米政治の濃霧が薄れて上昇トレンドへ回帰 - 三菱UFJ証券

藤戸レポート
米政治の濃霧が薄れて上昇トレンドへ回帰
2013 年 10 月 15 日
ワシントンがウォールストリートを
ワシントン(政治)が、ウォールストリート(市場)を振り回す展開が続いて
振り回す
いる。米国の主要経済統計は発表されず、CFTC(商品先物取引委員会)
のヘッジファンド先物ポジションも、データが更新されていない。オバマ大
統領や、共和党のベイナー下院議長の言動が虚実を交えて報道されてお
り、その度にマーケットが反応を示す展開だ。10/9 に、日経平均が急反発
したのも、米プリツカー商務長官が、「まもなく、政府機関の一部閉鎖が解
除されるだろう」と楽観的な見通しを述べたことが一つの要因になっていた
(グラフ 1)。そもそも、世界的に知名度のある大物商務長官なら話は別だ
が、プリツカー商務長官を認識していたとすれば、余程の米国政治通であ
ろう。報道された名前自体が、プリツカー、ブリツカー、ブリッカーと統一され
ていなかったほどだ(「Penny Pritzker」という英語表記からすればプリツカ
ーが正解であろう)。プリツカー商務長官は、ハイアット・ホテル創業者の姪
であり、経済誌「フォーブス」の全米長者番付に載ったほどの富豪である。
2008 年の大統領選挙に際しては、オバマ陣営の選挙資金集めを担当し
た。典型的な論功行賞人事である。日本では、米政治の専門家以外には、
メディアや市場参加者を含めて知名度は低かったが、その発言が日経平
均を大きく動かすことになった。しかも、「まもなく」(原文では「SOON」)とい
う言葉には、本来「さして時間がたたない」ことを指すが、「一両日中」なの
か、「10 月中」なのか、まったくニュアンスが分からない。それでも市場参加
者は、「米商務長官」という肩書きと、「閉鎖の解除」という文言に飛び付い
たわけだ。投資家の不安と、欲求不満を端的に表した事象と言えよう。
10/10 には、下院共和党が 6 週間の債務上限の引き上げを提案すると
発表した。争点となっていたオバマケア(医療保険改革法)や、歳出削減に
関する従来の共和党の要求は盛り込まないとしている。ようやく、共和党の
硬直的な姿勢に変化の兆しが現れたようだ。背景には、共和党非難の論調
が急速に高まっていることがある。徹底抗戦を主唱していた「ヘリテージ・ア
クション」(ティー・パーティー系の元共和党上院議員ジム・デミント氏が率い
る財団の政治部門)や「クラブ・フォー・グロース」といったディープ保守の支
持基盤が、債務上限引き上げに賛成しても、議員への懲罰行動を採らない
方針へ軟化したこともある。こうした保守団体は、資金提供を含めて共和党
議員のパトロンであるが、デフォルト(債務不履行)・リスクの上昇と市場の混
乱を見て、矛を収める方向に転換したようだ。
一方、オバマ大統領・民主党サイドは、下院共和党の提案に政府機関の
「妥協の余地なし」から「条件闘
再開が盛られていないこと、債務上限の引き上げ期間が極めて短期間であ
争」へ
ること等から、難色を示しているとニューヨーク・タイムズが報じている。現執
筆時点(10/11)では、まだ正式な妥協に時間を要する気配が漂っている。
共和党パトロンの変容
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。(35013101539M)
2013 年 10 月 15 日
ストラテジー
(グラフ 1)
米債務上限問題の
解決期待から日本市場も反発
(兆円)
(円)
日経平均と東証1部売買金額
17,000
14.00
FRB議長
QE3縮小に
言及(5/22)
12.00
15,942
(5/23)
14,953
(7/19)
2020年
東京五輪
決定(9/7)
米債務上限
期限(10/17)
16,000
14,817
(9/27)
日経平均
(右メモリ)
10.00
15,000
14,000
8.00
13,748
(10/8)
13,188
(8/28)
6.00
12,415
(6/13)
13,000
12,000
4.00
東証1部売買金額(左メモリ)
2.00
11,000
10,000
(出所) AstraManagerのデータをもとにMUMSS作成
0.00
4/1
4/22
5/16
6/6
6/27
7/19
8/9
8/30
9/24
9,000
