生態リスク・便益分析

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中池見液化天然ガス基地の
生態リスク・便益分析
• 岡敏弘(福井県大)・松田裕之(東大)
・角野康郎(神戸大)
中池見湿地(福井県敦賀市)学術調査報告書(1998京
都・神戸・福井3大学合同中池見湿地学術調査チー
ム・日本生物多様性防衛ネットワーク)より
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福井県敦賀市中池見
• 希少種の宝庫
にLNG基地
計画
• 放置しても失
われる二次的
自然
敦賀湾
敦賀港
中池見
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中池見保全・消失による種の絶
滅リスクの増減
rank N
n
L
1-R
T
D(1/T )
VU
4693
10
17 0.76 35.99 0.00036
EN
2084
10
29
0.8 37.73 0.00015
VU
3773
100
50 0.55 85.08 0.00014
VU
7166
10
52 0.68 56.44 6.7E-05
VU 20283
10
51 0.87 32.32 6.4E-05
VU 14028
100
98 0.49 119.6 5.1E-05
VU
5996
1
33 0.62
54 4.3E-05
オオアカウキクサ VU
58939
100
80 0.75 52.76 4.1E-05
ナガエミクリ
NT
26829
100
114 0.34 202.2 1.1E-05
ミズニラ
VU 27395
10
149 0.58 89.96 8.9E-06
カキツバタ
VU 23338
10
81 0.54 102.2 6.3E-06
サンショウモ
VU 52895
10
104 0.77 54.57 5.7E-06
アギナシ
NT
64299
10
128
0.4
162 4.4E-06
ミクリ
NT
43130
10
148 0.38 185.1 1.9E-06
ミズトンボ
VU 13104
1
121 0.61 81.8 1.5E-06
種名
ミズトラノオ
イトトリゲモ
ヒメビシ
ミズアオイ
デンジソウ
オオニガナ
ヤナギヌカボ
N:全国個
体数
n:中池見
生息数
L:区域数
1-R:過去
10年間
の全国
減少率
T:平均絶
滅待ち
時間
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系統樹の長さによる多様度
Weitzman ML(1992) Quart.J.Econ.107:363-406.
la
lab
A
B
labcd
C
lcd
ld
D
• 近縁種がいないほど重視(ld>la)
• 近縁種ごと絶滅するリスクも考慮可能(lab)
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期待多様性損失ELB
Expected loss of biodiversity
•
•
•
•
地球の生物多様性への寄与分
種iの「系統的固有性」li
種iの絶滅確率の増加分Δ(1/Ti)
ELB=Σ li Δ(1/Ti)
– 系統樹長×絶滅リスク上昇
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絶滅危惧種の「系統樹長」(百万年)
(維管束植物の起源を4億年と仮定)
種
イトトリゲモ
ヒメビシ
科
イバラモ科
ヒシ科
オオアカウキクサ アカウキクサ科
デンジソウ
デンジソウ科
ミズトラノオ
シソ科
ミズアオイ
ミズアオイ科
ヤナギヌカボ
タデ科
ミズニラ
ミズニラ科
サンショウモ
サンショウモ科
ナガエミクリ
ミクリ科
オオニガナ
キク科
アギナシ
オモダカ科
カキツバタ
アヤメ科
ミクリ
ミクリ科
ミズトンボ
ラン科
ミスミソウ
キンポウゲ科
科までの
段数
17-19
25-29
10
9
29-33
22-26
20-21
3
10
22-27
28-29
17-19
18-18
22-27
17-21
16-19
グループ 多様性寄 系統樹
内種数
与
長
205
15
6
67
580
34
1000
68
10
20
20000
249
1400
20
20115
2000
0.0291
0.0309
0.0772
0.0488
0.0085
0.0300
0.0178
0.0733
0.0707
0.0315
0.0053
0.0277
0.0157
0.0315
0.0056
0.0147
11.6
12.3
30.9
19.5
3.4
12.0
7.1
29.3
28.3
12.6
2.1
11.1
6.3
12.6
2.2
5.9
RDB
EN
VU
VU
VU
VU
VU
VU
VU
VU
NT
VU
VU
VU
NT
VU
NT
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ELB=9200年分の損失
rank
DN
logN
Ng
1-R
T
logD(1/T)
logB
ELB
イトトリゲモ
EN
?
