Market Flash おいしい組み合わせ 景気回復&利上げスキップ 2017年2月6日(月) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 ・1月米雇用統計によるとNFPは+22.7万人と市場予想(+18.0万人)を大幅に上回った。3ヶ月平均は +18.3万人に水準を切り上げ、12ヶ月平均の+19.0万人に近づいた。最近の新規失業保険申請件数の著し い減少と併せて考えると、労働市場の量的回復はここへ来てそのペースが再加速していると判断される。 失業率は4.8%に上昇したが、これは労働参加率上昇(62.67%→62.86%)によるもので、労働市場の厚み は寧ろ増している。表面的には「悪化」でも本質的には「良い」失業率上昇といえる。 ・他方、注目の平均時給は予想以上に鈍化。前月比伸び率は僅か+0.1%、前年比では+2.5%へと12月から 0.4%ptも減速。3ヶ月前比年率でみても+2.2%まで落ち込んだ。振れの大きい指標ゆえ、単月データの 信頼性はさほど高くないが、理論上は労働市場になおスラックが残存していることを示唆。 雇用統計 (NFP変化、千人) (失業率、%) 400 350 10 3MA 失業率(右) (前年比、%) 平均時給 4 9 12MA 300 8 250 3 7 200 6 150 100 5 50 4 前年比 2 3ヶ月前比年率 11 12 13 14 15 16 1 17 07 09 11 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 (備考)Thomson Reutersにより作成 15 17 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株市場は反発。米雇用統計はNFPが市場予想を大幅に上回った一方、平均時給が市場予想を 下回ったことで景気回復期待と利上げ先送り観測が併存。トランプ大統領がドット・フランク法の改正に 向けた金融規制の見直しを指示する大統領令に署名したことが好感され、セクター別では金融が大幅高。 欧州株も総じて堅調だった。WTI原油は53.83㌦(+0.29㌦)で引け。米稼動リグ数の増加が上値を抑え たものの、OPECの減産進捗を好感した買いが優勢だった。 ・前日のG10 通貨はGBPの弱さが目立った一方、資源国通貨が総じて堅調。USDはやや軟調に推移した。 USD/JPYは米雇用統計の発表を受けて急落した後、米長期金利が持ち直すのを横目に反発したが、結局は小 幅下落で越週。EUR/USDは1.07半ば付近での推移が続いた。米利上げ観測が後退する下、新興国通貨は堅調。 JPMエマージング通貨インデックスは6日続伸で引け。 ・前日の米10年金利は2.465%(▲0.9bp)で引け。米雇用統計の平均時給が予想比下振れでカーブ全体に下 押し圧力。欧州債市場(10年)はコア国堅調、周縁国軟調。ドイツ(0.412%、▲1.5bp)、イタリア (2.265%、+3.1bp)、スペイン(1.682%、+4.1bp)が金利低下。周縁国の対独スプレッドはワイドニ ング。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株は前週末に発表された幾つかの企業決算が好感され高く寄り付いた後、USD/JPY下落と共に上昇幅を 縮小(10:00)。 ・12月毎月勤労統計によると現金給与総額は前年比+0.1%と市場予想(+0.4%)を大幅に下回った。内訳 は、所定外給与(≒残業代)が▲2.1%、特別給与(≒ボーナス)が▲0.1%と弱く全体を下押しした反面、 最重要項目の所定内給与が+0.5%へと伸びを高め、賃金上昇トレンドの持続を裏付けた。相対的高賃金の 一般労働者数が前年比+2.1%(11月+2.0%)と順調に伸びた一方、相対的低賃金のパート労働者数が+ 2.4%(11月+2.8%)に伸び率を縮めたことが背景。 “正社員化”の流れが一人当たり賃金の上昇に貢献 している。マクロ賃金(一人当たり賃金×常用雇用者数、3ヶ月平均)は前年比+2.4%と安定的に伸びた。 (%) 名目マクロ賃金(常用雇用者数×一人当たり賃金) (前年比、%) 名目賃金(所定内給与) 1 4 0.5 2 0 0 -0.5 -2 -1 -4 -1.5 -6 -2 05 07 09 11 (備考)Thomson Reutersにより作成 13 15 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均 17 <#米雇用統計 #3月FOMCは利上げスキップへ #グローバルPMIは一段と改善 17 > ・上述のとおり1月雇用統計はNFPが市場予想を大幅に上回った一方、平均時給が市場予想を下回ったこ とで、景気加速期待と利上げ先送り観測が併存。株式市場に最も好感される結果となった。金利先物が織 り込む3月FOMCにおける利上げ確率は30.0%へと前日比2.0%低下、6月のそれは71.2%でほぼ不変。 平均時給の伸び率鈍化によって3月FOMCにおける利上げが遠のいたことは、米金利安定を通じて金融 市場全般のボラティリティ抑制に寄与しよう。 ・そうしたなか、世界経済の改善傾向は一段と顕著になっており、投資家の楽観姿勢を正当化している。速 報性に優れたグローバルPMIは1月に53.9へと伸びを高め、2015年3月以来の高水準に回帰。特に先進 国のそれは改善傾向が顕著。製造業PMIは54.2と14年3月以来に達し、サービス業も54.5と一段の改善 を示している。また、先行きの生産活動に目を転じると、新規受注・在庫バランスの上昇持続が好感され る。在庫減少と受注増加が併存していることに鑑みると、目下の増産傾向は暫く続く可能性が高いと判断 される。グローバル経済は、16年秋口頃から(米大統領選とはほぼ無関係に)改善が堅調になっているが、 このことは過去3ヶ月程度の先進国株高が単にトランプ政権の政策期待を先取りしたものではなく、しっ かりとした実体経済の改善に裏付けられていることを物語っている。目先的にトランプ政権の動向が重要 なのは言うまでもないが、実体経済好転の持続性に注目したい。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 65 先進国PMI グローバル総合PMI 65 60 60 55 55 50 50 45 45 40 40 35 00 02 04 06 (備考)Markitにより作成 (%) 20 08 10 12 14 サービス業 製造業 35 16 00 02 04 06 (備考)Markitにより作成 08 10 12 14 16 グローバルPMI新規受注・在庫バランス 15 10 5 0 -5 -10 11 12 13 14 15 16 17 (備考)Thomson Reutersにより作成 新規受注÷最終財在庫 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
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