しかしながら、原理・原則論をぶつけ合い、チキン・レースを続けた共和・民
主両党が、協議を開始したのは事実である。いわば、「妥協の余地なし」か
ら「条件闘争」へ移行したわけであり、双方の面子が立つ落とし所を模索し
ている状況と思われる。まだ紆余曲折はあろうが、条件闘争となればデフォ
ルトの可能性は極端に低下することになる。短期間の債務上限引き上げと
なれば、債務問題がギリシャ神話の「シーシュポスの苦役」(永遠に繰り返さ
れる苦行)となる恐れも否定できない。ただ、出口の無い暗闇に、一条の光
明が差し始めたことは事実である。政治の霧は晴れることになろう。
トレジャリ-・ビル 1 ヵ月物の金利
この政治情勢に対して、各アセットも極めてナーバスな反応を示してい
が乱高下
る。ウォーレン・バフェット氏が語るように、「議会は愚考の極みに近づくこと
はあっても、越えることはない」と、投資家の多くは予測している。ただし、短
期金融市場では、「愚考の極み」のリスクを織り込む局面があった。トレジャ
リー・ビル(Treasury bill。償還 1 年以下の財務省短期証券)の利回りは、9
月中ごろまで 0%近くで推移し(テクニカル要因でマイナス金利の場合もあ
る)、ほぼキャッシュと同義語であった。ところが、政府機関の一時閉鎖が現
実のものとなり、債務上限を巡る駆け引きが激しくなると共に、一気に利回り
が急騰し始めた。トレジャリー・ビル 1 ヵ月物の利回りは、10/8 には 0.339%
(ジェネリック。ブルームバーグ・データ)にまで達した(グラフ 2)。これは、
MMF(マネー・マーケット・ファンド)を始め、短資運用のファンドマネージャ
ーが、まさかのデフォルト(債務不履行)に備え始めたことを意味している。リ
ーマン・ブラザーズ破綻といった異常事態の場合には、額面割れとなった
MMFが出現した苦い経験がある。ファンドマネージャーとしても、「確率は
極めて低い」と認識しながらも、テール・リスクに備えたコンティンジェンシ
ー・プラン(緊急危機対応策)を発動したわけだ。MMFや銀行の中には、今
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2
2013 年 10 月 15 日
ストラテジー
(グラフ 2)
急騰した米国 TB 利回り
(%)
米国TB(1ヶ月物)利回り推移
0.400
0.339%
(10/8)
(出所)BloombergのデータよりMUMSS作成
0.350
0.300
0.250
0.200
バーナンキFRB議長
QE3縮小示唆
(5/22)
0.150
QE3
現状維持
(9/18)
米債務
上限期限
(10/17)
米国TB1ヶ月物利回り
0.100
0.050
0.000
4/1
5/1
6/3
7/3
8/5
9/5
10/7
後数週間の内に償還を迎えるトレジャリー・ビルを、レポ取引(債券を担保に
した資金調達)の担保として受け入れることを停止する向きも現れていた。
しかしながら、「共和党軟化=妥協観測」で、トレジャリー・ビル 1 ヵ月物
の利回りは、10/10 には 0.218%にまで低下した。今回の政治的ドタバタ劇
が、いかに短期金融市場に影響を与えているかを象徴する値動きである。
利回りのピークに比較すれば好転したと言えるが、正常化にはまだ程遠
い。ワシントンを巡る政治の抽象的な報道では、具体的なリスクの上昇を把
握し難いが、短期金融市場では定量的にリスクを認識することができる。株
式投資家も、マネー・マーケットの動向には注目すべきであろう。
下落局面のゴールドマンは 1 勝
株式市場の動きも、極めて神経質だ。ダウ工業株 30 種平均は、9/18 の
11 敗
史上最高値 15,709 ドルから 10/9 安値 14,719 ドルまで、約 1,000 ドルの
下落を見せた(グラフ 3)。特に、新規にダウ構成銘柄となったゴールドマン・
サックス・グループ、ビザの値嵩株コンビの下落は顕著で、ダウ採用となっ
た 9/23~10/8 の 12 営業日で、ビザは 3 勝(上昇)9 敗(下落)、ゴールド
マンに至っては 1 勝 11 敗という極端なパフォーマンスだった(グラフ 4)。ダ
ウ指数の構成ウェイトでは、一時よりも低下したとは言いながら、1 位ビザ
8.0%、3 位ゴールドマン 6.7%と、依然 15%近いシェアを占めている(10/10 時
点)。この 2 銘柄に象徴される値嵩株が、財政リスクの上昇によって大幅下
