金相場、日米金融政策会合後は急伸の可能性も

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REPORT
DAIICHI COMMODITIES CO.,LTD.
2016/09/15
金相場、日米金融政策会合後は急伸の可能性も
『9月の米FOMC=追加利上げは見送り濃厚』
米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月20-21日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。
イエレン議長が8月26日のジャクソンホールでの会合で「追加利上げの根拠がこの数カ月で強まって
いる」と述べるなど、米FRB高官から相次いで早期の米利上げに前向きな発言が聞かれた。しかし、中
間派とされるタルーロFRB理事、ハト派とされるブレイナード理事やカシュカリ・米ミネアポリス連銀
総裁が早期利上げの実施に慎重な姿勢を示すなど、米FRB内では利上げの是非をめぐり、意見がなお分
かれていることが浮き彫りとなった。
9月に発表された米経済統計は弱い結果が続いている。8月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前
月比15万1000人増と、景気の力強さを示すとされる20万人増はおろか、市場予想の18万人増を
も下回った。8月の米労働市場情勢指数もマイナス0.7と雇用の改善・悪化の境目になるゼロを2カ月
ぶりに下回った。さらに、8月の米ISM製造業景況指数が製造業景況の拡大・縮小の判断の節目である
50を半年ぶりに割り込んだうえ、8月の米ISM非製造業景況指数も市場予想を大幅に下回り6年半ぶ
りの低水準となった。
また、米FRBが重視しているインフレ指標の個人消費支出(PCE)物価指数は7月分が前月比横ば
いと3カ月連続で減速、変動の大きい食料品とエネルギーを除いたPCEコア物価指数は前年同月比1.
6%上昇と、依然としてFRBが目標とする2%を下回っている。
前述の要因のほか、15、16日に発表される米経済統計が市場予想通りとなれば、9月FOMCでは
追加利上げが見送られるとみている。
『NY金=年初来高値を突破へ』
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物市場では、9月米FOMCでの追加利上げ決定に対す
る警戒感が根強く、上値を抑えられる展開となっているが、15、16日に発表される米経済統計が市場
予想通りの結果なら、追加利上げに対する警戒感が和らぎ、1350ドルの節目を突破するとみている。
さらに、9月米FOMCで追加利上げが見送られ、FOMC声明や委員17人の政策金利見通しで、年
内1回の利上げでとどまれば、金利の付かない資産である金にとってはプラス材料となるのに加え、外国
為替市場でドルが対主要通貨で売られることが予想され、中心限月ベースで7月6日に付けた年初来高値
1377.50ドルを突破することが予想される。
また、2017年の金融政策の動向も注目されるとみている。最近のタカ派的な発言が相次いでいる状
況の中、同年の利上げ予想が前回6月の3回と変化がなければ、FRB内では依然として意見が分かれて
いることを示す結果となる。その場合、金市場で買い材料視されることが予想され、年初来高値を突破す
ることになるだろう。
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『9月の日銀金融政策決定会合=追加緩和策を決定か』
日本銀行は9月20-21日に開催する金融政策決定会合で、2013年4月から導入している大規模
な量的・質的金融緩和について「総括的な検証」を行い、追加緩和を含めた政策手段の強化について検討
する。
7月会合で発表された最新見通しでは、2%の物価上昇の達成時期を「2017年度中」としている。
しかし、7月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比0.5%下落と3年4カ月ぶりの下げ幅
を記録。日銀の金融政策に対し「限界論」が広がる中、追加緩和を見送る決定をすれば円急騰・株暴落を
招きかねず、追加緩和策の決定に踏み切るとみている。中身は、マイナス金利の拡大や国債購入規模の拡
大、景気刺激効果が相対的に大きい3年や5年の長期金利を誘導目標に据える「長期金利ターゲット」な
どが考えられるが、2013年4月の“黒田バズーカ”、2014年10月の“黒田バズーカ2”のよう
なインパクトはない。ただ、これらの緩和策と会合後の会見で黒田総裁が物価目標の実現まで量的・質的
金融和策を継続する姿勢を強調し、9月の米FOMCで年内の利上げ観測が継続となれば、為替が小幅で
はあるが円安・ドル高傾向に振れることが予想される。
『東京金=買い方針』
東京商品取引所の金先物は、早期の米利上げ観測によるNY金の下落に圧迫されているが、中心限月の
2017年8月限は、テクニカル上の長期的な強弱の節目となる200日移動平均線を割り込んだ水準で
は、売り方の買い戻しや安値拾いとみられる買いなどに下支えられている。また、市場人気を表す指標で
ある取組高は10万枚の大台を突破しており、金に対する投資人気の高さが窺える。
9月の日米金融政策会合の結果、NY金は中心限月ベースで7月6日に付けた年初来高値1377.5
0ドルを突破する一方、為替は小幅ながらも円安・ドル高に振れるとみている。
以上のことから、日米の金融政策会合の結果は前述のように、金にとっては買い材料になると考え
られ、現在の相場水準での買い方針で臨みたい。
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