現代日本語

高级日语Ⅲ
第3课
ナイン
井上ひさし
授業の内容
●背景知識
●単語の勉強
●文法・表現の勉強
●本文の解説
●練習
●本文の内容について考えよう
背景知識
作者について
井上ひさし(いのうえひさし)、
劇作家、小説家。1934年
山形県に生まれた。上智大
学外国語学部フランス語科
を卒業。その作品は奇抜な
構成、奔放な言葉遊び、鋭
い批評精神に溢れる。主な
戯曲に『表裹源内蛙合戦』
背景知識
『頭痛肩こり樋口ー葉』。近作に『貧弱物語』(1998年)、
『天保12年のシェイクスピア』(2002年)。主な小説に『手
鎖心中』『吉里吉里人』、近作に『東京セブンローズ』(199
9年)、『わが人生の時刻表』(2000年)などがある。また、
日本語関係のエッセイ集に『私家版日本語文法』『自家製
文章読本』『日本語観察ノート』などがある。
背景知識
野球場
野球場
野 球
背景知識
外堀公園野球場
背景知識
外堀通りへの階段
背景知識
祝 儀 袋
単語の勉強
【一】
口(くち) (名)
物事をいくつかに分けたうちの、同じ種類に入るものの一つを現す。
「のたぐい」、 「の類」の意味を表す。
○ 俺は住井たちと、たまに俺の部屋に酒を持ち込んで飲んでいる
ので、自分では結構いける口だと思っている。
○ 彼女は完全に、アリババが魔界君主になった煽りを喰らって悪
魔化した口だと思うんですよね。
○ 「いい剣持ってるじゃねぇか。さてね貴様、平和になったからっ
て戦士をやめた口か。」
単語の勉強
【二】伏せる(ふせる)(動下一)
1、下の方に向ける。
○ 目を伏せる。
○ 顔を伏せる。
2、物を逆さまにする。
○ 皿を伏せる。
○ 茶碗でさいころを伏せる。
3、人にわからないようにかくしておく。
○ 兵を伏せる。
○ 名を伏せる。
○ この事は伏せておいてください。
単語の勉強
【三】引っ込む(ひっこむ)(動五)
1、隠退する。閑居する。
○ 店を畳んで故郷に引っこむ。
○ 社長をやめて伊豆にひっこむ 。
2、しり込みする。
○ 表面へ出ずに引っ込んでいる。
3、奥の方になっている。
○ 家は道路からちょっと引っ込んだ所にある。
○ 海岸線が引っこんでいる。
文法・表現の勉強
【一】 ~とでもいう(ような/ように)
物事の性質、特徴を別の表現にたとえて説明する言い方。
○ 医者も含め、自然探究者と医者とのドイツ連合とでもいうようなも
のが生まれた。
○ 主人公が恋人を兄貴にとられ、その悔しさを抱きながら夢にかけて
ひとりきりで生きる、とでもいうような話で、なんで俺、こういうのが
好きなんだろうと思った。
○ 無表情な顔、余計なことにはかかわりたくない、とでもいうような態
度だった。
文法・表現の勉強
【二】
膝を進める
座ったまま相手に近寄るという意味で、相手の話などの面白さにつ
られて、すっかり乗り気になっている様子を表す。類似の表現に「膝を
乗り出す」がある。
○ 彼の面白い話に、子供たちは膝を進めて聞き入った。
○ 国民所得分析の話をすると、池内は膝を進めて「面白い。じっくり
講義しろ」と言った。
○ 窓際に寄せたベッドから下りる為の前置きらしく、そう言いながら私
の方に膝を進めて来た。
文法・表現の勉強
【三】性根を据える
いかなる困難にも耐え抜こうと覚悟を決めて仕事に打ち
込む。「性根を据えて……」の形で用いられることが多い。
類義表現に「性根を据えてかかる」「性根を据えてやる」な
どがある。
○今度こそ性根を据えてやる決心だから、どうか、ご安心
いただきたい。
○それは性根をすえてかからねばならぬ難事業であった。
○性根を据えて取り組めば、道は必ず開かれて来る。
文法・表現の勉強
【四】気がある
1、しようとする意思がある。
○そりゃあ、それもあるが、久しぶりに君と飲みたいという気もあったか
らだよ。
○本当に埋め合わせる気があれば、何とかできる金額である。
2、(異性に対して)関心がある。恋い慕う心がある。
○それは演出の下山が、どうやら彼女に気があるらしいということかも
しれない。
○自分のほうで少し気があるだけで、夏子のほうでは何とも思っていな
いことだけは確かだった。
文法・表現の勉強
【五】眉に唾をつける
相手の口車に乗せられて騙されないように、十分に用心
する意味を表す。
○キツネや狸に化かされないためには、眉に唾をつければ
よい。
○あいつの話は眉に唾をつけて聞いたほうがいいよ。うそ
つきだから。
○そんな眉に唾をつけるような話に簡単に乗らないでよ。
文法・表現の勉強
【六】ひと肌ぬぐ
援助を求めて来た人のために、本気になって力
を貸して人を助ける。
○兄の就職のためにおじがひと肌ぬいでくれたので、いい
会社に就職できた。
○何でしたら、あたしがひと肌ぬいで差し上げましょうか。
○同世代で親しい間柄の人、2人のためにひと肌ぬいでく