落すれば、指数全体が低迷するのは当然だ。既に指摘したように、単純平
均株価指数への値嵩株新規組入れは、指数全体の大きな価格変動を伴
う。かつて、2000 年 4 月の日経平均採用銘柄の大幅入れ替えに際しても、
日経平均は 4/12 高値 20,833 円から 2003 年 4/28 安値 7,603 円にまで崩
落した。背景には、世界的なITバブルの崩壊や、日本の金融システム不安
という大きな悪材料があったわけだが、値嵩株採用によるインパクトが下
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3
2013 年 10 月 15 日
ストラテジー
5
(グラフ 3)
米債務上限問題で
NY ダウは約 1,000 ドル下落
(ドル)
NYダウ(日足)推移
16,000
15,800
バーナンキFRB議長
QE3縮小示唆(5/22)
15,600
15,542
(5/22)
15,709
(9/18)
15,658
(8/2)
米政府閉鎖
(10/1~)
15,400
NYダウ
15,200
15,000
14,800
14,760
(8/28)
14,600
14,719
(10/9)
14,551
(6/24)
14,400
QE3現状維持
(9/18)
米債務
上限期限
(10/17)
14,200
(出所)BloombergのデータよりMUMSS作成
14,000
(グラフ 4)
値嵩株の下落が
NY ダウ下落の要因に
4/1
5/1
6/3
7/3
8/5
9/5
10/7
NYダウと採用銘柄の推移(2013/7~)
106
*9/20=100で指数化
104
102
100
NYダウ
98
ビザ
96
ゴールドマン
・サックス
94
92
90
88
86
(出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成
84
7/1
7/16
7/30
8/13
8/27
9/11
9/25
10/9
げ幅を拡大したことは事実である。今回のダウでも、折悪しく下げを助長す
る一要因となった。しかし、政治的妥協の可能性が高まったことで、ビザ、ゴ
ールドマン共に、10/9、10 は連騰である。10/10 にダウは 323 ドル高だった
が、寄与度はビザ 33.2 ドル、ゴールドマン 22.9 ドルで、両銘柄で 56 ドル
に達した。
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4
2013 年 10 月 15 日
ストラテジー
5
財政リスクの高まりで、今年のベスト・パフォーマーであったネット・SNS関
ネット・SNS 関連にも利益確定の
連銘柄も激しく売り込まれる局面があった(表 1)。
動き
(表 1)
銘柄名
昨年末株価(ドル) 年初来高値(ドル) 上昇率(%) 10/8下落率(%) 10/10上昇率(%)
フェイスブック
26.6
9月30日・51.6
93.9
▲6.68
4.87
リンクトイン
114.8
9月11日・257.5
124.3
▲6.10
2.58
ネットフリックス
92.5
10月3日・334.5
261.6
▲4.98
5.40
プライスライン
620.3
10月3日・1074.8
163.2
▲4.18
2.44
イェルプ
18.8
10月4日・73.4
290.4
▲7.62
4.38
アンジーズ・リスト
11.9
7月18日・28.3
137.8
▲2.4%
6.53
*出所ブルームバーグ
評価益を実現益に振り替える
政治的妥協で反騰の気配
ややバブルの香りが漂っていることは否定できないが、フェイスブック以
下のネット・SNS関連は、まさに 2013 年が「大化けの年」となった。IPO(新規
公開)時には大きく期待を裏切ったフェイスブックも、モバイル対応が成果を
見せてからは株価に羽が生えたような上昇ぶりだ。それ以下の中・小型株と
なると、まさに倍々ゲームで、ダウ工業株 30 種平均やS&P500 種指数が調
整色を見せても、「関係ない」とばかりの上昇基調を辿っていた。ところが、
ファンド勢は財政リスクが「臨界点」に達したと判断したためか、10/8 前後か
ら一気に利益確定売りに走り出した。私の経験でも、主要銘柄の下落が続
いてファンドのパフォーマンスが悪化し始めれば、ファンド・マネージメントの
