利上げ判定週 - 第一生命保険株式会社

Market Flash
利上げ判定週
2016年5月30日(月)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・5月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報)は94.7と速報値から1.1pt下方修正されたものの、4月との比
較では現況(106.7→109.9)、期待(77.6→84.9)が何れも改善。現実の物価上昇率に強い影響を受ける
1年先の予想インフレ率が低下したことから判断して、物価下落がマインド改善に寄与した可能性大。1
年先の予想インフレ率は+2.4%と4月から0.4%pt低下して、2010年9月以来の低水準となった。
・実質GDP成長率(1Q改定値)は前期比年率+0.8%と速報値から0.3%pt上方改定され、市場予想に概
ね一致。個人消費は+1.9%で変わらなかったが、住宅、設備投資、純輸出が上方改定。同時に発表された
企業利益(税引き後)は前期比年率+1.4%と3四半期ぶりに反発し、前年比では▲5.7%と減益幅が縮小。
3四半期連続の前年割れだが、減益幅は縮小しており、最悪期を脱した可能性を窺わせる。ドル高の逆風
が和らいだことが効いている。
120
ミシガン大学消費者信頼感指数
(10億㌦)
米
企業利益
2300
110
現況
2000
100
1700
90
1400
80
1100
総合
70
期待
60
800
50
10
11
12
13
(備考Thomson Reutersにより作成
14
15
500
16
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Thomson Reutersにより作成 SNAベース
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は小幅に上昇。イエレン議長が利上げに前向きな発言をしたことを手掛かりにマイナス圏に
転じる場面もあったが、原油価格が安定するなか、プラス圏で取引終了。WTI原油は49.33㌦(▲0.15㌦)
で引けた。ベーカー・ヒューズ公表の稼動リグ数は減少が一服したものの、影響は限定的。
・前日のG10 通貨はUSDが全面高。イエレン議長が4月FOMC議事録の内容を裏書きすると、米金利上昇・USD
高で反応。USD/JPYは110後半、EUR/USDは1.10前半へとそれぞれUSD高主導の展開。週明け日本時間でもUSD
買いの流れは継続している。
・前日の米10年金利は1.851%(+2.3bp)で引け。米国時間午後にイエレン議長発言を受けて一気に金利上
昇。他方、欧州債市場は概ね堅調。ドイツ10年金利が0.138%(▲0.8bp)で引けた一方、イタリア
(1.355%、▲2.0bp)、スペイン(1.483%、▲2.0bp)、ポルトガル(3.046%、+2.5bp)が金利上昇。
3ヶ国加重平均の対独スプレッドは小幅にタイトニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株はUSD/JPY上昇を追い風に欧米株ラリーに追随。日経平均は17000回復を射程距離に入れている。
・4月小売売上高は前月比±0.0%と市場予想(▲0.6%)を上回り、前年比では▲0.8%と3月から0.4%pt
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
マイナス幅縮小。除くガソリンベースでも前年比+0.5%と3月から0.1%pt加速しており、一先ず悪化に
歯止めがかかっている。
(前年比、%)
15
小売売上高(商業業態統計)
10
5
0
-5
-10
-15
10
11
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13
14
15
(備考)Thomson Reutersにより作成 除くガソリン
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・27日に伊勢・志摩サミットが閉幕。安倍首相が用いた「リーマン・ショック級」という言葉の意味合いが
物議を醸したものの、「先進国間で経済の下振れリスクを共有」、議長国の日本は自ら「機動的な財政政
策を実施する」という、従前の予想に沿った結果となった。消費増税の先送りが事実上アナウンスされ、
その期間は2年半とする案が有力(報道ベース)。2019年夏の参院選を意識したとの見方が支配的で、6
月1日の国会会期末に正式な発表があるとの報道が多い。
・27日にはイエレン議長が約2ヶ月ぶりに講演。4月FOMC議事録の内容を踏襲する格好で「FRBが時間を
かけて緩やかに、かつ慎重に金利を引き上げることは適切だ。今後数カ月に利上げすることがおそらく適
切となる」として6・7月FOMCの利上げの可能性を示唆。足もとの景気認識については「経済は引き続き
改善しており、成長は上向いているようだ」として利上げの素地が整いつつあることを確認したが、一方
で「賃金の伸びに関してはあまり改善が見られず、労働市場に緩みが残ることを示唆している」としてス
ラックの残存にも注目。利上げに慎重な構えを同時にみせた。
・そうした下、今週発表される米指標は非常に大きな意味を持つ。注目は1日発表のISM製造業景況指数
と3日発表の雇用統計。雇用統計NFPのコンセンサスは+16.0万人と慎重だが、ここには米通信大手の
ストという特殊要因が混入しており、それが少なくともNFPを3.5万人押し下げるとされている(米労働
省調べ)。ノイズ入りのデータとはいえ、一先ず市場予想を満たせば、利上げ観測がサポートされそうだ。
平均時給もコンセンサス並み(前月比+0.2%、前年比+2.5%)の水準で十分だろう。一方、ISM製造
業景況指数は6・7月の利上げに疑問を投げかける可能性がある。市場予想は50.4と4月から0.4ptの悪化
が見込まれているが、既発表の地区連銀サーベイ(ダラス連銀以外)から単回帰分析(2004年6月以降、
決定係数0.78)で導出される5月ISMの推計値は49.3と50を割れている。ISMが50を割れる状況だと
利上げに黄色信号が灯るほか、仮に、そうした状況で利上げ観測が高まった場合はリスク性資産が持ち堪
えられなくなり、金融市場のボラティリティが高まりそうだ(25日付け当レポート ISMが50を割れそう
な状況で金融市場が利上げに耐えられるか自信が持てない も参照下さい)。
60
ISM・地区連銀サーベイ
ISM
55
50
地区連銀平均
45
40
35
07
08
09
10
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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