6月の米雇用統計=急激に回復も、FRBは慎重姿勢

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REPORT
DAIICHI COMMODITIES CO.,LTD.
2016/07/09
6月の米雇用統計=急激に回復も、FRBは慎重姿勢
米労働省が7月8日発表した6月の雇用統計によると、景気動向を反映する非農業部門就業者数は、季節調整済みで
前月比28万7000人の増加。米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズのストライキ(3万5000人規模)
が5月末に終結したことなどを背景に、昨年10月(29万5000人増)以来の大幅増加となり、大幅に落ち込んだ
前月(1万1000人増=改定)から急激に回復し、市場予想の17万5000人増加を大幅に上回った。また、就業
者数は5月が下方改定された一方、4月は上方改定された。
失業率は4.9%と前月から0.2%悪化し、市場予想の4.8%を0.1%上回った。
民間部門の就業者数は26万5000人増加(前月6000人減少=改定)と大幅に伸びた。このうち物品生産部門
は9000人増加(前月4万1000人減少=改定)
。製造業は増加し、建設業は横ばい、鉱業・林業は減少した。サ
ービス部門は25万6000人増加(同3万5000人増加=改定)と大きく伸びた。政府部門は2万2000人増加
(同1万7000人増加=同)だった。
平均時給は25.61ドルと前月比0.1%増加と市場予想の0.2%増加を下回った。前年同月比では2.6%増
加。週平均労働時間は34.4時間と横ばいだった。
働く意欲のある人の多さを示す労働参加率は62.7%と前月から0.1ポイント上昇。半年以上の長期失業者は増
え、フルタイム勤務を望みながらパートしか職が見つからない人は減った。
▽就業者大幅増も英EU離脱が重荷
6月の非農業部門就業者数の大幅増加は、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ判断には追い風だが、英国
の欧州連合(EU)離脱決定により先行きへの不透明感が拡大。市場では米FRBは7月26-27両日の連邦公開市
場委員会(FOMC)で追加利上げに慎重な姿勢を取るとの見方が大勢だ。
米FRBは持続的な雇用改善と物価上昇を見極め、昨年12月以来の利上げに踏み切りたい考え。6月の就業者数の
伸びは、好調な雇用情勢の指針とされる20万人を大幅に上回り、FRBの利上げ判断にはプラス要因となる。
しかし、5月の就業者数の伸びが従来発表の3万8000人増加から1万1000人増加に下方修正された。
「持続
的な改善」を判断するには十分な検証が必要だ。さらに英EU離脱により、為替・金融市場の変動幅が拡大し、米FR
B高官からは「影響拡大を懸念している」
(フィッシャー副議長)などの警戒の声が上がる。早期の利上げは難しい状
況が続きそうだ。
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○NY金は小幅続落=良好な米雇用統計で急落する場面も
週末7月8日のニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物相場は、堅調な米雇用統計の発表直後に急落したが、
その後は買い戻しが入り、小幅続落となった。中心限月期近8月限の清算値は前日比3.70ドル安の1オンス=13
58.40ドル。
米労働省がこの日朝方発表した6月の雇用統計は、非農業部門就業者数が前月比28万7000人増加と、大幅に落
ち込んだ5月から急回復し、市場予想の17万5000人増加を大幅に上回ったことを好感し、投資家の過剰なリスク
回避姿勢が和らぐと、安全資産とされる金の需要は後退、発表直後には前日比25.80ドル安の1336.30ドル
まで急落した。しかし、5月の就業者数が下方改定されたうえ、英国の欧州連合(EU)離脱決定を受けた世界経済の
先行き不透明感が依然根強いため、その後は買い戻しも入り、急速に下げ渋る展開となった。
UBSのアナリスト、ジョニ・テベス氏は「予想以上に良好だった米雇用統計に対する反射的な反応は収まりつつあ
り、金相場は既に安値水準から上昇に転じている」と指摘。
「金相場でポジションを取りたがっている人は多く、いか
なるあや戻しでも参入したいだろう」と語った。
また、CMEグループのFEDウォッチによると、6月の米雇用統計で非農業部門就業者数の増加幅が予想を上回る
増加となったのを受けて、金利先物が織り込む12月利上げの確率は当初の19%から23%に小幅上昇。ただ、英国
の欧州連合(EU)離脱決定による不透明感など踏まえ、7月利上げの可能性は全く織り込まれていないうえ、利上げ
確率は2018年以降まで50%割れの状態となっている。
▽東京金は小反発
東京商品取引所の金先物相場は7月11日付けの夜間取引で、6月の米雇用統計が市場予想を上回ったのを受けて、
NY金が急落したことから、中心限月の2017年6月先限は一時、8日終値比38円安の4327円まで下落。しか
し、NY金が下げ幅を大幅に縮小したことが買い材料となり、上昇に転じた。
中心限月の2017年6月先限は、日本時間7月9日午前4時現在、8日終値比16円高の4381円。
○円相場=米雇用統計で乱高下する展開
週末7月8日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、堅調な米雇用統計の発表を受けて乱高下した後、1ドル=1
00円台半ばで小動きとなった。
米労働省が発表した6月の雇用統計は、非農業部門就業者数の増加幅が前月から急回復したほか、市場予想も大きく
上回った。これを受けて、米景気の先行き懸念が後退したことから、一時は101円25銭まで下落。しかし、その後
は「前月分の下方修正や賃金の伸びの停滞もあり、就業者数は2カ月平均で見れば15万人前後と、米連邦準備制度理
事会(FRB)の利上げペースを早めるものではない」との見方が広がり、一時99円99銭まで上昇する場面があっ
た。
ただ、相場が100円の心理的な節目を割り込んだ後はポジション調整目的の円売り・ドル買いが優勢となり、昼ご
ろからは100円台半ばで落ち着く展開となった。
○NYダウは急反発=終値で約1年1カ月ぶりの高値
週末7月8日のニューヨーク株式市場は、米雇用統計の大幅改善を好感して急反発。優良株で構成するダウ工業株3
0種平均は前日終値比250.86ドル高の1万8146.74ドルと、終値ベースで2015年5月27日以来約1
年1カ月ぶりの高値で終了。ハイテク株中心のナスダック総合指数は79.95ポイント高の4956.76で引けた。
米労働省が朝方発表した6月の雇用統計は、非農業部門就業者数の増加幅が大幅に落ち込んだ前月から急回復し、市
場予想も大きく上回ったことから、米景気に対する先行き懸念が後退し、ダウは上昇して始まった。その後も強い経済
指標を受けて年内の米追加利上げ観測が若干高まり、金利上昇による収益改善期待から銀行株が買われたうえ、前日に
急落した原油先物相場が反発したことも買い安心感につながり、ダウは英国の欧州連合(EU)離脱決定後の下げ幅を
取り戻し、過去最高値(1万8312.39ドル)に近づいた。
市場では「米景気の腰折れ懸念が後退し、安ど感から買いが入った」との指摘が聞かれた。
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