観点からも、大活躍株の評価益を実現益に振り替える作業を行ったもの
だ。こうした活躍株はロケットのような上昇を見せた後だけに、利喰い売りが
出始めると、我も我もとばかりに一方的な下落を演じることが多い。セクター
は異なるが、7/16 号で紹介したテスラ・モーターズ(昨年末 33.8 ドル→
9/30 高値 194.5 ドル・+475.4%)や、バイオのギリアド・サイエンシズ(昨年末
36.7 ドル→9/19 高値 64.7 ドル・+76.2%)、同じくセルジーン(昨年末 78.7
ドル→10/4 高値 157.9 ドル・+100.6%)も、同様に 10/8 前後には急速な下
落を演じていた(グラフ 5)。まさかと思われたデフォルト・リスクの上昇を見
て、一時的にせよ、ファンドマネージャーは防御的な姿勢に転じたようだ。も
ちろん主力株に対しては、個別株対応よりも先物・オプション等のデリバティ
ブでヘッジ比率を高めたものと想定される。
しかし、こうしたハイ・ボラティリティ銘柄は、ワシントン発の黒い霧が薄れ出
すと、一気に切り返し始めた。10/10 の反騰を見ても、切れ味は極めてシャ
ープである。まだ絶好調時の勢いを回復するには至っていないが、本格的
な政治的妥協が成立すれば、再びラリーが始まる可能性もある。ヘッジ売り
を行っていた株式先物やオプションも、慌ててショート・カバーを行ったよう
だ。10/10 のダウ工業株 30 種平均の日中足を見ると、終日右肩上がりなが
ら、特に引け際 1 時間の上昇が顕著である。ワシントン報道を注視しながら
も、買戻しを躊躇していた投資家が、一気にショート・ポジションの巻き戻しを
実施したためと思われる。おそらく、財政リスクの高まりで現物株のウェイト
も、本来の組入れ比率を下回っているファンドが少なくないものと思われる。
政治的要因による波乱展開は終息し始めている。初動は買い戻しが原動
力となるが、本来の上昇トレンドに回帰する可能性が高まっている。
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5
2013 年 10 月 15 日
ストラテジー
5
(グラフ 5)
急騰銘柄に利食い売りが先行
米株価推移(2013/7~)
170
*7/1=100で指数化
160
(出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成
150
テスラ
・モーターズ
140
セルジーン
130
ギリアド
・サイエンシズ
120
110
米政府閉鎖
(10/1~)
100
米債務
上限期限
(10/17)
90
7/1
下方硬直性を見せた日経平均
※当社の役員(会社法に規定する取締役、
執行役、監査役又はこれらに準ずる者をい
う。)が、以下の会社の役員を兼任しておりま
す。:三菱UFJフィナンシャル・グループ
バリュエーションの改善
7/16
7/30
8/13
8/27
9/11
9/25
10/9
日経平均は、米株反騰に先回りするように、下方硬直性を見せた。
10/7、ダウ工業株 30 種は 136 ドル安となり、それを受けた 10/8 の日経平
均も、一時 13,748 円・前日比 105 円安まで売り込まれる局面があった。
9/27 高値 14,817 円からは▲1,069 円の下落である。しかし、執拗な押し目
買いが入り、結局 41 円高で引けた。翌 9 日は、さらに顕著で、8 日のダウ
が 159 ドル安、ナスダック総合指数▲75 ポイントにもかかわらず、日経平均
は 143 円高と大きく上昇した(グラフ 6)。ソフトバンクが▲420 円・日経平均
のマイナス寄与度が▲49.4 円に及んだことを考えると、実質的には 200 円
近い上昇であった。この 9 日の相場には重要な示唆がある。上昇の主役を
担ったのは、トヨタを始めとする自動車株、三井住友FG、三菱UFJFGを始
めとした大型金融株、旧財閥系不動産大手 3 社、といった時価総額の大き
な主力株だった。トヨタは東証一部売買代金で、急落したソフトバンクに次
いで 2 位、株価は 180 円高・+2.9%、三井住友FG同第 5 位 85 円高・
+1.8%、三菱UFJFG第 6 位 13 円高+2.1%、三井不動産 135 円高・+4.2%、三
菱地所 103 円高+3.8%等、出来高・値幅を伴った上昇であった(グラフ 7)。い
ずれもTOPIX(東証株価指数)構成ウェイト上位の主力株であり、良質な中
