8月の米雇用統計=改善の勢いは鈍化

FUTURES
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REPORT
DAIICHI COMMODITIES CO.,LTD.
2016/09/03
8月の米雇用統計=改善の勢いは鈍化
米労働省が9月2日発表した8月の雇用統計によると、景気動向を反映する非農業部門就業者数は、季節調整済みで
前月比15万1000人増加と、市場予想の18万人増加、前月の27万5000人増加(改定値)を下回った。8月
の失業率は前月と同水準の4.9%、予想は4.8%だった。
民間部門の就業者数は12万6000人増加と、前月(22万5000人増加=改定)から減速。このうち物品生産
部門は2万4000人減少(前月1万1000人増加=改定)
。建設業、製造業が減少。サービス部門は15万人増加
(同21万4000人増加=改定)
。政府部門は2万5000人増加で前月(5万人増加=同)から減少した。
平均時給は前月比0.1%増加と、市場予想の0.2%増加を下回った。前年同月比は2.4%増加。週平均労働時
間は34.3時間と0.1時間減少した。
また、働く意欲のある人の多さを示す労働参加率は前月から横ばいの62.8%。半年以上の長期失業者は減り、フ
ルタイム勤務を望みながらパートしか職が見つからない人は増えた。
●9月利上げを判断する材料としては決め手に欠ける
8月の米雇用統計で非農業部門就業者数は力強い伸びではなかったが、雇用情勢の堅調さを一定程度裏付ける数字と
なった。米連邦準備制度理事会(FRB)が9月20-21日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを
判断する決め手にはならないとの見方がある一方で、
「15万人あれば十分」
(FRB高官)との指摘もある。米FRB
は今後発表される物価指標なども見極め、米FOMCで最終判断する。
米FRBは昨年12月の利上げ以降、金融市場の混乱や5月の雇用の急減速を受けて、追加策を見送ってきた。ただ、
6、7月は雇用が急回復し、イエレンFRB議長は8月下旬の講演で、雇用回復と物価上昇の見通しなどを理由に「こ
こ数カ月で利上げの根拠が強まっている」と表明。今回の統計が判断を左右するとして注目されていた。
8月の非農業部門就業者数は市場予想を下回った。ただ、失業率が4.9%まで低下している現在、労働市場の安定
には10万人前後の伸びがあれば足りるとの分析もあり、3カ月平均で見ると23万2000人増加と上向き傾向を維
持した。一方、製造業や建設業はマイナスとなるなど強弱入り交じる内容だ。
労働市場に関して、FRB内には「完全雇用に近い」との見方が多いが、
「改善の余地がある」との声も一部ある。
物価上昇をめぐっても評価が割れており、議論の行方が注目される。
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○NY金は続伸=一時は急伸する場面も
週末9月2日のニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物相場は、8月の米雇用統計が市場予想を下回ったの
を受けて続伸。中心限月の期近12月限の清算値は前日比9.60ドル高の1326.70ドル。
米労働省が朝方発表した8月の雇用統計は、景気動向を反映する非農業部門就業者数が季節調整済みで前月比15万
1000人増加にとどまり、市場予想の18万人増加を下回った。これを受けて、米早期利上げ観測が後退。先週から
米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長やフィッシャー副議長が早期利上げに前向きな発言を行っていたこと
もあり、金は安心感から買われた。また、同統計を受けて、外国為替市場でドル安・ユーロ高となり、ドル建てで取引
される金は割安感からも買われ、一時は前日比16.90ドル高の1334ドルと、8月26日(1346ドル)以来
1週間ぶりの高値を付けた。
ただ、その後は、外国為替市場で「雇用統計が9月利上げの可能性を完全に打ち消すほど悪い内容ではない」との見
方が広がり、ドル高・ユーロ安となったことから、上げ幅を縮小した。
○東京金は3週間ぶりの高値=NY金相場高と為替の円安で
東京商品取引所の金先物相場は9月5日付の夜間取引で、NY金が市場予想を下回った8月の米雇用統計を受けて急
伸したことから、中心限月の2017年8月先限は4380円台に上昇。その後、NY金が上げ幅を縮小したものの、
為替の円安・ドル高進行に支援され、一時は2日終値比55円高の4390円と、8月15日(4397円)以来3週
間ぶりの高値を付けた。
中心限月の2017年8月先限は、日本時間9月3日午前4時現在、2日終値比54円高の4389円。
○円相場=104円台前半まで下落
週末9月2日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、8月の米雇用統計の発表を受けて一時ドル売りが加速したも
のの、その後は急速に買い戻されて円安・ドル高に転じ、1ドル=104円台前半まで下落した。
米労働省が朝方に発表した8月の雇用統計では、景気動向を反映する非農業部門就業者数の増加幅が市場予想を下回
ったことから、早期利上げ観測が後退。発表直後は円買い・ドル売りが加速し、円相場は103円台半ばから一気に1
02円80銭台まで上昇した。
しかし、その後は「米雇用統計が9月利上げの可能性を完全に打ち消すほど悪い内容ではない」との見方が徐々に広
がったことから、ドルの見直し買いが入り、一時は104円31銭と、7月29日(105円48銭)以来1カ月ぶり
の円安・ドル高水準まで下落。ただ、午後に入ってからは連休を控えて、概ね104円近辺で小幅な値動きとなった。
○NYダウは続伸=市場予想を下回った米雇用統計で
週末9月2日のニューヨーク株式市場は、市場予想を下回った米雇用統計を受けて続伸。優良株で構成するダウ工業
株30種平均は前日終値比72.66ドル高の1万8491.96ドルで取引を終了した。ハイテク株中心のナスダッ
ク総合指数は同22.69ポイント高の5249.90で終わった。
朝方発表された8月の米雇用統計は、非農業部門就業者数の増加幅が市場予想と前月を下回り、米早期利上げが遠の
いたとの見方から、ダウは取引序盤に一時125ドル超上昇した。
雇用統計の結果は軟調だったが、取引が進むにつれて「9月利上げの可能性を完全に排除するものではない」との見
方が徐々に広がり、序盤以降のダウは上げ幅を縮小していった。労働市場の安定に必要な10万人前後の伸びを上回っ
たほか、過去3カ月の平均は23万2000人増加と堅調さを維持。市場では「9月利上げの可能性を残すものか、先
送りを示唆するものなのか、どちらにも取れる結果となった」との意見が出ていた。
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