現代日本語

高级日语Ⅲ
第7课
城の崎にて
志賀直哉
授業の内容
●背景知識
●単語の勉強
●文法・表現の勉強
●本文の解説
●練習
●本文の内容について考えよう
背景知識
作者について
志賀直哉(しがなおや)、1883年茨城
県に生まれ、1971年死去。小説家。
1910年武者小路実篤、有島武朗らと
雑誌『白樺』を創刊した。同誌創刊号
に『網走まで』を発表以来、『城の崎
にて』『 和解』『暗夜行路』『小僧の神
様』『灰色の月』などの作品を書き、近
代日本の代表的作家として、”小説の
神様”と称された。
背景知識
心境小説
私小説の一種である。主に作者の日常生活における、心
境を描いた小説のことである。作者が対象を描写する際に
その対象を如実に浮かばせて、それを眺める時の心持ち、
さらに言うと、人生観的感想を主として表そうとした小説で
ある。
背景知識
「城の崎にて」は一篇の小説であるけれども、あ
りふれたことの素描だけである。文章のおおよそ
の内容が作家本人の体験と一致すると思われる。
まさに作家自身が言った通りに、これは「現実その
ものを描写する小説だ」。また、「創作と随筆の区
別はぼんやりだ」。
背景知識
城崎の温泉街
背景知識
(城崎温泉 )一の湯
背景知識
や ま め
背景知識
八手(やつで)
単語の勉強
【一】おそう【襲う】
(動五)
好ましくない人、または人相当のものが不意に攻めかか
ったり、危害を加えたりする意味を表す。「~におそわれる
」というような受身表現の場合は、好ましくない感情が穾然
おそいかかる意味を表す。
○ はじめはなんとなく気持ちが悪いなあ、という程度だったのが、だ
んだん食事の後吐き気におそわれるようになった。
○ この先どうなるのだろうと、深刻な不安におそわれる
○ お酒を飲んだ次の日の朝、頭痛や胸やけなどの不快な気分にお
そわれることを経験した方は多いでしょう
○ 妻の死により深い悔恨におそわれる。
単語の勉強
【二】 そわそわ (副)
気がかりなことがあって言動が落ち着かない様子を表す
○ ある日、いつものように水槽の中を覗きこむと、妙にそわそわした
魚がいる。どうしたのだろうか。まったく落ち着きがない。
○ 日曜日にフォークダンスのパーティーが実家の近くであるんです。
楽しみなのとちょっと不安とで、何だかそわそわしています。
○ 今日はクリスマスイブ。街を歩く人達もなんだかそわそわしている
ように感じました。
○ 大切な君との時間、話したいことはたくさんあるのに、なんだかそ
わそわして、どうにも落ち着かない。
単語の勉強
【三】冷え冷え【ひえびえ】 (副)
1、風、空気などが)冷えるさま。冷たいさま。
○ 冷え冷え(と)した山の空気
○ この部屋は冷え冷えしている。
2、心が空虚でさびしいさま。
○ 冷え冷え(と)した気持ち
○ 冷え冷えとした家庭
単語の勉強
【四】すり抜ける【すりぬける】 (動下一)
1、狭いところや群集の中などを、ぶつからないように、体
をかわしながら抜け出る。
○ 人ごみの間をすり抜けて前へ出る。
2、あれこれと紛らわしてうまく免れる。
○ その場はうまくすり抜けた。
○ ほかの人をすり抜けようと企んでいる。
単語の勉強
【五】 だらしない
(形)
1、ものごとをきちんとやらないで、しまりがない。
○ だらしなくベッドに寝ている。
○ なんでもやりっぱなしで、だらしない。
2、弱くて意気地がない。
○ 政府の顔色をうかがうマスコミのだらしない姿勢が問
題だ。
○ 何も言い返せないなんて、だらしないぞ。
文法・表現の勉強
【一】 動詞連用形+はしまいか
「動詞連用形+はしない」から変化したもので、ある事態が起こった
りする恐れがあるのではないかという話し手の心配の気持ちを表す場
合に用いる。
○ 台詞を忘れはしまいか、間違いはしまいか、とハラハラしながら観
てしまうのです。
○ そうでなくても、「こういう事をしたら相手を傷つけはしまいか」、と考
えたことはあるのだろうか?
○ そうすると、さらに周りの人に変に思われはしまいかともっと気にな
り、震えは余計にひどくなる。
文法・表現の勉強
【二】
~に相違ない
名詞、動詞の後に付けて、ある状況または仮定条件の下
で、過去、現在、未来のことについて確実性の高い推量を
表す。書き言葉として用いる。「~にちがいない」「~に決ま
っている」と置き換えられる。
○ 彼は一週間前に山に入ったまま、いまだに戻ってこない。きっと遭
難したに相違ない。
○ 2年前のあの事件さえなければ、彼はとうに課長に昇進していた
に相違ない。
○ こういう場合に、俺が行かないと嫌いだから行かないんじゃないか
と邪推するに相違ない。
文法・表現の勉強
【三】 ~かしら
終助詞「か」+「知らん」の転用。
1、副助詞。疑問を表す語について、物事が不確かである
という意を表す。
○ 彼女はどこかしら高貴なところがある。
2、終助詞。
A.話し手の自問。
○ こんなに幸せでいいかしら。
B.婉曲な依頼。
○ この仕事、やってもらえるかしら。
○ あの本、貸していただけないかしら。
文法・表現の勉強
【四】 気をおこす
前の文を受けて、そのような気持ちを生じさせるという意味を表す。
○ 役者という仕事に対してくじけそうになると、この絵を見て、頑張る
ぞっとやる気をおこす。
○ 国立がもともとの志望校ではなかったこともあって、私立受験が終
わってからは、勉強する気をおこすのが大変でした。
○ わたしはこんなとき、親切にしてやろうなどという気をおこすと、ま
すます調子に乗って始末におえなくなるのです。
○ そもそも、自分から外に出ようなんて気をおこすことがなかった?