長期マネーの流入を推測させる内容である。デリバティブ買い戻し主体の
怪しげな反騰ではなく、健全かつ先高期待を伴った上昇だった。
その背景には何があるのだろうか。まず第一に、バリュエーション面での
割安感台頭である。日経平均が安値を付けた 10/7~8 の予想PERは
15.23 倍にまで低下した(QUICKデータ)。直近のピークだった 9/26 の
16.19 倍からは、かなり割安感が台頭している(グラフ 8)。しかも、10~11 月
の決算発表では好調企業の上方修正が必至の情勢である。仮に、アナリス
ト・コンセンサスの予想EPS(日経平均の一株当たり利益。10/10 時点) 974
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。(35013101539M)
6
2013 年 10 月 15 日
ストラテジー
5
(グラフ 6)
米国株下落でも
底堅く推移した日本市場
(円)
日経平均(5分足)(10/7~10/9)
14,100
(出所)AstraManagerのデータよりMUMSS作成
14,037
(10/9)
14,050
14,000
13,950
13,929
(10/8)
日経平均
13,900
13,850
13,800
NYダウ
▲159ドル
(10/8)
NYダウ
▲136ドル
(10/7)
13,750
13,700
10/7
13,748
(10/8)
13,751
(10/9)
10/8
(グラフ 7)
主力銘柄主導の反発
10/9
日本株上昇率(10/9時点:前日比)
4.2
三井不
3.8
菱地所
※当社の役員(会社法に規定する取締役、
執行役、監査役又はこれらに準ずる者をい
う。)が、以下の会社の役員を兼任しておりま
す。:三菱UFJフィナンシャル・グループ
3.4
住友不
2.9
トヨタ
2.1
三菱UFJ
1.8
三井住友
1.4
TOPIX
1.0
日経平均
0.0
オシレーターは「陰の極」
0.5
1.0
(出所)AstraManagerのデータよりMUMSS作成
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
(%)
円を採用すれば 14.2 倍となる。これは、ダウ工業株 30 種平均の 14.1 倍、
S&P500 種の 15.2 倍と比較しても魅力的な水準である(10/10 時点。ブル
ームバーグ・データ)。海外、国内共に、年金基金を始めとした良質な中長
期マネーは、ファンダメンタルズ分析、バリュエーション分析に重きを置く。
米株急落にもかかわらず、買い向かった要因としては最大のものだろう。
第二には、テクニカル面からも売られ過ぎ感が出たことだ。オシレーター系
の指標では、10/7 のストキャスティックス(9 日)がファースト 6.4、スロウ 9.1、
RSI(14 日)35.3 と「陰の極」を形成した(グラフ 9)。オシレーターは、長期上昇・
下落波動では、使い物にならないケースが多い。例えば、昨年 11 月から今
年 5 月にかけての大相場となると、常に買われ過ぎを示唆し続けた。しかし、
5 月以降の循環的な往来相場となると、見事にオーバー・シュートを指摘し
ている。投資家の買いタイミングの判断をサポートしたものと思われる。
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。(35013101539M)
7
2013 年 10 月 15 日
ストラテジー
5
(グラフ 8)
コンセンサス PER は
14 倍台まで低下
(倍)
(円)
日経平均とPER推移
28.0
(出所)AstraManagerのデータをもとにMUMSS作成
15,942
(5/23)
*コンセンサスはQUICKコンセンサス
16,000
26.0
14,953
(7/19)
24.0
14,817
(9/27)
15,000
日経平均(右)
22.0
14,000
13,748
(10/8)
20.0
13,188
(8/28)
18.0
12,415
(6/13)
13,000
米政府閉鎖
(10/1~)
予想PER(左)
12,000
16.0
11,000
14.0
コンセンサスPER(左)
12.0
10,000
5/1
(グラフ 9)
テクニカル指標の
沈静化も反発要因に
5/28
6/20
(%)
7/16
8/8
