・
1.65
湿原等
165
不明
47
1659
・・・
3.23
51625
17.08
1.39
2.28
・・・
33.27
総計(兆ドル)
*原論文には,あと8種類の生態系と14の部類を評価している.不明部分が多数あり,過小評価.
18
今日の話題
生物多様性とは
生態系アプローチとは
生態系サービス=自然保護の根拠
海から魚がいなくなるか?
環境に優しい漁業を目指せ
19
世界の水産分野の動向
資源争奪戦の激化
英氷タラ戦争(Cod War)→海洋法条約
資源管理義務の増加
FAO、CITES、環境派の圧力
魚食文化の広がり
健康志向、寿司ブーム
食糧価格の高騰
中国の発展、バイオ燃料、原油高騰
20
海が壊れる?
世界の漁獲量はもう増えない?
「食卓や海から高級魚が消える」
「食卓や海から魚が消える」?
Newsweek 2003.7.14号
「海は死につつあるか?」
世界からSUSHIが消える日
21
http://www.fao.org/docrep/009/a0699e/A0699E00.HTM
Capture fisheries production in marine areas
(FAO, SOFIA2006)
日本と南米は浮魚主体の漁業
底魚
貝類
浮魚
軟体動物
蝦蟹
その他
22
Capture fisheries production in marine areas
(FAO, SOFIA2006)
減る北米東岸、増える東南アジア
23
まだまだ獲れる浮魚資源
anchoveta
sardine
Atlantic herring
chub
mackerel
http://www.fao.org/WAICENT/FAOINFO/FISHERY/publ/sofia/fig4e.asp
24
浮魚類の魚種交替
25
問題点
魚種ごとの漁獲量は大きく変動
 増えた魚を獲って食べること
魚種交替に備える
 子供を獲らず、大人を獲ること
泳がせ捜査(成長乱獲)
 減った魚を保護すること
種もみを残す(加入乱獲)
 選択性の高い漁業技術を開発すること
 減ったマサバとマイワシを乱獲で激減させた
26
今日の話題
生物多様性とは
生態系アプローチとは
生態系サービス=自然保護の根拠
海から魚がいなくなるか?
環境に優しい漁業を目指せ
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乱獲された魚を食べぬよう
薦める運動と寿司の流行
 クローバー(2004)「飽食の海-世界か
らSUSHIが消える日」 (邦訳:岩波書店)
 海は死につつあるか?(Newsweek
2003.7.14号)
 Seafood choices・エコラベル
 米国動物大学院生の半数?は菜食主義
 肉食→反捕鯨→野生動物愛護
→ 家畜食・魚食批判=菜食
 他方で寿司屋の爆発的流行
12/6/06
28
http://www.seafoodchoices.org/
28
SOFIA 2004
Per capita supply of fish food
2007/9/28
29
29
平均寿命、平均カロリー摂取量、
穀物依存度の関係
平均寿命(年)
男
女
米国
72.0
スウェーデン 75.3
76.6
日本
69.1
中国
78.9
80.8
83.0
72.4
摂取熱量
(kcal/日人)
穀物依存
度
3732
2972
2903
2727
21.7%
21.1%
39.7%
69.7%
(Source: Britannica 国際年鑑
1997)
30
魚食を推奨。ただし腹八分。
650 yen (US$6) with coffee
21
31
マグロ 資源管理と小食のすすめ
朝日新聞2007/2/9,Asahi Shimbun/Herald Tribune 2007/2/21
2002/6/21
32
32
http://www.riskworld.com/Abstract/1999/SRAam99/ab9ab073.htm
魚食のリスク便益分析
Benefit = 魚は健康食であり、不飽和脂
肪酸を多く含み、心疾患を減らす効果
が知られている。
毎日35gずつ魚を食べるグループの平均
余命は全く魚を食べないグループに比
べて、40歳の人の心疾患による死亡率
が38%少ない。
この効果は魚食によって摂取するダイ
オキシンによる健康リスクより高い。
33
http://fooddb.jp
/
ぶり・ はまち・
成魚
養殖-
-生
生(切り
身)
エネルギー(kcal)(切り
257
256
水分(g)
59.6
60.8
たんぱく質(g)
21.4
19.7
脂質(g)
17.6
18.2
※飽和脂肪酸(g)
4.4
3.98
※一価不飽和脂肪酸(g)
4.33
5.17
多価不飽和脂肪酸(g)
3.75
4.52
※コレステロール(mg)
72
72
炭水化物(g)
0.3
0.3
※食物繊維(g)
0
0
※※水溶性食物繊維(g)
0
0
※※不溶性食物繊維(g)
0
0
34
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2007/0707-4.html
NHKクローズアップ現代「魚が消える?
環境にやさしい漁業をめざせ」
2007年7月23日(月)放送
6月、ワシントン条約締約国会議で、
欧州ウナギに関する規制が採択された。
背景には、世界の漁業資源が、危機に
瀕しているという状況があ
る。 ・・・魚消費大国である日本に
とっても重要な問題である。今後、海
の生態系を乱さず、水産資源を保護し
ていくためにはどうすべきか、・・・
持続可能な漁業を目指すための課題を
考える。(スタジオゲスト:松田裕
之)
35
漁場の環境保全は漁業者の使命
漁業は、自然の恵みのごく一部を
持続的に利用しているだけ
漁業は、漁業利益よりけた違いの
漁場の自然資産の賜物である
36
環境に優しい漁業の考え方
>持続可能な漁業、責任ある漁業
日本の漁業には構造改革が必要
共同管理、市場の工夫、科学的検証
青魚食の推奨⇔優占種の時代変化
漁業の多面的機能の評価⇔自由貿易
沿岸漁民が海の生態系サービスを守る
健康志向の魚食を世界に勧める
魚食中心のアジアとの連携
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http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2007/070724NHK.html
環境にやさしい漁業を目指せ
Environment-friendly Fisheries
 管理漁業に対する環境基準を明確にして、各
国各漁業が競い、それなくしては自由貿易下
でも国際市場に参加できないようにすれば、
漁業は各国の生態系を守る方向に機能する。
 日本が消費大国であるということは、日本が
変われば世界の漁業と海洋生態系も守る上で
大きな力になるだろう。
 日本の漁業制度のよい面、世界一の長寿国で
ある日本の魚食文化のよい面を説明していけ
ば、リーダーシップを発揮できる立場にある。
2007/9/28
38
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