文法・表現の勉強
【五】 気をさす
「いやだ」や「悪い」といったようなマイナス・イメージのこと
ばの後につけて、そのような気持ちを生じさせるという意味
を表す
○ しかし、巨人内部からも原監督のやり方にいやな気を
さす者が出ているのは事実だ。
○ 「おに」は、「陰」のことで、「陽」に対して目に見えない
もの、主に悪い気をさすものです。
○ その気が全くないのに殺してしまったのは自分に妙な
嫌な気をさした。
練習
【一】本文の内容に基づいて、次の質問に答えなさい。
○ 「3週間以上――我慢できたら5週間……」とあるが、作者のどうい
う気持ちを表すか。作者は何を意識していたか。
○ 作者は動き回っているはちの様子を描写したが、その観察の精密
さと表現の簡潔的確さのうかがえる部分を抜き出しなさい。
○ 筆者はいもりの死の様子を描写したが、その観察の精密さと表現
の簡潔的確さの伺える部分を抜き出しなさい
○ 「かわいそうに思うと同時に、生き物の寂しさを一緒に感じた。」と
あるが、筆者の立場に立って考えれば、この「寂しさ」はどこから来
るものなのか。
○ 「それがいっそうそういう気分に自分を誘っていった。」の「そういう
気分」とは、どういう気分なのか。
練習
【二】次の日本語を中国語に訳しなさい。
1、冷え冷えとした夕方、寂しい秋の山峡を小さい
清い流れについていくとき考えることはやり沈
んだことが多かった。寂しい考えだった。しかし
それには静かないい気持ちがある。
(冷沁沁的傍晚,沿着清冽的小河走在秋日寂
静的山谷里,心里想的仍然多是阴郁的事。我
感到很孤寂。但心情平静而又安适。)
2、はちは羽目のあわいからすり抜けて出ると、ひ
とまず玄関の屋根に下りた。そこで羽や触角を
前足や後ろ足で丁寧に整えると、少し歩き回る
やつもあるが、すぐ細長い羽を両方へしっかりと
張ってぶ一んと飛び立つ。
(蜂从板壁缝里钻出身来,先落到正门的屋顶
上,在那儿用前后脚仔细地整理一下自己的翅
膀和触角,有的还会稍稍走动走动,然后马上
将细长的翅膀向左右伸开,嗡的一声飞起来。)
3、自分はねずみの最期を見る気がしなかった。
ねずみが殺されまいと、死ぬに決まった運命を
担いながら、全力を尽くして逃げ回っている様子
が妙に頭についた。自分は寂しい嫌な気持ちに
なった。あれが本当なのだと思った。
(自己没心情看着老鼠最后死去。老鼠尽管注
定一死,却仍想自己不被杀死而竭力各处逃窜
,那种情景奇妙地深深印入我的脑海。我感到
凄凉和厌烦。我想,那种情感是真实的。)
練習
4、自分は弱ったろう。しかしふだん考えているほ
ど、死の恐怖に自分は襲われなかったろうとい
う気がする。そしてそう言われてもなお、自分は
助かろうと思い、何かしら努力をしたろうという気
がする。
(自己会消沉下去吧。但是,我觉得,自己并
不会像平时想象的那样被死的恐惧所包围。而
且,即使告诉我是致命的,我觉得自己也会认
为能得救而去做某种努力的。)
5、もう帰ろうと思いながら、あの見えるところまでというふ
うに角を一つ一つ先へ先へと歩いていった。物がすべて
青白く、空気の肌ざわりも冷え冷えとして、もの静かさが
かえってなんとなく自分をそわそわとさせた。
(尽管想着“该回去了”,可是又想“就走到能望见的那
个地方就返回”,于是就顺着道路的一个个拐角不停地
往前走。周围的景物已洒上月色,身上也感到寒意,这
种寂静反而使我有些惴惴不安了。)
練習
6、しかし、実際喜びの感じはわき上がってはこなかった。
生きていることと死んでしまっていることと、それは両
極ではなかった。それほどに差はないような気がした。

(然而,实际上我却没有欣喜的感觉。生与死并不是
截然的两极,我觉得二者之间并没有那么大的差异。
)
本文の内容について考えよう
1、情景や小動物の描写、場面の転換、時間の経過、主人
公の気分や心理の推移に注意し、考えながら読むこと。
2、筆者は、城崎にきてからの生活の様子をどのように描
写しているか。その描写から当時の筆者の生活を想像
してみよう。