9/2
9/27
(円)
日経平均とRSI(14日)推移
240.0
(出所)AstraManagerのデータをもとにMUMSS作成
15,942
(5/23)
220.0
16,000
200.0
日経平均
(右)
180.0
14,953
(7/19)
14,817
(9/27)
15,000
160.0
14,000
140.0
13,748
(10/8)
120.0
13,188
(8/28)
100.0
12,415
(6/13)
80.0
13,000
12,000
60.0
RSI(14日)(左)
40.0
11,000
20.0
0.0
4/1
ヘッジファンドのアンワインド一巡
4/24
5/22
6/14
32.9
(10/10)
29.9
(8/22)
29.9(6/7)
7/9
8/2
8/27
10,000
9/20
第三には、需給面でヘッジファンドのアンワインド(巻き戻し)が一巡した
ことだ。10/1 の安倍総理の消費増税・経済対策発表でイベント一巡と見た
ヘッジファンドは、東京五輪決定以来積み上げたロング・ポジションを利益
確定する動きが強まった。10 月第 1 週(9/30~10/4)の投資主体者別売買
動向では、外国人が日経平均先物を▲1,893 億円の売り越しである(表 2)
。先週号で指摘した魑魅魍魎の売りスタンスが、公式データで確認されたこ
とになる。その後は、徐々に売り物が縮小し、9/30 や 10/2 に日経平均が
300 円安した時のような大口売りは姿を消した。急落リスクは低減したとの判
断だ。
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。(35013101539M)
8
2013 年 10 月 15 日
ストラテジー
5
(表 2) ○外国人投資家の先物・現物売買動向
外国人投資家
先物
ミニ先物
月/週
東証
小計
小計
売り一巡へ
日経225
日経225 TOPIX
8月2週
8月3週
8月4週
9月1週
9月2週
9月3週
9月4週
10月1週
-484
-91
286
-1,157
-291
1,446
-101
-1,893
株価指数 【a】
-193
-677
-374
-466
-949
-663
-1,273 -2,431
572
280
691
2,137
-1,029 -1,130
78 -1,815
-62
74
-345
454
651
399
-154
-219
-2
-11
-8
-10
-3
9
2
-5
【b】
-64
63
-353
444
648
408
-152
-224
先物
合計
【a+b】
-741
-402
-1,016
-1,986
928
2,545
-1,282
-2,040
現物・先物合計
現物
【c】
【a+c】
【a+b+c】
996
-112
-1,068
2,075
561
2,891
2,538
-111
319
-577
-1,731
-355
841
5,028
1,408
-1,926
255
-514
-2,084
89
1,489
5,435
1,256
-2,150
(出所)東証・大証のデータをもとに、MUMSS 作成
粛々と ETF を買う日銀
(グラフ 10)
年内目標に接近する
日銀の ETF 購入
第四には、日銀のスタンスだ。日銀は、今回の下げ局面でもETF(上場
投信)の買入を粛々と実行している。9/6~30 の間に、176 億円×6 回=
1,056 億円、10/2、4、7、8 に 131 億円×4 回=524 億円と、買い向かって
いる(グラフ 10)。もし万一、米国がデフォルトするような事態に陥れば、黒田
日銀が拱手傍観するとは思えない。黒田総裁は、米国デフォルトのリスクは
ほとんどないとの発言をされていたが、アクシデント的な異常事態となれ
ば、大胆な追加緩和策を発動することを躊躇しないだろう。当然、リスクアセ
ットの大規模な買い枠増大も想定されよう。
(億円)
日銀ETF購入と日経平均
(円)
40,000
17,000
(出所)AstraManager、日銀のデータをもとにMUMSS作成
3.5兆円
(2014末)
35,000
16,000
15,000
30,000
14,000
13,000
25,000
2.5兆円
(2013末)
12,000
20,000
日経平均
(右メモリ)
11,000
15,000
2兆3,303億円