3.3
29
80%
38
-3.81
7.1
1782
ヒメビシ
VU
>1000
3.6
50
55%
85
-3.85
7.1
1755
オオカカウキクサ
VU
>1000
4.8
80
75%
53
-4.39
7.5
1267
デンジソウ
VU
>100
4.3
51
87%
32
-4.19
7.3
1254
ミズトラノオ
VU
>100
3.7
17
76%
36
-3.45
6.5
1214
ミズアオイ
VU
>1000
3.9
52
68%
56
-4.18
7.1
802
ヤナギヌカボ
VU
>10
3.8
33
62%
54
-4.37
6.9
303
ミズニラ
VU
>100
4.4
149
58%
90
-5.05
7.5
261
サンショウモ
VU
>100
4.7
104
77%
55
-5.24
7.5
161
ナガエミクリ
NT
<10
4.4
114
34%
202
-4.96
7.1
139
オオニガナ
VU
>100
4.1
98
49%
120
-4.29
6.3
108
アギナシ
NT
>100
4.8
128
40%
162
-5.36
7.0
49
カキツバタ
VU
>100
4.4
81
54%
102
-5.20
6.8
40
ミクリ
NT
>100
4.6
148
38%
185
-5.72
7.1
24
ミズトンボ
VU
>100
4.1
121
61%
82
-5.83
6.3
3
Species name
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ELBは絶滅危惧種の・・・
• 種数が多い土地ほど重く、
• 個体数が多い土地ほど重く、
• 系統的に孤立している種が多い
土地ほど重い。
• 絶滅危惧種の宝庫(hotspot)を守
れ!
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2つの極端な前提
• 大阪ガスの保全エリア(湿地部
3ha)により、放置すれば失わ
れる希少種の宝庫を守れる
• 保全エリアは有効な対策ではな
く、LNG基地建設により希少種
の宝庫が全て失われる。
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LNG備蓄基地建設の便益
• 天然ガスは環境に比較的優しい
• 今後需要は増える(下方修正)
• 日本海側の基地の方がリスク分
散
– ロシアからの天然ガスパイプラ
イン
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福井港建設案の費用
• 75km長いパイプライン
• 福井港のさらなる浚渫が
必要
=+910-1000億円
=年40億円
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保全エリアの費用
• 初期投資が10億円(25年で減価
償却+年3%の利子)=5700万円
• 毎年6000万円の維持管理費
• 1年あたり1億2000万円
• 期待多様性1年あたり1.3万円
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ELB自身は、保全策の是非は
問わない
• 中池見開発による期待多様性損失は、
一方で-9200年になり、他方で9200年
(保全エリアの活動を自然の保全とみ
なすかどうかに依存)
• これは、二次的自然と人工生息地とを
どう区別するかという問題に行き着く
• どちらにしても、リスク便益分析が可
能
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絶滅危惧種を守るための費用
実績
政策
期待多様性保
年あたり費用
全に払う費用
保全エリア
1.2億円
1.3万円/年
福井港を使う
<39億円
<42万円/年
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放棄水田は遷移が進む
コナギ-オモダカ群落
1~3年
3~5年
~5年~
5~10年
10年~
ミゾソバ群落
アゼナ群落
ケイヌビエ群落
ヒメクグ-サンカクイ群落
チゴザサ群落
アシカキ群落
ミゾトラ
ノオ群落
ヒメガマ群落
マコモ群落
ヤナギ林
ハンノキ林
↑大阪ガスの環境影響評価書より
→3大学学術調査報告書より
ヨシ群落
チゴザサ-
アゼスゲ群落
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遷移の将来予想
100%
ヤナギ
ヨシ+マコモ
ヒメガマ
チゴザサ群落など
ヒメクグーサンカクイ
ミゾソバ
アゼナ+ケイヌビエ
コナギーオモダカ
生
育
地 10%
面
積
比 1%
率
0%
0
10
20
30
40
50 260 270 280 290 300
年
• 松田「環境生態学序説」を改変
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遷移を留めた保全エリア
• 移植はできるだけ避け、埋土種
子の自然生長に期待する
• 草刈りを行い、各段階で遷移を
止める
• サザエさん症候群
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生物多様性保全とは
•
•
•
•
いつか死ぬ生物を守る
変わり行く生態系を守る
全ての個体は唯一無二
人為的な大量絶滅を防ぐ(種>
地域集団>希少系群>個体)
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生態系管理は子育てと同じ
•
•
•
•
•
無菌室教育も完全放任も失敗
正解不詳
可愛い子には旅をさせよ
親や周囲の愛情が大切
教育精神を明示し、合意形成