高级日语Ⅰ 第5课 木の葉の魚 安房 直子 授業の内容 ●背景知識 ●本文の解説 ●単語の勉強 ●文法・表現の勉強 ●練習 ●本文の内容について考えよう 背景知識 作者について 安房 直子(あわ なおこ、本名:峰岸 直子(みねぎし なお こ)、1943年1月5日 - 1993年2月25日)は、日本の児 童文学作家。東京生まれ。1965年、日本女子大学卒 業。山室静の指導を受けつつ児童文学を創作、同人誌 『海賊』を創刊。1971年、『さんしょっ子』で日本児童文 学者協会新人賞受賞。1973年、『風と木の歌』で小学 館文学賞、1982年、『遠い野いばらの村』で野間児童 文芸賞、1985年、『風のローラースケート』で新美南吉 児童文学賞、1991年、『花豆の煮えるまで』でひろすけ 童話賞受賞。 背景知識 幻想的作風だが、あくまで日本的な 民話風の趣をもった作品が多く、 晩年の作品では、死後の世界を意 識したものが多いとする評もある。 没後も評価は高く、『安房直子コレ クション』全7巻が刊行された。『き つねの窓』は1992年より教育出版 の国語教科書に収録されていた。 本文の解説 【一】「~艘」:小さな船を数える時に使う。→「隻」。 ★そうだ、万一不幸な事態が起こった場合にと思って、あの洞 穴に小船を一艘隠しておくのだ。(アレクサンドル・デュマ・鉄 仮面(下)) ★海ぎわに、五六艘の小舟がならんでいた。(山田風太郎-忍 法八犬伝 山田風太郎忍法帖4) ★日本海軍の軍艦一隻は、すぐ南京から溯江して、米艦船の 遭難者の救助にあたっている。(阿川弘之・山本五十六) ★それは一隻の巨大な宇宙船だった。(三瀬 龍・百億の昼と 千億の夜) 本文の解説 【二】「やる」:「行かせる」の意。 ★住職が私を外科医のところへやった。(三島由紀夫・金 閣寺) ★朝になって、旦那はわたしをキャサリンのところへやって、 朝飯に降りてこなくちゃいけないと言わせました。(エミリー ・ブロンテ・嵐が丘) 本文の解説 【三】 「お婿さんを探しておくれ。」: 「~おくれ」はちょっと古い表現で、昔話などによく見られる。 意味は「~てくれ」「~なさい」と同じ。 「お連用形なさい」→「お連用形」(古) →「連用形なさい」(今) 本文の解説 ★安寿は守本尊の地蔵様を大切におし。厨子王はお父様 の下さった護刀を大切におし。(森鴎外-山椒大夫) ★まだなら早くしなよ。猫の死骸なんかいつまでもおいとく と、ニャーゴと化けて出るぜ。(横溝正史-本陣殺人事件) 本文の解説 ★まあ、お前だけお食べ。それを食べるとお前の病気が、 今夜のうちによくなるから。(芥川龍之介-杜子春・南京の 基督) ★なあんだ。んだら、もっと小母さんに握ってもらうから、安 心して食べな。(三浦綾子-ひつじが丘 泥流地帯) 本文の解説 ★さあ、お飲み。体が暖まる。(赤川次郎-幽霊心理学) ★さあ水でも飲みな。(赤川次郎-おやすみ、テディ・ベア (下)) ★ さあ、早くお帰り、そして、もう二度とここへくるんじゃあり ませんぞ。(横溝正史-仮面城) ★じゃ、このヒイヒイ泣いてるのを連れて帰りな。二度と来 るんじゃねえぞ。(赤川次郎-シングル) 本文の解説 【四】「~を欲しい」: 形容詞や形容動詞の対象語は普通「が」で表すが、主語と 間違えやすい時は「を」と言ってもよい。 ★自分が好きな人間を、仲のいい別の友人がけなしたりす ると、人はとてもつらい気持ちになるものだ。(柴門ふみ-男 性論) 本文の解説 ★子供たちがわたしをすきになるかどうか、まだなんともい えませんが…(ジーン・ウェブスター・続あしながおじさん) ★私を好きだと云うひとは、私と同じようにみんな貧乏だ。 (林芙美子・放浪記) ★ほかに誰か、あなたを好きな人がありますか?(シャー ロックホームズ・美しき自転車乗り) ★陽子は、頑固な茂也を嫌いじゃなかったが、この「新しい 茂也」もすてきだと思った。(赤川次郎・くちづけ) ★しかし、わたしは、ミツエを嫌いではなかった。 本文の解説 【五】「覚えておくんだよ」: 「~んだ」(たまに「~のだ」も)は命令・要求を表す言い方。 ★つまらねえことをいってねえで、早く帰るんだよ。(興津要 -古典落語(続々)) ★近寄るんじゃない!(赤川次郎・天使に似た人) ★あそこを捜して来るんだった!(赤川次郎・名探偵はひと りぼっち) ★結婚するんじゃなかった、子どもをつくるんじゃなかった ――後悔はしたけれど、いまさらそんなことを言ってもはじ まらない。(梅宮アンナ-「みにくいあひるの子」だった私) 本文の解説 【六】「それはいい感じに笑ったものですから」: 「それは」:ひどく感動(驚嘆)して、なんと形容したらいいか 表現に迷うことを表わす。 ★「あの人はそれは〔=非常に〕美しい方でした。 ★それはそれは、どうも恐れ入ります。 ★旅行中はそれは楽しい毎日でした。 本文の解説 【七】「ただもう」:「もっぱら。ひたすら。むやみに。 まったく。」の意。 ★武松は虎との格闘でくたくたに疲れていて、ただもう眠り たかった。(施耐庵-駒田信二訳-水滸伝(二)) ★私も兄貴もただもう、仰天して、スタジオに山とつまれた 商品を茫然と眺めていた。(遠藤周作 - それ行け狐狸庵) ★ね、私、お父さまのためにただもう何かしたくってたまら なかったの。(オルコット-若草物語) 本文の解説 【八】「海の魚だって、なくなりゃしない」: 「動詞連用形+は+しない」の形で、その動詞の意味を強 調することができる。さらに、「は」が音便して、「動詞連用 形+や+しない」または「動詞連用形+ゃ+しない」の形も ある。 本文の解説 ★だれもおこりゃしないよ。褒めてやりたいくらいだよ。(横 溝正史-悪魔の寵児) ★酔ってやしないよ。ううん、酔ってるもんか。苦しい。苦し いだけなのよ。(川端康成・雪国) ★あんな汚い海で泳げはしないわ。(谷崎潤一郎・ 痴人の 愛) ★そんなにしたって見えやしないよ。この木の上へ乗っか って、私の肩に掴まって御覧。(谷崎潤一郎・ 痴人の愛) 本文の解説 【九】「そうとも」: ここの「とも」は「終助で、活用語の終止形に接続する。強い 断定でもって言い切る場合に用いる。 ★『ほんとに行くのか。』『行くとも。』 ★そうだとも。昔はよく勉強したものだ。 「そうとも。」は俗用。 本文の解説 ★そうとも。そなたとわしは相性がよい。(杉本苑子-影 の 系譜 豊臣家崩壊) ★そうですとも。関白さまは夢にもご存知ないことでござい ます。(杉本苑子-影 の 系譜 豊臣家崩壊) ★「二年間も、ごまかしていた、っていうのか?」 「そうとも。立派なもんだろう、ええ?」(赤川次郎・黒い森 の記憶) ★そうですとも。しかし、先生も、色々と秘密をお持ちのよう だ。(赤川次郎・黒い森の記憶) 単語の勉強 【一】おまけに【おまけに】 (接) 好ましい(好ましくない)条件が十分そろって いるのに、その上にまた同種の要素が加わる ことを表わす。 「暑いし、─湿気が多い」 「まずい。─値段も高い」 単語の勉強 【二】つくづく 副ト __ある物事に感覚を集中させるさま。じっくり。 念を入れて。 「この国の将来を─(と)考えた」 「子供の寝顔を─(と)眺める」 __身にしみて深く感じるさま。 「人生ははかないと─思う」 単語の勉強 【三】おやごころ【親心】 (一)〔無事に育つように、他に負けぬようになどと〕親 が子を思う心。 子どもの泣き声がすると外へ出てみるというのも親 心だ。 (二)〔親が子を思うような〕目下の者に対する親切心。 よけいなお世話だが,これも君が失敗しないようにと の親心だ。 単語の勉強 【四】ささ-や・く 【囁く・】 (動五) 〔「ささ」は擬声語〕 小声で言う。声をひそめて言う。「耳元で―・く」「愛を ―・く」 ・女は顔をすり寄せ甘い言葉をささやいた ・「好きだよ」と耳元でささやかれた ・倒産のうわさがささやかれ従業員が動揺している ・大臣の更迭がささやかれている 文法・表現の勉強 【一】~と言ったら 「~と言ったらは話題提示で、「~と言うと」や 「~と言えば」と同じく「~に関して語ると い う意味を表しますが、感動・感嘆・驚き・失 望など話者の感情を強く打ち出すのが特徴 です。 文法・表現の勉強 【一】~と言ったら 1.そのときの悔しさと言ったら、もう口では表せませ ん。 2.その女性の美しさと言ったら、まるでこの世の人 とは思えないほどだったよ。 3.何よこれ。この部屋の汚いと言ったらありゃしな いわ。まるで足の踏み場もないじゃないの。 文法・表現の勉強 【二】 ~につき (一)「~につき」は名詞に接続して「~という理由で」 を表す接続助詞です。掲示物や手紙、通知文で 多く使われる文章語で、日常会話ではあまり使わ れません。 1.面会謝絶につき、入室はお断りします。 2.準備中につき、今しばらくお待ちください。 3.店内改装中につき、しばらく休業いたします。 文法・表現の勉強 【二】 ~につき (二)……あたり。比率。 一時間につき千円の時給が支払われます。 5人につきひとりの割合/每五人有一人的比例. 練習 次の文の下線部を辞書で引いて日本語で説明しな さい。 1、ころんで擦り剥いただけでなく、おまけに服まで 破いてしまった。 2、このセーターは脱ぎ着するたびに、ぱちぱち静電 気が起こって気持ちが悪い。 3、長い間胸に仕舞っている切ない思いを夕べ一気 に彼に打ち明けた。 本文の内容について考えよう ●アイの一家はなぜ天罰をうけたか。 ●この童話を読んだ感想を述べなさい。
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