(10/11時点)
10,000
10,000
9,000
8,000
日銀ETF購入額
(左メモリ)
5,000
0
2010/12
危機には一段の政策対応も
7,000
6,000
2011/4
2011/9
2012/2
2012/7
2012/12 2013/5
2013/10
第五には、デフレ脱却、株高・円安の持続を最大の命題と捉える安倍政
権が、日経平均の急落に対して追加の政策発動を検討する可能性が高い
ことだ。資産価格の象徴たる株価の下落トレンドが定着すれば、デフレ脱却
は夢のまた夢である。ウォールストリートにまで出かけて、日本株の推奨を
行った総理のことだ。緊急危機に対しては、黒田日銀と連携しながら、経済
対策の枠を 5 兆円からさらに拡大することは十分想定されよう。
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2013 年 10 月 15 日
ストラテジー
5
党利党略・個利個略よりも国益が
優先する
つまり、ファンダメンタルズ・バリュエーション、テクニカル、株式需給、政
府・日銀の政策対応を考えれば、ワシントンの黒い霧で急落する局面は、
「買いに利あり」と判断したものと思われる。バーナンキFRB(連邦準備制度
理事会)議長、イエレン次期議長も、ウォールストリートの守護神としての力
を発揮することだろう。まだ、紆余曲折は避けられないが、共和党議員もパ
トロンが軟化すれば、手打ちに向かうのは論理的必然である。債務上限の
引き上げ期間も、6 週間と言わず民主党が唱えている 1 年間となればベス
トであろう。結局、今回の米財政リスクに対しては、孟子の「性善説」を採るの
か、荀子の「性悪説」を採るかの哲学的な命題に直面する。共和党、中でも
「ティー・パーティー系議員」といえども、政治的イデオロギーと、来年中間
選挙を睨んだパフォーマンスによって、米国を始めとした世界の金融・経
済、マーケットを大混乱させて平然としていられるわけがない。最後には、
党利党略・個利個略よりも、米国の国益が優先するものと思われる。9 月下
旬以降の動きは、ポール・マッカートニーが言う「ザ・ロング&ワインディング
ロード」(The long and winding road)だったが、大団円は意外に近いものと
想定している。
ニッコロ・マキャヴェッリの「君主
論」をどうぞ
5 月急落後、夏場の株価鍛錬期にはボックス往来を利用して、株価の種
蒔きを推奨した。東京五輪決定後の急騰局面は見送り、押し目買いスタン
スを採った。そして、今回の米財政リスクに対しては、好業績が期待される
主力優良株を拾うことを奨めた。政治リスクは消え去ったわけではないが、
兜町が場況解説で米共和党の動向に言及するような事態が、長く続くはず
がない。株式投資にはリスクが付き物だが、年末・年始、来春相場を考えれ
ば、政治リスクで急落する局面は格好の拾い場と考える。10 月決算を控え
たミューチュアル・ファンド(海外投信)の売りも一巡感が台頭している。ま
だ、ヘッジファンドの 11 月本決算は残っているが、年末から来年 1~3 月
は、彼らが海外投資に積極的になるシーズンであることを想起すべきであろ
う(グラフ 11)。最大のリスクは、オバマ大統領が大相撲の稀勢の里関と同様
に、「ガチンコ」(真剣勝負)志向であることだ。ここは、人権派弁護士の過去を
忘れて、ニッコロ・マキャヴェッリを見習う局面である。「君主論」は必読だ。
(グラフ 11)
年末から積極化する
外国人投資家の日本株買い
月別外国人投資家動向(2003/10~2013/9)
(億円)
10,000
*10年間の月間平均
(出所)AstraManagerのデータよりMUMSS作成
9,000
8,000
7,601
7,000
6,366
6,000
5,374
4,898
5,000
4,000
4,782
4,306
3,731
3,119
3,000
2,542
1,814
2,000
1,226 1,182
1,000
藤戸 則弘
投資情報部長
0
7月
8月
9月
10月
11月
12月
巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。(35013101539M)
10
1月
2月
3月
4月
5月
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