れるような人が適任と言えます。
文法・表現の勉強
【七】ねんごろになる
親密になるという意味で、特に男女がひそかに情
を通じ合い、親しい間柄になるという場合に用いる。
○草八はその下宿の浪曲家の細君とねんごろになってし
まった。
○看護婦とねんごろになっていたことまで洗い出され、逮
捕後すぐに細君は実家にもどった。
○困ったことに、和尚と娘はどちらからともなくねんごろに
なってしまったんだ。
文法・表現の勉強
【八】 一目おく
碁を打つとき、優者に対して何目かのハンディをおいて
打つところから出た言葉で、相手の力に敬意を示して譲歩
する、先輩などに一歩譲るという意味である。
○彼は知識の豊富な岡崎に対しては、一目置いたらしい。
○私はあの人には一目も二目も置いている。
○あれほどプライドが高く、人を批判するのが好きなキイウ
イが、彼には一目も二目もおいています。
本文の解説
小説の設定
時間 少年野球団が準優勝した年 → 一九六五年
現在 → 一九八三年
場所 四ツ谷駅の新道商店街の中村さんの店
人物 作者の「私」 → 放送関係の仕事をしている。
東京五輪から三年間、中村さん
の二階に下宿していた。
中村さん → 畳屋の主人
本文の解説
新道商店街
当時
現在
○豆腐屋、ガラス屋、お惣菜屋、
○飲み屋、食べ物屋、喫茶店
ビリヤード屋、普通の家、歌舞伎
役者の住まい
○生活があった。
○厚化粧。
自足していた。
素っ気ない。
自信のようなものがみなぎっている。 華やか。 脆い。
↓
↓
本文の解説
新道商店街
当時
現在
○たいていの日用品は新道のなかに ○派手で華やかな外装の店
ある店屋で間に合っている。
が並んでいる。
○住む人だけを相手にして暮らしが
○外からの客を相手に商売を
立っていた。
している。
○自分たちだけでやっていける。生活 ○店だけがあって人が住んで
力がある。
いない。
○客が来なくなれば寂れてし
まう。
本文の解説
ナインのその後
投手
一塁
二塁
三塁
遊撃
左翼
右翼
捕手
秀夫
畳屋
→商店街で畳屋
明彦
洋品屋
→丸の内にある会社の社員
洋一
お惣菜屋 → 新宿のホテルのコック
忠
ガラス屋 →コンピュータ技師
光二
文房具屋 →神奈川の中学校教師
常雄
豆腐屋
→ 埼玉で自動車学校の経営
誠
魚屋
→放送局の前で小料理店
正太郎 洗濯屋 →「寸借詐欺」?
練習
【一】本文の内容に基づいて次の質問に答えよう。
○中村さんが「新道少年野球団は強かったねえ」という理
由をまとめなさい。
○ 9人がばらばらになった原因を説明しなさい。
○文末に「この十何年かのうちに、ここには西日がささなく
なってしまったようである。」とあるが、ここの「西日」は、
小説の中でどんな意味をもっていたか。そして「ささなく
なってしまった」とはどういうことを意味するか。
○ 「ナイン」という題目のもつ意味を説明しなさい。
練習
【二】次の日本語を中国語に訳しなさい。
1、もっとも軒を並べる店は飲み屋に食べ物屋に喫茶店の
どれかに限られてしまい、客を迎えるだけの、厚化粧だ
が、なんだか素っ気のない小路に化けてしまったことも
たしかだ。
(开得最多的无非是小酒馆、小饭馆或咖啡店,为了招揽
顾客,家家都“浓妆艳抹”,但总觉得乏味。)
練習
【二】次の日本語を中国語に訳しなさい。
2、いまはたしかに華やかな小路になっているけれど、外
からやってくる客の懐中をあてにしないとやってゆけな
いというところが見えて、なんだか脆い通りになったよう
な気がしてしかたがない。
(现在确实繁华了许多,但看到如果不依赖外来客的腰包
就无法生存下去的情形,让人不得不感到小街变得脆
弱得很,)
練習
3、「常雄の奥さんは家付き娘を鼻にかけた高慢ちきな女
だったんですよ。それが正ちゃんと問題を起こしてから
別人のようになったんです。正ちゃんは一見、悪のよう
に見えるけど、やはりぼくらのキャプテンなんですよ。結
局は、ぼくらのためになることをして歩いているんだ。」
(常雄的老婆仗着常雄是上门女婿,一直傲慢任性得很。
但是,自从跟阿正闹出事后,她就像变了个人似的。阿
正看上去像是个坏人,可他还是我们的队长,终究他做
的还是为我们好的事情。)
練習
4、中村畳店から、わたしは外堀通りを市ヶ谷へ向かった。
金網越しに野球場を見ると、 木枯らしに吹き上げられ
た砂煙がグラウンドを走り回っている。振り返って西を見
ると、大会社の大きなビルが野球場に覆いかぶさるよう
に立っていた。
(从中村的塌塌米店出来,我沿着护城河大道往市谷方向
走去。隔着铁丝网眺望棒球场,秋风卷起漫天的沙尘,
在球场上飞舞。回首仰望西边,各大公司的高楼林立,
投下的阴影像是把棒球场都遮盖住了。
本文の内容について考えよう
●作者が「西日」を小説に取り入れた狙いを考え
ること。
● 「ナイン」の主題をまとめてみよう。